
みなさんがネットで注文した荷物は、いったいどんな道を通って家まで届いているのでしょうか?
物流とは、トラックで物を運ぶだけではなく、保管・荷役・ピッキング・仕分け・梱包・配送まで、たくさんの仕事がつながって成り立っています。しかも2026年の日本では、物流の2030年問題や人手不足を背景に、自動倉庫、AGV・AMR、無人フォークリフト、物流ロボット、自動運転、さらにはフィジカルAIや自動物流道路まで動き始めています。物流自動化が進むと、どんな会社が成長するのでしょうか?
今回はメーカーで商品が作られてから家に届くまでを一緒に追いながら、物流の仕組み、国の物流改革、そして注目したい物流関連銘柄までじっくり勉強していきましょう!
| 分野 | 代表的な物流関連銘柄 | 証券コード | 物流との関わり・注目テーマ |
|---|---|---|---|
| 宅配・陸運 | ヤマトホールディングス | 9064 | 宅急便・ラストワンマイル・物流DX |
| 宅配・陸運 | SGホールディングス | 9143 | 佐川急便・宅配・3PL・グローバル物流 |
| 総合物流 | NIPPON EXPRESSホールディングス | 9147 | 陸・海・空をつなぐ総合物流・国際物流 |
| 陸運 | セイノーホールディングス | 9076 | 企業間物流・共同配送・ラストワンマイル |
| 倉庫・3PL | 三菱倉庫 | 9301 | 倉庫・港湾・国際物流・不動産 |
| 倉庫・3PL | 三井倉庫ホールディングス | 9302 | 倉庫・3PL・サプライチェーン物流 |
| 物流請負 | 鴻池運輸 | 9025 | 工場内物流・請負・倉庫・製造物流 |
| 海運 | 日本郵船 | 9101 | コンテナ船・自動車船・国際物流 |
| 海運 | 商船三井 | 9104 | 海上輸送・物流・モーダルシフト |
| 物流自動化 | ダイフク | 6383 | 自動倉庫・搬送・仕分け・ピッキングシステム |
| 産業ロボット | 安川電機 | 6506 | 産業用ロボット・物流自動化 |
| 産業ロボット | ファナック | 6954 | ロボット・自動化・ピッキング |
| センサー・自動化 | キーエンス | 6861 | センサー・画像認識・自動化設備 |
| 制御・自動化 | オムロン | 6645 | センサー・制御機器・物流設備の自動化 |
| 物流DX | NEC | 6701 | AI・物流システム・データ活用 |
| 物流DX | ロジザード | 4391 | クラウドWMS・倉庫管理システム |
| 物流施設 | 三井不動産 | 8801 | MFLP・物流施設・自動化物流拠点 |
| 物流施設 | 大和ハウス工業 | 1925 | 大型物流施設・物流不動産開発 |
| 物流施設 | 三菱地所 | 8802 | 物流施設開発・物流不動産 |
- 物流とは何か、運送・配送との違いや、商品がメーカーから消費者へ届くまでの基本的な仕組み
- 物流2030年問題とは何か、ドライバー不足や荷待ち・積載率など、日本の物流が抱えている課題
- 自動倉庫・AGV・AMR・無人フォークリフト・物流ロボットなど、物流自動化が2026年現在どこまで進んでいるのか
- フィジカルAIが物流をどう変えるのか、従来のロボットとの違いや物流現場で期待されている役割
- 自動物流道路・共同配送・モーダルシフト・フィジカルインターネットなど、国が進める物流改革と今後の方向性
- ヤマトHD・SG HD・NX HD・ダイフク・NEC・三井不動産など、物流関連銘柄を「運ぶ・保管する・自動化する・支える」で見る考え方
- 物流自動化関連銘柄やフィジカルAI関連銘柄へ投資するときに、受注・人件費・設備投資・利益率など何を確認すればいいのか
- 自動化が進んでも物流現場で人が担い続ける仕事と、これから物流で働く人の役割がどう変わっていくのか
- 物流とは?|「運ぶ」だけではない商品が届くまでの仕事
- 国は日本の物流をどう変える?|2030年問題と物流革新
- 商品はどう届く?|メーカーからユーザーまで物流を追ってみる
- メーカーの工場から物流は始まる|製造と工場内物流
- 物流センターへ到着|入荷・荷下ろしの現場では何が起きている?
- 倉庫の中では何が起きている?|保管・ピッキング・仕分け・梱包
- 自動倉庫の「今」を見てみよう|2026年の物流センター
- 物流自動化はどこまで進んだ?|ロボット・無人化技術を整理
- フィジカルAIで物流はどう変わる?|「決められた動き」から「考えて動く」へ
- 倉庫を出た荷物はどう運ばれる?|幹線輸送の仕組み
- トラックだけでは物流を支えられない|モーダルシフトとは?
- 地域配送拠点から自宅へ|ラストワンマイルの難しさ
- 物流を効率化するのはロボットだけではない
- 物流は届けたら終わりではない|返品・回収する物流
- 同じ物流でも全然違う|何を運ぶかで仕事は変わる
- 自動化が進んでも、今の物流を支えているのは「人」
- 物流関連銘柄【2026年版】|メーカーからユーザーまで企業を並べてみる
- 物流関連銘柄へ投資するとき、私は何を見る?
- 物流関連銘柄のリスク|必要不可欠な産業でも安心とは限らない
- 日本の物流はこれからどうなる?|2030年・2040年の未来
- まとめ|荷物が届くことを「当たり前」と思わなくなった
- 参考資料・出典
物流とは?|「運ぶ」だけではない商品が届くまでの仕事
しかし実際に物流の中へ入ってみると、トラックで荷物を運んでいる時間は、商品が私たちの手元へ届くまでの一部分にすぎません。工場から商品が出荷され、物流センターへ運ばれ、荷物を降ろし、検品し、保管し、注文に合わせて商品を取り出し、仕分け、梱包し、再び出荷する。その裏では在庫や配送状況といった情報も動いています。
私自身、コロナ禍にとあるメーカーの物流センターで約3年間働いていました。当時は当たり前のように見ていた光景ですが、2026年の物流を改めて調べてみると、自動倉庫、AGV・AMR、無人フォークリフト、物流ロボットなど、人が担ってきた工程の一部が大きく変わり始めています。
その一方で、どれだけ技術が進んでも変わらないことがあります。それは、一つひとつの工程がつながらなければ、荷物は届かないということです。
映画『ラストマイル』で見えた、普段は見えない物流の裏側
物語の舞台となるのは、ブラックフライデーを目前に控えた巨大物流センター。世界規模のショッピングサイトから配送された荷物をきっかけに事件が発生し、止めることのできない巨大な物流網を背景に物語が進んでいきます。公式予告でも、巨大物流倉庫から次々と荷物が送り出され、配送網を通じて社会へ広がっていく様子が描かれています。
映画の内容そのものはサスペンスですが、物流センターで働いた経験がある私にとって印象に残ったのは、事件以上に、その背景にある「物流を止めることができない社会」でした。
スーパーの商品も、工場で使う部品も、病院へ届く医薬品も、ネット通販で注文した日用品も、突然空から現れるわけではありません。どこかで誰かが荷物を受け取り、動かし、仕分け、次の人へ渡しています。一つの工程だけを見ると単純な作業に見えても、それが全国規模でつながることで巨大な物流網になります。
映画を見ていると、物流とは単に「物を運ぶ仕事」ではなく、私たちの生活そのものを裏側から動かしている社会インフラなのだと改めて感じます。
『ラストマイル』という言葉は物流用語でもある
物流におけるラストワンマイルとは、集配拠点や配送センターから、家庭や企業など最終的な届け先まで荷物を運ぶ最後の区間を指します。国土交通省も、集配局や集配センターから各家庭へ届ける部分を「ラストワンマイル」と説明しています。
ただし、「最後の少し」だから簡単というわけではありません。むしろ配送先が一軒ずつ分かれ、再配達も発生するラストマイルは、物流の中でも人手が必要になりやすい部分です。国も2026年度にラストマイル配送の効率化を支援する事業を実施しており、ドライバー不足や過疎地域での配送維持は現在進行形の課題になっています。
この記事でも、メーカーから荷物の流れを追った先で、このラストマイルがなぜ物流の難所になっているのかを詳しく見ていきます。
映画『ラストマイル』公式予告|東宝MOVIEチャンネル
公式予告では、巨大物流センターのスケール感や、荷物が社会へ送り出されていく様子も見ることができます。映画を未視聴の方でも、今回の記事で扱う「物流が止まると社会に何が起きるのか」をイメージしやすい映像です。
物流と運送・配送は何が違う?
その前には巨大な物流センターがあり、さらにその前にはメーカーや工場があります。
「物流」「運送」「配送」は似た言葉ですが、範囲が異なります。
物流は、商品が供給者から必要とする人のもとへ届くまでの大きな流れ全体です。その中で、トラックや鉄道、船、航空機などを使って荷物を場所から場所へ移動させる仕事が輸送・運送です。そして物流センターや営業所などから、店舗や家庭といった届け先へ運ぶ部分を配送と呼ぶことが多くなります。
たとえば、工場で完成した商品を大型トラックで物流センターへ運び、そこで店舗ごとに仕分け、小型トラックで店舗へ届けるとします。どちらも「運ぶ」仕事ですが、その間には荷下ろし、検品、保管、ピッキング、仕分け、梱包、在庫管理といった仕事があります。
つまり、
運送・配送は物流の一部分。物流は、商品が届くまでの仕組み全体。
と考えると分かりやすいと思います。
物流を構成する6つの機能
| 機能 | どんな役割? | 具体例 |
|---|---|---|
| 輸配送 | 商品を場所から場所へ運ぶ | トラック、鉄道、船、航空貨物 |
| 保管 | 必要になるまで商品を預かる | 倉庫、物流センター、冷凍冷蔵倉庫 |
| 荷役 | 荷物を積む・降ろす・移動させる | フォークリフト、パレット搬送 |
| 包装 | 商品を守り、運びやすくする | 段ボール、緩衝材、梱包 |
| 流通加工 | 流通段階で商品へ手を加える | 値札付け、袋詰め、セット組み |
| 物流情報 | 商品・在庫・配送状況を管理する | WMS、在庫管理、配車管理 |
私が物流センターで働いていた頃も、目に入りやすいのは人やフォークリフト、荷物といった「モノ」の部分でした。しかし2026年の物流を調べるほど重要だと感じるのが、最後の物流情報です。
何万点という商品が保管されていても、「何が、どこに、いくつあるのか」が分からなければ物流センターは動きません。さらに自動倉庫、AMR、無人フォークリフトが増えていけば、人だけではなく設備同士にも正確な情報を伝える必要があります。
自動化が進むほど、モノを動かす設備と、それを制御する情報がセットになっていく。この変化は、物流自動化関連銘柄を見るときにも重要なポイントになります。
商流と物流は何が違う?
商流とは、「誰が誰に商品を販売するのか」という取引の流れです。注文、契約、決済などがこれに含まれます。一方で物流は、その取引で売れた商品そのものを実際に動かす流れです。
ネット通販なら非常に分かりやすいでしょう。
スマートフォンで商品を選び、購入ボタンを押し、決済が完了する。ここまでは数分で終わります。しかし画面に「注文完了」と表示された瞬間、商品が玄関へ現れるわけではありません。
その裏では在庫を確認し、商品を取り出し、仕分け、梱包し、配送会社へ渡し、複数の物流拠点を経由しながら最後に自宅へ届けています。
デジタル上の取引は一瞬でも、現実世界のモノは一瞬では動かせない。
ここに物流の難しさがあります。そしてAIやECがさらに成長しても、現実世界で商品を動かす物流そのものがなくなることはありません。
物流にはどんな企業が関わっている?
