
半導体関連銘柄について調べてみると、半導体そのものを作る会社だけでなく、材料や製造装置、加工、検査まで、たくさんの企業が関わっていると知って驚きました。
AIやデータセンターが成長するほど、「計算する半導体」だけでなく、それを作るための技術も重要になります。
今回は、半導体とは何かという基本から、半導体ができるまでの流れ、東京エレクトロンやディスコ、アドバンテストなどの半導体関連銘柄がどこで利益を得ているのかまで、一緒に学んでいきましょう。
- 半導体とは何か・どんな種類があるか
- AIで半導体需要が増える理由
- 半導体ができるまでと日本企業の役割
- 半導体関連銘柄を産業別に整理
- 投資時の見方・リスク・今後
- 半導体とは?私たちの生活を支える小さな頭脳
- なぜAI時代に半導体がこれほど注目されているのか
- 半導体はどうやって作られる?一つのチップができるまで
- 半導体メーカーにはどんな会社がある?NVIDIA・TSMC・キオクシア・Rapidusの違い
- 日本の半導体産業は強い?弱い?|「作るための技術」に残る世界競争力
- 半導体関連銘柄|どんな日本企業が関わっている?
- 半導体関連銘柄へ投資するときに見るポイント|「AIで伸びる」だけでは足りない
- 半導体産業にはどんなリスクがある?|成長産業でも「ずっと右肩上がり」ではない
- 半導体市場は今後どうなる?|AIの先にも広がる半導体需要
- まとめ|半導体関連銘柄は「産業のどこにいる会社か」から考える
半導体とは?私たちの生活を支える小さな頭脳
「半導体不足で自動車の生産に影響」「AI向け半導体の需要が拡大」といったニュースは何度も見ていましたが、そもそも半導体が機械の中で何をしているのかまでは、きちんと説明できなかったと思います。
実際に調べてみると、まず知っておきたいのは、「半導体」という一つの商品があるわけではないという点です。計算をする半導体、データを記憶する半導体、電気を効率よく制御する半導体、光を受け取って画像に変える半導体など、それぞれ役割が違います。電子・IT分野の業界団体であるJEITA(電子情報技術産業協会)も、半導体をマイクロプロセッサ、メモリ、ロジック、アナログ、パワー素子、撮像デバイスなど、さまざまな種類に整理しています。
投資家として半導体関連銘柄を見るときにも、この違いはかなり重要です。NVIDIAとキオクシアでは作っている半導体が違いますし、東京エレクトロンのように半導体そのものではなく「半導体を作るための装置」で稼ぐ企業もあります。まずは難しい製造工程へ進む前に、半導体が何をしていて、私たちの生活のどこで使われているのかから整理していきます。
半導体を一言でいうと何?

「半導体とは何か」を調べると、最初に出てくるのが「導体と絶縁体の中間の性質を持つ物質」という説明です。電気を通しやすい金属のような「導体」と、電気をほとんど通さないゴムやガラスのような「絶縁体」の中間にあるため、「半導体」と呼ばれています。
ただ、投資を学ぶために最初から物理の仕組みを細かく覚える必要はないと思います。私自身も、まずは「電気の流れを細かくコントロールすることで、計算・記憶・制御などを行う電子部品」くらいに考えると、一気に分かりやすくなりました。
例えばコンピューターの中では、膨大な数の小さなスイッチを高速でオン・オフすることで計算をしています。この小さなスイッチの代表が「トランジスタ」です。現在の半導体チップには非常に多くのトランジスタが組み込まれ、それらを動かすことで、私たちがスマートフォンで写真を撮ったり、ゲームをしたり、生成AIへ質問したりできるようになっています。
つまり「半導体=小さな頭脳」と表現されることがありますが、実際には頭脳だけではありません。考える、覚える、電気を操る、見る・感じる。さまざまな役割を持つ半導体が組み合わされることで、現代の電子機器が動いています。
半導体は私たちの身近なところで何をしている?
しかし身の回りを見渡してみると、半導体が使われていない電子機器を探す方が難しいくらいです。スマートフォンでは計算処理、データ保存、カメラ撮影、通信、電源管理などに複数の半導体が使われています。パソコンやゲーム機にもCPUやGPU、メモリ、ストレージなどが入り、自動車ではエンジンやモーターの制御、安全装備、カメラ、各種センサーまで半導体が支えています。
さらに半導体の活躍する場所は、私たちが直接触れる製品だけではありません。工場の産業ロボット、通信設備、発電・電力設備、データセンターなど、社会の裏側で動くインフラにも大量の半導体が使われています。キオクシアも、フラッシュメモリがスマートフォンやPCだけでなく、生成AIを支えるAIサーバーやクラウドサービスのデータセンターにも使われていると説明しています。
ここで私が面白いと思ったのは、一つの成長テーマが、別の成長テーマとつながっていることです。生成AIが普及すれば計算する半導体が必要になり、その半導体を大量に動かすためにデータセンターが必要になります。そしてデータセンター同士で大量のデータをやり取りするためには通信網も必要になります。半導体を「一つの業界」として切り離して見るより、AIやデータセンター、通信インフラまでつながった産業として考えた方が、関連企業も見つけやすくなります。AIを動かす場所の側から産業構造を知りたい場合は、データセンター関連銘柄について整理した記事を見ると、このつながりがさらに分かりやすくなります。
半導体にはどんな種類がある?
半導体には非常に多くの種類がありますが、最初から細かく覚えると分かりにくくなるので、まず私は「計算する」「覚える」「電気を制御する」「見る・感じる」という4つの役割で整理することにしました。
もちろん実際の半導体産業はこれだけで完全に分類できるわけではありません。アナログ半導体や通信半導体、マイコンなどさまざまな製品があります。それでも、最初にこの4つを理解しておくと、ニュースで「AI半導体」「メモリ」「パワー半導体」「イメージセンサー」という言葉が出てきたときに、それぞれ何のための半導体なのかをイメージしやすくなります。JEITAも、半導体をメモリ、ロジック、パワー素子、撮像デバイスなど、役割ごとに整理しています。
ロジック半導体|計算する
身近な代表例がCPUで、パソコンやスマートフォンなどの「頭脳」としてさまざまな処理を行っています。そしてAI時代になって特に名前を聞くようになったのがGPUです。
CPUとGPUでは得意な計算の仕方が違い、生成AIでは大量の計算を並行して処理する能力が求められるため、GPUが重要な存在になっています。NVIDIAがAI関連企業としてこれほど注目されている背景にも、このロジック半導体があります。
私自身、以前は「半導体=CPU」という印象がかなり強かったのですが、実際にはCPUやGPUは半導体の一部にすぎません。ただ、AI需要を理解するうえではこの「計算する半導体」が出発点になるので、後ほどGPUとNVIDIAについてもう少し詳しく見ていきます。
メモリ半導体|覚える
ただし「メモリ」といってもすべて同じではありません。例えばDRAMは、コンピューターが処理中のデータを一時的に置いておく場所として使われます。一方、NAND型フラッシュメモリは電源を切ってもデータが消えないため、スマートフォンやSSDなどで大量のデータを保存する用途に使われています。キオクシアはNAND型フラッシュメモリを1987年に発明した企業で、現在もこの分野を主力事業としています。
そしてAI時代に覚えておきたいのがHBM(High Bandwidth Memory)です。HBMは大量のデータを高速でやり取りするための高性能メモリで、AI向けGPUの性能を引き出すうえで重要性が高まっています。
つまり、AIが成長するからGPUだけが売れるわけではありません。GPUへ高速にデータを渡すメモリも必要になります。この関係を理解すると、AI半導体関連銘柄を見る範囲がNVIDIAのような計算用半導体から、メモリやその製造設備、材料へ広がっていきます。
パワー半導体|電気を制御する
CPUやGPUのように複雑な計算をすることが主役ではありませんが、EV、鉄道、産業機械、エアコン、電源設備など、電気を大きく使う場所では欠かせない存在です。
例えば電気自動車では、バッテリーに蓄えた電力をモーターへ適切に送り、車を効率よく動かす必要があります。そこで重要になるのがパワー半導体です。近年は従来のシリコンだけでなく、SiCやGaNといった材料を使った次世代パワー半導体の開発も進められており、経済産業省も省エネルギーや電力利用の効率化につながる重要技術として研究開発を支援しています。
半導体というとAIばかりに目が向きやすいですが、パワー半導体はEV、再生可能エネルギー、工場の自動化など、別の成長テーマとつながっています。この違いを知っておけば、「半導体関連銘柄だからAI需要の恩恵を受ける」と単純に考えず、その会社がどんな半導体を作っているのかを見ることができます。
センサー|見る・感じる
その代表例がCMOSイメージセンサーです。スマートフォンのカメラで光を受け取り、それを電気信号へ変えて画像として記録できるのも、イメージセンサーが働いているからです。
現在はスマートフォンだけでなく、自動車、工場、監視カメラなどへ利用範囲が広がっています。ソニーセミコンダクタソリューションズは、モバイル、車載、産業用など幅広い分野へイメージセンサーを展開しており、公式サイトではイメージセンサーの世界シェアNo.1を掲げています。
今後、ロボットや自動運転が広がれば、AIが「考える」ためには、まず周囲の状況を認識する必要があります。その入口になるのがセンサーです。私は半導体を調べるまで、AIとセンサーを別のテーマとして見ていましたが、現実世界で動くAIが増えるほど、見る・感じる半導体と、計算する半導体が組み合わされることが重要になっていくのだと思います。
「半導体」という一つの商品があるわけではない
CPUやGPUのように計算する半導体、DRAM・NAND・HBMのように記憶する半導体、電力を制御するパワー半導体、周囲の情報を受け取るイメージセンサーなど、それぞれ役割も需要が増える理由も違います。
この違いが分かるだけでも、半導体関連銘柄のニュースはかなり見やすくなると思います。NVIDIAが注目される理由とキオクシアが注目される理由は同じではありませんし、EVが伸びたときに恩恵を受ける半導体と、生成AIが伸びたときに恩恵を受ける半導体も違います。
そして、ここからさらに面白くなるのが、これらの半導体を作るために、別の企業が大量に関わっていることです。材料を作る会社、製造装置を作る会社、切る会社、検査する会社まで含めると、「半導体関連銘柄」という言葉が指す範囲は一気に広がります。まずは半導体そのものの役割を頭に入れたうえで、AIによってその需要がなぜ大きく変わろうとしているのかを見ていきます。

半導体は全部同じものだと思っていましたが、計算したり、記憶したり、電気を制御したりと役割が違うのですね。
まず「何をする半導体なのか」を見ることが大切そうです。
なぜAI時代に半導体がこれほど注目されているのか
実際、AI向けの計算を支えるGPUは非常に重要です。ただ、半導体産業まで範囲を広げて見ていくと、AI需要の恩恵を受けるのはGPUだけではないことが分かってきました。
生成AIは、大量のデータを使って膨大な計算を繰り返します。その計算をするGPUが必要になれば、GPUへ高速でデータを渡すHBMも必要になります。さらにデータを保存するNAND、GPU同士をつなぐ通信関連の半導体、大量の電力を効率よく届けるパワー半導体など、AIサーバーの中だけでもさまざまな半導体が働いています。NVIDIA自身も現在のAIデータセンターを、GPUだけではなくCPU、ネットワークなどを組み合わせたフルスタックのインフラとして展開しています。
さらに、その半導体を増産するためには、材料や半導体製造装置、加工・検査技術も必要になります。ここが投資家として半導体関連銘柄を見るときに面白いところです。AI需要が増える → GPUが増えるだけで止めず、その需要が半導体産業のどこまで波及していくのかを順番に追ってみます。
AIはなぜ大量の半導体を必要とするのか
AIは学習するときに大量のデータから特徴や関係性を見つけ、実際に利用するときにも、入力された文章や画像などを処理しながら次に出力する内容を計算します。
特に現在の生成AIでは、大規模な行列計算など、同じ種類の計算を大量のデータに対して同時に行う処理が数多く発生します。こうした並列処理はGPUが得意とする分野です。NVIDIAのCUDA公式資料でも、CPUが少数の処理を高速に実行することを得意とするのに対し、GPUは数千ものスレッドを並列に実行することを前提に設計されていると説明されています。
そしてAIが高度になるほど、必要になるのは計算能力だけではありません。より大きなAIモデルを扱えば、計算するデータそのものも増え、それを記憶し、GPUへ送り、別のGPUへ渡し、最終的に保存する必要があります。つまりAIの成長とは、単純に「計算用半導体の需要が増える」というより、計算・記憶・通信・電力制御を一つの巨大なシステムとして高速化していくことだと考えた方が分かりやすいと思います。
GPUとは?なぜNVIDIAが注目されているのか
画像を描くためには、画面上にある大量の画素や物体を同時に計算する必要があります。そのためGPUは、多くの処理を並行して進めることが得意な構造になっています。
一方のCPUは、パソコン全体を動かす中心的なプロセッサで、さまざまな処理を柔軟かつ素早く行うことを得意とします。かなり単純化すると、CPUが「少数の複雑な仕事を順番に素早くこなす」のが得意なのに対し、GPUは「似た計算を大量に同時処理する」のが得意と考えると分かりやすいです。NVIDIAもGPUを、高い並列処理能力とメモリ帯域を持つ計算装置として説明しています。
このGPUの特徴が、AIと非常に相性が良かったわけです。NVIDIAはGPUというハードウェアだけではなく、GPUを汎用計算へ利用するためのCUDAを長年育ててきました。現在では生成AIの学習だけでなく推論にもGPUが使われ、NVIDIAはAIデータセンター向けにGPU、CPU、ネットワーク、ソフトウェアまで一体化したプラットフォームを提供しています。2026年にはBlackwellに続くVera Rubin世代もAIインフラの中心として展開されており、AIの計算能力をデータセンター全体で高める競争へ進んでいます。
私がここで重要だと思うのは、NVIDIAが注目されている=GPUという部品だけが重要ということではない点です。高性能なGPUを何万個並べても、メモリからデータが届かなかったり、GPU同士の通信が遅かったり、十分な電力を供給できなければ性能を生かせません。AI半導体を考えるときは、GPUを中心に周囲の半導体まで見ていく必要があります。
HBMとは?なぜAIと一緒に注目されているのか

