
国際通信の約99%が海底ケーブルを通っていると知って、正直かなり驚きました。
AIやデータセンターが増えるほど、「計算する力」だけでなく「データを運ぶ道」も重要になります。
今回は、海底ケーブルとは何かという基本から、NECや住友電工などの海底ケーブル関連銘柄がどこで利益を得ているのかまで、初心者目線で一緒に学んでいきます。
- 海底ケーブルとは何か、どのように世界のインターネットを支えているのか
- 海底ケーブルの仕組みと、光ファイバー・中継器・陸揚局の役割
- 海底ケーブルをどうやって敷設し、切れたときにどう修理するのか
- AI・データセンター時代に海底ケーブルが重要になる理由
- NEC・住友電工・NTTなど、海底ケーブル関連銘柄がどこで関わっているのか
- 海底ケーブル関連銘柄へ投資するときに確認したいポイント
- 日本にとって海底ケーブルが重要な理由と、今後の成長性・リスク
海底ケーブルとは?世界のインターネットを支える海底インフラ
海外のWebサイトを見たり、海外企業のクラウドサービスを使ったりするときも、なんとなく人工衛星を経由してデータが届いているようなイメージを持っていました。
しかし実際に調べてみると、世界のインターネットを支えているのは、宇宙よりもむしろ海の底でした。
経済産業省は2026年の資料で、国際通信の99%は光海底ケーブルを経由していると説明しています。NECも、海底ケーブルが国際データ通信の99%を支えているとしています。私たちがスマートフォンで海外の動画を見るときも、海外のWebサイトへアクセスするときも、クラウドサービスや生成AIを利用するときも、その裏側では海底に張り巡らされた光ファイバー網が世界中のデータを運んでいます。
海底ケーブルは、一部の通信会社だけが利用する特殊な設備ではありません。世界中のデジタルサービスを成り立たせる基幹インフラです。
海底ケーブル関連銘柄を考えるうえでも、まずは「どの会社が関連しているのか」を覚える前に、そもそも海底ケーブルが何をしているのかを理解するところから始めたいと思います。
海底ケーブルを一言でいうと何?
名前だけを見ると、海の底に太い電線のようなものが一本通っている姿を想像するかもしれません。しかし通信に使われる海底ケーブルの中心には、非常に細い光ファイバーが入っています。その中を光の信号が進むことで、大量のデータを何千kmも離れた場所まで高速に届けています。
例えば日本にいる私たちが、米国にあるサーバーから動画を見るとします。動画そのものが海を渡って飛んでくるわけではありません。映像を構成するデータが光信号へ変換され、通信ネットワークを通り、海底ケーブルを使って日本まで運ばれてきます。
メール、動画、Webサイト、企業がクラウドへ保存しているデータ、オンライン会議、そして生成AIとのやり取り。利用しているサービスは違っても、国境を越える大量のデータを運ぶという意味では、海底ケーブルが同じ「道路」として使われています。
NECは1964年以来、累計45万kmを超える海底ケーブルを敷設してきました。これは地球約11周分に相当します。これほど巨大な通信網が海の底に広がっていると考えると、海底ケーブルが世界のデジタル社会を支える「高速道路」と呼べる理由も分かりやすいと思います。
インターネットはどうやって海を越えている?
細かい通信経路はサービスやネットワークによって異なりますが、初心者向けに大きく整理すると、
スマホ・PC
↓
国内の通信ネットワーク
↓
陸揚局
↓
海底ケーブル
↓
海外の陸揚局
↓
海外の通信ネットワーク
↓
データセンター
という流れで考えると分かりやすくなります。
ここで覚えておきたいのが、陸揚局(Cable Landing Station)という存在です。
海底ケーブルは海の中だけで通信を完結させる設備ではありません。海を渡ってきたケーブルを陸上へ引き込み、国内の通信ネットワークへ接続する場所が必要です。その海と陸の接続地点が陸揚局です。
例えば米国のデータセンターにある情報を日本から利用するとき、海外の通信ネットワークから海底ケーブルへ入り、太平洋を越えて日本の陸揚局へ到着します。そこから国内の光通信ネットワークなどを通って、私たちのスマートフォンやPCへデータが届けられます。
つまり、海底ケーブル一本だけではインターネットは成立しません。
海底ケーブル、陸揚局、国内通信網、データセンターなどがすべてつながることで、私たちは海外のサービスであることをほとんど意識せず、世界中の情報へアクセスできています。
この仕組みを理解しておくと、後ほど海底ケーブル関連銘柄を見るときにも、ケーブルを作る企業だけではなく、陸揚局や通信ネットワークを運営するNTTやKDDIなどの通信会社がなぜ関係するのかが見えてきます。
海底ケーブルと衛星通信は何が違う?
「海外との通信なら人工衛星を使えばいいのでは?」と思っていました。
実際、以前は衛星通信も大陸間通信で大きな役割を担っていました。NECによると、1995年には大陸間通信を海底ケーブルと衛星通信がほぼ半分ずつ担っていました。しかし現在は海底ケーブルが国際通信の中心になっています。
大きな理由の一つが、大量のデータを高速に運ぶことに海底光ケーブルが向いていることです。KDDIも、インターネットのような大容量通信では衛星通信に比べて海底ケーブルが大きな優位性を持つと説明しています。また現在のKDDIは、AI時代の通信基盤として海底ケーブルを「大容量・低遅延」のインフラに位置づけています。
ただし、これは「海底ケーブルが優秀だから衛星通信は必要ない」という意味ではありません。
それぞれ得意な場所が違います。
| 比較するポイント | 海底ケーブル | 衛星通信 |
|---|---|---|
| 大容量通信 | 非常に得意 | 用途・衛星方式によって異なる |
| 通信の遅延 | 小さくしやすい | 衛星までの距離などの影響を受ける |
| 国際基幹通信 | 中心的な役割 | 補完的な役割 |
| 離島・山間部など | ケーブル網が必要 | 地上回線を敷きにくい場所に強い |
| 災害時 | ケーブル損傷の可能性がある | 地上通信網を補完できる |
| 主な強み | 大容量・高速通信 | 広い地域へ通信を届けられる |
例えば、海底ケーブルを敷くことが難しい離島や山間部、災害によって地上の通信設備が使えなくなった地域では、衛星通信が大きな力を発揮します。
一方、世界中のデータセンター間で膨大なデータをやり取りするような通信では、海底光ケーブルが中心になります。
私は最初、「海底ケーブルか衛星か」という競争だと思っていました。しかし実際には、大量のデータを運ぶ海底ケーブルと、地上インフラだけでは届きにくい場所までつなげる衛星通信が、それぞれ違う役割を担っていると考える方が分かりやすそうです。
通信海底ケーブルと海底電力ケーブルは別物
今回の記事で主役にしているのは、
光海底ケーブル=データを運ぶケーブル
です。
一方、洋上風力発電所で作った電気を陸へ送ったり、北海道と本州のように離れた地域の電力網をつないだりするために使われる、
海底電力ケーブル=電気を運ぶケーブル
もあります。
どちらも海底へ敷設されるため「海底ケーブル」と呼ばれますが、目的はまったく違います。
ここは投資をするときにも重要です。
例えば住友電工は、超長距離海底通信向けの極低損失光ファイバーを持つ一方で、直流海底電力ケーブルも手掛けています。つまり「住友電工は海底ケーブル関連企業」という説明だけでは、通信分野の話なのか、電力インフラの話なのか分かりません。
テーマ株を調べていると、「海底ケーブル関連」という言葉だけで複数の企業がまとめられることがあります。
しかし、この記事で最終的に考えたいのは企業名ではなく、
その会社は、何を運ぶ海底ケーブルの、どの部分で利益を得ているのか。
というところです。
通信海底ケーブルと海底電力ケーブルを最初に分けておけば、後ほど海底ケーブル関連銘柄を整理するときにも、企業の事業内容を混同しにくくなります。
海の底には世界をつなぐ「データの高速道路」がある
しかし実際には、国際通信の99%を光海底ケーブルが支え、海外の動画、Webサービス、クラウド、生成AIなど、普段利用しているデジタルサービスを世界規模でつないでいます。
そして、海底ケーブルだけですべてが完結するわけでもありません。
スマホやPC → 国内通信網 → 陸揚局 → 海底ケーブル → 海外通信網 → データセンター
まで一つにつながることで、私たちは世界中のサービスへアクセスできます。
衛星通信とも役割が違い、さらに同じ「海底ケーブル」という言葉でも、データを運ぶ光海底ケーブルと電気を運ぶ海底電力ケーブルは別物です。
ここまで理解すると、海底ケーブル関連銘柄を見るときにも、「ケーブルを作っている会社を探せばいい」という単純なテーマではないことが少し見えてきます。
では、その細い光ファイバーは、どうやって何千kmも先まで大量のデータを届けているのでしょうか。
次は、海底ケーブルの中で実際にデータが運ばれる仕組みを見ていきます。

海底ケーブルは、ただ海の底に線が通っているだけではないのですね。
世界中のデータを運ぶ「光の高速道路」だと考えると、なぜ重要なのか一気に分かりやすくなりました。
海底ケーブルの中では、どうやってデータを運んでいる?