荷物を運ぶ会社、保管する倉庫会社、メーカーの物流業務をまとめて担う3PL、自動倉庫や搬送設備をつくるマテハン企業、物流ロボットメーカー、物流情報を管理するIT企業、そして巨大な物流施設そのものを開発する不動産会社まで、さまざまな企業が物流の一部を担っています。
たとえばダイフクのような企業が物流センターの自動化を支え、NECなどのIT企業が物流DXに関わり、三井不動産のような不動産会社が大型物流施設を開発する。これらは宅配会社とはまったく違う事業ですが、すべて同じ物流という長い流れにつながっています。
だから物流関連銘柄を見るときは、
「物流会社かどうか」ではなく、「物流のどこを支えている会社なのか」
を見る方が、産業全体を理解しやすくなります。
特にこれから人手不足がさらに深刻になれば、荷物をたくさん運ぶ企業だけではなく、少ない人数でも物流を維持できる仕組みを提供する企業の重要性も高まっていくと私は考えています。
物流は商品と社会をつなぐ「血管」
物流は、輸配送だけではありません。保管、荷役、包装、流通加工、情報までがつながり、それぞれの工程を多くの企業と人が支えています。
そして2026年、その長い物流の一部に、自動倉庫、無人フォークリフト、物流ロボット、AIといった新しい技術が入り始めています。
物流の未来を考えるなら、最先端のロボットだけを見るのではなく、メーカーから私たちの手元まで続く長い流れの中で、どこが詰まり、誰がそれを支えようとしているのかを見ることが大切です。
これは物流関連銘柄を考えるときにも、そのまま使える視点だと思います。





映画で見ると、荷物一つの向こうに大きな物流網があることが分かりますね。
運ぶだけでなく、保管や情報まで全部つながっているからこそ、毎日荷物が届くんですね。
国は日本の物流をどう変える?|2030年問題と物流革新
トラックドライバーの時間外労働規制が始まり、それによって荷物を運べなくなる。ニュースなどでもそんな説明を目にする機会が多かったからです。
しかし2026年現在の政府資料を追ってみると、日本の物流政策はすでに「2024年をどう乗り越えるか」という段階から、2030年までに物流そのものを作り替える段階へ移っています。
2026年3月31日には、新しい「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」が閣議決定されました。政府は2030年度までを物流革新の「集中改革期間」と位置付け、自動運転トラックや自動物流道路、物流DX、標準化、共同輸配送、人材確保、サプライチェーン強靱化などを一体で進める方針を打ち出しています。
つまり国が目指しているのは、単純に「ドライバーを増やす」ことではありません。
人が足りなくても荷物を運べる仕組みをつくり、企業ごとに分断されていた物流をつなぎ、トラックだけに頼らず、データ・ロボット・鉄道・船・道路まで含めて物流全体を最適化する。
物流関連銘柄を考えるうえでも、この国策の方向は無視できないと感じます。政府が物流のどこに課題を感じ、どこへ投資しようとしているのかを見ることで、今後必要とされる技術や企業も見えやすくなるからです。
「2024年問題」で物流問題は終わっていない
ただ、これは突然2024年に始まった問題ではありません。物流業界ではそれ以前から、ドライバーの担い手不足、長時間労働、荷待ち、荷役作業、EC拡大による小口配送の増加など、いくつもの課題が積み重なっていました。
特に考えさせられるのが、ドライバーが運転していない時間です。
物流センターや工場へ到着しても、すぐに荷物を積み降ろせるとは限りません。前のトラックの作業が終わるまで待ったり、到着後に検品や荷役作業を行ったりすることがあります。国の物流効率化法でも、こうした「荷待ち時間」と、積み降ろし・検品・仕分けなどの「荷役等時間」が明確に定義され、削減すべき対象として扱われています。
ドライバーが足りないなら採用を増やせばいい、と単純には言えません。
一人のドライバーが一日の中で実際に荷物を運べる時間を増やす。積載率を高める。企業同士でトラックを共有する。鉄道や船へ切り替える。自動運転を使う。荷役そのものを自動化する。
日本の物流政策がここまで広がっているのは、人手不足という一つの問題を、人手だけでは解決できないところまで来ているからだと思います。
「2030年には34%運べなくなる」は今も正しい?
「何も対策をしなければ、2030年度には約34%の輸送力が不足する」
というものです。
これは間違った数字ではありません。2023年に政府が示した試算では、対策を講じなければ2024年度に約14%、2030年度には約34%の輸送力が不足する可能性があるとされていました。国土交通白書にも、この試算は掲載されています。
ただし、2026年現在、この34%をそのまま最新予測として使うのは注意が必要です。
物流革新に向けた政策や企業側の取り組みなどによって、政府は2024年度に想定していた約14%の不足について「概ね克服できた」と評価しています。さらに2026年2月、2030年度の需給ギャップも最新の経済状況や物流需要を踏まえて再検証されました。
その結果、2030年度に想定される不足は、
| 試算 | 想定される2030年度の輸送力不足 |
|---|---|
| 従来の試算 | 約34% |
| 2026年の再検証 | 平均約7%~最大約25% |
| 貨物量換算 | 約1.7億~7.2億トン |
となっています。政府はワーストケースの最大25%程度の不足も想定し、最大26ポイント程度の輸送力を確保できる施策を準備する方針を示しています。
私はここがかなり重要だと思います。
「34%不足」という強烈な数字だけを見ると、日本の物流が一直線に危機へ向かっているように感じます。しかし実際には、対策によって改善した部分もある。その一方で、最大25%不足する可能性はまだ残っている。
物流問題は「解決した」のでも「34%不足が確定した」のでもなく、対策次第で未来が大きく変わる段階にあるというのが、2026年時点ではより正確な見方でしょう。
総合物流施策大綱2026~2030|国は何を変えようとしている?
政府は物流を単なる「コスト」ではなく、国民生活を支える公共性の高いサービスであり、日本の成長を支える産業として捉え直そうとしています。2030年度までを物流革新の「集中改革期間」とし、施策を大きく5つの方向へ整理しています。
| 政府が進める5つの方向 | 主な内容 |
|---|---|
| 徹底的な物流効率化 | 自動運転、自動物流道路、モーダルシフト、ラストマイル効率化 |
| 商慣行・行動の変革 | 荷主との取引改善、適正運賃、消費者を含む行動変容 |
| 物流人材の確保・労働環境改善 | ドライバー・倉庫・港湾などの人材確保、安全性、生産性向上 |
| 物流標準化・DX・GX | パレット、データ、自動化、フィジカルインターネット、脱炭素 |
| サプライチェーン強靱化 | 災害、経済安全保障、サイバー攻撃、国際物流への対応 |
この表を見て気づくのは、物流ロボットを導入すれば終わりではないということです。
道路も変える。荷物の載せ方も変える。データの形式もそろえる。荷主企業の発注方法も変える。消費者の受け取り方も変える。そして物流で働く人の待遇や働き方も変える。
日本の物流改革は、かなり大きな産業構造の転換になり始めています。
物流DX・GX|ロボットだけではなく、物流全体をデータでつなぐ
AIを使った配車や運航計画、自動倉庫、自動フォークリフト、企業をまたいだ輸配送データの連携などを通じて、荷物・車両・倉庫・人の情報をつなぎ、物流全体を最適化することが狙われています。
さらにGXでは、トラックだけに依存せず鉄道や船へ切り替えるモーダルシフト、物流施設の省エネルギー化、サプライチェーン全体の脱炭素化なども進めます。
つまり物流DXとGXは別々の話ではありません。
荷物を効率よくまとめて運べれば、人手も減らせますし、トラックの走行距離やCO₂も減らせます。効率化と脱炭素を同時に進めようとしているのが今の物流政策です。
物流標準化|パレットやデータを「共通語」にする
たとえば企業ごとにパレットの大きさや荷物の扱い方が違えば、倉庫やトラックをまたぐたびに荷物を積み替える必要が生じます。システムのデータ形式まで違えば、企業同士で情報を共有することも難しくなります。
そこで政府は、「標準仕様パレット」の普及や、輸送容器、コード体系、物流データなどの標準化を進めています。標準化によって荷役時間を短縮し、自動フォークリフトや自動倉庫も企業をまたいで使いやすくする狙いがあります。
物流自動化を本気で進めるなら、ロボットだけ賢くなっても足りません。ロボットが扱う荷物そのものを、機械が扱いやすい形へそろえる必要があります。標準化は、物流ロボットやフィジカルAIが普及する土台にもなっていくと考えられます。
荷主・消費者の行動まで変えなければ物流は変わらない
しかし荷物を「いつ、何個、どの条件で運んでほしい」と決めるのは荷主企業です。そして通販で配送日時を指定したり、再配達を依頼したりする私たち消費者も物流の一部です。
そのため新しい物流大綱では、物流事業者だけではなく、発荷主・着荷主・一般消費者まで含めた連携と行動変容が政策の柱になっています。改正物流法では、一定規模以上の荷主などに物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画などを求める仕組みも設けられています。これは、物流を「運送会社にお願いして終わり」にするのではなく、荷主側も物流効率化へ責任を持つ方向へ制度が変わり始めていることを意味します。
サプライチェーン強靱化|効率だけでなく「止まらない物流」へ
しかし地震や豪雨、感染症、国際紛争、サイバー攻撃などが起きたとき、一つのルートに依存している物流は大きな影響を受けます。
新しい物流大綱では、こうしたリスクへ対応するため、港湾・航空物流の強化、経済安全保障、サイバーセキュリティ、災害時にも物流を維持できるネットワークづくりなどを政策に含めています。
物流の未来で求められるのは、最短・最安だけではありません。
何かが止まっても、別の道から荷物を届けられること。
この「止まらない物流」という視点は、物流施設や輸送手段を複数持つ企業、ITセキュリティを支える企業などを見るときにも重要になりそうです。
2040年の物流像「フィジカルインターネット」とは?