GPUについて調べていると、最近は「HBM」という言葉も一緒に目にすることが増えました。HBMはHigh Bandwidth Memory(高帯域幅メモリ)の略で、大量のデータを非常に高速でGPUへ送り届けるためのメモリです。
例えるなら、GPUがものすごく仕事の速い料理人だとしても、食材が一本の細い道から少しずつしか届かなければ、料理人は待つことになります。そこで道路を大幅に広げ、大量の食材を一気に届けられるようにするのがHBMのイメージです。AIでは膨大なデータをGPUとメモリの間で何度もやり取りするため、計算能力だけを高めても、データを運ぶ速度が追いつかなければ性能を十分に発揮できません。
この重要性は最新GPUを見るとさらに分かりやすくなります。2026年7月にNVIDIAが公開したRubin GPUの技術解説では、HBM4を採用し、GPUあたり最大288GB、メモリ帯域幅は最大22TB/秒とされています。NVIDIAは長いコンテキストや大量のAI推論処理を支えるため、メモリ性能が重要になっていると説明しています。
HBMメーカー側でも競争は進んでおり、MicronはHBM4で1スタックあたり2.8TB/秒超の帯域幅を掲げています。つまりAI半導体の進化は「GPUだけを速くする競争」ではなく、GPUへどれだけ速く大量のデータを届けられるかというメモリの競争でもあるわけです。
投資家として考えると、ここから関連銘柄の見方が少し広がります。AI需要が伸びればGPUメーカーだけでなく、HBMを作るメモリメーカー、そのHBMを作るための製造装置や材料、さらに高度なパッケージ技術まで必要になります。「AI半導体関連銘柄」という言葉が想像以上に広い理由が少しずつ見えてきます。
AIデータセンターにはGPU以外の半導体も大量に必要
AIサーバーにはCPU、GPU、HBMなどが搭載され、サーバー同士を高速につなぐためのネットワーク関連半導体も必要です。さらに大量のAIデータや推論データを保存するSSDにはNAND型フラッシュメモリが使われます。
キオクシアも2026年6月のInvestor Dayで、AI推論の拡大によってデータセンターSSD向けNAND需要が拡大していると説明しています。特にエージェントAIでは、AIが参照するデータや推論履歴など扱うデータ量が大きくなるため、ストレージもAIシステム全体の性能を左右する重要な存在になっているとしています。
さらに見落としやすいのが「電気」です。高性能なGPUを大量に動かすAIデータセンターでは、電力を効率よく変換してチップへ届ける必要があります。そのためパワー半導体や電源管理半導体も重要になります。実際、Infineonは2026年にAIデータセンター向けの電力供給を重点分野として拡大しており、GPUの高性能化とラックの高密度化によって電源インフラの要求が急速に高まっていると説明しています。
こうして見ていくと、AIデータセンターは「GPUをたくさん並べた建物」ではなく、計算・記憶・保存・通信・電力を組み合わせた巨大なシステムだと分かります。そして半導体だけでなく、サーバー、電力設備、冷却、光通信などまで視野を広げると、AIを支える企業の地図はさらに広がります。AIを動かす「場所」から関連企業を見たい場合は、データセンター関連銘柄の記事でも、電力・冷却・建設・光通信まで含めて整理しています。
AIブームは「NVIDIAだけ」の話ではない
もちろんGPUはAIの中心にある重要な半導体です。しかし実際には、そのGPUを高速に動かすHBMがあり、データを保存するNANDがあり、GPU同士をつなぐ通信関連半導体があり、大量の電力を効率よく供給するパワー半導体があります。
さらに視点を半導体工場まで広げれば、需要が増えたGPUやHBMを作るために、シリコンウエハーや半導体材料、製造装置、加工装置、検査装置も必要になります。つまりAI需要は、AI → GPUで終わるのではなく、その裏側にある半導体産業全体へ波紋のように広がっていきます。
私はここが、半導体関連銘柄を考えるうえでかなり重要だと思います。「AI関連だから」という理由だけで企業を見るのではなく、AI需要が増えたとき、その会社の商品がどこで必要になり、どの程度需要が増えるのかまで考える。そのためには、次に「一つの半導体がどうやって作られるのか」を追っていく必要があります。そこまで分かると、東京エレクトロン、信越化学、ディスコ、アドバンテストなどが、なぜ同じ「半導体関連銘柄」と呼ばれているのかが一気につながってきます。

AIで必要になるのはGPUだけではないのですね。
HBMやNAND、通信、電力、さらに半導体を作る材料や装置までつながっていると、関連銘柄の見え方がかなり変わります。
半導体はどうやって作られる?一つのチップができるまで
しかし実際の製造工程を追ってみると、一つの半導体が完成するまでには、設計、シリコンウエハー、成膜、露光、エッチング、洗浄、加工、パッケージ、検査など、驚くほど多くの工程があることが分かります。
しかも重要なのは、それぞれの工程を同じ会社が担当しているわけではないことです。半導体を設計する会社、実際にウエハーへ回路を作る会社、材料を供給する会社、製造装置を作る会社、ウエハーを切る会社、パッケージを支える会社、最後に性能を検査する会社まで、世界中の企業が分業しています。JEITAも半導体製造を、ウエハー上へ回路を形成する「前工程」と、その後の組み立て・テストを行う「後工程」に大きく整理しています。
私はこの流れを理解してから、「半導体関連銘柄」という言葉の見え方がかなり変わりました。東京エレクトロンも、ディスコも、アドバンテストも半導体メーカーではありません。それでも半導体を作るうえで欠かせない工程を担っているからこそ、世界の半導体需要と深くつながっています。ここでは、一つの半導体が設計され、完成して出荷できる状態になるまでを順番に追いながら、どの工程にどんな日本企業が関わっているのかを見ていきます。
① 半導体を設計する|まず「どんなチップを作るか」を決める
AI向けGPUであれば、大量の計算を効率よく処理できるように回路を設計し、その設計データをもとに実際の製造へ進んでいきます。
ここで代表的なのがNVIDIAのようなファブレス企業です。ファブレスとは、自社で大規模な半導体製造工場を持つことを中心とせず、半導体の設計などに強みを集中する企業を指します。TSMCも公式に、ファブレス企業の例としてNVIDIAなどを挙げ、自社は顧客が設計した半導体を製造するファウンドリとして発展してきたと説明しています。
この分業は、半導体産業を見るうえでかなり重要です。「NVIDIAがGPUを作っている」と聞くと、自社工場でウエハーからGPUを製造しているように感じますが、NVIDIAが強いのは設計やソフトウェア、AIコンピューティングの仕組みです。そして、その設計を実際のシリコン上へ高精度に作り込む役割をTSMCなどのファウンドリが担います。
つまり半導体産業では、「半導体を設計する会社」と「実際に製造する会社」が別々でも成立するわけです。ここを理解しておくと、後ほどNVIDIA、TSMC、Rapidusの違いも整理しやすくなります。
② 半導体の土台となるシリコンウエハーを作る
シリコンウエハーは、高純度のシリコンから作られた単結晶のインゴットを薄くスライスし、表面を非常に平らに研磨・洗浄して作られます。SUMCOはシリコンウエハーを「半導体デバイスの基板材料」と説明しており、信越化学もメモリ、ロジック、イメージセンサーなど幅広い半導体の基板としてシリコンウエハーを供給しています。
ここで私が意外だったのは、見た目はただの丸い板でも、非常に高い品質が求められることです。ウエハーの表面に微細な傷や不純物、わずかな歪みがあれば、その上に作られる何十億ものトランジスタへ影響する可能性があります。SUMCOも、単結晶インゴットの製造からスライス、研磨、洗浄、特殊加工まで厳密な品質管理のもとで行っています。
つまり信越化学やSUMCOはGPUそのものを設計しているわけではありません。それでも、半導体を作るための「土地」を供給している会社と考えると、なぜ半導体材料関連銘柄として名前が挙がるのか分かりやすくなります。
③ ウエハーに回路を作る|半導体製造の「前工程」
前工程では、膜を作る、回路パターンを転写する、不要な部分を削る、電気的な性質を変える、洗浄するといった処理を何度も繰り返しながら、非常に複雑なトランジスタや配線をウエハー上へ形成していきます。東京エレクトロンの製造工程資料でも、成膜、レジスト塗布・現像、露光、エッチング、洗浄などを繰り返しながら回路を形成していく流れが示されています。
私は以前、「半導体製造装置」という巨大な機械が一台あって、その中にウエハーを入れれば半導体が完成するものだと思っていました。しかし実際には、工程ごとに必要な装置が違います。だからこそ東京エレクトロン、SCREEN、KOKUSAI ELECTRICなど、得意な工程の異なる日本企業が一つの半導体工場の中で共存しています。
洗浄する|小さな汚れも許されない
半導体の回路が極めて小さくなるほど、人間の目では見えないような微細な粒子や金属汚染でも、回路の欠陥や歩留まり低下につながる可能性があります。そのため製造途中では、ウエハー表面の不純物や残留物を何度も洗浄します。
この洗浄装置で存在感を持つ日本企業の一つがSCREENです。SCREENセミコンダクターソリューションズは、ウエハーを1枚ずつ処理する枚葉式洗浄装置や、複数枚をまとめて処理するバッチ式洗浄装置などを展開しています。
「洗う」と聞くと単純な作業に感じますが、半導体ではいかに傷を付けず、必要なものを残しながら不要なものだけを取り除くかが技術になります。半導体が微細化するほど、「きれいにする技術」そのものの難易度も上がっていきます。
薄い膜をつくる|原子レベルの層を重ねていく
ここで重要なのは、「薄く塗る」だけではないことです。先端半導体では構造が立体化・複雑化しているため、凹凸のある表面にも均一な膜を作る必要があります。KOKUSAI ELECTRICは、ウエハー上へナノレベルの薄膜を形成する成膜プロセス装置を手掛け、CVDやALDなどの技術を展開しています。東京エレクトロンも熱処理成膜装置、枚葉成膜装置、ALD装置などを製品群に持っています。
半導体が小さく複雑になるほど、必要な場所へ、必要な厚さで、均一な膜を作る技術が重要になります。これも「半導体そのもの」では見えにくい、日本企業が関わる重要な工程です。
回路パターンを転写する|ウエハーへ「設計図」を写す
まずウエハー表面へ光に反応するフォトレジストを塗り、その上からフォトマスクに描かれた回路パターンを使って光を照射します。その後に現像することで、ウエハー上へ非常に細かな回路パターンを残します。東京エレクトロンも公式資料で、フォトレジストの塗布、露光、現像によってパターンを形成する流れを説明しています。
ここでは、露光装置だけを見るのではなく、その前後にも重要な装置があることがポイントです。例えば東京エレクトロンは、フォトレジストを塗布・現像するコータ/デベロッパを手掛けています。
さらに最先端半導体で使われるEUVでは、「回路の原版」となるマスクに欠陥がないことも非常に重要になります。レーザーテックはEUVマスク関連の検査装置を展開しており、EUVパターンマスクやマスクブランクスなどの欠陥検査を手掛けています。
不要な部分を削る|エッチングで回路の形をつくる
東京エレクトロンの説明では、現像後に残ったフォトレジストをマスクとして利用し、プラズマエッチング装置でシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの不要部分を取り除きます。
私は「削る」と聞くと、刃物で物理的に削る姿を想像していました。しかし前工程のエッチングは、プラズマや化学反応を利用して微細な部分を選択的に取り除く世界です。回路が細く、構造が深くなるほど、必要な場所だけを正確に加工する難易度は高くなります。
ここでも東京エレクトロンなどの半導体製造装置メーカーが重要になります。つまり半導体の微細化とは、半導体メーカーだけの技術競争ではなく、「もっと細く、もっと正確に削れる装置」を作る企業の競争でもあるわけです。
不純物を入れて性質を変える|電気の流れを作り分ける