海底ケーブルについて調べる前の私は、海の底に太い通信線が一本通っていて、その中をデータがそのまま流れているようなイメージを持っていました。しかし実際には、光ファイバー、中継器、分岐装置、陸揚局など、いくつもの技術が組み合わさることで、遠く離れた国同士の通信が成り立っています。
KDDIは光海底ケーブルについて、光ファイバーを収めた伝送路、海底中継器、陸上側の設備などによって構成される通信システムとして説明しています。さらに複数の国や地域へ接続する場合には、海底でルートを枝分かれさせる分岐装置も使われます。
つまり海底ケーブルは、「一本の長い線」というより、海底から陸上までさまざまな装置が連携して動く巨大な通信システムなのです。
では、その中でどのようにデータが運ばれているのでしょうか。
海底ケーブルの中心にあるのは光ファイバー
光ファイバーは非常に細いガラスでできていて、その中を光の信号が進みます。私たちが送るメールや動画、Webサイトの情報、クラウド上のデータなどはデジタルデータへ変換され、通信ネットワークの中では光信号として運ばれています。
しかも、一本の光ファイバーで一種類の通信だけを運んでいるわけではありません。
現在の光通信では、異なる波長の光を同じ光ファイバーへ同時に流す「波長多重」という技術が使われています。道路で例えるなら、一本の高速道路に何本もの車線を作り、それぞれの車線で大量のデータを同時に運んでいるようなイメージです。
2025年に運用を開始したアジア地域の海底ケーブルSJC2では、最新の光波長多重伝送方式を採用し、毎秒126テラビット以上のデータを伝送できるとKDDIが発表しています。非常に細い光ファイバーの中を、想像できないほど大量の情報が同時に走っているわけです。
さらに長距離通信では、光をできるだけ遠くまで届けることも重要になります。光はファイバーの中を進むうちに少しずつ弱くなるため、光の損失を小さくできるファイバーほど海底通信では有利になります。
ここで、海底ケーブル関連銘柄として住友電工が関係してきます。
住友電工は海底通信向けの極低損失光ファイバーを手掛けており、2023年には一本の光ファイバー内部に2本の光の通り道を持たせた極低損失マルチコア光ファイバーの量産化に世界で初めて成功しました。同じ太さのファイバーでも複数の光信号を独立して送れるため、海底ケーブルのさらなる大容量化につながる技術です。
こうして仕組みから見ると、住友電工が海底ケーブル関連銘柄として挙げられる理由も分かりやすくなります。
単に「電線メーカーだから関連している」のではありません。世界中のデータを運ぶ光そのものを、より遠く、より大量に届けるための技術を持っているのです。
光通信だけでなく、自動車や電力インフラまで幅広い事業を持つ会社としての全体像は、住友電工の強みを見るとさらに理解しやすくなります。
何千kmも先まで光を届ける「中継器」
光信号も長い距離を進むほど少しずつ弱くなっていきます。
そこで海底ケーブルの途中に設置されるのが、海底中継器です。
KDDIによると、長距離の光海底ケーブルでは海底中継器がおよそ50~100km間隔で設置され、弱くなった光信号を増幅しながら次の区間へ送っています。日本と米国の間だけでも9,000kmを超えるため、太平洋を横断するようなケーブルでは、多数の中継器が海底に並ぶことになります。
高速道路に例えるなら、長距離を走る途中に一定間隔でエネルギーを補給する場所があり、そこで力を取り戻しながら目的地まで進んでいくようなイメージです。
ただし、海底中継器には一般的な通信機器とは比べものにならないほど高い信頼性が求められます。
太平洋には水深数千mを超える場所があり、一度海底へ沈めた中継器を簡単に交換することはできません。そのため海底ケーブルシステムでは、25年程度の長期間にわたって安定して動き続けることを前提に設計されます。
ここまで調べてみると、海底ケーブル事業へ簡単に新規参入できない理由も見えてきました。
ケーブルを作るだけでは足りません。
深い海の底に置かれた装置が、強い水圧に耐えながら何十年も安定して動き続ける。その信頼性を積み重ねてきた実績まで求められる世界なのです。
海底ケーブルを枝分かれさせる「分岐装置」
一つの海底ケーブルから途中で別の方向へ枝分かれし、複数の国や地域へ接続することもできます。
その役割を担うのが、分岐装置です。
道路で考えると、高速道路のジャンクションに近い存在です。
一本の幹線ルートを海底へ伸ばし、途中から別のルートを分岐させることで、日本、台湾、フィリピン、シンガポールなど、複数の国や地域を一つの海底ケーブルシステムで結ぶことができます。
例えば2025年に運用を開始したSJC2は、総延長約10,500kmに及び、日本を含むアジアの複数拠点を結んでいます。
ここでも、「海底ケーブル=日本と海外を結ぶ一本の線」という最初のイメージとはかなり違うことが分かります。
実際には、世界の海底に高速道路の本線とジャンクションのようなネットワークが張り巡らされ、その上を大量のデータが行き来しているのです。
さらに分岐装置は、単純に物理的にケーブルを枝分かれさせるだけではありません。システムによっては陸上から通信経路や電力供給を制御できる仕組みも使われています。
海の底に沈んでいる設備であっても、陸上側から管理しながら運用されている巨大なネットワークなのです。
海底ケーブルはどこから陸に上がる?
そこで重要になるのが、陸揚局です。
陸揚局は英語でCable Landing Stationと呼ばれ、海底ケーブルと陸上の通信網をつなぐ「海と陸の玄関口」のような場所です。
海外から海底ケーブルを通って届いた光信号は陸揚局へ入り、そこから国内の光通信ネットワークへ接続されます。そしてデータセンターや企業のネットワークなどを経由し、最終的には私たちが使うスマートフォンやPCまで届けられます。
ただし、陸揚局の仕事はケーブルを陸へつなぐことだけではありません。
海底に設置されている中継器や分岐装置を動かすための電力も、陸上側から海底ケーブルを通じて供給されています。
私はこの仕組みを知るまで、中継器には海底で使える巨大なバッテリーのようなものが入っているのだろうかと思っていました。
実際には、海底ケーブルの中には通信に使う光ファイバーだけでなく、中継器へ電力を送る仕組みも組み込まれています。
海底だけを見ていても、海底ケーブルの仕組みは理解できないのです。
2025年に運用を開始したSJC2では、KDDIが千葉県南房総市と三重県志摩市の2カ所に陸揚げ拠点を提供しています。
こうした陸揚局を国内通信網やデータセンターへつなげることで、初めて国際通信サービスとして利用できるようになります。
ここまで分かると、海底ケーブル関連銘柄としてNTTやKDDIなどの通信会社が挙げられる理由も見えてきます。
海底ケーブルへ出資するだけでなく、陸揚局を持ち、国内ネットワークにつなぎ、企業や利用者が使える通信サービスへ変えるところまで担っているからです。
一本のケーブルだけでは世界につながらない
しかし実際には、データを光として運ぶ光ファイバー、その光を何千kmも先まで届ける中継器、複数の国へ通信ルートを広げる分岐装置、そして海底ケーブルを陸上の通信網へつなぐ陸揚局まで、いくつもの設備が連携して初めて国際通信が成り立っています。さらに海底の中継器へは陸上から電力を送り、海と陸を一体の通信システムとして管理しながら運用しています。
ここまで仕組みを理解すると、「海底ケーブル関連銘柄」という言葉の見え方も変わってきます。NECのようにシステム全体をつくる企業、住友電工のように光ファイバーを支える企業、KDDIやNTTのように陸揚局や通信ネットワークを運用する企業では、同じ海底ケーブル関連でも担っている場所が違うからです。
そして、これだけ多くの設備が組み合わさった通信システムを、いったいどうやって何千kmもの海底へ敷いているのでしょうか。
ケーブルを作る技術だけでなく、海底のルートを調べ、専用船へ積み込み、深い海へ正確に敷いていく技術まで必要になります。

海底ケーブルは一本の長い線だと思っていましたが、光ファイバー、中継器、分岐装置、陸揚局まで全部そろって初めて世界につながるのですね。
企業ごとの役割も少しずつ見えてきました。
海底ケーブルはどうやって海底に敷くのか?
私は最初、工場で作った長いケーブルを船に積み、航海しながら海へ沈めていけば完成するのだと思っていました。しかし実際には、ケーブルを海へ入れるよりも前から巨大なプロジェクトが始まっています。
海底の地形や水深を調べる。地震や海底地滑り、漁業、船舶などのリスクを考えてルートを決める。ルートに合わせてケーブルや中継器を製造し、専用の敷設船へ積み込む。そして船を正確に動かしながら海底へケーブルを送り出し、必要な場所では海底に埋め、最後に陸揚局へつなぐ。
NECも海底ケーブルシステムについて、海洋調査とルート設計から、機器の製造、据付、ケーブル敷設、試験まで一体で提供しています。海底ケーブルは「海に線を沈める工事」ではなく、調査・製造・海洋工事・通信技術を組み合わせた巨大インフラプロジェクトなのです。
まず海底のルートを調査する
地図を見て、日本と海外を最短距離で結べばいいようにも思えますが、海底にも山や谷があり、急な斜面もあれば、地震や海底地滑りが起こりやすい場所もあります。さらに沿岸部では漁業が行われ、船舶が錨を下ろす可能性もあります。
そのため実際のプロジェクトでは、専用の調査船などを使って水深や海底地形、海底の地質などを詳しく調べ、その結果をもとに敷設ルートを設計します。
NECの技術資料でも、海底ケーブルは25年以上にわたって使用される長期インフラであるため、建設前に海洋ルート調査を行い、海底の状態を把握したうえでルートを設計する必要があると説明されています。
ここで面白いのは、必ずしも「最短ルート」が最も良いとは限らないことです。
少し遠回りになっても、急斜面や海底地滑りのリスクが高い場所を避けたり、船舶や漁業活動が多い海域を避けたりした方が、長期間安定して通信できる可能性があります。
道路でも、崖の上を無理に最短距離で通るより、安全な場所を選んで道路を作ることがあります。海底ケーブルでも同じように、何十年も使い続けることを前提に「どこを通すか」が考えられているのです。
この視点は投資を考えるうえでも重要だと思います。
海底ケーブル事業には、ケーブルを製造する技術だけでなく、世界中の複雑な海底地形を調査し、安全なルートを設計してきた経験まで必要になるからです。
巨大な海底ケーブルを工場で製造する
ここでも、家庭で使うLANケーブルのように「同じケーブルを大量に作ればいい」というわけではありません。
深い海で使う区間と、船の錨や漁業の影響を受けやすい浅い海では、ケーブルに求められる強度が違います。どこへ中継器を配置するのか、どこで分岐させるのかもプロジェクトごとに異なるため、事前に設計した通信システムに合わせてケーブルと装置を組み上げていきます。
NECでは、グループ会社のOCCが光海底ケーブルを製造し、NEC Platformsが海底中継器などを製造する体制を持っています。NECはこれらを一つの海底ケーブルシステムとして統合し、敷設から試験まで担っています。
製造されたケーブルと中継器は、最終的に一本の連続したシステムとして組み合わされ、性能を確認したうえで敷設船へ積み込まれます。
NECの技術資料では、1,000km分の海底ケーブルシステムを船へ積み込むだけでも、昼夜を通して約1週間かかる例が紹介されています。何千kmものケーブルを扱うプロジェクトが、想像以上に大規模な作業だと分かります。
専用の海底ケーブル敷設船で海へ沈めていく
私は最初、船の後ろからケーブルを落としていけば自然に海底へ沈んでいくのだと思っていました。しかし、何千mもの水深がある海で、予定したルートへ正確にケーブルを置くには非常に高い航海・施工技術が必要です。
敷設船の内部には巨大なケーブルタンクがあり、そこへ何千km分ものケーブルを巻いて積み込みます。船は海底地形や水深を確認しながら計画したルートを進み、ケーブルへかかる張力を管理しながら少しずつ海へ送り出します。
2022年にNECが長期チャーターした敷設船「Normand Clipper」は全長127m、ケーブル積載能力5,000トンで、一般的な構成で約7,000km分のケーブルを搭載できる規模でした。海底ケーブル需要の拡大に対応するため、NECはそれまで案件ごとに確保していた敷設船を長期チャーターする判断をしています。
KDDIが運用するケーブル船でも、高精度な測位システムと複数のスラスターを使い、風や潮流の影響を受けながらも狙った位置へケーブルを敷設できるようになっています。
つまり敷設船は、単なる「ケーブルを運ぶ船」ではありません。
巨大なケーブル倉庫であり、精密な海洋工事設備であり、海底通信インフラを完成させるための移動する工事基地でもあるのです。
浅い海では海底に埋めることもある
特に注意が必要なのが、陸に近い浅い海です。
私は深海の方がケーブルにとって危険だと思っていました。しかし実際には、人間の活動が多い浅い海の方が、船の錨や漁具などによってケーブルが傷つくリスクがあります。
そのため沿岸部などでは、ケーブルを海底の土の中へ埋めて守ることがあります。
KDDIのケーブル船では、水深1,500mまでの海底で、漁業などによる障害を防ぐために海底へ1~3mほどの溝を掘り、ケーブルの敷設と埋設を同時に行える「PLOW-II」という埋設機が使われています。縦鋤やジェット水流によって海底を掘りながら、その中へケーブルを収めていく仕組みです。
深い海では海底にケーブルを置き、船舶や漁業の影響を受けやすい場所では埋めて守る。
海底ケーブルは、全区間を同じ方法で敷いているのではなく、その場所の環境に合わせて施工方法を変えているのです。
何千kmもの海底ケーブルを目的地までつなぐ
目的地の海岸へケーブルを引き上げ、陸揚局へ接続し、陸上側の通信設備とつなぎます。その後、システム全体の試験を行い、設計した通信性能が出ていることを確認して、ようやく国際通信インフラとして使えるようになります。
この規模感は、実際のプロジェクトを見ると分かりやすいと思います。
NECは2026年5月、ミクロネシア連邦、キリバス、ナウルの3カ国・4島を結ぶ約2,250kmの「EMCS」の建設を完了しました。そして2026年7月には、インド、マレーシア、シンガポールを結ぶ約3,600kmの「I-2SEA」を受注し、2029年の運用開始を予定しています。
さらにNECは1964年以来、累計45万kmを超える海底ケーブルを敷設しています。地球約11周分です。
ここまで来ると、海底ケーブル企業の競争力が「ケーブルを作れるか」だけではないことがよく分かります。
海底を調査し、ルートを設計する。
機器を作る。
何千kmものケーブルを管理する。
敷設船を確保する。
海上で正確に施工する。
世界各国の陸揚局へ接続する。
そして最後までプロジェクトを完成させる。
何十年にもわたって世界中でこうした仕事を繰り返してきた実績そのものが、新しい企業には簡単にまねできない強みになっているのだと思います。
海底ケーブルは「海に線を沈める」だけではない
しかし実際には、海底の状態を調べて長期間安全に使えるルートを設計し、そのルートに合わせてケーブルや中継器を製造し、専用の敷設船を使って何千kmもの海底へ正確に敷いていきます。沿岸部では船の錨や漁業から守るためにケーブルを埋設し、最後に陸揚局へ接続して通信試験を行って、ようやく一つの海底ケーブルシステムが完成します。
つまり海底ケーブル事業の競争力は、「ケーブルを作れるか」だけでは決まりません。海洋調査、設計、製造、敷設、接続、試験まで巨大な国際プロジェクトを最後まで動かせる経験そのものが重要になります。
NECが世界の海底ケーブル市場で長く事業を続けてきた背景にも、通信技術だけではなく、こうした複雑なプロジェクトを完成させてきた実績があります。新しい企業が設備をそろえただけでは簡単に追いつけない部分だと思います。
この記事では初心者向けに海底ケーブルの仕組みを整理していますが、ルート設計や中継器、敷設船、修理方法まで技術的に深く学びたい人には、『改訂版 光海底ケーブル』という専門書もあります。研究・開発・製造・工事・運用保守に携わる技術者が執筆しており、「もっと詳しく知りたい」と思った人向けの一冊です。
そして、海底へ敷いたケーブルが25年以上使われるとしても、その間に何も起きないとは限りません。地震や海底地滑り、船の錨などによってケーブルが切れることもあります。
では、何千mもの海底でケーブルが切れたとき、いったいどうやって修理するのでしょうか。

海底ケーブルは、船から海へ沈めれば完成するものではないのですね。
調査から製造、敷設、接続まで全部を動かせる経験そのものが、企業の大きな強みになると分かりました。
海底ケーブルが切れたら、インターネットは止まる?