経済産業省と国土交通省は、さらに先の2040年を目標として「フィジカルインターネット」の実現を進めています。2022年にロードマップが策定され、2026年6月にも経済産業省の「フィジカルインターネット実現会議」が開かれるなど、現在も取り組みが続いています。
名前だけ聞くとかなり難しく感じますが、発想そのものはインターネットに似ています。
インターネットでは、データが一つの会社の通信網だけを通るのではなく、さまざまなネットワークを経由しながら目的地へ届きます。
これを現実の「荷物」に応用しようという考え方です。
たとえばA社の荷物だからA社のトラックだけで最後まで運ぶのではなく、倉庫、トラック、鉄道、船などの空いている物流資源を企業や業界を越えて共有し、荷物ごとに効率のいい経路を選択する。パレットや容器、データの規格もそろえ、荷物がネットワーク上を滑らかに移動できるようにする。
経済産業省はフィジカルインターネットによって、効率性だけでなく、強靱性、良質な雇用、地域を問わず物流サービスを利用できる社会などの実現も目指しています。
私は最初、「物流版インターネット」という名前だけではイメージできませんでした。しかし物流センターで働いた経験から考えると、企業ごとに倉庫やトラックを抱えるより、空いている設備や輸送力を共有できた方が効率的なのは理解できます。
問題は、それを実現するためには、荷物、パレット、データ、システム、企業同士のルールまでつながなければならないことです。
自動化よりさらに大きな物流改革だと感じます。
フィジカルインターネット関連銘柄という見方
標準化された荷物を扱うマテハン・自動倉庫、物流拠点間をつなぐWMSや物流DX、車両や荷物の位置を把握するセンサー・通信、空いている輸送力を組み合わせるAI・配車システム、共同物流の拠点となる物流不動産など、多くの産業が関係します。
つまり「フィジカルインターネット関連銘柄」を探すなら、特定の商品を作っている会社を探すより、
物流の共有化・標準化・データ連携によって、どの会社のサービスが必要になるのか
を見る方が本質に近いと思います。
ここは後半の物流関連銘柄【2026年版】でも、企業を分類するときに改めて考えます。
自動物流道路|荷物だけが24時間走る未来へ
自動物流道路とは、高速道路などの道路空間に物流専用スペースを設け、無人・自動化された輸送手段で荷物そのものを運ぶ構想です。
イメージとしては、ドライバーがトラックを運転するのではなく、荷物が道路インフラの中を自動で移動していく物流です。
国土交通省は、24時間の自動輸送だけでなく、物流拠点での積み込み・荷下ろしまで含めた自動化や、道路上で荷物を一時的に保管して輸送時間を調整する仕組みなども検討しています。
2025年には社会実装に向けた実証実験が進み、2026年7月にも官民コンソーシアムの分科会が開催されています。まだ全国で荷物が走っている段階ではありませんが、構想だけの話から実装方法を詰める段階へ進んでいることは間違いありません。
道路はこれまで「車が走る場所」でしたが、自動物流道路が実現すれば、道路そのものが巨大な物流設備へ変わります。
自動物流道路関連銘柄はどこを見る?
そのため「自動物流道路関連銘柄=この会社」と単純に決めるより、どんな技術が必要になるのかを分解した方が分かりやすいです。
必要になりそうなのは、道路・トンネルなどのインフラ建設、荷物を動かす自動搬送設備・マテハン、車両や荷物を認識するセンサー、全体を制御するAI・通信システム、物流拠点の自動倉庫、そして大量の荷物を受け入れる物流施設などです。
物流関連銘柄の記事で、自動物流道路を単なる「道路会社のテーマ」と見るのは少し狭いでしょう。
道路そのものを、巨大な自動倉庫と輸送システムの一部に変える構想
と考えると、関連する産業の広さが見えてきます。
物流改革は企業だけではなく「国策」になった
しかし2026年の政策を見ると、実際の物流改革はそれよりはるかに大きなものです。
荷待ちを減らす。パレットを標準化する。企業同士でデータやトラックを共有する。鉄道や船へ荷物を移す。倉庫を自動化する。自動運転トラックを走らせる。そして将来的には、自動物流道路やフィジカルインターネットまで実現しようとしている。
政府は2030年度までを物流革新の「集中改革期間」と位置付けています。
しかも、以前よく言われていた「2030年に34%運べなくなる」という未来も固定されたものではありません。官民の対策によって2024年度の輸送力不足は概ね乗り越え、2030年度の予測も平均約7%~最大約25%へ再検証されています。
ここから私が感じるのは、物流の未来は「人が足りないから仕方なく自動化する」という話ではないということです。
人、ロボット、データ、道路、鉄道、船、倉庫、そして企業同士の連携まで含め、日本の物流インフラそのものを再設計しようとしている。
物流関連銘柄を見るときも、「荷物が増えそうだから物流株」という見方だけでは足りません。
国がどこをボトルネックだと考え、どこを変えようとしているのか。その変化を支える企業はどこなのか。
この視点を持っておくと、自動倉庫やフィジカルAI、自動物流道路といった新しい技術が、単なる未来予想ではなく、日本が実際に進めている物流改革の一部として見えてきます。





物流の人手不足を、物流会社だけで解決するわけではないんですね。
道路やデータ、荷物の規格まで変えながら、国全体で“止まらない物流”をつくろうとしているんですね!
商品はどう届く?|メーカーからユーザーまで物流を追ってみる
しかし物流の側から見ると、その間には想像以上に多くの工程があります。
私も物流センターで働いていた頃は、自分が見ている作業が物流全体の中でどこに位置しているのかまで深く考えていませんでした。商品が入ってきて、保管され、必要なものが取り出され、出荷されていく。その一つひとつをつなげてみると、物流は巨大なリレーのような仕組みになっています。
メーカーで商品が完成したあとも、すぐに消費者の手元へ届くわけではありません。工場の中で出荷場所まで運ばれ、トラックなどへ積まれ、物流センターへ向かいます。そこで入荷、検品、保管、ピッキング、仕分け、梱包といった工程を経て、再び出荷。長距離を運ぶ幹線輸送、地域ごとの配送拠点、そして最後のラストワンマイルを経て、ようやく店舗や家庭へ届きます。
一つの商品を追ってみると、物流とは「倉庫」や「トラック」という個別の仕事ではなく、メーカーからユーザーまで途切れずにつながる一つのシステムだということが分かります。
| 物流の流れ | 何が起きている? |
|---|---|
| メーカー・製造 | 商品や部品をつくる |
| 工場内物流 | 原材料・部品・完成品を工場内で移動する |
| 物流センターへ輸送 | トラックなどで物流拠点へ運ぶ |
| 入荷・荷下ろし | トラックから荷物を降ろして受け入れる |
| 検品 | 数量や商品状態を確認する |
| 保管 | 必要になるまで倉庫で預かる |
| ピッキング | 注文された商品を保管場所から取り出す |
| 仕分け | 店舗・地域・配送先ごとに分ける |
| 梱包 | 運べる状態に整える |
| 出荷 | トラックなどへ積み込み送り出す |
| 幹線輸送 | 地域間を大量に長距離輸送する |
| 地域配送拠点 | 最終配送に向けて荷物を細かく分ける |
| ラストワンマイル | 店舗や家庭など最終目的地へ届ける |
この流れの中では、モノだけでなく情報もずっと動き続けています。在庫数、注文内容、配送先、到着予定時刻、車両の位置などが正しく共有されなければ、どれだけ優れた自動倉庫やロボットがあっても物流は成立しません。
2026年の物流が面白いのは、この長いリレーのほぼすべての工程に自動化やデジタル技術が入り始めていることです。工場ではAGV・AMRが部品を運び、物流センターでは自動倉庫やロボットが商品を動かし、輸送では自動運転、さらに先には自動物流道路まで構想されています。
それでも最終的な目的は昔から変わりません。
必要なモノを、必要な人へ届けること。
技術が進歩しているのは、その当たり前をこれからも維持するためでもあります。
商品によって物流経路は変わる
ネット通販で購入した日用品なら、大型のEC物流センターから宅配便を通じて家庭へ直接届くことがあります。一方、スーパーで買う食品なら、食品工場から物流センター、店舗へ運ばれ、そこから私たちが持ち帰ります。自動車部品なら、部品メーカーから完成車工場へ「必要な部品を、必要な時間に」届けることが重要になります。
さらに、運ぶモノの性質によって物流に求められる条件も大きく変わります。
食品なら温度管理と賞味期限が重要です。医薬品にはさらに厳格な品質管理が求められます。半導体や精密機器では、衝撃、静電気、湿度などへの配慮も必要になります。家具のような大型商品では、保管スペースや荷役方法が大きな課題になります。
つまり「物流」と一言でまとめても、何を運ぶのかによって倉庫、車両、設備、働き方まで変わるということです。
| 商品・業界 | 代表的な物流の特徴 |
|---|---|
| EC・日用品 | 多品種、小口配送、短納期、返品対応 |
| 食品 | 冷凍・冷蔵、賞味期限、店舗別配送 |
| 医薬品 | 温度・品質・トレーサビリティ管理 |
| 自動車部品 | 生産ラインに合わせた時間管理、JIT |
| 半導体・精密機器 | 衝撃・静電気・温湿度への対応 |
| 家具・大型商品 | 大型倉庫、重量物荷役、配送設置 |
| 国際物流 | 港・空港・通関・複数国間輸送 |
この違いは物流関連銘柄を見るときにも重要です。
「物流需要が増える」という言葉だけでは、どの企業が利益を得るのかは分かりません。ECの拡大で恩恵を受ける宅配会社と、半導体工場の物流自動化で受注が増えるマテハン企業では、同じ物流関連でも成長する理由がまったく違うからです。
たとえば半導体は、製造装置や材料だけでなく、工場内で部品や製品を正確に動かす物流も重要になります。半導体産業そのものの流れについては、既存の「半導体関連銘柄」の記事で製造工程から関連企業まで詳しく整理しています。
一つの物流会社を見るのではなく、何を運び、その物流のどこが難しいのかを見る。これが産業を理解するうえでも投資先を考えるうえでも重要になってきます。
物流の途中には「たくさんの受け渡し」がある
工場で完成した商品を出荷担当へ渡す。トラックへ積む。物流センターで荷物を降ろす。保管場所へ移す。注文が入ったら取り出す。仕分けラインへ渡す。梱包した荷物を再び出荷場所へ運ぶ。幹線輸送から地域配送へ切り替え、最後は配送ドライバーが受取人へ渡します。
物流では、この「受け渡し」が増えるほど、待ち時間、積み替え、誤配送、破損などが起こる可能性も増えます。
だからこそ現在の物流改革では、単純にトラックを速く走らせるだけではなく、パレットを標準化したり、企業間でデータを共有したり、荷物を積み替えずに次の物流拠点まで運べる仕組みをつくったりすることが重視されています。
フィジカルインターネットが目指しているのも、こうした企業や輸送手段の境界を越えて、荷物を滑らかにつないでいく物流です。
物流の効率化とは、機械を速くするだけではありません。
工程と工程の間にある「止まる時間」を減らすことも、物流を速くする方法の一つです。
一つの荷物には長いリレーがある
メーカーで商品が完成し、工場の中を移動し、物流センターへ運ばれ、入荷、検品、保管、ピッキング、仕分け、梱包、出荷を経て、幹線輸送から地域配送、最後のラストワンマイルへつながっていく。
一つでも流れが止まれば、その先へ荷物は届きません。
そして商品によって、必要な物流の仕組みも違います。冷凍食品と半導体と家具を、まったく同じ倉庫、同じ車両、同じ設備で扱うことはできません。
物流関連銘柄を見るときも、会社名だけを並べるより、
「その会社は、この長い物流リレーのどこを支えているのか」
を考える方が、その企業の役割や成長余地を理解しやすくなります。
私自身、物流センターで働いていたときには、その現場が巨大な物流網の一部分だということを、ここまで意識していませんでした。一つの商品を最初から最後まで追ってみると、自分が見ていた作業の向こう側にも、たくさんの人と企業がつながっていたことがよく分かります。





荷物は倉庫から家へ一直線に来るわけではないんですね。
たくさんの人や設備がバトンをつないでくれるから、ぼくたちのところまで届くんですね!