半導体は、シリコンの形を作るだけでは働きません。シリコンへごく少量の特定元素を加えることで、電気の流れやすさなどの性質を変える必要があります。これがドーピングと呼ばれる考え方で、イオン注入や熱拡散などの方法が使われます。
ここで以前説明した「半導体は電気を流したり止めたりできる」という特徴につながります。シリコンの中に異なる電気的性質を持つ領域を作り、それらを組み合わせることで、トランジスタという小さなスイッチを形成していきます。JEITAもウエハー工程では、薄膜形成、エッチング、不純物注入などを繰り返しながらトランジスタや配線を作ると説明しています。
このように前工程では、一回の処理で半導体が完成するのではありません。洗う、膜を作る、パターンを描く、削る、性質を変えるという処理を何度も繰り返し、少しずつ複雑な回路を作っていきます。
④ 回路が正しくできているか検査する
半導体工場では、最後だけ検査するのではなく、製造途中でもさまざまな検査・測定を行い、異物やパターンのずれ、微細な欠陥などを確認します。
ここで名前を聞くことが多い日本企業の一つがレーザーテックです。ただし、「レーザーテック=完成したウエハーだけを検査する会社」と考えると少し違います。レーザーテックはウエハー検査装置も持っていますが、特に先端半導体で重要なEUV・DUVフォトマスク関連の検査で存在感を持っています。2026年3月にも新しいマスク欠陥検査装置を発表しており、EUVマスク、マスクブランクス、ウエハーなど幅広い検査・測定装置を展開しています。
半導体が微細になるほど、「作れること」だけでなく、正しく作れているか確認できることも重要になります。わずかな欠陥を見逃せば、後工程まで進めたあとで不良品になる可能性があるからです。検査技術は、半導体工場の歩留まりを支える技術でもあります。
⑤ ウエハーを切る・削る・磨く
しかしこの状態では、まだ一枚のウエハーにつながっています。そこで、それぞれのチップへ切り分ける必要があります。
この工程で大きな存在感を持つ日本企業がディスコです。ディスコはダイシングソー、レーザソー、グラインダ、ポリッシャなど、切る・削る・磨くための装置や精密加工ツールを展開しています。
半導体を詳しく知らないと、「切る会社がなぜAI・半導体関連銘柄として注目されるのだろう」と感じると思います。私も最初はそうでした。しかし現在の半導体は非常に薄く、微細な構造を持ち、先端パッケージでは複数のチップを高密度に組み合わせます。チップを傷つけず、高精度に薄くし、正確に切り出すこと自体が高度な技術になります。
つまり、半導体性能が高まるほど「設計する技術」だけではなく、最後に正確に切り出せる技術の難易度も上がっていきます。ディスコが半導体関連銘柄として評価される理由も、製造工程を追うとかなり分かりやすくなります。
⑥ チップをパッケージする|AI時代は「組み合わせ方」も重要になる
以前の私は、パッケージとは完成したチップを「ケースに入れて守る工程」くらいに考えていました。しかし現在の先端半導体では、その意味が大きく変わっています。GPUとHBMのように複数の高性能チップを近くに配置し、高速で大量のデータをやり取りさせるには、どのようにチップを並べ、つなぎ、熱を逃がすかが性能そのものに影響します。経済産業省も2025年末の先端半導体開発計画で、2.xD・3D実装、パッケージ基板、封止材、放熱材、三次元接合などを重要な後工程技術として位置づけています。
日本企業では、TOWAが半導体を樹脂で封止するモールディング装置を展開し、2026年8月から次世代コンプレッションモールディング装置の販売を開始しています。イビデンはAI・データセンター向けGPUなどに使われるICパッケージ基板を手掛け、レゾナックは先端パッケージ向けのさまざまな材料開発を進めています。
つまりAI時代の半導体競争は、「一つのチップをどこまで小さくできるか」だけではありません。複数のチップをどう組み合わせ、一つの高性能システムとして動かすかという後工程の重要性も高まっています。
⑦ 完成した半導体が正常に動くか検査する
この半導体テストで世界的に事業を展開している日本企業がアドバンテストです。同社の半導体テストシステムは、半導体が設計どおりに動作するか、どの程度品質に優れているかを試験するもので、GPUなどを含むSoC向けテストシステムと、DRAMやNANDなどに対応するメモリテストシステムを展開しています。
私はアドバンテストについて調べる前、「検査なら製造が終わったあとの付随的な作業なのでは」と思っていました。しかし高性能半導体ほど動作速度が速く、機能も複雑になります。AI向けGPUや高性能メモリの性能が上がれば、それを正確かつ効率的に試験する側にもより高度な技術が必要になるわけです。
半導体需要が増えるだけでなく、半導体そのものが複雑になることも、テスト装置の需要を考えるポイントになります。「半導体を作らない会社」が半導体市場の成長から恩恵を受ける理由が、ここにもあります。
半導体は「一社で作るもの」ではない
最初に回路を設計する会社があり、その設計を実現するためのシリコンウエハーがあり、工場では洗浄、成膜、露光、エッチングなどの処理を繰り返します。その後も、欠陥を見つけ、ウエハーを切り、チップをパッケージし、最後に正常に動くか検査しなければ製品にはなりません。
そして、それぞれの場所に違う企業がいます。信越化学やSUMCOは土台となるシリコンウエハー、東京エレクトロンやSCREEN、KOKUSAI ELECTRICは製造装置、レーザーテックは検査・測定、ディスコは精密加工、TOWAやイビデン、レゾナックはパッケージ、アドバンテストは半導体テストというように、役割はまったく違います。
ここまで調べて私が一番大きく変わったのは、「半導体メーカーを探すこと」と「半導体関連銘柄を探すこと」は同じではないと分かったことです。半導体需要が増えれば、完成したチップを売る企業だけでなく、そのチップを作るために欠かせない材料、装置、加工、検査にも需要が流れる可能性があります。
ただし、すべての企業へ同じように利益が流れるわけではありません。その会社がどの工程を担い、誰に販売し、半導体設備投資が増えたときにどの程度業績へ影響するのかを見る必要があります。半導体産業の地図を持つというのは、企業名を覚えることではなく、「どこで何をしている会社なのか」を理解することなのだと思います。

半導体は工場一社だけで作っていると思っていました。材料、装置、加工、パッケージ、検査までつながっていると、なぜいろいろな会社が半導体関連銘柄なのか分かってきました。
半導体ができるまでを、もう少し詳しく知りたい方へ
今回の記事では製造工程を初心者向けに整理しましたが、成膜・露光・エッチング・洗浄・パッケージ・検査までさらに詳しく知りたい場合は、『図解即戦力 半導体プロセスのしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』も参考になります。図解が多く、半導体製造の流れを一冊で追いやすい本です。
半導体メーカーにはどんな会社がある?NVIDIA・TSMC・キオクシア・Rapidusの違い
しかし製造工程まで追ってみると、この見方ではそれぞれの会社の違いがほとんど分からないことに気づきました。
NVIDIAはAI向けGPUなどの設計を強みにするファブレス企業、TSMCは他社が設計した半導体を実際に製造するファウンドリ、キオクシアはNAND型フラッシュメモリを中心とするメモリ企業です。ルネサスは自動車や産業機器などで使われる組み込み半導体を幅広く手掛け、Rapidusは日本国内で最先端2nm世代のロジック半導体の量産を目指しています。役割も、顧客も、需要が増える条件もかなり違います。
投資家として重要なのは、「半導体メーカーだから全部同じ」と考えないことだと思います。AIが伸びたときに直接需要が増えやすい企業もあれば、自動車生産、スマートフォン、データセンター投資など別の市場から影響を受ける企業もあります。ここではニュースでよく見る5社を例に、「何を作っているのか」ではなく、「半導体産業のどこを担当しているのか」から整理してみます。
NVIDIAは何をしている会社?|AI向けGPUを「設計する」
NVIDIA自身も2026年度のサステナビリティレポートで、ファブレスと外部委託を組み合わせた製造戦略を採用し、ウエハー製造、組み立て、パッケージ、テストなどを専門企業と連携して行っていると説明しています。
NVIDIAが強みを持つのは、GPUなどの半導体設計と、それをAIで使うためのソフトウェアやネットワークまで含めた仕組みです。2026年にはVera CPU、Rubin GPU、NVLink、ネットワークなどを組み合わせたVera Rubinプラットフォームが本格量産へ入り、NVIDIA自身もAIデータセンターをGPU単体ではなく、CPU・GPU・ネットワーク・ソフトウェアをまとめた「フルスタック」のインフラとして展開しています。
ここが投資家として面白いところです。NVIDIAの需要が伸びると、その影響はNVIDIAだけで終わりません。NVIDIAが設計した高性能GPUを実際に製造するファウンドリ、高速メモリ、製造装置、材料、先端パッケージなどにも仕事が流れていきます。NVIDIAを見ると、半導体産業における「設計する会社」の役割が分かりやすくなります。
TSMCは何をしている会社?|他社が設計した半導体を「製造する」
TSMC自身は、自社ブランドの半導体製品を設計・販売するのではなく、顧客の製品を製造することに集中すると説明しています。
規模も非常に大きく、TSMCは2025年に305種類のプロセス技術を使い、534社の顧客向けに12,682種類の製品を製造しました。AI向けの高性能半導体だけでなく、スマートフォン、自動車、IoTなど幅広い半導体を製造しています。日本でも熊本県のJASMがTSMCグループの製造拠点として稼働しており、日本の半導体産業を考えるうえでも無視できない存在です。
私自身、以前は「NVIDIAとTSMCは半導体メーカー同士の競合なのかな」とぼんやり考えていました。しかし実際には、設計に強い企業と、その設計を最先端の工場で形にする企業という関係があります。この分業を理解すると、「AI需要が増える → NVIDIAのGPU需要が増える → そのGPUを製造する最先端ファウンドリの需要も増える」という流れが見えてきます。
キオクシアは何をしている会社?|データを「記憶する」NAND
同社は1987年にNAND型フラッシュメモリを発明し、現在もフラッシュメモリとSSDを事業の中心としています。
2026年3月期の売上収益は2兆3,376億円で、スマートフォン、PC、エンタープライズサーバー、データセンター向けのフラッシュメモリ・SSDが中心です。四日市工場と北上工場を合わせ、世界最大級のフラッシュメモリ生産規模を持つことも同社の特徴です。
ここで前に学んだGPUやHBMとの違いが効いてきます。キオクシアのNANDは、AIの計算そのものを担当するGPUでも、GPUへ高速でデータを渡すHBMでもありません。主な役割は大量のデータを保存することです。ただしAI推論で扱うデータ量が増えるにつれて、データセンター向けSSDの重要性も高まっています。キオクシアも2026年のInvestor Dayで、AI推論の拡大によってストレージがAIシステム全体の性能を左右する存在になりつつあると説明しています。
つまり「AI半導体」と聞いたとき、計算するGPUだけでなく、そのAIが使う膨大なデータをどこに保存するのかまで考えると、キオクシアがAI・半導体関連銘柄として注目される理由が分かります。
ルネサスは何をしている会社?|自動車や工場を動かす半導体
ルネサスは、自動車や産業機器を中心に、インフラやIoTまで幅広い分野へ組み込み半導体を提供しています。同社自身も、自動車・産業分野を重要市場として、マイコン、SoC、アナログ、パワー関連製品などを組み合わせた半導体ソリューションを展開しています。
例えば自動車には、エンジンやモーターを制御する半導体、車載情報を処理する半導体、センサーから情報を受け取る半導体など、多くのチップが搭載されています。工場でもモーター、ロボット、センサー、制御装置などさまざまな場所に半導体が使われます。
ここから分かるのは、「半導体=AI」ではないということです。ルネサスを見るときは、AIデータセンター投資だけを見るのではなく、自動車生産、EV・ADAS、工場自動化、産業設備など、別の需要を見る必要があります。同じ半導体関連銘柄でも「何が伸びたときに利益が増えるのか」は企業によって違う、という今回の記事の考え方がよく表れる会社だと思います。
Rapidusは何を目指している?|日本で2nm世代の先端ロジックを量産する
2025年4月にはパイロットラインが立ち上がり、同年7月には2nmノードのGAAトランジスタの試作と電気的な動作確認を発表しました。2027年の量産開始を目標としています。
2026年に入っても量産準備は進み、2月には政府と民間企業から総額約2,676億円を調達しました。4月にはIIM-1に隣接する解析センターと、先端パッケージ研究を担うRapidus Chiplet Solutionsも開所しています。つまりRapidusは前工程だけでなく、解析や先端パッケージまで含めて2nm世代の製造基盤を整えようとしています。
ここで注意したいのは、「Rapidusがあるから日本の半導体復活は決まった」と考えないことです。2nmのトランジスタを試作できることと、顧客から大量の注文を受け、高い歩留まりで安定量産し、利益を出せることは別の話です。今後は2027年の量産開始だけでなく、顧客獲得、歩留まり、量産能力、製造コスト、先端パッケージ、資金調達などを確認する必要があります。
それでも、日本国内で最先端ロジック半導体を製造できる基盤を再び築こうとしている点は大きな動きです。Rapidusを見るときは「日本版TSMCができる」と単純化するより、2nm世代のファウンドリとしてどこまで顧客に選ばれる存在になれるかを追っていきたいと思います。
同じ半導体企業でも「役割」が全然違う
NVIDIAは高性能な半導体を設計する側、TSMCは他社の設計を製造する側、キオクシアはデータを保存するNANDメモリ、ルネサスは自動車や産業機器を動かす組み込み半導体、Rapidusは日本で2nm世代の先端ロジック製造を目指しています。重要なのは会社名を暗記することではなく、それぞれが半導体産業のどこにいるのかを理解することです。
私はここまで調べて、「半導体市場が伸びる」というニュースだけでは投資判断として足りないと改めて感じました。AIが伸びればNVIDIAに追い風になる可能性がありますが、キオクシアにはAIストレージ需要、ルネサスには自動車や産業需要など、利益につながる道筋が違います。TSMCやRapidusのような製造側では、顧客からどれだけ生産を任せてもらえるか、工場をどれだけ効率よく動かせるかも重要になります。
「何の半導体を作っているか」「設計と製造のどちらを担うか」「誰が顧客なのか」。この3つを見るだけでも、半導体関連銘柄を一括りにして見ることはかなり減ると思います。