「もし途中で切れたら、インターネットは止まってしまうのでは?」
私は海底ケーブルについて調べながら、真っ先にこの疑問を持ちました。
実際、海底ケーブルが切れたり傷ついたりすることはあります。地震や海底地滑りのような自然災害だけでなく、漁業で使う漁具や船舶の錨など、人間の活動によって損傷することもあります。KDDIも、日本近海における主な障害原因として漁業活動、船舶の投錨、地震、地滑り、海底面との摩擦などを挙げています。
しかし、一本の海底ケーブルが切れただけで世界中のインターネットが止まるわけではありません。
通信ルートを複数用意しておく「冗長化」と、障害が起きたケーブルを海底から引き上げて修理する仕組みがあるからです。
つまり海底ケーブルは、作って終わるインフラではありません。
壊れることを前提に、別の道を用意し、切れたら海まで直しに行くところまで含めて世界の通信網が設計されているのです。
海底ケーブルは実際に切れることがある
しかし実際には、ケーブル障害は珍しいものではありません。
原因の一つが地震や海底地滑りです。大きな地震によって海底そのものが動けば、その上に敷かれているケーブルも引っ張られたり、土砂に巻き込まれたりする可能性があります。
さらに意外だったのが、人間の活動による損傷です。
沿岸部や浅い海では、船が下ろした錨が海底ケーブルへ引っ掛かったり、漁業で使う網や漁具によって傷つけられたりすることがあります。KDDIは、漁業活動や船舶による投錨、地震、地滑り、海底面との摩擦などを代表的な海底ケーブル障害の原因として紹介しています。
深い海ほど危険そうに見えますが、人間の活動が多い浅い海の方が物理的な損傷リスクが高いため、浅い海では太い外装でケーブルを守ったり、海底へ埋設したりしています。
実際、2011年の東日本大震災では、日本周辺の海底ケーブルにも大きな被害が発生しました。
KDDIが2026年に公開した震災復旧の振り返りでは、通常は同時に1~3カ所程度の修理対応であるところ、東日本大震災では同時に20カ所もの障害が発生したとされています。
世界の通信を支える海底ケーブルでも、「絶対に切れない」わけではありません。
だからこそ重要になるのが、切れることを前提にしたネットワークづくりです。
一本切れただけで世界中のネットが止まらない理由
そこで重要になるのが「冗長化」です。
冗長化を簡単に言えば、一つの通信ルートだけに頼らず、あらかじめ複数の道を用意しておくことです。
道路で考えると分かりやすいと思います。
東京と大阪を結ぶ道路が一本しかなく、その道路が通れなくなれば移動できなくなります。しかし高速道路、一般道、別の地域を経由する道路など複数のルートがあれば、一つが使えなくなっても別の道を選べます。
通信ネットワークも同じです。
一つの海底ケーブルに障害が発生した場合、通信を別の海底ケーブルや別のルートへ切り替えることで、すべての通信が同時に止まるリスクを減らします。
最近の海底ケーブルプロジェクトでも、この「ルートの多様化」と「レジリエンス」が重要な目的になっています。
2025年に運用を開始したSJC2について、KDDIは通信容量を増やすだけでなく、ルートの多様化とネットワークの冗長性を強化することで、アジア地域の通信インフラのレジリエンスを高めると説明しています。
ソフトバンクも北海道・苫小牧と福岡県・糸島へ新しい海底ケーブル陸揚げ拠点を整備し、陸揚げ地点を地理的に分散させることで、日本の国際通信網を災害や障害に強くする方針を進めています。
海底ケーブルが増える理由は、通信量が増えているからだけではありません。
「一本切れても止まらない通信網」を作るためにも、ルートを増やし、陸揚げ地点を分散させる必要があるのです。
切れた海底ケーブルはどうやって修理する?
では、何千mもの海底にあるケーブルをどうやって修理するのでしょうか。
大きな流れは、
障害が起きた場所を特定する。
↓
修理船が現場へ向かう。
↓
海底のケーブルを切断し、船上へ引き上げる。
↓
障害部分を取り除く。
↓
予備のケーブルと接続する。
↓
通信試験を行う。
↓
海底へ戻す。
という流れになります。
KDDIでは、水中ロボットを使って最大2,500mの深さまで潜り、障害ケーブルの探査、掘り出し、切断、船上への引き揚げ支援、修理後の再埋設まで行える体制を持っています。
ケーブルを船上へ引き上げたら、切断した両側のケーブルが正常かどうかを光学的・電気的に試験し、問題のある部分を取り除きます。その後、船に積んである予備ケーブルを使って再び接続し、正常に通信できることを確認して海底へ戻します。KDDIが2026年に公開した復旧記録でも、この一連の作業が紹介されています。
私は「海底ケーブルの修理」と聞いて、海中で作業員やロボットが直接ケーブルをつないでいる姿を想像していました。
実際には、故障したケーブルを海底から船上へ引き上げ、揺れる船の中で細い光ファイバーを一本ずつ正確につなぎ直します。
KDDIも、切断したケーブルの両側を船内へ引き揚げ、内部にある光ファイバーを接続して再敷設する作業には非常に高度な技術が必要だと説明しています。
世界をつなぐ通信網を、最後は海の上で人の手によってつなぎ直しているのです。
敷設船・修理船そのものも重要なインフラ
しかし、ここまで仕組みを見てくると、それだけでは通信網を維持できないことが分かります。
海底ケーブルを長期間使い続けるには、ケーブルを敷く船や障害現場へ向かう修理船だけでなく、海底からケーブルを引き上げる設備、水中ロボット、船上で光ファイバーを接続できる技術者、そして修理に使う予備ケーブルまで必要になります。
こうした設備と人材がなければ、海底ケーブルを作れても長期間使い続けることはできません。
KDDIの海底ケーブル事業の歴史を見ると、日本は1967年に日本初の海底ケーブル敷設・修理船を建造しました。それ以前は敷設作業を米国の船へ依存しており、日本の国際通信を維持するために国内の船を持つ必要があったことが分かります。現在もKDDIグループはケーブル船や水中ロボットを使い、敷設・保守・修理を行っています。
そして、この「船を持てるか」という問題は、現在では経済安全保障にもつながっています。
経済産業省は2026年の資料で、国際通信の99%を光海底ケーブルが担う一方、その機能を発揮するためには敷設船による役務が不可欠だと指摘しています。国内の敷設船が不足し、海外への依存度が高くなれば、その役務が途絶した場合に海底ケーブルの通信機能そのものが損なわれる可能性があるとしています。
つまり海底ケーブル産業では、
「作れるか」
だけではなく、
「敷けるか」
「守れるか」
「切れたときに直せるか」
までが競争力になります。
海底ケーブル関連銘柄を見るときにも、この視点はかなり重要だと思います。
「作れる」だけではなく、「直せる」ことも重要
しかし実際には、地震や海底地滑り、船の錨、漁業などによって損傷することがあります。だから世界の通信網は、「絶対に切れないケーブル」を作るのではなく、障害が起きても通信を続けられるように複数のルートを用意し、切れたケーブルを修理して元の状態へ戻せることまで含めて設計されています。
一本のケーブルに障害が起きれば、まず通信を別のルートへ迂回させ、その間に修理船が現場へ向かいます。つまり通信を止めないためには、「別の道を持っていること」と「壊れた道を直せること」の両方が必要なのです。
ここまで知ると、海底ケーブル関連銘柄を見るときにも、「ケーブルを製造しているか」だけでは足りないことが分かります。敷設船や修理船を確保できるのか、水中ロボットや専門技術者を持っているのか、障害が発生したときに世界の海で対応できるのか。長期間ネットワークを守り続けてきた経験までが、その企業の競争力になります。
通信インフラは、完成した瞬間がゴールではありません。
作って、敷いて、守って、壊れたら直す。
そのすべてがそろって初めて、世界のインターネットを支え続けることができます。
そして海底ケーブルが「止められない通信インフラ」だと分かると、日本という国にとってなぜこれほど重要なのかも見えてきます。
島国である日本は、世界との通信を海底ケーブルへ大きく依存しています。

海底ケーブルは、切れないように作るだけではないのですね。別の道を用意して、切れたら海まで直しに行く。
作る力と守る力の両方が大切だと分かりました。
なぜ日本にとって海底ケーブルが重要なのか?