メーカーの工場から物流は始まる|製造と工場内物流
しかし実際には、商品が完成する前から物流は始まっています。
工場では、原材料や部品を受け入れ、必要な場所へ保管し、生産ラインへ届け、組み立て途中の製品を次の工程へ移し、完成した商品を出荷場所まで運びます。工場の外へ一歩も出ていなくても、モノが動けばそこには物流があります。これが工場内物流です。
私も物流センターで働いた経験から、物流という言葉に倉庫やフォークリフトのイメージを持っていました。しかし改めて製造現場まで含めて調べてみると、物流センターへ商品が届くよりずっと前から、「必要なモノを、必要な場所へ動かす」という仕事が続いていることが分かります。
しかも2026年の工場内物流では、人が台車やフォークリフトで運ぶだけではありません。AGV・AMR、自動運転フォークリフト、自動倉庫などを組み合わせ、生産ラインへの部品供給から完成品の搬送まで自動化する動きが広がっています。ダイフクもAGVの用途として、生産ラインへの材料供給、仕掛品の工程間搬送、完成品の倉庫・出荷エリアへの搬送を挙げています。
つまりメーカーにとって物流は、「完成品を運ぶための仕事」ではありません。
モノづくりを止めないために、生産そのものを支える仕組みでもあります。
部品や原材料を生産ラインへ届ける
自動車なら数多くの部品が必要ですし、電気製品でも基板、モーター、樹脂部品、ねじなど、さまざまなモノを組み合わせて製品が完成します。生産設備だけが高性能でも、必要な部品が届かなければラインは止まります。
そのため工場内物流では、「どれだけ大量に運べるか」だけではなく、必要なモノを、必要な場所へ、必要なタイミングで届けられるかが重要になります。
生産ラインの横に必要以上の部品を積んでおけば安心にも見えますが、それではスペースを圧迫し、在庫も増えます。一方で在庫を減らしすぎれば、部品の到着が少し遅れただけで生産が止まる可能性があります。
物流と製造は、別々の仕事ではありません。
部品供給の遅れがそのまま生産量へ影響する以上、工場内物流の精度が、工場全体の生産性を左右することになります。
自動車産業では、この考え方を理解するうえでトヨタ生産方式の「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」という考え方も参考になります。モノづくりと物流が密接につながっている点は、企業研究でまとめた「トヨタの強み」を見ると、さらにイメージしやすいと思います。
必要な物を必要な時間に届ける難しさ
しかし現実の工場では、生産量が変わったり、設備の稼働状況が変わったり、急な部品不足が発生したりします。さらに工場内には、人、フォークリフト、AGV、製造設備などが同じ空間に存在します。ただ最短距離を走ればいいわけではありません。
人が作業している場所を避ける。生産設備を邪魔しない。必要な順番で部品を届ける。そして部品がなくなる前に次の補充を行う。
こうして考えると、工場内物流は単なる「運搬」ではなく、生産状況を見ながらモノの流れを調整する仕事でもあります。
この領域でAMRのような自律走行ロボットが注目される理由も分かります。オムロンも製造現場では部品棚から組立セルへの搬送など、多くの人が搬送作業に従事しており、労働人口減少を背景に自律走行ロボットによる自動化が進んでいると説明しています。
完成した商品を出荷できる状態へ動かす
完成品は生産ラインから出荷エリアへ移され、必要に応じて検品や包装を行い、パレットなどにまとめられます。その後、倉庫で一時的に保管されたり、そのままトラックへ積み込まれたりして、工場の外へ出ていきます。この生産ラインから出荷場所まで商品を動かす工程も、工場内物流の一部です。
特に大量生産する工場では、生産ラインから次々と完成品が出てくるため、出口側の物流が詰まると、生産ラインそのものに影響しかねません。
「作る速度」と「運び出す速度」が合わなければ、完成品が行き場を失ってしまうからです。
そのため工場内物流では、原材料を生産ラインへ届ける入口側の物流と、完成品を倉庫・出荷エリアへ送る出口側の物流を両方整える必要があります。
ダイフクのAGVでも、生産ラインへの資材供給だけでなく、仕掛品の工程間搬送、完成品を倉庫や出荷エリアへ搬送する用途が示されています。
工場を見れば製造設備へ目が向きますが、その周囲では常にモノが動いている。
「つくる」と「運ぶ」が噛み合って初めて、工場は止まらずに動き続けられるのだと思います。
フォークリフトは何をしている?
私自身、物流センターで働いていた頃にもフォークリフトが動く光景は身近なものでした。人が一箱ずつ持ち上げることが難しい大量の荷物でも、パレットへまとめれば、フォークリフトで一度に動かせます。
フォークリフトの役割は、単純に「重いものを運ぶ」だけではありません。
トラックからパレットを降ろす。倉庫内の保管場所へ移動する。ラックへ格納する。必要になった商品を取り出す。出荷場所へ運ぶ。そして再びトラックへ積み込む。
入荷から出荷まで、物流のさまざまな場所で使われています。
だからこそパレット物流との相性も非常に良く、物流標準化の話でもフォークリフトは重要になります。パレットのサイズや荷姿がそろえば、人が運転するフォークリフトだけでなく、自動運転フォークリフトにとっても扱いやすくなるからです。
人が乗るフォークリフトから無人フォークリフトへ
トヨタL&Fでは、現場状況に応じて無人運転と有人運転を使い分けられる自動運転フォークリフトを展開しており、ダイフクもSLAM制御によってレイアウト変更へ対応しながら、自動充電で24時間無人運転できる無人搬送フォークリフトを提供しています。2026年にはさらに実用化が進み、トヨタL&Fは4月、3D-LiDARを利用した4本フォーク仕様のトラック荷役対応自動運転フォークリフトを発売し、2パレットの同時搬送に対応しました。9月には、搬送するパレット数を変更できるマルチロードハンドラー仕様で、トラック荷役まで自動化する実証も開始しています。
私が物流現場を知った頃のイメージからすると、フォークリフトが人を乗せずに自分で荷物を見つけ、運び、積み降ろしまで行うというのはかなり大きな変化に感じます。
ただし、自動化の目的を「フォークリフト作業者をなくす」とだけ考えるのは違うと思います。
人手不足への対応だけでなく、単純な往復搬送や長時間続く反復作業を機械へ任せ、人は例外対応、安全確認、設備管理など、人でなければ判断しにくい仕事へ移っていく。
物流自動化の本当の変化は、人がいなくなることより、人が担当する仕事が変わることなのかもしれません。
AGV・AMRで工場内搬送も変わる
どちらも工場や物流センターの中で荷物を自動搬送する移動ロボットですが、伝統的には考え方に違いがあります。
AGVは、磁気テープやQRコードなど、あらかじめ設定されたルートを利用して走る仕組みが中心です。一方のAMRは、LiDARやカメラなどで周囲を認識し、自分で経路を計算しながら障害物を避けて走行するタイプとして説明されます。
2026年にダイフクが公開した解説でも、伝統的にはこのような違いがある一方、現在はAGVにも高度なナビゲーションや動的経路設定が組み込まれるなど、AGVとAMRの境界は以前より曖昧になっていると説明されています。
ここは、「AMRの方が新しいからAGVより優れている」と単純に考えない方がよさそうです。
毎日同じルートを大量に搬送する工場なら、決められた経路を安定して走るAGVが合うこともあります。レイアウト変更が多く、人や設備を避けながら柔軟に動きたい現場ならAMRが向いている場合があります。
重要なのは名称ではなく、どんな荷物を、どんな環境で、どれくらいの頻度で運ぶのかです。
工場内物流が変わっているのは、単に「ロボットが走るようになった」からではありません。人が台車を押したり、フォークリフトで何度も往復したりしていた搬送作業を、自動化された設備同士でつなげられるようになってきたからです。
そしてこの先、AIやセンサーの性能が高まれば、決められた仕事を繰り返す搬送から、周囲の状況を理解しながら動く物流へ変わっていく可能性があります。
これはフィジカルAIと物流を考えるうえでも重要な入り口になります。
商品が完成した瞬間からではなく、製造中から物流は動いている
しかし工場の中を見れば、原材料を受け入れ、部品を保管し、生産ラインへ届け、工程間を移動させ、完成品を出荷場所へ運ぶという物流がすでに動いています。
むしろ製造業では、物流が止まればモノづくりも止まると考えた方が実態に近いのかもしれません。
そして2026年、その工場内物流にも大きな変化が起きています。人が運転するフォークリフトだけでなく、無人フォークリフト、AGV、AMR、自動倉庫がつながり始め、生産ラインへの部品供給から完成品の搬送まで自動化できる領域が広がっています。
ただ、すべてを無人にすればいいわけではありません。
決められた反復搬送は機械が担い、人は安全確認、設備管理、例外対応、改善などへ役割を変えていく。物流センターで働いた経験があるからこそ、私はこの変化を「人が不要になる未来」よりも、人が重いものを運び続けたり、同じ場所を何度も往復したりしなくてよくなる未来として見たいと思います。
メーカーからユーザーまで続く長い物流リレーは、工場の外から始まるのではありません。
商品をつくる現場の中から、すでに次の人へモノをつなぐ物流が始まっています。





商品が完成してから物流が始まると思っていました。
部品をラインへ届けるところから、モノづくりと物流はずっと一緒に動いているんですね!
物流センターへ到着|入荷・荷下ろしの現場では何が起きている?
ただ、トラックが物流センターに着いたからといって、そのまますぐ荷物が保管場所へ移るわけではありません。受付をし、バースへ入り、荷物を降ろし、数量や状態を確認し、その後の保管や仕分けへつないでいく必要があります。
私も物流センターで働いていた経験から、物流というと倉庫の中で商品を動かす仕事へ目が向きがちでした。しかし2026年の物流を調べてみると、実は物流センターの「入口」そのものが大きなボトルネックになり得ることが分かります。
トラックが集中すれば荷待ちが発生し、荷下ろしに時間がかかればドライバーの拘束時間も伸びます。さらに海上コンテナなどでは、暑さや寒さの厳しい空間で大量の荷物を人が降ろすこともあります。
国も現在、荷待ち時間と荷役等時間の短縮を物流効率化の重要テーマに位置付けています。物流効率化法では、1運行あたりの荷待ち・荷役等時間を2時間以内、1回の受け渡しごとでは1時間以内とする目標も掲げられています。
つまり物流自動化は、倉庫の奥から始まるのではありません。
トラックが物流センターへ到着し、荷物を受け入れる入口からすでに始まっています。
トラックが到着しても、すぐ荷物を降ろせるとは限らない
倉庫へ着いても、使用できるバースが埋まっていれば順番を待つ必要があります。前のトラックの荷役が長引けば、その分だけ次の車両も待つことになります。これが物流で問題になっている荷待ちです。
国土交通省では、荷主や施設側の都合によって貨物の受け渡しを待機している時間を「荷待ち時間」と定義しています。さらに荷積み・荷卸しだけでなく、検品、搬出入、仕分け、ラベル貼りなど、ドライバーが行う附帯作業も「荷役等時間」として扱われます。
ここで大切なのは、ドライバー不足を「運転する人が足りない」という問題だけで見ないことです。
たとえば8時間働けるドライバーがいても、そのうち長い時間を物流センターの前で待ったり、荷下ろしに使ったりしていれば、実際に荷物を運べる時間は短くなります。
だから現在は、トラック予約受付システムによって到着時間を分散させたり、パレットを活用して荷役を速くしたり、物流センター側の設備そのものを改善したりすることが求められています。荷主に対しても、一度に多数のトラックが集中しないよう受け渡し日時を調整することが求められるようになりました。
物流センターの入口をスムーズにすることは、倉庫の効率化だけではなく、限られたドライバーの時間を「運ぶ仕事」に戻すことでもあります。
バンニング・デバンニングとは?