NVIDIA、TSMC、キオクシアは全部同じ半導体会社だと思っていました。
設計、製造、メモリ、用途まで分けて見ると、それぞれ何で成長する会社なのかも分かりやすくなります。
日本の半導体産業は強い?弱い?|「作るための技術」に残る世界競争力
実際、半導体そのものの世界売上高を見ると、日本企業の存在感が大きく低下したのは事実です。経済産業省によると、日本企業の世界半導体売上シェアは1988年に50.3%まで達しましたが、2019年には約10%まで低下しています。
ただ、半導体ができるまでの工程を追ったあとで日本企業を見直すと、印象がかなり変わりました。完成した半導体だけを見れば日本のシェアは落ちていますが、半導体を作るための製造装置や材料まで広げると、日本企業はいまでも世界のサプライチェーンで重要な位置にいます。経済産業省の資料では、日本企業の世界シェアは半導体製造装置で約31%、主要な半導体部素材では約48%とされています。
つまり「日本の半導体は強いのか、弱いのか」という問いには、一言では答えられません。先端ロジックなどでは海外勢に大きく差をつけられた一方、シリコンウエハー、フォトレジスト、洗浄装置、精密加工装置などでは世界トップクラスの日本企業が残っています。ここでは、日本がなぜ半導体の主役から後退したのか、それでもどこに強みが残っているのか、そしてRapidusやTSMC熊本によって何が変わろうとしているのかを整理していきます。
日本はかつて世界の半導体市場をリードしていた
経済産業省によると、日本企業の世界半導体売上シェアは1975年の28%から上昇し、1988年には50%を超えました。1992年の世界売上ランキングにもNEC、東芝、日立、富士通、三菱電機、松下など多くの日本企業が並んでいます。
当時の日本は、特にDRAMなどのメモリ半導体と、それを大量かつ高品質に製造する技術で強さを持っていました。家電やコンピューターを自社で作る電機メーカーが、その中に使う半導体まで開発・製造する垂直統合型のビジネスモデルとも相性が良かったわけです。
しかし、その後の半導体市場は大きく変わりました。重要なのは、「日本人の技術力が突然なくなった」わけではないということです。市場の主役となる半導体、企業の役割分担、設備投資の規模など、産業構造そのものが変わる中で、日本企業がその変化についていけなかった部分があったと考えた方が分かりやすいと思います。
なぜ日本の半導体メーカーは存在感を落としたのか
日米半導体協定だけで説明されることもありますが、経済産業省はそれに加えて、DRAMからロジックへ市場の中心が変わったこと、十分な投資ができなかったこと、そしてファブレスとファウンドリによる水平分業への変化へ対応できなかったことなどを挙げています。
以前は一つの電機メーカーが、半導体を設計し、自社工場で製造し、その半導体を自社のパソコンや家電へ使う形が成立していました。しかし世界では、NVIDIAのように設計へ集中するファブレスと、TSMCのように製造へ集中するファウンドリが成長します。それぞれが特定分野へ巨額の研究開発費と設備投資を集中できるため、半導体が高度になるほど、この分業モデルの強さが表れるようになりました。
さらに半導体工場は、世代が進むほど投資額が大きくなります。最新設備へ投資し続け、巨大な生産量によって投資を回収する競争になる中、日本企業は事業の再編や撤退を繰り返しました。その間にTSMC、Samsung、Intelなど海外企業との製造能力の差が広がっていきました。
私はここを「日本企業が技術で負けた」とだけ考えるより、市場の変化に合わせて、どこへ経営資源を集中するかという競争で遅れた面が大きかったと見る方がしっくりきます。半導体産業は技術だけでなく、ビジネスモデル、設備投資、顧客獲得まで含めた競争だからです。
それでも日本が強い「半導体製造装置」
前に半導体ができるまでを追ったことで、この数字の意味も分かりやすくなったと思います。ウエハーを洗浄し、膜を作り、レジストを塗り、削り、検査し、切り分け、最後にテストする。それぞれの工程に専門の装置が必要です。
例えば東京エレクトロンは、コータ/デベロッパ、プラズマエッチング、成膜、プローバなど複数の分野で世界トップクラスのシェアを持ち、2026年3月期の半導体製造装置売上高は2兆4,435億円、世界4位としています。 SCREENは枚葉式・バッチ式・スピンスクラバの各洗浄装置で世界シェアNo.1を掲げ、2025年には半導体洗浄装置の累計出荷台数が15,000台を突破しました。
さらにディスコは、ウエハーを切るダイシングソーと削る・磨くグラインダ/ポリッシャについて、それぞれ世界シェアを7〜8割程度としています。 このほか、先端半導体のマスク検査を支えるレーザーテックや、完成した半導体をテストするアドバンテストなどもあります。
ここまでを見ると、日本の強みは「半導体工場を持っているか」だけでは測れないことが分かります。世界中の半導体メーカーが増産するとき、その工場の中へ日本企業の装置が入る可能性がある。これが半導体製造装置関連銘柄を見るときの大きなポイントだと思います。
日本が強い「半導体材料」
完成した半導体では世界シェアを大きく落とした一方、その半導体を作るための材料では、世界市場の約半分を日本企業が支えている計算になります。
代表的なのがシリコンウエハーです。信越化学グループはシリコンウエハーで世界シェアNo.1を掲げ、AI、メモリ、ロジック、イメージセンサーなど幅広い半導体の土台を供給しています。 SUMCOも世界の半導体メーカーへ高品質なシリコンウエハーを供給する主要企業です。
さらに、回路パターンを作るときに使うフォトレジストでも日本企業が強く、東京応化工業は2025年予測の出荷数量ベースで半導体フォトレジストの世界シェア24.7%、世界トップを掲げています。EUV、KrF、g/i線など複数分野で高い競争力を持っています。 レゾナックも先端パッケージ向けを含むさまざまな半導体材料を展開しています。
材料メーカーが面白いのは、製品が表から見えにくいことです。スマートフォンを分解しても「信越化学の材料」と書いてあるわけではありません。それでも、半導体の微細化が進むほど、材料の純度、均一性、耐熱性などの要求も上がるため、簡単に別の材料へ置き換えられない分野があります。
日本は「半導体そのもの」より「作るための技術」に強みが残る
確かに最先端ロジックの製造や、世界の半導体売上全体で見れば、日本企業の存在感は1980年代より大幅に低下しました。一方で、製造装置や材料まで含めると、日本企業なしでは世界の半導体サプライチェーンが成り立ちにくい分野が残っています。
しかも、日本企業が半導体そのものですべて弱いわけでもありません。経済産業省の2026年資料では、NANDではキオクシア、マイコンではルネサス、イメージセンサーではソニー、パワー半導体でも日本企業が世界市場で存在感を持っていることが整理されています。
それでも私が今回特に注目したいのは、「誰が半導体を作っても必要になる技術」を持っている企業です。NVIDIAのGPUが増えても、他社のAI半導体が増えても、半導体を製造するにはウエハー、フォトレジスト、洗浄装置、成膜装置、加工装置、検査装置などが必要になります。
もちろん、どの企業でも恩恵を受けるわけではありません。顧客の設備投資が止まれば装置需要も落ちますし、新技術によって既存材料が置き換えられる可能性もあります。ただ、完成品の勝者を当てるだけではなく、その競争そのものを支える企業を見るという考え方は、半導体関連銘柄を探すうえでかなり面白い視点だと思います。
Rapidus・TSMC熊本で日本の半導体は復活できるのか
Rapidusは北海道千歳市のIIM-1で2nm世代の先端ロジック半導体の量産を目指しており、2025年7月には2nm GAAトランジスタの試作と電気的動作を確認しました。2026年2月には政府と民間から総額2,676億円を調達し、4月には解析センターと先端パッケージ研究を担うRapidus Chiplet Solutionsも開所しています。目標は2027年の量産開始です。
熊本では、TSMCの子会社JASMの第1工場が2024年末に量産を開始しています。さらに第2工場については当初の計画から高度化され、2026年3月31日に台湾当局が3nm相当の先端半導体を製造する計画への変更を許可したと経済産業省が明らかにしています。2026年4月3日時点では投資額や稼働時期など詳細は日本政府と協議中とされているため、「3nm工場が予定どおり○年に稼働する」と現時点で断定するのは避けたいところです。
政府も半導体を経済安全保障と産業競争力の両面から重要分野と位置づけています。2026年6月には「半導体・デジタル産業戦略」を再改訂し、半導体単体ではなく、AI、データ、計算基盤、通信、電源、人材までつながるエコシステムを国内で構築する方向を示しました。
ただし、私は「工場ができる=日本の半導体復活」とは考えない方がいいと思います。Rapidusなら、2nmを実際に高い歩留まりで量産できるか、顧客を獲得できるか、設備投資を回収できるかが重要です。TSMC熊本についても、工場だけでなく、周辺へ材料・装置・物流・人材などのサプライチェーンがどこまで集まり、国内に技術や雇用が蓄積するかを見る必要があります。九州経済産業局も、JASM進出後に九州で半導体関連の新規立地・設備投資が継続していることを報告しています。
日本の半導体復活を判断するなら、私は「工場が建ったか」ではなく、「技術・人材・サプライヤー・顧客が集まり、継続して利益を生む産業になったか」を見ていきたいです。
日本の半導体を見るなら、完成したチップだけを見ない
確かに、世界の半導体売上に占める日本企業のシェアが大きく低下したことは事実です。特に先端ロジックでは、TSMCなど海外企業との差が大きく開きました。
しかし半導体ができるまでの工程を広げて見ると、日本の景色はかなり違います。シリコンウエハー、フォトレジスト、洗浄装置、成膜・エッチング装置、精密加工、検査など、「半導体を作るために必要な技術」では現在も世界トップクラスの企業がいくつも残っています。
さらにRapidusやTSMC熊本によって、日本国内へ再び先端半導体の製造能力を築こうとする動きも進んでいます。ただし、本当に重要なのは補助金の額や工場の大きさではありません。量産できるのか、顧客から選ばれるのか、人材が育つのか、周囲へ材料・装置メーカーが集まるのか、そして最終的に利益を生み続けられるのかまで確認する必要があります。
投資家として日本の半導体関連銘柄を見るなら、私は「日本は半導体で強い・弱い」という二択ではなく、「半導体産業のどの工程なら世界で勝てているのか」から考えたいです。この視点を持っておくと、東京エレクトロンやディスコ、信越化学が、なぜ世界のAI・半導体投資と深くつながっているのかも理解しやすくなります。