日本は周囲を海に囲まれた島国です。
海外のクラウドサービスを使う。海外企業とオンライン会議をする。生成AIを利用する。海外のデータセンターへアクセスする。金融取引や企業間で大量のデータをやり取りする。
こうした国境を越える通信の大部分は、海を越えなければ成立しません。
経済産業省は2026年の資料で、国際通信の99%が光海底ケーブルを経由していると説明しています。つまり日本にとって海底ケーブルは、単なる通信会社の設備ではなく、海外とデータをやり取りするための基幹インフラです。
しかも日本は、「海に囲まれているから海底ケーブルが必要」というだけではありません。
アジアと米国の間に位置する地理的な特徴を生かし、世界のデータが行き交う中継地点になる可能性もあります。
AIやデータセンターが世界中で増えるほど、「どこで計算するか」と同時に「どこを通ってデータを運ぶか」も重要になります。
海底ケーブルを見ることで、日本がAI時代のデジタルインフラの中でどのような位置にいるのかも見えてきます。
島国の日本は海底ケーブルなしでは世界とつながれない
スマートフォンで海外の動画を見るときも、海外企業のクラウドサービスを使うときも、日本のサービスと同じ感覚で利用できます。
しかし物理的には、日本と海外の間には海があります。
国内であれば、陸上の光ファイバー網を使って都市と都市をつなぐことができます。しかし海外へ大量のデータを届けるには、海を越える通信インフラが必要になります。
そこで海底ケーブルが、日本と世界を結ぶ巨大な通信ルートになります。
経済産業省が国際通信の99%を光海底ケーブルが担っていると説明していることを考えると、日本の企業活動やデジタルサービスの多くは、海底に張り巡らされた通信網を前提に成り立っていることが分かります。
例えば海外のクラウドサービスを利用している企業が増えれば、日本国内だけ通信網が強くても十分ではありません。
日本から海外のデータセンターまで安定してつながる必要があります。
AIについても同じです。
生成AIをはじめとするサービスが世界中のデータセンターを利用するようになれば、計算能力だけではなく、そのデータを国境を越えて運べる通信能力も必要になります。
道路、港、空港、電力網と同じように、海底ケーブルも日本経済を支えるインフラの一つになっているのだと思います。
日本はアジアと北米をつなぐ重要な場所にある
日本はアジアと米国の間に位置しています。
KDDIは2026年から2028年の中期経営戦略で、AI時代には通信の応答性が重要になるとして、「アジアと米国を一直線で結ぶ日本の地理的優位性」を生かし、大容量・低遅延の光海底ケーブルの敷設・保守を進める方針を示しています。
つまり日本は、
アジア ← 日本 → 米国
というデータ通信の中継地点になれる位置にあります。
これは港に少し似ていると思います。
良い場所に港があれば、自分の国で使う荷物だけでなく、さまざまな地域へ向かう物流が集まります。
海底ケーブルも、複数の国やデータセンターを結ぶルートが集まり、そこから別の地域へデータを送れる場所になれば、その地域自体が「データのハブ」になります。
実際、2026年1月に発表されたI-AM Cableでは、日本とマレーシア、シンガポールなどを結ぶ約8,100kmの海底ケーブルが計画されています。
日本では千葉県、三重県、福岡県の3カ所へ陸揚げする予定で、初期設計容量は約320Tbps、総事業費は1,500億円規模、2029年度初頭の運用開始を予定しています。住友商事などは、日本について「アジア各国と米国の中間に位置し、アジア太平洋地域のデータハブとして重要な役割を担う」と説明しています。
海底ケーブルが増えることで、日本は「海外のサービスを利用する国」だけではなく、「世界のデータが通る国」になれる可能性があるのです。
AI・データセンター誘致にも海底ケーブルが関係する
しかしAIやクラウドを支えるデータセンターでは、もう一つ重要な条件があります。
大量のデータを高速に出し入れできる通信環境です。
どれだけ高性能なGPUを置いたデータセンターを作っても、世界中の利用者や別のデータセンターとの通信が遅ければ、その性能を十分に生かせません。
そのため海底ケーブルの陸揚げ地点とデータセンターを近づけたり、高速な光通信網で直接つないだりする動きが出ています。
NTTは2026年4月、福岡市に2029年竣工予定のAI対応型データセンターを整備する計画を示しました。
このデータセンターは海底ケーブル陸揚局と接続し、アジアとのゲートウェイ拠点として活用する構想になっています。またNTTは、福岡について再生可能エネルギーやデータセンターの地域分散という点でも注目していると説明しています。
先ほど触れたI-AM Cableでも、福岡は「西日本の国際通信ハブ」と位置づけられ、新設されるデータセンター群との連携が予定されています。
ここまで見ると、
海底ケーブル
↓
陸揚局
↓
国内光ネットワーク
↓
データセンター
という流れが、一つのデジタルインフラとしてつながっていることが分かります。
以前まとめたデータセンター関連銘柄を見るときにも、建物の中にあるGPUや電力設備だけではなく、「大量のデータをどうやって外へ運ぶのか」という視点を加えると、産業全体がさらに分かりやすくなります。
また、海底ケーブル、国内光通信網、データセンターまで一体で持つことは、NTTの強みを見るうえでも重要なポイントだと思います。
海底ケーブルは経済安全保障の問題でもある
しかし、国際情勢や災害などによって必要な設備やサービスを確保できなくなった場合はどうなるでしょうか。
そこで海底ケーブルは、経済安全保障の問題にもなっています。
経済産業省は2026年の資料で、光海底ケーブルそのものが確保されていても、その機能を発揮するには敷設船による敷設作業が必要だとしています。
もし国内の光海底ケーブル敷設船が不足し、敷設を海外へ過度に依存している状態でそのサービスが途絶すれば、海底ケーブルの通信機能そのものが十分に発揮できなくなる可能性があると指摘しています。
つまり重要なのは、
ケーブルを作れるか。
敷けるか。
切れたときに直せるか。
複数の通信ルートを持てるか。
陸揚局を国内で運営できるか。
という通信インフラ全体です。
経済産業省は、海底ケーブルについて大容量で信頼できる製品の開発や生産設備の強化だけでなく、敷設船の適切な確保まで含めて、事業全体の自律性と不可欠性を維持する必要があるとしています。
ここは海底ケーブル関連銘柄を見るときにも注意したいところです。
「国策だから株価が上がる」と単純に考えるのではなく、なぜ国が支援する必要があるのかを理解する。
その背景に、日本の企業活動やAI、クラウド、金融、通信などを止めないためのインフラ戦略があると分かれば、政策と企業の事業がどうつながるのかも考えやすくなります。
海底ケーブルを調べていて、もう少し「なぜ国同士がここまで海底ケーブルを重要視しているのか」まで知りたい人には、『海底の覇権争奪 知られざる海底ケーブルの地政学』も面白いと思います。
海底ケーブルの歴史だけでなく、米中対立や通信インフラをめぐる国家間の競争まで扱っているので、海底ケーブルを「通信設備」ではなく「世界を支える戦略インフラ」として見る視点が深まります。
日本にとって海底ケーブルは「世界への玄関口」
日本と海外をつなぐだけでなく、アジアと北米の間でデータを中継し、海底ケーブルとデータセンターを組み合わせてAI時代のデータハブをつくる。さらに陸揚げ地点や通信ルートを分散して災害に強くし、製造・敷設・修理まで国内で維持する。こうして見ると、海底ケーブルは日本にとって「世界への玄関口」のような存在です。
2026年に発表されたI-AM Cableでは、千葉・三重だけでなく福岡にも陸揚げ地点を設けることで、日本近海の自然災害に対する耐障害性を高めると同時に、日本のデータハブとしての役割や地域創生、国際通信競争力の強化につなげる構想が示されています。
海底ケーブルが増えることは、単に海外とのインターネット回線が太くなるという話ではありません。
その周囲に陸揚局、光通信網、データセンター、AIインフラなどが集まり、新しいデジタル産業の拠点が生まれる可能性があります。
そして、AI時代になると、この「世界への玄関口」を通るデータ量そのものがさらに増えていく可能性があります。
なぜGoogleやMeta、Microsoftなどの巨大テクノロジー企業まで海底ケーブルへ巨額の投資を始めているのか。
そこには、AIとデータセンターの成長が深く関係しています。

日本は島国だから海底ケーブルが必要なだけではないのですね。
アジアと米国をつなぎ、データセンターまで集まれば、日本そのものが世界のデータハブになる可能性もありそうです。
AI時代になぜ海底ケーブル需要が伸びるのか?