特に輸入品を扱う物流センターでは、海外から届いた海上コンテナを開け、中の商品を倉庫へ移していく作業が日常的に行われています。
言葉は少し難しそうですが、意味はシンプルです。
バンニング|コンテナやトラックへ荷物を積み込む
ただ箱を入れていけばいいわけではありません。重い荷物を下にする、荷崩れしにくいよう配置する、輸送中の揺れを考える、限られた空間をできるだけ有効に使うなど、積み方によって安全性や積載効率が大きく変わります。
物流の効率を考えれば、コンテナの中に空間をたくさん残して運ぶのはもったいありません。一方で詰め込み方が悪ければ、荷崩れや商品の破損につながります。
つまりバンニングは、「できるだけ多く積む」と「安全に運ぶ」を両立させる仕事です。
デバンニング|コンテナから荷物を降ろす
コンテナを開ければ、整然とパレットが並んでいるとは限りません。段ボールが床から天井近くまで直接積まれていたり、箱のサイズや重さがバラバラだったり、輸送中に荷物が少し動いていたりすることもあります。
こうした荷物を一箱ずつ取り出し、コンベヤやパレットへ移していく必要があります。
特に夏場のコンテナ内は暑くなりやすく、冬は寒い。さらに重量物を何度も持ち上げるとなれば、人への身体的な負担も大きくなります。
物流センターの入口には、まだ「人でなければ対応しにくかった仕事」が残っているわけです。
デバンニングロボット|荷下ろしまでロボットが行う時代へ
2026年の日本で分かりやすい事例が、ニトリグループのホームロジスティクスです。
ホームロジスティクスは2025年6月から幸手DCで、XYZ Roboticsのデバンニングロボット「RockyOne」を導入。その後、仙台・名古屋・福岡にも展開しています。RockyOneは3D認識でコンテナ内部をスキャンし、箱の位置や向きを認識しながら、ロボット自身が動作経路や把持方法を決めます。幸手DCでは最大22.5kgのカートンを扱い、1時間あたり650ケース以上の処理実績が示されています。
ニトリHD自身も2026年の資料で、デバンニングロボットの導入によって職場環境の抜本的改善と省人化を目指していると説明しています。
ここは、文章だけで読むより実際に動く様子を見た方が圧倒的に分かりやすいです。
この動画を見ると、ロボットアームが単純に決められた位置の箱を取っているだけではなく、積み方が毎回違うコンテナの中から箱を認識して取り出していることが分かります。
私は物流センターで働いていた頃を思い出すと、「コンテナの荷下ろしまでロボットが入るのか」とかなり驚きました。
自動倉庫のように最初から機械が動きやすい環境を作るのではなく、バラバラに積まれた現実の荷物へロボット側が合わせていく。物流ロボットが一段進化していると感じる部分です。
なぜデバンニングを自動化したいのか
ホームロジスティクスの事例でも、これまでのコンテナ荷下ろしは、猛暑や厳寒の中で長時間行う重労働だったと説明されています。ロボット導入後はオペレーターがタブレットでシステムを管理できるようになり、コンテナ内部へ入り続ける必要がなくなりました。
私が今回の物流記事で大切にしたいのも、この部分です。
自動化というと、どうしても「人の仕事をロボットが奪う」という話になりがちです。しかし、暑いコンテナの中で重量物を何時間も降ろすような仕事まで、人がずっと続けなければ物流が維持できない状態が本当に理想なのかは考える必要があります。
人にとって負担が大きい仕事をロボットへ移し、人は監視や異常対応、設備管理を担う。
デバンニングロボットは、物流自動化が「省人化」だけではなく、働く環境そのものを変える技術であることが分かりやすい例だと思います。
パレタイズ・デパレタイズとの違い
どちらも荷物を積んだり降ろしたりするため、最初は私も「何が違うのだろう」と感じました。
違いは、「どこへ積むのか」を考えると分かりやすくなります。
| 用語 | 荷物の動き | イメージ |
|---|---|---|
| バンニング | 荷物 → コンテナ・トラック | 車両へ積む |
| デバンニング | コンテナ・トラック → 荷物 | 車両から降ろす |
| パレタイズ | バラの荷物 → パレット | パレット上へまとめる |
| デパレタイズ | パレット → バラの荷物 | パレットから取り出す |
たとえば輸入された段ボールをコンテナから取り出すのがデバンニング。その箱を倉庫で扱いやすいようパレットへ積み上げればパレタイズです。
つまり物流センターでは、
コンテナから降ろす → パレットへまとめる → 倉庫内を移動する
という複数の作業が連続していることがあります。
そして現在は、この一連の流れをデバンニングロボット、パレタイズロボット、AMR、無人フォークリフトなどでつなぎ、入口から保管までを自動化しようとする動きが始まっています。MujinのTruckBotも、荷下ろししたケースをパレタイズロボットへ渡し、その後の自動搬送までつなげる構成が示されています。
無人フォークリフト|パレット搬送も人が乗らなくなる?
そこで使われるのがフォークリフトですが、現在はそのフォークリフト自体の無人化も進んでいます。
物流センターの入口でデバンニングやパレタイズが自動化されても、その後パレットを人が毎回フォークリフトで運ばなければ、自動化の流れはそこで途切れてしまいます。
だからこそ、デバンニングロボット、コンベヤ、無人フォークリフト、自動倉庫を一つの流れとしてつなぐことが重要になります。
そして2026年には、その無人フォークリフトの仕事が、倉庫内搬送だけでなくトラック荷役にまで広がっています。
パレットをどう認識している?
無人フォークリフトでは、その「見る・距離を測る・位置を合わせる」という部分をセンサーやシステムが担います。
たとえばトヨタL&Fが2026年4月に発売したトラック荷役対応自動運転フォークリフトでは、3D-LiDARを活用し、トラックやパレットの位置を認識しながら自動荷役を行います。4本フォーク仕様によって2パレットを同時搬送する仕組みも実用化されています。
人には当たり前にできる「少しずれて停まったトラックを見てフォークの位置を合わせる」という仕事も、自動化するにはセンサー、認識、制御技術が必要になるわけです。
この視点は、後で扱うフィジカルAIにもつながります。
人と一緒に働いても安全なのか?
無人フォークリフトが便利でも、人や有人フォークリフト、AMRなどが行き交う場所で勝手に走り回れば危険です。
そのため実際の自動搬送設備では、センサーで周囲を監視したり、進路上に人や障害物があれば減速・停止したり、走行エリアを管理したりしながら運用します。
ここでも「機械を導入する=自動化完了」ではありません。
人とロボットがどこを通り、どこで交差し、異常が起きたとき誰が対応するのか。
設備だけでなく、物流センターそのものを自動化に合わせて設計することが必要になります。
トラック荷役まで自動化できる?
トヨタL&Fは2026年4月、3D-LiDARを使った4本フォーク仕様のトラック荷役対応自動運転フォークリフトを発売しました。さらに9月には、搬送するパレット数を変更できるマルチロードハンドラー仕様でトラック荷役を自動化する実証も始めています。
これまで物流センターの自動化は、「倉庫の中」は進んでも、トラックから荷物を受け取る場所、人と物流設備が接するバース周辺には自動化しにくい作業が残っていました。
そこまで無人フォークリフトが対応できるようになれば、
トラック到着
→ 荷下ろし
→ パレット搬送
→ 自動倉庫へ格納
という入口側の物流を、より長く自動設備でつなげられる可能性があります。
トヨタL&Fの公式動画では、4本フォーク仕様の自動運転フォークリフトが実際にトラック荷役を行う様子も確認できます。
ここまで来ると、物流センターの「入口」はかなり違う景色になっていきそうです。
物流センターの入口から自動化は始まっている
しかし入荷側を詳しく見てみると、その前にも大きな課題があります。
トラックが到着してもバースが空くまで待つ。コンテナの中から大量の箱を降ろす。荷物をパレットへまとめる。そのパレットを倉庫の中へ運ぶ。
どれも、商品が保管される前の仕事です。
そして2026年、その入口にもデバンニングロボット、パレタイズロボット、無人フォークリフト、予約システムなどが入り始めています。
特にニトリの事例を調べて感じたのは、自動化の価値を「何人減らせるか」だけで測るのはもったいないということです。
暑さや寒さの厳しいコンテナ内で重量物を降ろす作業をロボットへ任せる。トラックの到着を調整してドライバーの待ち時間を減らす。反復搬送を無人フォークリフトへ任せ、人は設備管理や例外対応へ移る。
物流自動化は、荷物を速く流すだけではなく、そこで働く人の負担や仕事そのものを変えていく技術でもあります。
物流センターの扉が開いた瞬間から、すでに次世代物流は始まっています。





倉庫に入ってから自動化するのではないんですね。
荷待ちや荷下ろしまで変われば、ドライバーさんや現場で働く人の負担も減らせそうです!
倉庫の中では何が起きている?|保管・ピッキング・仕分け・梱包
商品を必要になるまで保管し、注文が入れば該当する商品を取り出し、配送先ごとに仕分け、壊れないよう梱包し、出荷できる状態へ整える必要があります。
私が物流センターで働いていた頃も、倉庫の中では人、フォークリフト、台車、商品が絶えず動いていました。当時は一つひとつの作業を目の前の仕事として見ていましたが、物流全体を調べ直してみると、保管→ピッキング→仕分け→梱包という工程が正しくつながらなければ、どれだけ早く荷物を運んできても出荷できないことが分かります。
そして2026年現在、この倉庫内物流も大きく変わり始めています。
高層ラックの中を機械が動く自動倉庫、商品を作業者のところまで届けるGTP(Goods-to-Person)、高速で配送先を分けるソーター、倉庫全体の在庫や作業状況を管理するWMS。さらにAMRやロボットピッキングまで組み合わせることで、倉庫は「商品を置いておく建物」から、モノと情報を同時に動かす巨大なシステムへ変わっています。ダイフクも現在、自動倉庫、無人搬送車、仕分け、ピッキング、WMSなどを物流センター全体を構成する仕組みとして展開しています。
倉庫の中で何が起きているのかを知ると、自動倉庫や物流ロボットがなぜ必要なのかも見えやすくなります。
商品はどうやって保管場所を決める?
毎日のように大量に出荷される商品を倉庫の一番奥へ置けば、そのたびに長い距離を取りに行くことになります。反対に、ほとんど動かない商品を出荷場所のすぐ近くへ置けば、便利な場所を占有してしまいます。
さらに商品の大きさ、重さ、形状、温度条件、出荷頻度などによっても適した保管方法は変わります。
たとえば、
- 出荷頻度が高い商品は取り出しやすい場所
- 重量物はパレット単位で扱いやすい場所
- 小物商品はケースや棚で管理
- 冷凍・冷蔵品は温度管理されたエリア
- 大型商品は広い保管スペース
といったように、商品の特徴と出荷のされ方を考えてロケーションを決める必要があります。
ここで重要になるのが、「何が、どこに、いくつあるのか」という在庫情報です。
何万点もの商品があっても、場所が分からなければ取り出せません。逆にコンピュータ上では在庫があることになっていても、実際の棚に商品がなければ出荷できません。
つまり倉庫では、モノを正しく置くことと、情報上の在庫を一致させることがセットになります。
自動倉庫では、この考え方がさらに進みます。ダイフクのパレット立体自動倉庫では、コンピュータから入出庫を指示し、高層ラックへパレットを自動保管する仕組みが使われています。高さ方向を利用することで保管効率を高め、先入れ先出しや順番を指定した出庫にも対応できます。
人が「この棚に置こう」と判断する倉庫から、システムが保管場所と出庫順序まで管理する倉庫へ変わっているわけです。
ピッキングとは?