日本は半導体で弱くなっただけだと思っていました。
でも材料や製造装置、加工まで見ると世界で強い企業がたくさんあるのですね。「どの工程が強いか」で見ることが大切そうです。
半導体関連銘柄|どんな日本企業が関わっている?
以前の私なら、「どれも半導体が売れれば儲かる会社なのだろう」とまとめて考えていたと思います。
しかし、ここまで半導体ができるまでを追ってきたことで、それぞれが違う場所で半導体産業を支えていることが分かってきました。キオクシアはNAND型フラッシュメモリそのものを販売しますが、東京エレクトロンは半導体を作るための装置、信越化学やSUMCOはシリコンウエハー、ディスコは切る・削る・磨く装置、アドバンテストは半導体を試験する装置で稼ぎます。東京エレクトロンは成膜・塗布現像・エッチング・洗浄など複数工程の製造装置を展開し、ディスコはダイシングソーやグラインダ、ポリッシャを手掛けています。
つまり重要なのは、「半導体関連銘柄かどうか」ではなく、「半導体産業のどこで、何を売って利益を得ている会社なのか」を見ることです。同じAIブームでも、半導体メーカーにはチップ需要、製造装置メーカーには設備投資、材料メーカーにはウエハー投入量、検査企業には半導体の高性能化・複雑化など、業績へ届く道筋が違います。
まず全体像を簡単に整理すると、次のようになります。
| 分野 | 主な日本企業 | 半導体との関わり |
|---|---|---|
| 半導体メーカー | キオクシア、ルネサス、ローム、ソシオネクスト | 半導体そのものを設計・販売 |
| 製造装置 | 東京エレクトロン、SCREEN、KOKUSAI ELECTRIC | 半導体工場で使う装置 |
| 材料 | 信越化学、SUMCO、東京応化工業、レゾナック | ウエハー、レジスト、各種材料 |
| 切断・研削 | ディスコ | ウエハーを切る・削る・磨く |
| 検査・測定 | アドバンテスト、レーザーテック、日本マイクロニクス | 欠陥・性能・電気特性を確認 |
| パッケージ・基板 | TOWA、イビデン、レゾナック | チップを封止・接続・実装 |
| AI・HBM周辺 | アドバンテスト、イビデン、TOWA、ディスコなど | AIチップ・高性能メモリの高度化 |
| パワー半導体 | ローム、三菱電機、富士電機 | EV・産業・電力向け半導体 |
※企業の上場状況・事業内容は2026年8月29日時点で確認。キオクシアホールディングスも現在は東証プライム市場に上場しています。
ただし、この表だけを見て銘柄を選ぶのがこの記事の目的ではありません。なぜこれらの企業が半導体関連銘柄なのかを、半導体産業の地図へ戻しながら見ていきます。
① 半導体メーカー関連銘柄|半導体そのものを設計・販売する
キオクシアはNAND型フラッシュメモリとSSD、ルネサスは自動車・産業機器などで使われるマイコンやSoC、アナログ・パワー関連製品、ロームはアナログ半導体やパワー半導体、特にSiC関連、ソシオネクストは顧客ごとに仕様を作り込むカスタムSoCを手掛けています。ソシオネクストは自社をファブレス企業と位置づけ、オートモーティブ、データセンター/ネットワーク、スマートデバイス、産業機器などへカスタムSoCを提供しています。
ここで大切なのは、「半導体メーカー=AI需要で全部伸びる」ではないことです。キオクシアならデータ保存量やSSD需要、ルネサスなら自動車・産業機器、ロームならEVや電力変換、ソシオネクストなら顧客のカスタムSoC採用など、需要を動かす要因が違います。
私なら半導体メーカーを見るとき、最初に「何の半導体を売っているのか」を確認します。その一つだけでも、「AIが伸びるから半導体株」という大ざっぱな見方からかなり離れられると思います。
② 半導体製造装置関連銘柄|工場が半導体を作るための機械を売る

ここから「半導体関連銘柄」の意味が一気に広がります。東京エレクトロンやSCREEN、KOKUSAI ELECTRICは、基本的にGPUやメモリそのものを売っている会社ではありません。それらを作る工場へ装置を販売する会社です。
東京エレクトロンは成膜、コータ/デベロッパ、エッチング、洗浄など主要な前工程を広くカバーしています。SCREENは特に洗浄装置を中心に幅広い装置を持ち、KOKUSAI ELECTRICはナノレベルの薄膜を形成する成膜や膜質改善の処理装置を得意としています。KOKUSAI ELECTRICも、半導体の立体化・複雑化によって難易度の高い成膜への需要が増えていると説明しています。
ここで投資家として見たいのは、半導体の販売数量だけではありません。TSMCやSamsung、Intel、キオクシアなどが「これから工場へどれだけ設備投資するのか」が非常に重要になります。
例えばAI向け半導体の需要が増えても、既存工場だけで十分に生産できれば、新しい装置への需要が同じ割合で増えるとは限りません。反対に、新工場の建設や新しい製造技術への切り替えが進めば、半導体市場の成長率以上に装置需要が増えることもあります。製造装置株を見るなら、「半導体需要」からさらに一段進んで「顧客の設備投資」を見る必要があります。
③ 半導体材料関連銘柄|半導体を作るほど必要になる「材料」を供給する
信越化学とSUMCOは、回路を作り込む土台となるシリコンウエハーで世界的な存在感を持っています。SUMCOは事業そのものを「半導体用シリコンウエハーの製造・販売」としており、2025年末時点で世界シェア2位としています。
東京応化工業は、回路パターンの形成に使われるフォトレジストを主力製品の一つとしています。同社は2025年予測の出荷数量ベースで半導体用フォトレジストの世界シェア24.7%、世界トップとしています。EUVからArF、KrF、g/i線まで幅広いレジストを扱っています。
レゾナックは前工程だけでなく先端パッケージ向け材料にも関わるため、ここでは「材料会社は一つの工程だけに属するとは限らない」という点も押さえておきたいです。
材料株を見るとき、私は「半導体が何個売れたか」より、「どれだけウエハーが生産ラインへ投入されるか」「先端工程でその材料がどれだけ使われるか」を考えたいです。さらに微細化や先端パッケージによって、一つの半導体に使われる材料の種類や要求性能が変化することも重要です。
④ 切断・研削関連銘柄|ディスコは「切る・削る・磨く」で半導体を支える

半導体関連銘柄の中でも、初めて知ったときに私が特に面白いと思ったのがディスコです。ディスコは、ウエハーを一つ一つのチップへ切り分けるダイシングソー、ウエハーを薄くするグラインダ、表面を磨くポリッシャなどを展開しています。
「切るだけなら、それほど難しい技術ではないのでは」と思ってしまいますが、先端半導体では話が違います。薄いウエハーを割らず、微細な回路を傷つけず、非常に高い精度で加工する必要があります。さらにAI向け半導体では複数のチップを組み合わせるチップレットや先端パッケージが広がり、チップを薄くする、正確に分離するといった加工の重要性も高まります。
つまりディスコを見るときは「AI企業かどうか」ではなく、半導体が高性能化・薄型化・複雑化するほど、精密加工の難易度がどう変わるのかを見る方が本質に近いと思います。
⑤ 検査・測定関連銘柄|作るだけでなく「正しく作れたか」を確かめる
レーザーテックは、先端半導体で使うEUVマスクなどの欠陥検査・測定に強みを持つ企業です。一方、アドバンテストは半導体へ電気信号を送り、設計どおりの性能を発揮するかを確認する半導体テストシステムを手掛けています。2026年にはAIアクセラレータやチップレットの複雑化によってテスト量が増えていることを踏まえた新しいテスト技術も発表しています。
そして日本マイクロニクスは、ウエハー上の半導体とテスターをつなぐ「プローブカード」で関わります。同社のプローブカードはDRAM、Flash、ロジックなどのウエハー検査に利用され、メモリ向けでは世界トップシェアを掲げています。
ここは投資家としてかなり面白い部分だと思います。半導体の生産数量が増えることだけでなく、一つの半導体が複雑になり、テストしなければならない項目が増えること自体が需要につながる可能性があるからです。
⑥ パッケージ・基板関連銘柄|AI時代に重要性が高まる「つなぐ技術」
しかしGPUとHBMを近くに配置するAI半導体では、複数のチップをどう並べ、どう接続し、どう放熱するかが性能へ大きく影響します。
この分野で名前が挙がる日本企業の一つがTOWAです。半導体を樹脂で封止するモールディング装置を得意としており、2026年8月から次世代コンプレッションモールディング装置「INNOMS」の販売を開始しています。
イビデンは高性能ICパッケージ基板を手掛けています。AI・高性能サーバー向け需要への対応として、2026~2028年度の3年間で電子事業へ約5,000億円を投じる計画を発表しており、高性能ICパッケージ基板の生産能力を拡大しています。
さらにレゾナックのような材料企業も先端パッケージへ関わります。つまり、AI半導体の性能競争はGPUの設計だけでなく、「複数のチップを一つの製品として成立させる技術」の競争でもあるということです。
⑦ AI・HBM関連銘柄|「HBMを作る会社」だけを探さない
HBMは複数のDRAMを積み重ね、GPUの近くへ配置する高性能メモリです。そのため、製造が難しくなるほどメモリテスト、ウエハー加工、接続、封止、パッケージ基板など周辺技術も必要になります。アドバンテストはメモリテスターでDRAM・NAND・Flash・HBMを対象としており、AI・HPC向け半導体の高度化によるテスト課題へ対応しています。
イビデンはAIサーバー向け高性能ICパッケージ基板、TOWAは半導体パッケージのモールディング、ディスコは薄化・切断などで関わります。つまり日本株でAI・HBM関連銘柄を考える場合、「HBMそのもの」ではなく、「HBMやAIチップを量産するときに必要になる技術」へ視野を広げるのが一つの見方になります。
一方で、ここは関連性を広げすぎないことも重要です。「AIに少し関係があるからHBM関連」というだけでは投資判断にはなりません。その企業の売上や利益のうち、AI・HBM需要がどの程度影響するのかまで確認したいところです。AI半導体が大量に設置される場所から考えたい場合は、データセンター関連銘柄の記事を見ると、半導体の外側にある電力・冷却・建設・光通信までつながって見えてきます。
⑧ パワー半導体関連銘柄|AIとは違う成長テーマもある
ローム、三菱電機、富士電機などは、電力を効率よく変換・制御するパワー半導体を手掛けています。ロームはSiCのウエハーからデバイス、パッケージ、品質管理まで技術を展開し、三菱電機も2026年に高電圧SiC製品を拡充しています。富士電機もIGBTやSiCを使ったパワー半導体製品を展開しています。
パワー半導体で需要を生むのは、生成AIだけではありません。EV、鉄道、産業機械、再生可能エネルギー、電力設備などで「より少ない電力損失で大きな電気を動かしたい」という需要が成長要因になります。
そのため、ロームや三菱電機、富士電機を「半導体関連銘柄」として見る場合も、NVIDIAと同じAI需要を追いかけるのではなく、EV・電力・産業設備など、その半導体が使われる市場を見る必要があります。特に三菱電機や富士電機は半導体専業企業ではないため、半導体事業が会社全体の利益へどれほど影響するかまで確認したいところです。
半導体関連銘柄を「関連度」で整理する
そこで私は、単純な業種ではなく、半導体需要がどのように会社の利益へ届くのかで整理した方が分かりやすいと感じました。
例えば、次の3段階で考えることができます。
| 関連の仕方 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| A|半導体そのものを売る | 半導体の販売数量・単価が直接業績へ影響しやすい | キオクシア、ルネサス、ローム、ソシオネクスト |
| B|半導体を作るほど必要になる | 工場の設備投資や生産量、高性能化が需要につながる | 東京エレクトロン、SCREEN、KOKUSAI ELECTRIC、信越化学、SUMCO、ディスコ、アドバンテストなど |
| C|特定用途・事業を通じて恩恵を受ける | AI、EV、先端パッケージなど特定市場の成長が影響 | イビデン、三菱電機、富士電機など |
これは「Aが一番良い銘柄」というランキングではありません。むしろ、何を確認すればいい企業なのかを分けるための地図です。
Aなら半導体の販売数量や価格、製品構成。Bなら顧客の設備投資、ウエハー投入量、技術世代の変化。CならAIサーバー、EVなど対象市場の成長に加え、その事業が会社全体の中でどの程度大きいのかを見る必要があります。
私はこの分類をしておくと、「半導体市場が伸びる」というニュースを見たときに、すぐ株を買うのではなく、「この会社には、どの道を通って利益が届くのだろう?」と考えられるようになると思います。
「半導体株」という一括りでは見ない
キオクシアはNANDを売る。東京エレクトロンは製造装置を売る。信越化学やSUMCOはウエハーを供給する。ディスコは切る・削る・磨く。レーザーテックは微細な欠陥を見つけ、アドバンテストは半導体が正しく動くか試験する。TOWAやイビデンは先端パッケージを支える。それぞれ半導体需要から利益へつながる道が違います。
私はここまで整理して、「半導体関連銘柄」という言葉そのものには、それほど投資判断の情報が入っていないのだと思うようになりました。本当に知りたいのは、その会社がどの工程にいて、誰に何を売り、何が増えれば利益が増えるのかです。
半導体市場が成長しても、メモリ価格が下がればメモリメーカーの利益が伸びないことがあります。AI需要が強くても、顧客が設備投資を先送りすれば装置会社へすぐ仕事が届くとは限りません。逆に、半導体の販売個数がそれほど増えなくても、高性能化によって検査時間や加工難易度が上がり、特定の装置需要が伸びることも考えられます。
だから私は、「半導体関連だから買う」のではなく、「この会社は半導体産業のどこで稼いでいるのか」から考えたいです。企業の場所が分かったら、次に見るべきなのは、その企業の決算や受注、顧客、設備投資、競争力です。ここから、半導体関連銘柄へ実際に投資するときに何を確認すればいいのかへつなげていきます。