私も最初は、「AIが成長するなら、高性能な半導体と、それを大量に置くデータセンターが増える」というところまでしか考えていませんでした。
しかし、AIを実際に使うためには、計算する場所だけでは足りません。
世界中の利用者からデータを集め、データセンターへ送り、計算した結果を再び利用者へ届ける必要があります。さらに、一つのデータセンターだけですべての処理が完結するわけではなく、離れた地域にある複数のデータセンター同士でも大量のデータがやり取りされます。
つまりAI時代に必要になるのは、「計算する力」だけではなく、「大量のデータを世界中へ運ぶ力」です。
実際、Googleは2026年6月時点で、地上・海底を合わせた約1,000万kmのファイバー網によって30以上のデータセンターと40以上のCloudリージョンを接続していると説明しています。AIインフラの土台そのものに、世界規模の光通信ネットワークが組み込まれているのです。
そしてGoogleだけでなく、MetaやMicrosoftなどの巨大テクノロジー企業も海底ケーブルへ直接投資しています。
海底ケーブルは、通信会社だけを見るテーマではなくなってきています。
AI、クラウド、データセンター、光通信、海底ケーブル。
これらは別々の産業に見えて、実際には一つの巨大なデジタルインフラとしてつながっているのです。
AIが増えるほど、世界を行き来するデータも増える
しかし実際には、私たちが入力した情報が通信ネットワークを通ってAIを処理するデータセンターへ届き、そこで計算され、その結果が再び通信ネットワークを通って戻ってきます。
しかもAIでは、利用者とのやり取りだけが通信を生むわけではありません。
AIモデルを学習させるための大量のデータ、クラウドへ保存されている情報、企業システムとの連携、複数のデータセンター間でのデータ移動など、さまざまな通信が発生します。
Microsoftも、海底ケーブルは大陸間で高速・低遅延・大容量の通信を実現し、世界中のデータセンターやクラウドサービスを支える基盤だと説明しています。
道路に例えるなら、AIデータセンターは巨大な工場です。
工場の生産能力をどれだけ高めても、原材料を運び込む道路と、完成した商品を運び出す道路が細ければ、工場全体の力を十分に発揮できません。
AIでも同じです。
GPUの計算性能が上がり、巨大なデータセンターが増えていけば、その前後でデータを運ぶ通信インフラも強くする必要があります。
だからAI関連銘柄を考えるときに、半導体だけを見るのではなく、その周囲にある光ファイバーやデータセンター、そして世界を結ぶ海底ケーブルまで見る意味があるのだと思います。
データセンター同士も海底ケーブルでつながっている
しかし世界規模のクラウドサービスでは、データセンターは一カ所だけではありません。
日本、米国、アジア、ヨーロッパなど、世界中にあるデータセンターやクラウド拠点が巨大な通信ネットワークでつながっています。
Googleは2026年6月の投資家向け資料で、AIインフラの基盤として約1,000万kmの地上・海底ファイバーを保有し、30以上のデータセンターと40以上のCloudリージョンを接続していると説明しています。
Microsoftも、自社のクラウドやAIインフラを60万km以上の光ファイバー・海底ケーブル網で接続しているとしています。Azureのデータセンター間やMicrosoft 365などのサービスで発生する通信を、できる限り自社のグローバルネットワーク内で運ぶ仕組みです。
ここまで知ると、データセンターを見る視点も少し変わります。
一つのデータセンターがどれだけ大きいか。
GPUを何台置けるか。
電力をどれだけ確保できるか。
もちろんこれらも重要です。
しかし同時に、
「そのデータセンターは世界とどうつながっているのか」
を見る必要があります。
海底ケーブルが陸揚げされ、その近くにデータセンターが集まり、国内外の光ネットワークへ接続される。
AI時代には、この「計算拠点」と「通信拠点」が近づいていく可能性があります。
Googleは日本の海底ケーブルへ1,500億円を投資
Googleは2024年、日本のデジタル接続強化へ10億ドル、日本円で約1,500億円を投資すると発表しました。
この投資には、日本とグアム・北マリアナ諸島を結ぶ「Proa」と、日本とハワイを結ぶ「Taihei」という新しい海底ケーブルが含まれています。さらに複数のケーブルを相互につなぎ、日本と米国の間に複数の通信経路を作ることで、通信容量だけでなく信頼性や耐障害性も高める構想です。
そしてここは、海底ケーブル関連銘柄を見るうえでも非常に面白いところです。
ProaとTaiheiの建設にはNECが関わっています。
つまり、
GoogleがAI・クラウドサービスを世界へ届けるために通信インフラへ投資する。
↓
新しい海底ケーブルが必要になる。
↓
その海底ケーブルシステムをNECなどが作る。
というつながりが生まれます。
Googleは2023年には千葉県印西市に日本初のデータセンターを開設し、日本とカナダを結ぶ海底ケーブルTopazも運用しています。その後さらに日本への海底ケーブル投資を拡大していることを考えると、データセンターと国際通信網を一体で強化していることが見えてきます。
「AIが成長するからNEC」という単純な話ではありません。
GoogleなどがAI・クラウドの巨大な計算基盤を世界中へ広げる。
その拠点同士をつなぐ通信需要が増える。
そこで海底ケーブルの建設需要が生まれる。
こうして事業の流れまで見ていくと、海底ケーブル関連銘柄がAI投資とつながっている理由が分かりやすくなります。
Metaは地球一周を超える巨大海底ケーブルを計画
Metaは2025年2月、Project Waterworthという新たな海底ケーブル計画を発表しました。
完成すれば5大陸へ接続し、総延長は5万kmを超える計画です。地球一周の距離を上回る、世界最長級の海底ケーブルシステムになります。Metaはこのプロジェクトを、AIやその他の新しい技術を世界へ届けるための次世代インフラと位置づけています。
さらに2026年には、インドで建設される大規模AIデータセンターとProject Waterworthを組み合わせ、AIインフラと世界規模の通信ネットワークを一体で整備する計画も発表しています。
これはかなり象徴的だと思います。
以前の海底ケーブルは、通信会社が中心となって建設するイメージが強いインフラでした。
しかし現在では、世界中に巨大なデータセンターを持ち、AIやクラウドサービスを提供する企業自身が海底ケーブルへ投資するようになっています。
なぜなら、自分たちのサービスを高速・安定して届けるためには、
サーバーだけ持っていても足りないからです。
計算する設備と、その計算結果を世界へ運ぶ通信網。
両方を確保することが、巨大IT企業にとっての競争力になり始めています。
AI成長=海底ケーブル企業すべてが伸びる、ではない
AIが成長する。
データセンターが増える。
世界を行き来するデータ量が増える。
海底ケーブルへの投資が増える。
ここまでは非常に分かりやすい流れです。
しかし、
「だから海底ケーブル関連企業なら、どこでも成長する」
というわけではありません。
同じ海底ケーブル関連銘柄でも、システム全体を作る会社、光ファイバーを供給する会社、敷設・修理を担う会社、陸揚局を運営する会社、通信サービスとして収益化する会社では、利益が生まれる場所が違います。
さらに、海底ケーブル事業が会社全体の売上や利益にどれだけ影響するのかも企業によって大きく違います。
AIというテーマが大きくても、その企業の海底ケーブル関連事業が小さければ、会社全体の利益への影響は限定的かもしれません。
逆に市場規模はそれほど大きく見えなくても、世界で限られた企業しか持っていない技術や敷設実績があれば、高い競争力につながる可能性があります。
だから海底ケーブル関連銘柄を見るときには、
「AI関連だから」
ではなく、
「AI投資によって、その会社のどの事業に、どれだけ需要が増えるのか」
まで考えたいところです。
AI時代は「計算する場所」と「データを運ぶ道」がセットになる
しかし世界中でAIを使えるようにするためには、その巨大な計算能力を世界中の利用者へつなぐ通信網が必要です。
AIの利用が広がれば、それを処理するデータセンターも増えていきます。さらにデータセンター同士でやり取りする情報量も増えるため、国境を越えて運ばれるデータも膨らんでいきます。その結果、より大容量で低遅延の海底ケーブルが必要になる、という流れです。
そしてGoogleやMeta、Microsoftなどの巨大テクノロジー企業が自ら海底ケーブルへ投資していることを考えると、通信インフラそのものがAI競争の一部になっていることも分かります。Googleは世界規模の地上・海底ファイバー網をAIインフラの基盤と位置づけ、Metaも5万kmを超えるProject WaterworthをAI時代の接続基盤として進めています。MicrosoftもクラウドとAIの成長を支えるため、地上・海底の通信経路への大規模な投資が不可欠だとしています。
海底ケーブル関連銘柄を考えるうえでも、
「AIが伸びるから海底ケーブルも伸びる」
で終わらせず、
その投資を誰が受注するのか。
誰が光ファイバーを供給するのか。
誰が敷設するのか。
誰が運用するのか。
そして、その事業が企業全体の利益にどれだけ貢献するのか。
まで見ていく必要があります。
ここまで仕組みと需要の背景が分かれば、いよいよ「海底ケーブル関連銘柄」という検索キーワードの中心部分が見えてきます。
実際に日本企業の中では、どの会社が海底ケーブルのどこを担っているのでしょうか。

AIというとGPUばかり見ていましたが、計算したデータを世界へ運ぶ道も必要なのですね。
巨大IT企業が自分たちで海底ケーブルへ投資する理由が、ようやくつながってきました。
海底ケーブル関連銘柄|日本企業はどこで利益を得ている?
ただし、海底ケーブル関連銘柄を調べるときに注意したいのは、すべての企業が同じ仕事をしているわけではないことです。海底ケーブルシステム全体を設計・製造する企業もあれば、その中でデータを運ぶ光ファイバーを供給する企業、専用船を使ってケーブルを海底へ敷いたり修理したりする企業、陸揚局や国際通信網を運営する企業、さらに海底ケーブルそのものへ投資し、完成後の通信回線を販売する企業もあります。
つまり「海底ケーブル関連銘柄」という一つの言葉の中に、いくつもの異なるビジネスが存在しています。投資先を考えるときには企業名を覚えるだけではなく、「その会社は海底ケーブルのどこで利益を得るのか」を理解した方が、海底ケーブル需要の拡大が実際の業績へどのくらい影響するのかを考えやすくなります。
日本企業の中では、NEC、住友電工、KDDI、NTT、ソフトバンク、住友商事などが、それぞれ違う立場から海底ケーブルに関わっています。
NEC|海底ケーブルシステム全体をつくる
NECの特徴は、単に海底ケーブルという製品を作っているだけではないことです。海底の調査やルート設計から、光海底ケーブル、中継器、陸上側の通信設備、海底への敷設、試験まで、一つの海底ケーブルシステムとしてまとめて提供できます。NECは1964年以来、累計45万kmを超える海底ケーブルを敷設しており、これは地球約11周分に相当します。特に日本を含むアジア・太平洋地域で豊富な実績を積み重ねてきました。
そしてAIやデータセンターの成長は、NECの海底ケーブル事業ともつながり始めています。2026年7月には、Microsoft、Singtel、Lightstorm、Tata Communicationsで構成される企業コンソーシアムから、インド、マレーシア、シンガポールを結ぶ約3,600kmの「I-2SEA」を受注しました。2029年の運用開始が予定されており、NEC自身も生成AIやクラウドサービス、データセンター整備によって増える大容量通信需要に応えるプロジェクトと位置づけています。
ここがNECを見るうえで面白いところです。世界中でAIデータセンターが増えれば、その計算拠点同士をつなぐ通信網も必要になります。そのときNECは、部品を一つ供給するだけではなく、海底通信システムそのものを完成させる側にいます。海底調査から設計、製造、敷設までを一体で担える長年の経験は、新しい企業が簡単にまねできるものではありません。
一方で、NECにはAI、ITサービス、防衛、宇宙、生体認証など多くの事業があります。海底ケーブル市場が成長したからといって、それだけでNEC全体の業績が決まるわけではありません。投資先として見るなら、海洋システム事業の受注拡大が会社全体の利益成長へどこまでつながっていくのかを確認したいところです。
海底ケーブルだけでなく、AIや防衛、サイバーセキュリティまで含めてNECという会社を理解したい場合は、NECの強みで詳しく整理しています。