ピッキングとは、注文内容に合わせて、倉庫に保管されている商品を取り出す作業です。
たとえばネット通販で、
「水筒1個、ノート2冊、イヤホン1個」
という注文が入れば、それぞれの商品が保管されている場所から必要な数量だけ集めなければなりません。一見すると「棚から商品を取るだけ」に見えます。
しかし物流センターの規模が大きくなり、商品数や注文数が増えると、この作業はかなり複雑になります。商品を探す時間。棚から棚へ歩く時間。商品を間違えないための確認。複数の注文をどう効率よくまとめて回るか。
特にEC物流では、多品種の商品から少量ずつ取り出す作業が大量に発生します。
だからピッキングでは、商品を取る数秒より、商品まで移動する時間をどう減らすかが重要になることがあります。
ここに現在の物流自動化が入り込んでいます。
人が商品まで歩くピッキング
棚に商品を並べ、ハンディターミナルやリストを確認しながら、
棚A
↓
棚B
↓
棚C
と倉庫内を歩いて商品を集めます。仕組み自体はシンプルですし、商品の種類や物量によっては現在でも合理的な方法です。
ただし倉庫が大きくなればなるほど、移動距離が伸びます。商品そのものを手に取っている時間よりも、次の商品まで歩いている時間の方が長くなることもあります。
私自身、物流センターの現場を経験しているので、この「歩く」という部分はかなりイメージできます。倉庫という広い空間では、同じような作業を繰り返しているだけでも、一日の移動距離は積み重なっていきます。
物流自動化が狙っているのは、こうした商品を探す・歩く・運ぶ時間そのものを減らすことでもあります。
商品が人のところへ来るGTP
人が商品まで歩くのではなく、必要な商品を設備側が作業者のところまで運んでくる仕組みです。
ダイフクのGTPでは、在庫コンテナと注文商品を入れる集品コンテナが作業者の手元へ自動で供給されます。作業者は表示された指示に従って必要な数量を取り出すため、倉庫内を商品を探して歩き回る必要がありません。作業効率だけでなく、身体的な負担の軽減もメリットとして挙げられています。
これは物流センターの働き方をかなり変える発想です。
従来は、
人 → 商品
だったものが、
商品 → 人
へ変わる。
自動倉庫やシャトル、AMRなどを組み合わせれば、作業者は一つの場所にいながら次々と商品をピッキングできます。
ただし、人が完全に不要になるわけではありません。運ばれてきた商品の確認、数量判断、異常対応など、人の目や判断が残る工程もあります。
私はこの形を見ると、物流自動化とは「人をなくす」のではなく、人が物流センターの中を何kmも歩き回らなくて済むように仕事の配置を変える技術でもあると感じます。
仕分けとは?
東京行き、大阪行き、仙台行き。店舗A、店舗B、店舗C。あるいは注文番号ごと。
目的地や注文内容に合わせて荷物を分けるのが「仕分け」です。
人が伝票を確認しながら手で分ける方法もあれば、表示器を使う方法、コンベヤやソーターで自動的に分岐させる方法もあります。
ダイフクのクロスベルトソーターでは、レール上を走る台車の小さなベルトを左右へ動かすことで、段ボールや袋物などを配送先ごとに高速で仕分けます。通販物流センターや貨物ターミナルなどで使われています。
一方で、何でも大規模なソーターへ置き換えればいいわけではありません。扱う商品の大きさ、物量、配送先数、日々の変動によって向いている仕組みは変わります。
ここでも重要なのは、設備そのものより「何を、どこへ、どれくらい分けるのか」です。
物流自動化関連銘柄を見るときも、ロボットや設備の派手さだけでなく、その設備が物流のどのボトルネックを解決しているのかを見る必要があります。
梱包・流通加工とは?
輸送中に壊れないよう段ボールへ入れたり、緩衝材を入れたり、送り状を貼ったりする必要があります。これが梱包です。梱包には商品を守る役割がありますが、物流効率にも影響します。小さな商品に必要以上に大きな箱を使えば、トラックや倉庫のスペースを無駄にします。反対に箱を小さくしすぎれば、商品が破損する可能性があります。
つまり梱包にも、
商品を守ること × 運びやすくすること
の両立が求められます。
さらに物流センターでは、値札を付ける、商品を袋へ入れる、複数の商品をセットにする、店舗別の状態へ整えるといった流通加工も行われます。
工場で完成した商品へ、物流の途中でもう一度「商品として売るための作業」を加えているわけです。物流センターが単なる保管場所ではないことが、この工程からもよく分かります。
WMSは物流センターの「頭脳」
自動倉庫、AMR、ピッキング、ソーター、梱包設備など、これほど多くの人と機械を誰がまとめて動かしているのか。
そこで重要になるのがWMS(Warehouse Management System/倉庫管理システム)です。
WMSは、物流センターの中にある商品や在庫だけでなく、入荷してから出荷するまでの作業状況も管理します。代表的な役割を整理すると、次のようになります。
| WMSが管理する主な情報 | 何を管理する? |
|---|---|
| 入荷 | どの商品が、いつ、何個入ってきたか |
| 保管場所 | 商品が倉庫のどこに置かれているか |
| 在庫数量 | どの商品が何個あるか |
| ピッキング | どの商品を、何個取り出すか |
| 補充 | ピッキング棚などへ、いつ商品を補充するか |
| 仕分け | 取り出した商品をどの注文・配送先へ振り分けるか |
| 出荷 | どの商品が、いつ出荷されたか |
| 作業進捗 | 入荷・ピッキング・梱包・出荷などがどこまで進んでいるか |
ダイフクのWMSでも、入荷、保管、補充、ピッキング、仕分け、出荷検品、梱包などの工程に加え、在庫管理や進捗管理、実績分析まで扱っています。
人だけで動いていた倉庫でも在庫管理は重要でした。しかし自動倉庫、AMR、ロボット、ソーターが増えるほど、情報が間違っていれば機械も正しく動けません。
「商品Aが棚Bにある」とシステムが判断しているのに実際にはなければ、自動化設備は存在しない商品を取りに行ってしまいます。
だから私は、物流自動化を調べるほど、ロボットだけでなくWMSのような見えないシステムの重要性を強く感じます。物流DXやAIによってモノと情報をつなぐ企業という視点では、既存記事の「NECの強み」とも自然につながるテーマです。
WMSとWCSは何が違う?
少し分かりにくいですが、役割を大きく分けると理解しやすくなります。
WMSは「倉庫全体で何をするか」を管理するシステム。
一方のWCSは、
自動倉庫、コンベヤ、ソーターなどの設備へ、どう動くかを指示・制御するシステム
と考えるとイメージしやすいでしょう。
ダイフクも物流システム設計において、物流センター内の在庫や運用を管理するWMSと、マテハン設備を制御するWCSを分けて説明しています。
たとえば、
「商品Aを10個出荷する」
という注文が入ったとします。
WMSが、
「商品Aはどこにあるのか」
「何個取り出すのか」
「どの注文へ割り当てるのか」
を判断する。
その指示を受けてWCSが、
「どの自動倉庫を動かすか」
「どのコンベヤへ流すか」
「どの設備をどの順番で動かすか」
を制御する。
ざっくり言えば、
WMS=司令塔
WCS=設備を動かす現場指揮役
という関係です。
AIやフィジカルAIが物流へ入ってくるほど、この「情報側」と「機械側」をどうつなぐのかがさらに重要になっていきます。
倉庫は「物を置いておく建物」ではない
しかし実際には、その中でかなり多くの仕事が動いています。
商品をどこへ置くか決める。注文された商品を取り出す。配送先ごとに分ける。梱包する。在庫を管理する。そして、次の出荷へつなぐ。
さらに2026年の物流センターでは、人が商品まで歩くピッキングだけでなく、商品が人のところへ届くGTP、自動倉庫、AMR、ソーター、WMS・WCSなどが一つにつながり始めています。
ここで面白いと感じるのは、物流自動化が単純に「機械が増えた」という話ではないことです。
商品をどう置くか。
誰が商品を取りに行くか。
どの順番で流すか。
どの設備を動かすか。
倉庫の仕事そのものを、最初から組み直しているように見えます。
そしてその中心にあるのは、ロボットだけではありません。モノの位置、在庫、注文、設備の状態といった情報です。
物流センターは、商品を置いておく大きな箱から、人・ロボット・設備・データが一緒に動く巨大なシステムへ変わり始めています。
その変化を象徴しているのが、実際の企業で導入が進む自動倉庫や物流自動化設備です。





倉庫は荷物を置くだけの場所ではないんですね。
商品だけでなく情報も一緒に動くから、人やロボットが迷わず次の仕事へつなげられるんですね!
自動倉庫の「今」を見てみよう|2026年の物流センター
もちろん、パレットやケースを高層ラックへ自動で格納・出庫する仕組みも自動倉庫の代表例です。しかし実際の企業事例を調べてみると、2026年の物流自動化はそれだけではありません。
服を大量に扱うユニクロ、膨大な種類の商品を扱うAmazon、多数のブランド・色・サイズを1点単位で扱うZOZO、食品と日用品を一緒に届ける楽天マート、家具やインテリアなど大型商品も扱うニトリ。同じ物流センターでも、扱う商品が違えば「どこが大変なのか」も違うため、自動化される工程や使われる設備も大きく変わります。
さらに、自動倉庫だけを単独で導入すれば物流センターが自動化されるわけでもありません。入荷、保管、ピッキング、仕分け、梱包、搬送、出荷をつなぎ、WMSやWCSで情報まで連携させて初めて、物流センター全体として効率が上がります。ここでは「自動倉庫」を狭い意味の保管設備だけに限定せず、実際の企業が物流センターのどこを、どのような技術で自動化しているのかという視点で比べてみます。
私が見たいのは、ロボットの台数や設備の派手さだけではありません。「人がやっていたどの仕事を、なぜ自動化したのか」を見ることで、自動倉庫や物流自動化関連銘柄の本当の価値も見えやすくなると思います。
ユニクロ有明|衣料品物流を「商品情報」から変えた
ファーストリテイリングはダイフクとの協業で自動化設備を導入し、有明倉庫をユニクロEC向けの自動化倉庫として2018年秋から本格稼働させました。当時のアニュアルレポートでは、全商品へのICタグ(RFID)導入によって、搬入、仕分け、ピッキング、検品などの工程をほぼ無人化できると説明しています。
ここで重要なのは、ロボットそのものよりも商品と情報が結び付いていることだと思います。衣料品は同じデザインでも色やサイズが分かれ、ECでは大量の商品から注文された1点を正確に取り出さなければなりません。商品にRFIDを持たせ、システムが「どの商品が、どこにあるのか」を把握できれば、自動搬送や仕分け設備も動かしやすくなります。
つまりユニクロの事例は、「人が速く商品を探せる倉庫」を作るのではなく、そもそも人が商品を探し回らなくてもよい物流へ変えるという発想です。2018年に始まった取り組みですが、ロボットだけではなく商品情報まで含めて物流を設計する考え方は、2026年の物流DXを見るうえでも参考になります。
人が商品を探す倉庫から、商品が流れてくる倉庫へ
しかし商品の位置をシステムが把握し、自動倉庫や搬送設備と連携できれば、必要な商品を次の工程まで自動的に移動させることができます。
この違いは、倉庫の設計そのものを変えます。人が歩くことを前提にすれば通路や棚配置も「人が使いやすいか」が重要になりますが、機械が商品を動かす割合が増えれば、保管密度や搬送効率を優先した設計も可能になります。自動倉庫の大きな価値は、ロボットが人より速く動くことだけではなく、人が何千歩も歩かなければ成立しなかった仕事そのものを変えられることにあるのだと思います。
動画で見る|ユニクロ有明倉庫は物流をどう変えた?