半導体関連銘柄って、本当にいろいろな会社があるのですね。
「何をしている会社か」だけでなく、半導体需要がどう利益につながるのかまで考えてみたいです。
半導体を「企業」や「ビジネス」の側からもっと知りたい方へ
半導体メーカーだけでなく、ファブレス、ファウンドリ、製造装置、材料など業界全体のつながりを知りたい場合は、『60分でわかる! 半導体ビジネス 最前線』のような入門書も理解を深める助けになります。
半導体関連銘柄へ投資するときに見るポイント|「AIで伸びる」だけでは足りない
しかし、ここまで半導体メーカー、材料、製造装置、加工、検査、パッケージまで見てくると、それだけでは投資判断としてかなり足りないことが分かります。
実際、2026年の半導体投資環境は非常に強く、SEMIは2026年7月時点で世界の半導体製造装置販売額を前年比23.2%増の1,659億ドルと予測しています。AI向けの先端ロジックやHBMだけでなく、テスト装置や先端パッケージまで投資が広がっています。ところが、これだけ市場全体が成長していても、すべての半導体関連企業へ同じように利益が流れるわけではありません。
キオクシアならNANDの販売量や価格、東京エレクトロンなら半導体メーカーの設備投資、ディスコなら精密加工需要、アドバンテストなら半導体の高性能化によるテスト需要など、確認すべき数字が違います。さらに需要が強くても、競争に負けてシェアを落とせば利益は増えませんし、業績が伸びても、その期待がすでに株価へ大きく織り込まれている場合もあります。
だから私は半導体関連銘柄を見るとき、「半導体市場が伸びるか」→「その会社の商品が必要になるか」→「売上や利益へつながるか」→「その成長を株価がどこまで織り込んでいるか」という順番で考えたいです。ここでは、実際に企業の決算やIR資料を見るときに何を確認すればいいのかを整理していきます。
「半導体関連」というだけで買わない|まず何で稼ぐ会社なのかを見る
ここまで見てきたように、キオクシア、東京エレクトロン、ディスコ、アドバンテストはすべて半導体関連銘柄ですが、利益が発生する場所はまったく違います。
キオクシアならNANDやSSDが売れることで売上が増えます。東京エレクトロンなら半導体メーカーが設備を増強・更新すると製造装置の需要につながります。ディスコならウエハーの加工量や高性能半導体の加工難易度が重要になり、アドバンテストならAIアクセラレータやHBMなどの複雑化によってテスト需要が増える可能性があります。アドバンテストも2026年7月、先端SoCやAIアクセラレータ、チップレット化によってテストパターンが増え、半導体テストそのものが複雑になっていると説明しています。
つまり最初の問いは、「半導体関連ですか?」ではなく、「何を売って、誰からお金をもらっている会社ですか?」です。ここが分からない状態では、決算の数字が良くても悪くても、その理由を判断できません。
その会社が「どの工程」で稼いでいるかを見る
例えば半導体製造装置メーカーなら、「AI半導体が売れている」というニュースより一段先を考える必要があります。半導体メーカーが新しい工場を建てるのか、既存工場へ新しい装置を入れるのか、製造プロセスが変わることでその企業の装置が追加で必要になるのかを見るわけです。
材料メーカーなら、ウエハー投入量や先端プロセスで使われる材料量、加工企業ならウエハーの薄化やチップレット化、テスト企業ならテスト時間やテスト項目の増加など、同じ半導体需要でも確認するポイントが変わります。
私はここを、「半導体需要」という大きな川から、その企業までどんな水路がつながっているのかを見る作業だと考えると分かりやすいと思います。水路が分かれば、決算で何を見るべきかも自然に決まってきます。
AI需要の恩恵を本当に受けるのかを見る
分かりやすいのが半導体製造装置です。SEMIは2026年のウェーハファブ装置市場を前年比23.1%増の1,439億ドルと予測しており、先端ロジックやHBM向けDRAMへの投資が大きな成長要因になっています。さらにテスト装置も前年比31.0%増と予測されており、AI・HBMの高性能化が後工程にも需要を広げています。
ただし、同じ製造装置メーカーでもAI需要との距離は違います。東京エレクトロンは2026年4月の決算説明で、先端ロジックやHBM向けの設備需要が強く、先端パッケージ分野でも複数製品の採用が進んでいると説明しています。 一方、自動車や産業機器向け半導体が中心の企業なら、AIデータセンター投資より、自動車生産や工場設備投資の方が業績へ大きく影響することもあります。
だから「AI関連です」と書かれているだけではなく、私はAI関連製品が売上のどこに入り、顧客が誰で、会社全体の利益へどの程度影響するのかまで確認したいです。AI半導体が実際に設置される場所まで広げて考えると、データセンター関連銘柄で整理した電力・冷却・通信とのつながりも見えてきます。
顧客が誰なのかを見る|「誰が設備投資するか」で業績が変わる

半導体関連企業を調べるとき、「何を売っているか」と同じくらい重要なのが誰に売っているかです。特に製造装置やテスト装置では、世界に巨大な顧客が限られているため、一社の設備投資計画が業績へ大きく影響する場合があります。
例えばアドバンテストは、直近年度の売上高の約50%を上位5社の顧客が占めているとリスク情報で開示しています。同社自身も、大口顧客の投資判断や購買方針が変われば、市場全体の変動以上に業績へ影響する可能性があると説明しています。
これは「顧客集中=悪い会社」という意味ではありません。世界トップクラスの半導体メーカーから継続的に採用されることは、その企業の技術力を示すこともあります。一方で、特定顧客の新製品投入や設備投資が一巡すれば、売上が大きく動く可能性もあります。
そのため私は、顧客は誰か、上位顧客への依存度は高いか、その顧客は何へ投資しているかをセットで見たいです。具体的な企業名が開示されていなくても、ロジック、DRAM、NAND、自動車など「顧客の種類」が分かるだけで業績の見方はかなり変わります。
設備投資サイクルを見る|半導体には「作りすぎ」がある
需要が強くなると半導体メーカーは工場や装置へ投資します。しかし各社が一斉に生産能力を増やすと、数年後には供給量が需要を上回り、価格下落や設備投資の縮小につながることがあります。これが「シリコンサイクル」と呼ばれる半導体業界特有の循環です。
ディスコも事業リスクとして、半導体市場は需給バランスによって変動するシリコンサイクルの影響を受け、顧客が設備投資を凍結したり生産を減らした場合には業績へ影響する可能性があると説明しています。 実際、同社は顧客の投資意欲が短期間で大きく変化するため、業績予想を基本的に一四半期先までとしているほどです。
2026年はAI投資を背景に設備投資が非常に強く、SEMIは2028年まで半導体製造装置市場の拡大を予測しています。 ただ、投資家として重要なのは「今が好調だから今後もずっと同じ」ではなく、現在の需要に対して、どれだけ新しい生産能力が作られようとしているのかを見ることだと思います。
受注・在庫を見る|「需要がある」と「売上になる」は同じではない
例えば装置メーカーなら、顧客が設備投資を決めて受注してから、装置を製造・出荷し、顧客が検収して売上になるまで時間がかかることがあります。そのため受注が増えていても、まだ売上へ出ていない場合があります。反対に、過去の受注残によって足元の売上が好調でも、新しい受注が減っているなら、その先は注意する必要があります。
半導体メーカーでは在庫を見る意味も大きくなります。需要を上回って生産すれば在庫が積み上がり、値下げや減産につながる可能性があります。一方、需給が引き締まれば価格が上昇し、利益率が急速に改善することもあります。キオクシアも2026年のInvestor Dayで、NAND市場には依然として周期性がある一方、AIインフラ向けSSDや複数年契約を増やすことで収益の安定性を高めようとしています。
ここでは一つの数字だけを見るのではなく、受注 → 出荷 → 売上 → 在庫 → 次の設備投資という流れで見ることが重要だと思います。
技術的な参入障壁を見る|「代わりがいる会社か」を考える
半導体工場では、装置や材料を変更すれば製造条件も変わるため、顧客が長期間かけて性能や品質を確認します。一度、量産工程へ正式に採用されれば、その実績や顧客との共同開発が競争力になることがあります。東京エレクトロンもIR資料で、顧客の量産工程へ装置が採用されるPOR(Process of Record)を重要な指標としており、HBM、先端ロジック、先端パッケージなどで採用を拡大しています。
確認したいのは、単に「世界シェアが高い」という数字だけではありません。技術力、特許、顧客との共同開発、次世代プロセスでの採用、品質、サポート体制、代替の難しさまで見る必要があります。
特に半導体は技術の変化が速いため、「現在のシェアが高い会社」と「次世代でも選ばれる会社」は必ずしも同じではありません。私は決算資料を見るとき、現在の売上だけでなく、次世代製品で採用が進んでいるかにも注目したいです。
PERが高いから成長株、ではない|期待がどこまで株価に入っているかを見る
例えばPERが高い企業は、「将来の利益が大きく成長する」と市場から期待されている可能性があります。しかし、PERが高いこと自体が成長力の証明ではありません。市場が利益成長を先に期待して株価を上げた結果、PERが高くなっているだけの場合もあります。
私ならPERを見るとき、単純に「20倍だから安い」「50倍だから高い」とは判断しません。今後のEPS成長率、過去のPERレンジ、競合企業との比較、利益率、業績予想の上方・下方修正などと一緒に見ます。
特に半導体株では、市場が好調なときほど利益予想が上がり、株価も先回りして上昇しやすい一方、設備投資のピークが見え始めると、業績がまだ伸びていても株価が先に下がることがあります。だから私は、「会社が伸びるか」と「今の株価からさらに上がれるか」を分けて考えたいです。
「AIで伸びる」より「どう利益になるか」を見る
しかし産業構造まで追ってみると、市場が伸びることと、一社の利益が伸びることの間にはいくつもの条件があると分かります。
まずその会社が何を売っているのか。その商品は半導体産業のどの工程で使われるのか。AI、自動車、データセンターなど、何の需要が伸びれば必要になるのか。誰が顧客で、その顧客は設備投資を増やしているのか。受注や在庫はどうなっているのか。そして、その会社には簡単に他社へ置き換えられない技術があるのか。ここまで確認して、ようやく「半導体市場の成長が、この会社の利益へどう届くのか」が見えてきます。
さらに投資では、その成長期待がすでに株価へどこまで入っているのかを見る必要があります。良い産業、良い企業、良い株価は、それぞれ別の話です。
私は今後、半導体関連銘柄を見るときに「AIで伸びる会社はどこ?」から始めるのではなく、「この会社の商品を誰が買い、何が増えたら、その会社の利益が増えるのか?」から考えたいです。この問いを持つだけでも、ニュースの「半導体関連株上昇」という言葉にそのまま飛びつくことはかなり減ると思います。