住友電工|世界を渡る「光」を支える
海底ケーブルの中心には光ファイバーがあります。しかも太平洋を横断するような超長距離通信では、光が何千kmも進むため、途中で失われる光をできるだけ少なくすることが重要になります。
住友電工は、超長距離海底通信向けの極低損失光ファイバー「Z Fiber」シリーズを展開しています。海底通信用光ファイバーでは35年以上の実績を持ち、2023年には従来と同じ外径の中へ2つのコアを入れ、それぞれで独立して光信号を送れる極低損失マルチコア光ファイバーの量産化に世界で初めて成功しました。一本の光ファイバーで運べる情報量をさらに増やしていくための技術です。
住友電工の面白さは、AI時代の通信需要を海底だけで取り込む会社ではないところにもあります。光ファイバーは海底ケーブルだけではなく、データセンター内部やデータセンター同士を結ぶ通信にも必要です。つまりAIが普及してデータセンターが増え、その間を行き来するデータが増えていくと、「AI → データセンター → 光通信 → 海底ケーブル」というデータの流れの複数の場所で住友電工の技術が必要になる可能性があります。
ただし住友電工も、自動車、環境エネルギー、エレクトロニクス、産業素材など非常に多くの事業を持つ会社です。海底ケーブル需要が伸びても、それだけで会社全体の利益が大きく動くとは限りません。情報通信事業の売上や利益がどれくらい伸び、その中でAI・データセンター・海底ケーブル向け需要がどの程度貢献しているのかを見ることが重要になります。
光通信だけでなく、自動車や電力インフラ、AI・データセンターまで住友電工の事業がどのようにつながっているのかは、住友電工の強みで詳しく整理しています。
KDDI|海底ケーブルを「持つ・敷く・守る」
KDDIは国際通信事業者として海底ケーブルへ参加し、陸揚局を持ち、その通信容量を実際の通信サービスへつなげています。2025年に運用を開始したSJC2では、アジア地域10拠点を約10,500kmの海底ケーブルで結び、毎秒126Tbps以上のデータ伝送が可能になりました。日本側では千葉県南房総市と三重県志摩市の2カ所にKDDIが陸揚げ拠点を提供しています。
さらにKDDIの特徴は、海底ケーブルを利用するだけではなく、海へ敷き、切れたときに修理できる体制まで持っていることです。KDDIのケーブル船には、水深2,500mまで潜航できる水中ロボットが搭載され、障害箇所の探査、ケーブルの掘り出し、切断、船上への引き上げ支援、修理後の再埋設まで対応できます。
つまりKDDIは、海底ケーブルの「利用者」であると同時に、陸揚局や国際通信網を運営し、敷設・保守まで担う企業でもあります。海底ケーブルが増えれば通信容量を販売する機会が増えるだけでなく、新しいケーブルの建設や保守という仕事も必要になります。
海底ケーブル関連銘柄としてKDDIを見る場合は、「ケーブルを持っている会社」という一面だけを見るのではなく、国際通信、陸揚局、データセンター、AI時代の通信基盤までを一つのネットワークとして見る方が実態に近いと思います。
NTT|敷設・保守からデータセンターまでつなげる
NTTグループには、海底通信ケーブルを専門に扱うNTTワールドエンジニアリングマリンがあります。同社は海底ケーブルのルート設計、敷設、埋設、海洋調査、メンテナンスまでを手掛けており、大型敷設船「SUBARU」には正確な位置を保ちながらケーブルを敷くための設備やROV、埋設機なども搭載されています。
そしてNTTを見るうえで面白いのは、海底ケーブルを海へ敷いたところで事業が終わらないことです。
NTTは2026年4月、福岡市に2029年竣工予定のAI対応型データセンターを整備する計画を示しました。このデータセンターは海底ケーブル陸揚局と接続し、アジアとのゲートウェイ拠点として活用する構想になっています。つまり海外から海底ケーブルで運んできたデータを陸揚局へ入れ、国内光ネットワークへつなぎ、その先のAIデータセンターまで一体で整備していく考え方です。
海底ケーブル、国内通信網、データセンター、AI基盤。これまで別々に見えていたインフラをグループ内で広く持てることは、NTTの特徴の一つだと思います。
一方でNTTも非常に巨大な企業グループです。そのため海底ケーブルだけで業績を評価するよりも、国際通信やデータセンター、AI、IOWNまで含めたデジタルインフラ全体がどのように成長していくのかを見る方が自然です。通信会社のイメージだけでは見えにくいNTTの事業全体は、NTTの強みで詳しく整理しています。
ソフトバンク|海底ケーブルの入口を全国へ広げる
2025年には、日本とシンガポールを結ぶ新しい国際海底ケーブル「Candle」の建設に合意しました。Candleは日本、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポールを結ぶ約8,000kmの海底ケーブルで、2028年の運用開始を予定しています。日本側では千葉県南房総市にある丸山国際中継所を陸揚局として利用し、既存のJUPITERやADC、建設中のE2Aなどと組み合わせながら、国際通信ルートの多様化を進めています。
さらに注目したいのが、海底ケーブルの「入口」である陸揚げ拠点の分散です。
これまで日本の国際海底ケーブルは、千葉県や三重県など限られた地域へ集中する傾向がありました。しかし同じ地域に複数のケーブルが集まれば、大規模災害などによって同時に影響を受ける可能性があります。そこでソフトバンクは、既存の千葉県南房総市に加えて北海道苫小牧市と福岡県糸島市へ新たな陸揚げ拠点を整備し、国際通信網を地理的に分散させようとしています。苫小牧では、ソフトバンクが建設を進めるAIデータセンターとの連携も想定されています。
ここでも、海底ケーブルとAIデータセンターが別々の話ではないことが分かります。海外との通信ルートを増やし、その入口の近くにデータセンターを置くことで、大量のデータを低遅延でやり取りできるデジタルインフラを作ろうとしているのです。
ソフトバンクを海底ケーブル関連銘柄として見る場合は、ケーブルを製造する企業ではなく、海底ケーブルや陸揚局を自社の通信・AIインフラへ組み込み、その通信能力を事業へ活用する側の企業として見る方が分かりやすいと思います。
住友商事|海底ケーブルそのものを「事業」として運営する
住友商事は海底ケーブルメーカーでも通信会社でもありません。総合商社として、海底ケーブルそのものへ投資し、長期間運営する側へ参入しています。
2026年1月、NTTデータグループ系のNTTリミテッド・ジャパン、住友商事、JA三井リースは、日本とマレーシア、シンガポールなどを結ぶ「I-AM Cable」を建設・運営する新会社の設立を発表しました。I-AM Cableは総延長約8,100km、初期設計容量約320Tbps、総事業費1,500億円規模という大型プロジェクトで、2029年度初頭の運用開始を予定しています。新会社は海底ケーブルの計画だけでなく、完成後の通信回線販売まで一貫して手掛ける計画です。
ここまで見てきたNECや住友電工とは、利益が生まれる場所が大きく違います。NECは海底ケーブルシステムを供給することで売上を得ます。住友電工は光ファイバーなどを供給します。一方の住友商事は、海底ケーブル事業そのものへ出資し、完成後に世界の大手テック企業や通信会社へ通信回線を提供することで、長期的な収益を得ようとしています。
海底ケーブルは建設に巨額の資金が必要ですが、一度完成すれば長期間にわたって利用されるインフラでもあります。そう考えると、総合商社が長期的なインフラ事業として海底ケーブルへ参入する理由も見えてきます。
ただし住友商事ほど事業規模の大きな総合商社では、一つの海底ケーブルプロジェクトだけで会社全体の利益が大きく変わるとは限りません。海底ケーブル単体ではなく、データセンターやデジタルインフラを含めて投資領域が今後どこまで広がるのかを見ていく必要があります。
海底ケーブル関連銘柄は「どこで稼ぐか」で見る
NECは海底ケーブルシステムそのものをつくり、住友電工はその中で大量のデータを運ぶ光ファイバーを支えています。KDDIは国際通信網を運営しながら、敷設や修理まで対応できる体制を持っています。NTTは海底ケーブルの敷設・保守から国内光ネットワーク、AIデータセンターまで広く関わり、ソフトバンクは陸揚げ拠点を全国へ分散させながら自社のAI・通信インフラと結びつけています。そして住友商事は、海底ケーブルそのものへ投資し、通信回線を長期間販売するインフラ事業へ参入しています。
だから「海底ケーブル需要が増える」というニュースを見たときに、すべての関連銘柄を同じように考えるのは少し危険です。新しいケーブルが増えたとき、その企業ではシステムの受注が増えるのか、光ファイバーの販売が増えるのか、敷設・修理の仕事が増えるのか、それとも通信容量を販売して長期的な収益を得るのか。それぞれ業績へ反映される仕組みが違います。
さらに投資先として考えるなら、「海底ケーブルに関わっているか」だけでは足りません。その事業が会社全体の売上や利益の中でどのくらい大きいのか、受注は実際に増えているのか、利益率は高いのか、他社には簡単にまねできない技術や実績があるのかまで確認したいところです。
海底ケーブル関連銘柄を見つけることがゴールではありません。
その企業が海底ケーブルのどこで利益を得ていて、AI・データセンター投資の拡大によって、その利益が今後どれだけ増える可能性があるのか。そこまで考えて初めて、テーマではなく企業そのものを見た投資判断に近づけるのだと思います。

同じ海底ケーブル関連銘柄でも、システムを作る会社、光を運ぶ会社、敷いて守る会社では稼ぎ方が違うのですね。
「関連している」だけでなく、どこで利益が生まれるのかを見ることが大切そうです。
海底ケーブル関連銘柄へ投資するときのチェックポイント
では、この中から実際に投資先を考えるときは何を見ればいいのでしょうか。
私がテーマ株を調べるときに気をつけたいと思ったのが、「将来伸びそうな産業」と「その企業の利益が伸びること」は同じではないということです。海底ケーブル市場が拡大しても、その事業が会社全体のほんの一部であれば、業績への影響は小さいかもしれません。反対に、世界でも限られた企業しか提供できない技術を持ち、大型案件の受注が積み上がっているのであれば、会社全体の成長ドライバーになる可能性があります。
だから海底ケーブル関連銘柄を見るときには、「海底ケーブルに関係しているか」からもう一歩踏み込み、その需要がどこから売上になり、どのくらい利益になり、今後も続くのかまで確認したいところです。
まず見るのは「海底ケーブル事業が会社の中でどれくらい大きいか」
例えばNECは海底ケーブルシステム全体を手掛けていますが、会社全体ではAI、ITサービス、防衛、宇宙、生体認証など多くの事業を持っています。住友電工も、極低損失光ファイバーという重要な技術を持つ一方で、自動車、電力、エレクトロニクスなど幅広い事業があります。NTTやKDDIになると企業規模はさらに大きく、海底ケーブルは巨大な通信インフラ事業の一部分です。
この違いはかなり重要です。
仮に海底ケーブル関連事業の売上が50%増えたとしても、その事業が会社全体の1%しかなければ、全社業績への影響は限られます。一方、事業規模そのものはまだ小さくても、今後会社が重点投資領域として位置づけ、売上構成が急速に高まっているのであれば、将来の成長ドライバーになる可能性があります。
ただし企業の開示資料では「海底ケーブル事業」だけを切り出した売上や利益が公表されていないケースもあります。その場合は、海底ケーブルを含むセグメントの売上・利益の推移、会社が成長事業としてどの程度強調しているか、大型案件が増えているかなどを組み合わせて考える必要があります。
例えばNECは、海底ケーブルだけでなくAIや防衛など複数の成長分野を持っています。だからNECへ投資するときには、「海底ケーブルが伸びるか」だけではなく、その成長がNEC全体の利益構造をどこまで変えられるのかを見る方が重要だと思います。
売上より先に「受注」と「投資計画」を見る
海洋調査を行い、ルートを設計し、ケーブルや中継器を製造し、敷設船を確保して、何千kmもの海底へ敷いていく巨大プロジェクトです。そのため案件によっては、計画が発表されてから運用開始まで数年かかります。
だから海底ケーブル企業を見るときには、現在の売上だけではなく、「これから売上になる仕事がどれくらい積み上がっているのか」を見ることが重要になります。
NECが2026年7月に受注したI-2SEAも、約3,600kmの海底ケーブルを建設し、運用開始は2029年の予定です。つまり2026年に受注した案件が、数年かけて製造や敷設を進めながら売上や利益へつながっていきます。海底ケーブル関連銘柄を見るときに、大型案件の新規受注や受注残が重要になる理由です。