ユニクロ有明倉庫の自動化は、文章だけで説明するより、実際に設備が動いている様子を見るとイメージしやすくなります。高層の保管設備や搬送システムがつながり、人が広い倉庫を歩いて商品を探す物流から、商品と情報をシステム側で動かしていく物流へ変わっていることが分かります。
特に注目したいのは、「ロボットが速く動いているか」ではなく、商品を探す・運ぶ・仕分けるという人の移動そのものを減らすように倉庫全体が設計されていることです。有明倉庫を見ると、自動倉庫とは設備を一台追加することではなく、物流センターの仕事の流れそのものを組み直すことなのだと実感できます。
※この動画は有明倉庫の物流改革が始まった当時の映像です。2026年現在の設備をすべて示す最新映像ではありませんが、ユニクロが物流をどう自動化しようとしたのかを理解する参考になります。
ファーストリテーリング 倉庫自動化を全世界で
Amazon|「棚そのもの」が人のところへやって来る
Amazonのフルフィルメントセンターでは、「ドライブ」と呼ばれる小型ロボットが商品を保管した「ポッド」を持ち上げ、棚入れや棚出しを担当するスタッフの作業ステーションまで自動で運びます。人が巨大な倉庫の中から商品棚を探すのではなく、棚そのものが人のところへやって来る仕組みです。
2025年に公開された名古屋みなとフルフィルメントセンターでは、約3万1,000台のポッドと約3,500台のドライブが配備されています。ここまで台数が増えると、重要になるのは「1台のロボットが賢いか」だけではなく、何千台ものロボットをどう渋滞させずに動かすかです。
Amazonは同じ2025年、世界で100万台目となる物流ロボットを日本の拠点へ配備するとともに、ロボット群の移動を調整する生成AIモデル「DeepFleet」も発表しました。同社によれば、DeepFleetによってロボット群の移動時間を10%改善するとしています。
ここまで来ると、物流自動化は「ロボットに商品を運ばせる」という段階から、大量のロボットをAIで一つの群れのように動かす段階へ進み始めていることが分かります。これは、AIが現実世界のロボットや設備を認識・制御するフィジカルAIにもつながる変化です。
動画で見る|棚そのものが動くAmazon Robotics
Amazon Roboticsは、今回扱う物流自動化の中でも特に仕組みを動画で見てほしい技術です。小型の「ドライブ」が商品棚である「ポッド」の下へ入り、棚ごとスタッフのいる作業ステーションまで運んできます。
Amazon Japan公式の物流拠点ツアーでは、商品の入荷から棚入れ、Amazon Roboticsを使った棚出しまで、フルフィルメントセンターの流れを実際の映像で確認できます。人が巨大な倉庫を歩いて商品を探すのではなく、商品を載せた棚の方が人へ来るというGTPの考え方が、かなり直感的に理解できます。Amazon公式も、この仕組みがスタッフの移動を減らす技術であると説明しています。
大量のロボットが整然と動く光景を見ると、物流センターが単なる「倉庫」ではなく、ソフトウェアとロボットが一体になった巨大なシステムへ変わっていることも伝わります。
※この動画は2021年公開の映像です。本文で紹介した2025年開設の名古屋みなとフルフィルメントセンターそのものではありませんが、Amazon Roboticsの「棚が人のところへ来る」基本的な仕組みを理解する参考映像として掲載しています。
Amazonの物流拠点をバーチャルツアーでご案内:Amazon Family Day 2021 October(前編)【日本語版・字幕付き】Amazon社員の働き方
ZOZOBASE|多品種のファッション物流をどう自動化した?
ZOZOTOWNでは多数のブランドを扱うため、商品は小ロット・多品種になりやすく、形状も色もサイズもばらばらです。しかも一人のお客様が異なるブランドの商品を同時に購入すれば、別々に保管されている商品を最後には一つの注文へまとめなければなりません。
この課題に対応した「ZOZOBASEつくば3」では、入荷商品を保管先ごとに自動仕分けする「t-Sort」を約500基設置し、1時間あたり約3万2,000点を処理できます。さらに注文商品の一時保管と発送順を管理するシステムや、商品を1点ずつポケットへ入れて注文単位へ自動仕分けする「Pocket Sorter」も導入され、既存拠点と比べて約30%の省人化を実現しました。
そして自動化はそこで止まっていません。ZOZOは2026年4月に新物流拠点「ZOZOBASE習志野3」を発表し、2027年8月から一部機能を稼働、2028年10月の本格稼働を予定しています。新たな設備やオペレーションによって、既存拠点と比べて約50%の省人化を目指しています。
物流センターは一度自動化したら完成する設備ではなく、物量や商品構成、人手不足の状況に合わせて更新され続けるインフラなのだと感じます。物流自動化関連銘柄を見る場合も、1回設備を納入して終わる市場ではなく、物流拠点の新設・更新・高度化が継続する可能性まで考えると見え方が変わってきます。
動画で見る|ZOZOBASEつくば3は多品種の商品をどう仕分ける?
ZOZOBASEつくば3は、ファッション物流ならではの難しさと自動化を動画で確認できる事例です。
ZOZO公式動画では、入荷された大量の商品が物流センター内を移動し、t-Sortによる仕分けやPocket Sorterなどの自動化設備を使いながら、最終的に注文単位へまとめられていく物流を見ることができます。ZOZO自身も公式プレスリリースで、この動画を「ZOZOBASEつくば3」の詳細を紹介する公式YouTube動画として案内しています。
衣料品という点ではユニクロと同じですが、ZOZOは多数のブランドの商品を横断して扱うため、物流の課題も違います。動画を見ると、「自動倉庫」という同じ言葉でも、企業によって解決しようとしている問題がまったく違うことがよく分かります。
ミライをソウゾウする物流拠点「ZOZOBASEつくば3」
楽天マート|食品物流は「全部ロボット」にできない?
飲料、野菜、肉、冷凍食品、洗剤、ティッシュなど性質の異なる商品を一つの物流センターで扱うだけでなく、食品には温度や鮮度という条件も加わるからです。
楽天グループが2025年に公開した楽天マートの物流倉庫では、コンテナの組み立て、商品の仕分け、搬送など幅広い工程へ自動設備が導入され、AGVも物流センター内を走っています。一方で、食品の鮮度チェックはスタッフが行っており、機械だけで物流を完結させるのではなく、人と自動化設備を組み合わせた運用になっています。
ここは今回の記事で大切にしたい部分です。大量に繰り返す搬送や仕分けは機械に任せる一方で、野菜の状態を見るような、人の感覚や判断が生きる仕事は人が担う。自動化とは人をゼロにすることではなく、人がやる仕事と機械がやる仕事を組み直すことだと分かりやすい事例だと思います。
動画で見る|楽天マートは人とロボットをどう使い分けている?
実際にAGVや自動設備が動く様子と、人が鮮度確認を担っている様子を見せることで、「全部無人にすることが自動化ではない」という本文の意味が伝わりやすくなります。
驚きの自動化!楽天マート物流倉庫の秘密に迫る
ニトリ|大型商品と「人に負担の大きい作業」を自動化する
ニトリグループは商品の輸入から店舗・顧客への配送まで独自の物流網を構築し、ロボットストレージシステムなどの自動化設備を取り入れてきました。2026年3月期には、竣工済みの自社DC6拠点すべてが本格稼働したとしています。
さらに特徴的なのが、物流センターへ商品が入る前のデバンニングです。ニトリHDは2026年3月期の決算資料で、デバンニングロボットの導入を開始し、職場環境の抜本的な改善と省人化を目指していると説明しています。2026年2月には、物流子会社のホームロジスティクスがXYZ Roboticsと代理販売契約を結び、自社で得た導入・運用ノウハウを他社へ提供する事業まで始めました。
ここには、自動化のもう一つの価値が見えます。人が速く仕事をするためだけでなく、暑いコンテナ内で重量物を何度も持つような身体的負担の大きい作業そのものを、人から機械へ移すという考え方です。
設備を自社物流で使うだけでなく、そこで蓄積したノウハウを外部へ展開し始めた点も興味深いところです。物流の現場を持つ企業が、自ら物流自動化のサービス提供側へ回る可能性もあります。
動画で見る|ニトリのデバンニングロボットは現場をどう変えた?
ニトリの物流で特に動画で見てほしいのが、コンテナ荷下ろしを自動化するデバンニングロボットです。
XYZ Roboticsの公式導入事例では、ホームロジスティクスの実際の現場で「RockyOne」がコンテナ内部の箱を認識し、一つずつ取り出していく様子を見ることができます。動画ではホームロジスティクス側の担当者も登場し、導入理由や現場の変化について説明しています。
私が注目したいのは処理速度だけではありません。これまで人がコンテナ内部へ入り、暑さや寒さの中で重量物を何度も運んでいた仕事をロボットへ移し、スタッフは監視や設備管理へ役割を変えられる。「自動化=人を減らす」ではなく、「人がやらなくてもいい重労働を機械へ移す」という今回の記事のテーマが、最も分かりやすく見える動画の一つです。XYZ Roboticsによると、導入機は最大22.5kgのケースを扱い、1時間あたり650ケース以上の荷下ろし実績も示されています。
ホームロジスティクス(ニトリグループ)がRockyOneでデバンニングを自動化
自動倉庫を比較してみる|「何を運ぶか」で自動化は変わる
企業ごとに自動化の中心が違うのは、導入しているロボットの優劣ではなく、扱う商品と物流のボトルネックが違うからです。
| 事例 | 商品・物流の特徴 | 自動化で目立つ部分 | 見えてくるポイント |
|---|---|---|---|
| ユニクロ | 色・サイズが多い衣料品 | RFID、自動保管・搬送・仕分け | 商品情報と設備をつなぐ |
| Amazon | 膨大な種類のEC商品 | 棚搬送ロボット、GTP、AI制御 | 人の移動そのものを減らす |
| ZOZOBASE | 小ロット・多品種のファッション | t-Sort、順立て、Pocket Sorter | 1点単位の商品を注文ごとにまとめる |
| 楽天マート | 食品・日用品、温度・鮮度管理 | AGV、仕分け・搬送自動化 | 機械と人の判断を組み合わせる |
| ニトリ | 家具・大型・重量物も多い | 自動倉庫、搬送、デバンニングロボット | 人への負担が大きい工程を機械へ移す |
「最も自動化されている倉庫」を一つ決めても、あまり意味はありません。食品と服と家具では物流の難しさがまったく違うからです。大量の小型商品なら棚搬送が有効でも、大型家具では同じ設備をそのまま使えません。食品では搬送を自動化できても、鮮度のように人の判断を残した方がよい工程があります。
だから物流自動化関連銘柄を見るときも、「ロボットを作っている会社」という括りだけでは足りません。どんな商品の、どの工程で、何を解決する設備なのか。 ここまで分解すると、マテハン企業、ロボット企業、センサー、AI、WMS、物流施設など、物流関連銘柄の役割の違いも理解しやすくなります。
「自動倉庫」といっても中身はまったく違う
しかし企業ごとの物流を追ってみると、実際にはまったく違います。ユニクロは衣料品と商品情報を結び付け、Amazonは棚そのものを人へ運び、ZOZOは膨大な多品種商品を注文単位へ組み替える。楽天マートでは搬送や仕分けを機械へ任せながら人が食品の状態を確認し、ニトリでは大型商品の物流に加えて、荷下ろしのような身体的負担の大きい仕事まで自動化しようとしています。
共通しているのは、「人をなくすこと」から逆算しているのではなく、自社の物流で時間がかかる場所、間違いが起こりやすい場所、人への負担が大きい場所を見つけ、そこへ技術を入れていることです。自動倉庫は商品に物流を合わせるための仕組みであり、一つの正解があるわけではありません。
そして2026年現在、その自動化はさらに変化しています。AMRは周囲を認識しながら走り、デバンニングロボットは積み方が毎回違う箱を認識し、Amazonでは大量のロボット群の動きをAIで最適化する仕組みまで登場しました。決められた動きを高速で繰り返すだけだった物流設備に、少しずつ「見る・判断する・動きを変える」という要素が加わっています。
物流自動化の面白さは、ロボットそのものではなく、こうした技術を組み合わせて物流センター全体の仕事を作り変えているところにあると感じます。





自動倉庫にも一つの正解があるわけではないんですね。
運ぶ商品や困っている作業に合わせて、人とロボットの役割を変えているのが面白いです!