半導体市場が伸びるだけでは、その会社の利益が増えるとは限らないのですね。「何が増えれば利益が増える会社なのか」まで調べてから投資を考えたいです。
半導体産業にはどんなリスクがある?|成長産業でも「ずっと右肩上がり」ではない
実際、2026年の市場環境だけを見ると勢いは非常に強く、SEMIは世界の半導体製造装置販売額が2026年に前年比23.2%増の1,659億ドル、2028年には2,295億ドルまで拡大すると予測しています。AI向け先端ロジック、HBM、テスト、先端パッケージなど、投資先も広がっています。
しかし、半導体産業の歴史を見ると、長期的に需要が増えることと、毎年安定して企業利益が増えることはまったく別の話です。需要を見込んで各社が工場を作りすぎれば供給過剰になりますし、一つの工場へ巨額の資金を投じたあとで需要が変わることもあります。技術が変われば、いま強い装置や材料が使われなくなる可能性もあります。さらに米中対立、輸出規制、台湾への製造集中など、企業努力だけではコントロールできないリスクもあります。
私は半導体関連銘柄を見るとき、成長ストーリーを調べたあとに、必ず反対側から「この成長シナリオが崩れるとしたら何が原因だろう?」と考えたいです。ここでは、半導体産業特有の景気循環から巨額設備投資、技術競争、地政学、そしてAI投資そのものが想定どおり続かない可能性まで整理していきます。
半導体には景気サイクルがある|需要が伸びても「作りすぎ」が起きる
半導体需要が強くなると、メーカーは工場や製造装置へ投資して生産能力を増やします。しかし工場はすぐには完成しないため、各社の増産が実際の供給へ反映されたころには需要環境が変わり、供給量が多くなりすぎることがあります。
特にメモリはこの動きが分かりやすい分野です。キオクシアは2026年6月に提出した有価証券報告書で、フラッシュメモリ市場には周期的・短期的な変動があり、需給悪化時には販売価格の下落や収益性低下につながる可能性を説明しています。実際、過去の需給悪化を受けて2022年10月から2024年3月まで減産を行いました。
製造装置メーカーも無関係ではありません。ディスコは、半導体メーカーがダウンサイクルで設備投資を凍結したり減産したりすれば、自社業績へ悪影響を及ぼす可能性があると明記しています。
つまり、「半導体需要が長期で増える」→「企業利益も毎年増える」ではありません。長期の成長トレンドの中にも、供給過剰、価格下落、減産、設備投資縮小という谷があります。株価はその変化を業績より先に織り込むこともあるため、好調なときほど供給能力がどこまで増えているのかを見ておきたいです。
巨額の設備投資|需要予測を外すと負担も大きくなる
最先端半導体を作るには、建物だけでなく露光、成膜、エッチング、洗浄、検査など非常に高価な装置を大量にそろえる必要があります。そのため需要が伸びると予想して工場を建てても、実際の需要が想定を下回れば、大きな固定費や減価償却費が残ります。
現在はAI需要が非常に強いため、設備投資額も歴史的な水準へ拡大しています。TSMCは2026年1月に年間設備投資を520億~560億ドルとしていましたが、AI需要の拡大を背景に、7月には600億~640億ドルへ引き上げました。2026年第2四半期だけでも設備投資は157億ドルに達しています。
もちろん現在のTSMCは顧客需要を確認しながら投資を増やしています。それでも投資家として覚えておきたいのは、設備投資には「将来の需要を先に信じてお金を使う」という性質があることです。工場が完成するまでには時間がかかり、その間に半導体需要、競争環境、技術、製品構成が変化する可能性があります。
だからメーカーを見るなら「工場を増やしている=成長」と考えるだけでなく、その設備を十分に稼働させられる需要があるのか、投資額に対してどれだけ利益を生み出せるのかまで確認したいです。反対に製造装置メーカーを見る場合、この巨額設備投資そのものが売上機会になります。同じ出来事でも、産業のどこにいるかによって意味が変わります。
技術進化が非常に速い|今の強みが次世代でも続くとは限らない
しかし半導体では、現在の技術で強いことと、5年後も同じ技術で強いことは別です。製造プロセスの微細化、GAA、チップレット、先端パッケージ、HBMの積層化など、半導体の作り方そのものが変化し続けています。
このリスクは、実際に日本企業も認識しています。ディスコは事業リスクとして、現在主力となっている精密ダイヤモンド砥石に代わる加工技術が登場すれば業績へ影響する可能性があると説明し、レーザーやプラズマを使った新しい加工技術も開発しています。 東京エレクトロンも業績予想のリスク要因として、半導体市場の変化だけでなく急速な技術革新へ対応できるかを挙げています。
私はここが、半導体関連銘柄で「現在の世界シェア」だけを見てはいけない理由だと思います。EUV、2nm、HBM、先端パッケージなど次の世代になったとき、その会社の装置や材料が引き続き必要なのか。むしろ工程が増えて需要が拡大するのか。それとも別の技術へ置き換わるのかを見る必要があります。
強い企業とは、今の技術で勝っている会社だけではなく、技術が変わったあとにも必要とされる会社なのだと思います。
米中対立・輸出規制|売りたい場所へ売れないこともある
そのため、企業の技術力や需要とは別に、政府の政策によって販売できる製品や地域が変わる可能性があります。経済産業省も2026年6月改訂の「半導体・デジタル産業戦略」で、半導体を産業競争力と経済安全保障の両面から重要な分野として位置づけています。
米国の対中輸出規制は、その分かりやすい例です。2026年1月には米商務省BISがルールを変更し、NVIDIA H200やAMD MI325Xなど一定の高性能半導体について、条件を満たした中国向け輸出を一律禁止ではなく個別審査へ変更しました。つまり規制は固定されたものではなく、政治や安全保障上の判断によって内容が変わります。
実際、NVIDIAは輸出規制によって中国向け製品の需要や在庫へ大きな影響を受けてきました。同社は規制変更によってH20関連で2026年度第1四半期に45億ドルの費用を計上したことを開示しており、その後も中国向けデータセンター事業を業績予想へ慎重に織り込んでいます。
そしてこの影響はNVIDIAだけではありません。中国の半導体メーカーへ装置を販売する日本企業にも、輸出規制や中国の設備投資動向が影響します。東京エレクトロンも中国向け投資と追加輸出規制について投資家から質問を受けており、日本政府の方針に沿って対応するとしています。
半導体関連銘柄を見るなら、「需要があるか」だけでなく「その需要へ実際に製品を届けられるか」まで考えなければならない時代になっています。
台湾への生産集中|地政学だけでなく地震・電力もリスクになる
TSMCは米国、日本、欧州でも生産拠点を広げていますが、2025年時点でも4つの12インチGIGAFAB、4つの8インチ工場、1つの6インチ工場を台湾で運営し、今後も新竹・高雄で2nm工場や先端パッケージへの投資を進めています。
ここで考えたいのは、「台湾有事」という一つのシナリオだけではありません。TSMC自身もリスク管理で、地政学的緊張だけでなく、地震、台風、干ばつ、サイバー攻撃、サプライチェーン寸断、電力・水不足などを事業継続上のリスクとして挙げています。 実際、2024年4月と2025年1月の台湾の地震では、在庫や工場設備などに被害が発生しました。
半導体は、一つの工場が止まったから翌日から別の工場で同じ製品を大量生産できる産業ではありません。工程が非常に複雑で、顧客ごとに製造条件も異なります。そのため重要な製造能力が特定地域へ集中していること自体が、世界のサプライチェーンリスクになります。
現在TSMCが米国や日本、欧州へ工場を広げている背景にも、需要増への対応だけでなく、製造拠点を分散してサプライチェーンを強くする意味があります。投資家としては「台湾で何か起きるか」を予想するのではなく、「もし一部の生産が止まった場合、その企業はどれだけ影響を受けるのか」を考える方が現実的だと思います。
AI投資が期待ほど伸びない可能性|今の強さをそのまま未来へ延ばさない
むしろ非常に強く、NVIDIAの2027年度第2四半期データセンター売上高は890億ドルと前年同期比117%増となり、Vera Rubinも量産段階へ入っています。SEMIもAI主導の設備投資拡大が2028年まで続くと予測しています。
ただ、現在の成長率が永遠に続くと考えることは別の話です。AIデータセンターにはGPUだけでなく土地、建物、電力、冷却、通信設備まで必要で、投資額は非常に大きくなります。NVIDIAも2026年8月の決算説明で、一部の最先端AI企業について、サービス需要は強い一方、成長速度が企業自身のバランスシートや信用力を上回っており、AIインフラ確保には資金面が制約になるケースがあると説明しています。
つまりAIそのものが普及しても、AIインフラへの設備投資が毎年同じ速度で増えるとは限りません。企業がAIから十分な収益を得られなければ投資ペースを抑える可能性がありますし、電力確保や資金調達がボトルネックになることもあります。
これは「AIバブルは崩壊する」と予想する話ではありません。むしろ私は、強い需要が続いている今だからこそ、その成長を支えるお金・電力・顧客収益まで確認しておきたいです。AIデータセンターがどれほど多くの設備によって成り立っているかは、データセンター関連銘柄の記事と合わせて見るとさらに分かりやすくなります。
成長産業でも「ずっと右肩上がり」ではない
だからこそ私も最初は、「半導体需要はこれから増えるのだから、関連企業も長期的に伸びるだろう」と考えがちでした。
しかし実際には、需要が増えるほど各社が設備投資を行い、その結果として供給過剰になることがあります。最先端工場には巨額のお金が必要で、需要予測を外せば投資負担が残ります。技術が変われば現在の主力商品が必要なくなる可能性もあり、輸出規制や地域集中のように企業自身ではコントロールしにくいリスクもあります。そして現在非常に強いAI需要についても、投資資金や電力、収益化まで考えれば、同じ成長率が永久に続くと決めつけることはできません。
だから私は、「半導体は成長産業か?」だけではなく、「どんな状況になると、この会社の利益が減るのか?」も必ず考えたいです。強みを知ることと同じくらい、弱くなる条件を理解しておくことが、半導体関連銘柄を長く追ううえでは重要だと思います。
このリスクを理解したうえで見ると、次に気になるのは、それでも半導体市場がこれからどこへ広がっていくのかです。AIだけでなく、自動車、ロボット、電力、エッジAI、HBM、先端パッケージまで、今後の半導体需要を生み出す場所を整理していきます。

半導体はこれから伸びそうでも、ずっと順調とは限らないのですね。
伸びる理由だけでなく、どんなときに利益が減るのかも一緒に確認しておきたいです。
半導体と地政学の関係まで深く知りたい方へ
なぜ半導体が経済安全保障の重要テーマになったのか、米国・中国・台湾・日本などの関係まで詳しく知りたい場合は、クリス・ミラー著『半導体戦争』がかなり読み応えのある一冊です。
半導体市場は今後どうなる?|AIの先にも広がる半導体需要
確かに2026年現在、半導体投資を強く引っ張っているのはAIです。SEMIは2026年7月、世界の半導体製造装置販売額が2026年に前年比23.2%増の1,659億ドル、2028年には2,295億ドルへ拡大すると予測しており、その背景としてAI向け先端ロジック、HBMを含む先進メモリ、テスト、先端パッケージへの投資を挙げています。
ただ、半導体が使われる場所を広げて考えると、成長テーマはAIデータセンターだけではありません。自動車では電動化やADAS、工場ではAIを搭載したロボット、電力分野ではSiCなどのパワー半導体、さらにAIそのものもクラウドだけでなくスマートフォン、自動車、ロボットなど機器側で処理する「エッジAI」へ広がろうとしています。SEMIも2026年4月時点で、データセンターだけでなくエッジデバイス向けAIチップ需要を今後の300mm半導体設備投資を押し上げる要因として挙げています。
私はここから、半導体の将来性を「AIブームがいつまで続くのか」という一つの問いだけで考えない方がいいと思うようになりました。計算する場所が増える、記憶するデータが増える、機械が賢くなる、電気をより効率よく使う。こうした社会の変化そのものが、違う種類の半導体需要を生み出します。
ここでは、これから半導体需要を生み出す可能性がある場所を一つずつ見ながら、最後に日本企業のどの技術へ仕事が流れる可能性があるのかまで考えていきます。
AI・データセンター|まずは現在最大の成長ドライバーを見る
生成AIでは膨大な計算を行うためGPUなどの高性能ロジック半導体が必要になり、そのGPUへ大量のデータを送るHBM、データを保存するNAND、サーバー同士をつなぐネットワーク半導体、大量の電力を制御する半導体まで必要になります。
そして現在は、その需要に対応するため「半導体を作る側」の投資も拡大しています。SEMIは2026年のウェーハファブ装置市場を前年比23.1%増の1,439億ドルと予測し、ファウンドリ・ロジック向けではAIアクセラレーターやHPC向け先端ノード、DRAMではHBM関連投資を主な成長要因として挙げています。テスト装置についても2026年は31.0%増と予測されており、AI需要が前工程だけでなく後工程へ広がっていることが分かります。
つまりAI・データセンター需要を見るなら、私はGPUの販売数量だけではなく、GPU → HBM → 製造装置 → パッケージ → テストまで追いたいです。AIデータセンターそのものにはさらに電力、冷却、建設、光通信も必要になるため、半導体の外側まで含めた産業構造はデータセンター関連銘柄の記事で整理しています。
自動車・EV|一台のクルマに必要な半導体が増えていく
現在の自動車には、モーターやバッテリーを制御するパワー半導体だけでなく、ADAS、カメラ、レーダー、車載ネットワーク、ディスプレイ、マイコン、SoCなどさまざまな半導体が搭載されています。
例えばルネサスは2026年2月、ADAS向けSoC「R-Car V4H」がトヨタの新型RAV4向け制御ユニットに採用されたと発表しています。この半導体はカメラやレーダーの情報処理、ドライバーモニター、駐車支援などを担います。つまりクルマが単なる「移動する機械」から、周囲を認識し、判断し、制御するコンピューターへ近づくほど、計算・センシング・制御用半導体が増えていきます。
電動化ではパワー半導体も重要です。三菱電機は2026年6月、EVやPHEVの駆動用インバーターなどに使う第5世代SiC-MOSFETのサンプル出荷を開始しており、富士電機も同月、電動車向けSiCパワー半導体モジュールの小型化・低損失化につながる技術を発表しています。
私は自動車向け半導体を見るなら、単純な自動車販売台数だけではなく、一台あたりに搭載される半導体の量と価値がどう変わるのかにも注目したいです。自動車そのものの進化と半導体の関係は、トヨタ自動車の強みと合わせて見ると、メーカー側からも考えやすくなります。
ロボット・工場自動化|AIが「現実世界」で動き始める