一方、KDDIやNTT、ソフトバンクのような運営側の企業では、新しい海底ケーブルへの出資計画や陸揚局、データセンターへの設備投資が将来の通信能力につながります。KDDIは2026~2028年の中期経営戦略で、通信とAI基盤を統合する「デジタルベルト構想」を掲げ、海の領域では大容量・低遅延の光海底ケーブルの敷設・保守を進める方針を示しています。
製造側なら「受注が増えているか」、運営側なら「将来へ向けてどこへ投資しているか」。企業によって見るべき数字が違うことも覚えておきたいところです。
需要が増えても「利益率」が上がるとは限らない
海底ケーブルは大規模なインフラ事業です。何千kmものケーブルや中継器を製造し、専用船を確保して、世界中の海で工事を行います。プロジェクトの途中で原材料価格や人件費が上昇したり、工期が延びたりすれば、受注金額が大きくても利益が圧迫される可能性があります。
実際、NECも過去の決算説明で海底ケーブルを事業上のリスク要因として挙げています。大型プロジェクトは売上規模が大きい一方、コスト管理を誤れば利益にも大きな影響を与えるからです。
ここはテーマ投資で見落としやすいところだと思います。
「受注1,000億円」と聞けばものすごい成長に見えます。しかし投資家として知りたいのは、その1,000億円から最終的にどれだけ利益が残るのかです。
だから受注高だけではなく、海底ケーブルを含む事業セグメントの営業利益率が改善しているのか、売上が増えるにつれて利益も伸びているのか、過去に大型案件で損失が発生していないかまで確認したいところです。
競争優位は「他社でも同じことができるか」で考える
例えばNECの場合、海底ケーブルそのものだけではなく、海洋調査、ルート設計、中継器、敷設、試験までシステムとして提供し、1964年以来の長い実績を持っています。住友電工には、何千kmもの超長距離通信で光の損失を小さくする極低損失光ファイバーがあります。KDDIにはケーブル船や水中ロボットを使って敷設・修理まで行える体制があります。
こうした技術や設備は、お金さえあれば翌年からすぐに作れるものではありません。特に海底ケーブルは25年以上の利用を前提にするインフラなので、「過去に何本敷いたのか」「長期間トラブルなく動かせたのか」という実績そのものが信頼につながります。
AIやデータセンター需要によって市場が大きくなったとしても、競争が激しくなれば価格競争で利益が薄くなる可能性があります。だから市場の成長率だけでなく、その市場の中で高いシェアや価格決定力を維持できる企業なのかを考える必要があります。
住友電工の場合も、単に「光ファイバーを作れる」ことより、長年蓄積してきた素材技術や極低損失性能を、どこまで競争優位へ変えられるかが重要になります。
顧客と大型案件への「偏り」も確認する
これは魅力でもありますが、同時にリスクでもあります。
例えばある年度に巨大プロジェクトが集中すれば売上や利益が大きく伸びても、その案件が終わった翌年には反動で減収になる可能性があります。また特定の巨大テクノロジー企業や通信会社への依存度が高くなれば、その企業の設備投資方針が変わっただけで受注環境が変化する可能性もあります。
これからGoogle、Meta、Microsoftなどの巨大IT企業が海底ケーブル投資を拡大していくとしても、毎年同じ企業が同じ規模で投資し続けるとは限りません。
だから新しい受注が単発なのか、それとも複数の地域・複数の顧客から継続的に生まれているのかを見る必要があります。アジアだけでなく北米や欧州にも顧客が広がっているのか、数年先まで案件が続いているのかという点も、事業の安定性を考える材料になります。
大きなプロジェクトがあることより、「大きなプロジェクトが途切れず続く仕組み」を持っているか。この違いは長期投資ではかなり重要だと思います。
最後に見るのは「成長期待が株価へどこまで入っているか」
AIが成長する。データセンターが増える。海底ケーブル需要も増える。その流れが広く知られるようになれば、株式市場も当然その成長を期待します。
すると実際の利益がまだ増えていなくても、「これから伸びるはず」という期待だけで株価が大きく上昇することがあります。
ここで難しいのが、事業として良い会社と、今の株価で買って良い会社は必ずしも同じではないことです。
海底ケーブル市場が今後10年間伸びるとしても、その成長をすでに株価が十分織り込んでいれば、良い決算を出しても株価が上がらない可能性があります。反対に、海底ケーブル事業の成長がまだ市場から十分評価されていない企業で、実際の受注や利益が伸び始めれば、再評価される余地があるかもしれません。
だからPERやPBRなどの指標だけを見るのではなく、「市場はこの会社へどの程度の成長を期待しているのか」「その期待を上回る受注や利益成長ができそうか」という視点で考えたいところです。
テーマを見つけて終わりではなく、企業を理解して、その企業の利益を考え、最後に株価を見る。海底ケーブル関連銘柄でも、この順番を崩さないことが大切だと思います。
「関連銘柄」から「利益が伸びる企業」を探す
まず、その関連事業が会社全体の中でどれくらいの規模なのかを見る。次に、大型案件の受注や設備投資が実際に増えているのかを確認する。そして売上だけでなく利益率まで伸びているのか、他社が簡単にまねできない技術・設備・実績があるのか、特定の案件や顧客へ依存しすぎていないかまで見ていく必要があります。
最後に、その成長期待がすでに株価へどれだけ織り込まれているのかを考える。
ここまで見ると、「AIが伸びるから海底ケーブル関連銘柄を買う」という考え方からかなり変わってきます。
大切なのは、海底ケーブル市場が伸びることそのものではなく、その成長によってどの企業の利益が、どのくらい、どれだけ長く伸びるのかです。
海底ケーブルはAIやクラウドの成長、データセンターの増加、各国の経済安全保障など、複数の追い風を受けています。一方で、巨額の設備投資や大型案件特有の採算リスク、地政学的な問題も抱えています。
では、この市場そのものは今後どこまで成長する可能性があり、その一方でどんなリスクがあるのでしょうか。

海底ケーブル関連というだけでは投資理由にならないのですね。
受注、利益率、競争力、事業の大きさまで見れば、本当に成長の恩恵を受ける会社なのか考えやすくなりそうです。
海底ケーブル市場は今後どうなる?成長性とリスク
では、この流れは一時的なブームなのでしょうか。それとも海底ケーブル市場は、これから10年単位で拡大していくのでしょうか。
現時点では、少なくとも世界ではかなり大きな投資が計画されています。海底通信網を調査するTeleGeographyによると、2026~2029年に運用開始が計画されている新しい海底ケーブルの建設費は合計160億ドルを超えています。さらに2026~2035年では、新設海底ケーブルへの投資額は年間平均約50億ドル、新しく敷設されるケーブルは合計101万kmを超えると予測されています。
ただし、「市場が伸びる=関連銘柄なら安心」という意味ではありません。海底ケーブルは巨額の資金と長い建設期間を必要とし、計画されたプロジェクトがすべて完成するとは限りません。さらに地震や船の錨といった物理的な障害だけでなく、国際情勢、敷設船不足、建設コスト、許認可など、さまざまなリスクがあります。
だからここでは、海底ケーブル市場にどんな追い風があるのかだけでなく、その成長を止める可能性があるものまで一緒に見ていきたいと思います。
今後10年で100万kmを超える新しいケーブルが計画されている
TeleGeographyの2026年時点の予測では、2026~2035年の10年間に新しく敷設される海底ケーブルは合計101万kmを超える見通しです。単純に距離だけを見れば地球約25周分に相当します。さらに同期間の新設ケーブルへの投資額は年間平均約50億ドルと予測されており、大西洋横断、太平洋横断、アジア域内では平均して毎年1本を超える新しいケーブルが追加される見込みです。
ここで重要なのは、海底ケーブル需要がAIだけで生まれているわけではないことです。クラウドサービスの普及、動画やオンラインサービスの増加、データセンター間通信、通信ルートの冗長化、古くなったケーブルの更新など、複数の要因が重なっています。
Googleも2026年時点で、30以上のデータセンターと40以上のCloudリージョンを約1,000万kmの地上・海底ファイバー網で結んでいます。さらに2026年8月にも米州で3本の新しい海底ケーブルを発表しており、巨大IT企業による通信インフラへの投資は現在も続いています。
AIがどこまで成長するかを正確に予測することはできません。しかし世界中でデータセンターが増え、計算拠点同士を結ぶデータ量が増える限り、その間をつなぐ大容量通信網が必要になるという構造は変わりにくそうです。
特にアジア・太平洋では大きな投資が続く
TeleGeographyによると、2026~2029年に運用開始が予定されている新しい海底ケーブルでは、アジア地域だけで37億ドルを超える投資が計画されています。さらに太平洋横断ルートでも30億ドルを超える投資が見込まれており、GoogleやMetaなどが主導する大型プロジェクトが複数進んでいます。
これは日本企業にとって無関係ではありません。日本はアジアと北米の間に位置し、これまで見てきたように、NECはアジア・太平洋地域で海底ケーブルシステムを供給し、KDDIやNTT、ソフトバンクも陸揚局や国際通信網を整備しています。
日本政府も海底ケーブルを単なる民間の通信設備とは考えていません。経済産業省は2026年の通商戦略でも、「海底ケーブル等のデジタルインフラの連結性確保」を経済安全保障上の取り組みに位置づけています。また、大容量で信頼できる海底ケーブルの開発・生産設備だけでなく、敷設船まで含めた事業全体の自律性を維持する必要があるとしています。
つまり日本企業にとっては、世界のデータ量が増えるという民間需要だけでなく、アジア・太平洋地域の通信網を強くしたいという政策面からも追い風が生まれる可能性があります。
需要増加だけでなく「止まらない通信網」を作る投資も増える
世界の海底ケーブルでは毎年障害が発生しています。ITUによると、2025年には世界で170件を超える海底ケーブル修理が報告されました。また海底ケーブル障害の80%以上は、漁業や船舶の錨など人間の活動が原因とされています。
だから通信容量が足りていたとしても、一つのルートが切れたときに別のルートへ通信を逃がせるように、ケーブルや陸揚げ地点を分散する意味があります。
ITUと国際ケーブル保護委員会は、海底ケーブルの強靱化に向けて、迅速な敷設・修理、リスクの把握と軽減、通信ルートと陸揚げ地点の地理的分散を重要な取り組みとして挙げています。2026年7月にまとめられた最終報告でも、物理的なリスクや修理期間の長期化、一部地域へのインフラ集中などが課題として示されました。
つまり今後の海底ケーブル市場には、「より多くのデータを運びたい」という成長投資と、「一本切れても止まらないようにしたい」という防衛的な投資の両方があります。
この二つの需要が重なることは、海底ケーブル市場を長期で考えるうえで大きなポイントだと思います。
一方で、計画された海底ケーブルがすべて完成するわけではない
発表された海底ケーブル計画が、そのまますべて完成するとは限りません。
TeleGeographyも、2026~2029年に160億ドルを超える新設ケーブルが計画されている一方、発表済みのケーブルがすべて建設されるわけではないと注意しています。海底ケーブルは数千km規模の巨大プロジェクトで、建設には多額の資金が必要です。資金調達、利用企業の確保、許認可、敷設船、資材価格などの条件がそろわなければ、計画が延期されたり見直されたりする可能性があります。
さらにAIインフラそのものへの投資額が急速に巨大化しています。Alphabetは2026年の設備投資額を1,800~1,900億ドルと見込んでおり、その大部分を技術インフラへ振り向けると説明しています。MetaもAIデータセンターへ数十億~百億ドル規模の投資を進めています。
これだけ巨額の投資が続けば、「本当に投資額に見合う利益を生み出せるのか」という議論が強くなる可能性もあります。もし巨大IT企業がデータセンター建設やAI設備投資のペースを落とせば、それに連動する通信インフラ投資にも影響が出るかもしれません。
だから海底ケーブル市場の成長予測は、確定した未来ではなく「現在の投資計画が実行された場合の可能性」として見る必要があります。
地政学・災害・修理能力は避けられないリスク
地震や海底地滑り、船舶の錨、漁業などによってケーブルが物理的に損傷するだけでなく、国際情勢が不安定になれば修理そのものが難しくなる場合があります。
2026年4月にはロイターが、中東情勢の緊張によってホルムズ海峡周辺を通る海底ケーブルのリスクが高まっていると報じています。紛争地域ではケーブルが損傷する危険だけでなく、修理船が現場へ入るための許可や安全確保そのものが難しくなる可能性があります。
ITUも2026年の報告で、物理的な損傷だけでなく、修理にかかる時間の長期化、特定地域へのケーブル集中、少数のケーブルへ依存している国の存在を世界的な課題として挙げています。
一方で、こうしたリスクは海底ケーブル関連企業にとって必ずしも悪材料だけではありません。通信ルートを増やす、陸揚げ地点を分散する、修理船を確保する、障害時に迅速に復旧できる体制を整えるという新しい投資需要にもつながるからです。
海底ケーブルという産業は、「壊れるリスクがあるから需要がなくなる」のではなく、「壊れる可能性があるからこそ、さらに強い通信網を作る需要が生まれる」という少し特殊なインフラでもあります。
成長市場だからこそ「期待」と「現実」の両方を見る
TeleGeographyの予測では、2026~2035年に100万kmを超える新しいケーブルが敷設され、年間平均約50億ドルの投資が続く可能性があります。特にアジア・太平洋では大規模な投資が計画され、日本政府も海底ケーブルや敷設船を経済安全保障上の重要なインフラとして位置づけています。
しかも需要の背景にはAIやクラウドの成長だけでなく、古い通信網の更新、通信ルートの分散、災害への備え、経済安全保障まであります。単一のテーマだけに依存していない点は、長期的な需要を考えるうえで大きな特徴だと思います。
一方で、巨額の建設費が必要で、計画されたプロジェクトが延期される可能性もあります。ケーブルが完成した後も地震や船の錨などによる損傷は発生し、ITUによれば2025年だけでも170件を超える修理が行われました。さらに地政学リスクや敷設・修理船不足まで考えれば、決して簡単な事業ではありません。
だから「海底ケーブル市場は伸びる」という結論だけで終わらせるのではなく、その成長の中で誰が受注を取り、誰が利益を残し、誰が簡単にはまねできない技術や設備を持っているのかを見る必要があります。
市場の成長と企業の利益を分けて考える。
ここまでできれば、「海底ケーブル関連銘柄」というテーマを追いかけるだけではなく、自分で投資先を考えるための材料がかなりそろってきたと思います。
あとは、海底ケーブルという巨大な通信インフラについて、ここまで見てきた内容を最後に一つにつなげてみます。

AIや国策で需要が伸びても、すべての計画が完成するとは限らないのですね。
市場の大きさだけでなく、受注を利益へ変えられる企業なのかまで考えて投資先を選びたいです。
まとめ|海底ケーブル関連銘柄を見るなら「世界のデータが通る道」から考える
しかし調べていくと、その見え方はかなり変わりました。国際通信の約99%を支えているのは人工衛星ではなく光海底ケーブルであり、海外のWebサイトを見るときも、クラウドサービスを使うときも、生成AIへ質問するときも、その裏側では世界中に張り巡らされた通信網が大量のデータを運んでいます。経済産業省も、海底ケーブルを日本の経済活動に必要不可欠な通信インフラと位置づけています。
そして海底ケーブルは、一本の長い線を海へ沈めれば完成するものでもありません。光ファイバー、中継器、分岐装置、陸揚局が連携し、海洋調査、ルート設計、製造、敷設、保守、修理まで多くの技術と設備によって支えられています。
ここまで仕組みを理解すると、「海底ケーブル関連銘柄」という言葉も、最初とは違って見えてきます。
海底ケーブルは世界のデジタル社会を支える「見えない道路」
しかし物理的に考えれば、日本から海外へデータを届けるためには海を越えなければなりません。その海の底に、世界中の都市、企業、クラウド、データセンターをつなぐ巨大な通信網があります。
道路や鉄道が人やモノを運び、送電網が電気を運ぶのであれば、海底ケーブルは世界中の「データ」を運ぶインフラです。
しかもその重要性は、デジタル化が進むほど高まっていきます。
TeleGeographyは、2026~2035年に新しく敷設される海底ケーブルが100万kmを超え、新設投資は年間平均約50億ドルに達すると予測しています。もちろん計画されたすべてのケーブルが完成するとは限りませんが、世界の通信網をさらに拡大しようとする大きな流れが続いていることは分かります。
AI時代は「計算する力」と「運ぶ力」がセットになる
AI関連と聞くと、どうしてもGPUやデータセンターへ目が向きます。もちろん計算能力は重要ですが、世界中でAIを利用するためには、利用者からデータを集め、データセンターへ送り、計算結果を再び利用者へ届けなければなりません。さらに世界中に分散したデータセンター同士でも、大量のデータが行き来します。
つまりAIインフラには、「計算する場所」だけではなく「データを運ぶ道」も必要です。
だからGoogleやMetaなどの巨大テクノロジー企業自身が海底ケーブルへ投資し、世界規模の通信網を作ろうとしている理由も見えてきます。
AIが普及する。
データセンターが増える。
世界を移動するデータが増える。
その結果として、より大容量で低遅延の通信網が必要になる。
このつながりを知ると、海底ケーブルはAIとは離れた通信業界のテーマではなく、AI時代の基盤そのものの一つだと考えられるようになりました。
データセンターを見るときにも、電力や冷却、建設だけでなく、「大量のデータをどうやって世界へ運ぶのか」という視点を加えると、AIインフラ全体のつながりがさらに分かりやすくなります。
海底ケーブル関連銘柄は「名前」ではなく「利益の場所」で見る
NECは海洋調査から設計、製造、敷設まで海底ケーブルシステム全体をつくる側にいます。住友電工は、その中で大量のデータを運ぶ極低損失光ファイバーを支えています。KDDIやNTTは敷設・保守、陸揚局、国際通信ネットワークへ関わり、ソフトバンクは海底ケーブルと陸揚げ拠点を自社のAI・通信インフラへ組み込もうとしています。住友商事のように、海底ケーブルそのものへ出資し、完成後の通信回線を販売するインフラ事業として参入する企業もあります。
だから、「海底ケーブル市場が伸びるらしい」という理由だけで関連銘柄を買うのではなく、その企業がどこで利益を得ているのかまで見る必要があります。
さらに、その事業が会社全体の中でどれくらい大きいのか、受注や設備投資は増えているのか、売上だけでなく利益率も伸びているのか、他社が簡単にまねできない技術・設備・実績があるのか。そして、その成長期待がすでに株価へどこまで織り込まれているのか。
ここまで確認して初めて、「海底ケーブル関連銘柄」というテーマから一歩進んで、企業そのものを見た投資判断に近づけるのだと思います。
海底ケーブル関連銘柄を「自分で考えられる」ようになる
しかし仕組みから調べていくと、企業名を見る前に考えるべきことがたくさんあると分かりました。
海底ケーブルは光ファイバーだけでできているわけではなく、中継器、分岐装置、陸揚局まで含めた巨大な通信システムです。それを海へ敷くには調査船や敷設船が必要で、切れたときには修理船や水中ロボットを使って直します。さらに日本にとっては国際通信を支える重要なインフラであり、AIやデータセンターが増えれば世界を運ばれるデータ量も増えていきます。
だから海底ケーブル関連銘柄を見るときには、「どの企業が関連しているのか」だけではなく、その会社がこの巨大な通信網のどこを支え、そこからどのように利益を得ているのかを考えることが大切です。
そして市場が成長しても、その恩恵をすべての企業が同じように受けるわけではありません。海底ケーブルシステムの受注拡大によって利益が増える企業もあれば、光ファイバーの需要増加、敷設・修理の仕事、通信容量の販売、インフラ事業の長期運営によって収益を得る企業もあります。同じ「海底ケーブル関連銘柄」でも、市場の成長が利益へ届く道筋はそれぞれ違います。
だから投資先を考えるときには、その違いを理解したうえで、海底ケーブル関連事業が会社全体の中でどれくらい大きいのか、受注や利益は実際に伸びているのか、他社には簡単にまねできない競争力があるのか、そしてその成長期待が株価へどこまで織り込まれているのかまで確認したいところです。
この記事を読む前よりも、「海底ケーブル関連銘柄」という企業名の一覧を見るのではなく、なぜその会社が関連していて、海底ケーブル市場の成長がどのように利益へつながるのかを自分で考えられるようになっていれば、この長い記事を書いた意味があったと思います。

最初は海底ケーブル関連銘柄の名前を知りたかっただけですが、仕組みから見ていくと、企業ごとに利益が生まれる場所まで違うのですね。
これからは「関連している」だけでなく、その先の利益まで考えてみたいです。
参考資料・出典
本記事は、各企業・政府機関・国際機関などが公表している資料を中心に、海底ケーブルの仕組み、関連企業、プロジェクト、市場動向について確認したうえで作成しています。
海底ケーブルの建設計画や運用開始時期、投資額などは今後変更される可能性があります。より詳しく確認したい場合は、以下の公表資料もあわせてご覧ください。
主な公表資料・企業資料
- 経済産業省|海底ケーブル・敷設船などの製造基盤強化に関する資料
国際通信における光海底ケーブルの重要性や、敷設船まで含めた経済安全保障上の課題を確認しました。 - NEC|海底ケーブルシステム
海洋調査、ルート設計、海底ケーブル・中継器の製造、敷設など、NECの海底ケーブル事業全体を確認しました。 - NEC|I-2SEA海底ケーブルシステムの供給について
インド、マレーシア、シンガポールを結ぶI-2SEAの規模や、AI・クラウド・データセンター需要との関係を確認しました。 - KDDI|SJC2海底ケーブルの運用開始
SJC2の総延長、通信容量、日本国内の陸揚げ拠点などを確認しました。 - KDDI|海底ケーブルの修理・保守について
海底ケーブルが切断された場合の修理方法や、ケーブル船、水中ロボットなどによる復旧体制を確認しました。 - 住友電工|極低損失マルチコア光ファイバーの量産化
海底通信向け光ファイバーの技術や、極低損失マルチコア光ファイバーについて確認しました。 - NTT|福岡におけるAI対応型データセンター整備に関する発表
海底ケーブル陸揚局とAIデータセンターをつなぎ、アジアとのゲートウェイ拠点を整備する構想を確認しました。 - ソフトバンク|国際海底ケーブル「Candle」の建設について
日本と東南アジアを結ぶ新しい海底ケーブルや、国際通信ルートの多様化について確認しました。 - 住友商事|I-AM Cableの建設・運営事業について
日本と東南アジアを結ぶI-AM Cableの規模、事業費、通信回線を販売する事業モデルなどを確認しました。 - Google Cloud|日本のデジタル接続強化と海底ケーブル投資
日本とグアム・北マリアナ諸島を結ぶProa、日本とハワイを結ぶTaiheiなど、Googleによる海底ケーブル投資について確認しました。 - Meta|Project Waterworth
5大陸を結ぶ5万km超の海底ケーブル計画と、AI時代の通信インフラとしての位置づけを確認しました。
市場動向・国際機関・報道資料
- TeleGeography|今後10年間の海底ケーブル投資・敷設距離予測
2026~2035年の新設海底ケーブルの投資額や、100万kmを超える敷設予測などを参考にしました。 - ITU|海底ケーブルのレジリエンスに関する資料
海底ケーブル障害の原因、修理、通信ルートの冗長化など、世界の海底通信網を維持するための課題を確認しました。 - Reuters|海底ケーブルをめぐる地政学リスク
紛争地域における海底ケーブルの損傷リスクや、修理船の派遣・安全確保などの課題を参考にしました。
最終確認日:2026年8月25日
本記事に掲載している数値、海底ケーブルの建設・運用計画、企業の取り組みなどは、上記日時点で確認できる公表資料をもとにしています。今後、計画内容や運用開始時期、投資額などが変更される可能性があります。
※本記事は、海底ケーブルという産業や関連企業について学ぶことを目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断を行う際は、各企業の最新の決算資料や公表情報、市場環境などをご確認のうえ、ご自身の判断でお願いいたします。
\ 2026年の資産公開はこちら /
\ なぜ私は「企業を応援する投資」を続けているのか /












































































コメント