生成AIというと、これまでは画面の中で文章や画像を作るイメージが中心でした。しかし今後は、AIがカメラやセンサーから現実世界を認識し、ロボットや機械を実際に動かすフィジカルAIが大きなテーマになる可能性があります。
経済産業省は2026年にAIロボティクス戦略をまとめ、製造だけでなく物流、建設、小売、介護、災害対応など、これまでロボット導入が難しかった分野へ利用範囲が広がる可能性を示しています。また今後の競争ではAIモデルだけでなく、計算、制御、駆動、知覚を組み合わせる能力が重要になると整理しています。
実際、NVIDIAも2026年7月に新しいJetson Thorシリーズを発表し、ロボットやエッジAI向けに展開しています。日本でもファナック、日立、川崎重工、安川電機など幅広い企業がフィジカルAI関連の取り組みに関わっています。
ここで半導体投資につながるのは、ロボットが「動く機械」から「見て、考えて、判断して動く機械」になることです。そうなれば、AI演算用半導体、メモリ、イメージセンサー、マイコン、通信半導体、パワー半導体などを一つの機械へ組み合わせる必要があります。
電力・エネルギー|電気を効率よく使う半導体の重要性が高まる
高性能なGPUも電気がなければ動きませんし、EVではバッテリーの電力を効率よくモーターへ届ける必要があります。太陽光や風力発電でも、作った電力を送電網や機器で使える形へ変換しなければなりません。
そこで重要になるのがパワー半導体です。特にSiCは、電力変換時の損失を減らせることから、EVだけでなく産業機器、再生可能エネルギー、そしてAIデータセンターの電源でも利用範囲が広がっています。ロームは2026年4月に第5世代SiC MOSFETを発表し、EVの駆動系に加えてAIサーバーやデータセンターの電源用途も想定しています。三菱電機も2026年度の事業方針で、データセンター電源など新しい市場でSiC需要が伸びていると説明しています。
私は半導体の今後を考えるとき、「計算能力をどこまで上げるか」と同じくらい、その計算能力へどれだけ効率よく電気を届けられるかが重要になると思います。AI・EV・再生可能エネルギーという別々に見えるテーマが、パワー半導体では一つにつながってきます。
エッジAI|AIはデータセンターの外へ広がっていく
しかし今後は、すべての処理を遠くのデータセンターへ送るのではなく、スマートフォン、自動車、カメラ、ロボットなど「利用する場所の近く」でAIを動かすケースも増えていくと考えられます。これがエッジAIです。
エッジ側で処理するメリットは、通信を待たずリアルタイムに判断できることや、ネットワークがない場所でも動けること、送信するデータ量を減らせることなどです。ロボットが障害物を見てその場で止まる、自動車がカメラ映像から危険を判断する、といった処理では特に重要になります。
NVIDIAは2026年7月、ロボティクスやビジュアルAIなどをエッジ側で処理する新しいJetson Thor製品を発表しており、コンパクトで省電力な機器上でも高度なAIモデルを動かす方向へ開発を進めています。
ここで私は、AI半導体需要を「データセンターに置かれる高性能GPUの数」だけで考えない方がいいと思います。クラウド側では巨大なAI半導体が増え、エッジ側ではより小型・省電力なAIチップ、メモリ、センサー、通信半導体が増える。AIが社会へ広がるほど、半導体が置かれる場所そのものが増えていく可能性があります。
HBM・先端パッケージ|「小さくする」だけではない性能競争へ
これまで半導体の性能向上といえば、「トランジスタを小さくして一つのチップへたくさん詰め込む」という微細化が中心でした。しかしAI向け半導体では、それだけでなく複数のチップをどう組み合わせるかが非常に重要になっています。
GPUの周囲へHBMを配置すれば大量のデータを高速に届けることができます。さらにチップレットを使えば、役割の異なる複数のチップを一つのパッケージとして組み合わせることもできます。そのため今後は、基板、接続、封止、薄化、切断、放熱、テストといった後工程の技術が、半導体性能そのものへより大きく影響する可能性があります。
SEMIは2026年7月の予測で、テスト装置市場を2026年に31.0%増、組立・パッケージング装置を9.6%増と見込み、2028年まで成長が続くとしています。その理由としてAI・HBMデバイスの複雑化や、先進・異種チップを組み合わせるパッケージ技術の拡大を挙げています。
日本ではTOWAが2026年8月から次世代コンプレッションモールディング装置「INNOMS」の販売を開始するほか、イビデン、レゾナック、ディスコ、アドバンテストなど、先端パッケージやその周辺工程に関わる企業があります。
私は今後の半導体関連銘柄を見るなら、「どこまで微細化できるか」だけでなく、「複数のチップをどう組み合わせるか」という競争にも注目したいです。
日本企業にとってどこが成長機会になるのか
AI向けロジックやHBMの需要が増えれば、それを量産するために成膜、エッチング、洗浄、検査などの製造装置が必要になります。先端パッケージが複雑になれば、ウエハーの薄化・切断、モールディング、基板、材料、テストの難易度も上がります。EVやデータセンターで電力需要が増えれば、SiCなどのパワー半導体にも成長機会があります。
そして、この中には日本企業がすでに世界で競争力を持っている場所が多くあります。材料、製造装置、加工、検査、パッケージ。前に見た「日本は半導体そのものより、作るための技術に強い」という特徴が、AI時代にはむしろ重要になる可能性があります。
ただし、「市場が伸びる=日本企業が必ず勝つ」ではありません。私は、次世代プロセスでその会社の商品が本当に採用されているのか、顧客の設備投資から実際に受注が増えているのか、競合に対してシェアを守れているのかまで確認したいです。
半導体の未来を予想するより、その未来を実現するために絶対に必要になる技術は何かを考える。日本の半導体関連銘柄を見るなら、この視点がかなり重要だと思います。
半導体需要の拡大は、産業全体へ広がっていく
AIデータセンターではGPUやHBM、ネットワーク、ストレージが必要になります。自動車ではEV・ADASの普及によって計算、制御、センシング、パワー半導体が増えていきます。ロボットが賢くなればAIチップやセンサーが必要になり、電力需要が増えればパワー半導体の重要性も高まります。そしてAIがスマートフォン、自動車、ロボットなどの端末側へ広がれば、エッジAIという新しい半導体需要も生まれます。
さらに、その半導体を高性能化するためにはHBMや先端パッケージが必要になり、そこから材料、製造装置、加工、検査まで仕事が広がります。だから私は、半導体市場の将来性を一つの完成チップだけで考えず、その需要が産業のどこへ波及していくのかを見ることが重要だと思います。
一方で、前に見たようにシリコンサイクルや設備投資、技術変化などのリスクもあります。伸びる市場を見つけるだけではなく、「その需要が本当にこの企業の利益へ届くのか」まで確認する。この考え方は、半導体市場がこれからさらに大きくなったとしても変わらないと思います。

半導体の成長はAIだけではないのですね。
自動車やロボット、電力まで広げて、その需要を作るために必要な企業はどこかを考えてみたいです。
まとめ|半導体関連銘柄は「産業のどこにいる会社か」から考える

半導体について調べ始めたときの私は、「AIが伸びるならNVIDIAのGPUが売れる」「日本なら東京エレクトロンやアドバンテストが半導体関連銘柄として有名」といった、企業名を点で見るくらいの理解でした。
半導体そのものについても、スマートフォンやパソコンの中に入っている小さな電子部品というイメージが強く、「半導体」という一つの商品があるような感覚で見ていたと思います。
しかし、ここまで調べてみると、その見方はかなり変わりました。半導体には計算するロジック、記憶するメモリ、電力を制御するパワー半導体、周囲を認識するセンサーなどさまざまな役割があります。そして一つの半導体を作るだけでも、設計、シリコンウエハー、成膜、露光、エッチング、洗浄、検査、切断・研削、パッケージ、最終テストまで、多くの企業が関わっています。
だから「半導体関連銘柄」という言葉だけを見ても、その企業が何で稼いでいるのかはほとんど分かりません。キオクシアと東京エレクトロン、信越化学、ディスコ、アドバンテストはすべて半導体関連銘柄ですが、需要が利益へ届く道はまったく違います。
私がこの記事を通して一番持ち帰りたいと思ったのは、企業名をたくさん覚えることではなく、「この会社は半導体産業のどこにいて、何が増えれば利益が増えるのか」を考えることです。
半導体関連銘柄を見るなら、まず3つの問いから始める
そこで私は、まず3つの問いから考えるのが分かりやすいと思いました。
「何を売っている会社なのか」
「誰がそれを買うのか」
「何が増えれば利益が増えるのか」
例えば半導体そのものを売る企業なら、何の半導体なのかを見る。製造装置なら、その装置がどの工程で使われ、顧客が設備投資を増やすとどれくらい需要が増えるのかを見る。材料なら、半導体の生産量だけでなく、微細化や先端パッケージによって一つの半導体に使われる量や要求性能が変わるのかを見る。検査や加工なら、高性能化・複雑化が仕事を増やすのかを見る。
この3つが分かれば、「AI関連」「半導体関連」という大きなテーマから、一社の事業へかなり近づけます。そのあとに、世界シェア、競争力、顧客、受注、設備投資、利益率、PERなどを確認していけば、数字を見る意味も分かりやすくなると思います。
日本株では「半導体を作る会社」だけを探さなくていい
1980年代と比べれば、日本企業の半導体デバイス全体での存在感は大きく低下しました。それだけを見ると、「日本にはもう世界で戦える半導体企業が少ない」と考えてしまいます。
しかし製造工程まで広げれば、景色は変わります。シリコンウエハー、フォトレジスト、洗浄・成膜・エッチング装置、精密加工、検査、テスト、パッケージ材料など、世界の半導体を作るために必要になる技術には、日本企業が強い分野がいくつもあります。
これは投資先を考えるうえでも重要です。AI半導体の最終的な勝者がどの企業になるのかを当てなくても、AI向けGPUやHBMの生産競争が激しくなれば、製造装置や材料、加工、検査への需要が増える可能性があります。EVが伸びればパワー半導体が必要になり、ロボットやエッジAIが広がればセンサー、マイコン、通信、電力制御など新しい需要が生まれます。
だから日本株を見るなら、「次のNVIDIAはどこ?」だけではなく、「世界中が半導体を作ろうとしたときに必要になる日本企業はどこ?」という探し方も面白いと思います。
これからも「需要 → 工程 → 企業 → 利益」の順番で追いかけたい
今はAIデータセンターやHBMが大きなテーマですが、数年後にはフィジカルAI、エッジAI、自動運転、電力インフラ、次世代パッケージなど、別のテーマがさらに大きくなっているかもしれません。
だからこそ、今注目されている企業名を覚えるだけでは足りません。新しいテーマが出てきたときに、
何の需要が増えるのか
↓
どんな半導体が必要になるのか
↓
どの製造工程が難しくなるのか
↓
そこにどんな企業がいるのか
↓
その需要が本当に売上・利益へ届くのか
という順番で考えれば、将来新しい半導体関連銘柄が出てきても、自分で調べられるようになります。
もちろん最後には株価も重要です。良い産業にいる、競争力の高い企業だからといって、どんな価格でも魅力的とは限りません。成長期待がすでに株価へ織り込まれている可能性もあります。だから私は、産業を理解すること、企業を理解すること、そして株価を判断することを分けて考えたいです。
「半導体関連だから」ではなく、自分で理由を説明できる銘柄へ
しかし調べていくほど、半導体という言葉の中にはまったく違う企業が存在し、それぞれ違う理由で利益を得ていることが分かりました。
計算する半導体、記憶する半導体、電気を制御する半導体、見る・感じる半導体があり、それを作るために材料、製造装置、加工、検査、パッケージの企業がいます。さらに需要を生み出す側にも、AI、データセンター、自動車、ロボット、エネルギー、エッジAIがあります。
ここまでつながると、「半導体関連銘柄」という言葉はゴールではなく、むしろ調べ始める入口なのだと思います。
私がこれから企業を見るときに大切にしたいのは、
「なぜこの会社は半導体関連銘柄なのか」
「何が増えれば、この会社の利益が増えるのか」
「その強みは次の技術でも続くのか」
「そして、その期待を考えても今の株価は魅力的なのか」
を自分の言葉で説明できることです。
AIや半導体という大きなテーマに乗るのではなく、半導体産業の地図の中から、自分なりに納得できる企業を探していく。今回調べたことを土台に、これから実際の決算やニュースを見ながら、半導体関連銘柄を一社ずつ追いかけていきたいと思います。

半導体って、一つの会社や一つの技術だけの話ではなかったのですね。
これからは「この会社はどこで、何をしているの?」から、自分で半導体関連銘柄を調べてみたいです。
参考資料・出典
本記事は、経済産業省やJEITA、SEMIなどの公的機関・業界団体、および各半導体・半導体関連企業が公表している資料を中心に、半導体の仕組み、種類、製造工程、AI・HBMとの関係、日本の半導体産業、関連企業、市場動向について確認したうえで作成しています。
半導体市場は技術革新や設備投資の変化が速く、企業の世界シェア、設備投資額、製品計画、量産開始時期、市場予測などは今後変更される可能性があります。より詳しく確認したい場合は、以下の公表資料もあわせてご覧ください。
半導体の基礎・政策・市場動向
AI・GPU・メモリ・半導体メーカー
- NVIDIA|CUDA Programming Guide
- NVIDIA|Rubin GPU Architecture
- NVIDIA|Sustainability Report Fiscal Year 2026
- NVIDIA|2027年度第2四半期決算
- TSMC|2025 Annual Report
- キオクシア|Investor Day 2026
- Micron|HBM4
- ルネサス|R-Car V4HのトヨタRAV4への採用
- ソニーセミコンダクタソリューションズ|イメージセンサー
日本の先端半導体・Rapidus・TSMC熊本
半導体製造装置・加工・検査
- 東京エレクトロン|半導体製造装置・製品情報
- SCREEN|半導体洗浄装置
- KOKUSAI ELECTRIC|製品・成膜プロセス装置
- レーザーテック|半導体関連検査・測定装置
- ディスコ|IR・事業情報
- アドバンテスト|半導体テスト関連情報
- 日本マイクロニクス|中期経営計画 FV26
半導体材料・先端パッケージ
- 信越化学工業|半導体シリコン事業
- SUMCO|半導体用シリコンウエハー
- 東京応化工業|事業・フォトレジスト
- TOWA|半導体製造装置・パッケージ技術
- イビデン|電子事業・ICパッケージ基板
- レゾナック|半導体・電子材料
パワー半導体・自動車・電力
最終確認日:2026年8月30日
本記事に掲載している半導体市場の予測、世界シェア、設備投資額、製品仕様、工場の建設・量産計画、各企業の取り組みなどは、上記日時点で確認できる公表資料をもとにしています。
半導体産業は技術革新や設備投資サイクルの変化が速いため、今後、数値や計画内容、量産時期、市場環境などが変更される可能性があります。
※本記事は、半導体という産業の仕組みや半導体関連企業について学ぶことを目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断を行う際は、各企業の最新の決算資料、IR情報、設備投資計画、市場環境、株価水準などをご確認のうえ、ご自身の判断でお願いいたします。
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