物流自動化はどこまで進んだ?|ロボット・無人化技術を整理
私も物流自動化について調べ始めた頃は、こうした設備をまとめて「倉庫を自動化するロボット」と捉えていました。
しかし実際には、それぞれ役割がまったく違います。商品を保管する技術、倉庫内を運ぶ技術、パレットを持ち上げる技術、商品を一つずつつかむ技術、配送先ごとに仕分ける技術、そしてそれらをまとめて管理・制御するシステムがあります。
2026年現在の物流自動化は、一台の万能ロボットが倉庫の仕事をすべて行う世界ではありません。自動倉庫、AGV・AMR、無人フォークリフト、ロボットアーム、ソーター、WMS・WCSなど、得意な仕事が違う設備を組み合わせることで、人が担ってきた工程を少しずつ自動化しています。ダイフクの物流ソリューションでも、自動倉庫、AGV・AMR、仕分け、ピッキング、WMSなどが別々の設備として用意され、それらを組み合わせて物流センター全体を構成しています。
そして最近は、その自動化の質も変わり始めています。決められた場所を往復するだけではなく、センサーで周囲を認識する。商品の位置や形を3Dで捉える。状況に合わせて走行経路やロボットアームの動きを変える。物流設備にも少しずつ「見る・判断する・動きを変える」という能力が加わっています。
物流自動化を工程ごとに整理すると分かりやすい
| 自動化する仕事 | 主な技術 | 機械が担うこと |
|---|---|---|
| 保管 | 自動倉庫・シャトル | 商品を自動で格納・出庫する |
| 搬送 | AGV・AMR | 倉庫内で荷物を運ぶ |
| パレット荷役 | 無人フォークリフト・AGF | パレットを持ち上げ、搬送・格納する |
| ピッキング | GTP・ピッキングロボット | 必要な商品を取り出す |
| 積み降ろし | パレタイザー・デパレタイザー・デバンニングロボット | 箱を積む・降ろす |
| 仕分け | ソーター・仕分けロボット | 配送先・注文ごとに商品を分ける |
| 管理・制御 | WMS・WCS・AI | 在庫や設備の動きを管理する |
こうして並べると、自動化しやすい仕事には共通点があります。同じ場所を何度も往復する、決められた荷物を運ぶ、大量の商品を一定のルールで仕分けるといった反復回数の多い仕事です。一方、形が毎回違う商品を扱ったり、予想外の状態を判断したりする仕事は難易度が上がります。
物流自動化の進歩を見るときは、「ロボットが導入されたか」だけではなく、物流センターのどの仕事まで機械へ渡せるようになったのかを見ると、その技術の意味が分かりやすくなります。
自動倉庫|「保管する仕事」はかなり機械化できる
パレットやケースなどの商品をクレーンやシャトルが棚へ運び、コンピュータの指示によって自動で格納・出庫します。ダイフクも自動倉庫を、パレット・コンテナ・段ボールケースなどを自動で運び、保管・仕分けするコンピュータ管理型の倉庫として説明しています。
人がフォークリフトで棚まで運び、「空いている場所へ入れる」という仕事を機械へ置き換えられるだけでなく、高さ方向まで使って保管密度を上げられることも大きな特徴です。冷凍・冷蔵倉庫のように、人が長時間働くには負担の大きい環境でも自動倉庫を活用できます。
ただし、自動倉庫だけを設置しても物流センター全体が自動になるわけではありません。倉庫から出てきた商品を誰かが運び、ピッキングし、仕分け、梱包し、出荷場所へ届ける必要があります。その間をAGV・AMRやロボットなどでつなげられるかどうかが、物流センター全体の自動化では重要になります。
AGV・AMR|「人が運ぶために歩く仕事」を減らす
商品を保管場所へ運ぶ、ピッキングした商品を仕分けへ持っていく、完成した荷物を出荷場所へ送る。商品そのものを加工していなくても、工程と工程の間では何度もモノを移動させています。
そこで使われるのがAGVやAMRです。決められた経路を安定して走る仕組みから、センサーなどを使って周囲を認識し、より柔軟に動く仕組みまで、自動搬送車の選択肢は広がっています。ダイフクも現在、パレット、ケース、ピース単位など荷物に応じた複数のAGV・AMR型搬送システムを展開しています。
2026年には、フォークリフト機構を持つAMR「SOTR-F」も発表されています。床や荷受け台、コンベヤとの間でパレットを受け渡し、人がフォークリフトで行っていた工程間搬送の自動化を狙った設備です。
私が物流センターで働いていた経験から考えても、「商品を持って移動する」という仕事は一回だけなら大した距離ではありません。しかし一日中繰り返せば、歩く距離も荷物を動かす回数も積み重なります。AGV・AMRの価値は、人より速く走ることだけではなく、人が商品を運ぶために何度も往復していた時間を減らせることにあると感じます。
無人フォークリフト|パレット搬送からトラック荷役へ
そのフォークリフトでも、自動運転できる領域が広がっています。
特に2026年の動きで分かりやすいのがトラック荷役です。トヨタL&Fは4月、3D-LiDARを使ってトラックやパレットの位置を認識する4本フォーク仕様の自動運転フォークリフトを発売し、2パレットの同時搬送に対応しました。9月には、搬送するパレット数を変更できるマルチロードハンドラー仕様によるトラック荷役の実証も始めています。
これは単なる「無人で走れるフォークリフト」から一歩進んだ変化です。倉庫内の決められた場所を往復するだけなら環境を整えやすいですが、トラックは停車位置が少しずれたり、荷台やパレットの位置が毎回まったく同じとは限りません。トヨタL&Fのシステムでは3D-LiDARやカメラを利用してトラックやパレットを検知し、荷役位置や進入経路を調整します。
つまり物流自動化は、「決められた場所を正確に動く」だけではなく、「現実のズレを認識して合わせる」方向へ進んでいることが分かります。
ロボットピッキング|「商品を一つつかむ」が意外と難しい
ECの物流センターには、箱、ボトル、袋、パウチ、凹凸のある商品など、形も大きさも硬さも違う商品が大量に存在します。箱なら吸着できても、柔らかい袋では形が変わる。商品が重なっていれば、どこをつかめばいいのか判断する必要があります。さらに商品を落としたり、パッケージを傷つけたりしてはいけません。
そのため現在のピッキングロボットでは、ロボットアームだけでなくカメラ・3Dビジョン・センサー・制御ソフトウェアが重要になります。Mujinの物流向けピースピッカーも、箱物だけでなく凹凸のある商品や変形しやすいパウチなどを対象とし、3Dビジョンで商品の位置や状態を認識しながらピッキングする仕組みを採用しています。
ロボットアームの見た目だけを見ると、「手」が一番重要に感じます。しかし物流ロボットを調べるほど、その手をどこへ動かし、何をつかみ、どの向きで置くのかを決める『目と頭』の部分が重要なのだと分かります。
ロボットの進化は「手」よりも「目と頭」に表れ始めている
3Dビジョンで周囲を見る。商品の形や位置を認識する。ロボットアームがぶつからない経路を計算する。持ち上げる商品の状態に合わせて動きを変える。こうした処理が加わることで、ロボットが対応できる物流作業の範囲が広がっています。Mujinも、周囲の環境や与えられた作業に合わせてリアルタイムでロボットの動きを生成する仕組みを物流ロボットへ取り入れています。
物流ロボットの進歩は、モーターが速くなったことだけではありません。現実世界を認識し、その状態に合わせて動きを変えられるようになっていることが大きな変化です。
自動化が進んでも「完全無人」が当たり前になったわけではない
決められた商品の保管や搬送、大量に繰り返す仕分けなどは自動化しやすい一方、破損した商品への対応、設備トラブル、特殊な荷姿、品質確認、想定外の商品など、例外が発生したときには人の判断が必要になる場面が残ります。楽天マートで食品の鮮度確認をスタッフが行っていたように、自動化した方がよい仕事と、人が担当した方がよい仕事は商品によっても異なります。
興味深いのは、企業側もこの「残っている仕事」をさらに自動化しようとしていることです。ダイフクは2026年9月、JDSCと共同で、人の自然言語による指示と周囲の状況をAIが理解し、ロボットの動作を自律的に計画・実行するフィジカルAI技術の検証を発表しました。シミュレーション環境では、学習していない商品と仕分け先の組み合わせで97%の成功率を確認した一方、今後は実環境での実証を進める段階としています。
この事例が示しているのは、「完全無人化がすでに完成した」ということではありません。むしろ、現在の物流自動化ではまだ人の判断が残っているからこそ、それを機械へどこまで移せるのかが研究されているということです。
物流ロボットが決められた動きを繰り返すだけなら、環境側を機械に合わせれば自動化できます。しかし、初めて見る商品や予定外の状況にも対応しようとすると、機械側が現実世界を理解しなければなりません。そこで重要になってくるのが、AIとロボットを組み合わせて現実世界で「見る・考える・動く」フィジカルAIです。
物流自動化は「機械を置く」から「設備をつなぐ」へ


物流自動化を技術ごとに分けると、自動倉庫は保管、AGV・AMRは搬送、無人フォークリフトはパレット荷役、ロボットアームはピッキングや積み降ろし、ソーターは仕分けと、それぞれ得意な仕事が違うことが分かります。
重要なのは、一つの設備だけを見て「この倉庫は自動化されている」と判断しないことだと思います。自動倉庫から商品が出てきても、その先を人が何度も台車で運んでいれば自動化は途中で途切れます。ロボットが商品をピッキングできても、その情報がWMSや他の設備とつながっていなければ、物流センター全体を効率よく動かすことはできません。
2026年の物流で起きているのは、ロボットの数が増えているだけではありません。保管する、運ぶ、持ち上げる、つかむ、仕分ける、管理するという別々の仕事を、データでつなぎ始めていることが大きな変化です。
そして自動化できる範囲が広がるほど、最後に難しくなるのは、決められた作業ではなく「予定と違うことが起きたときにどうするか」です。周囲を認識し、状況を判断し、その場で動きを変えるロボットが実用化されれば、物流自動化の意味もさらに変わります。





物流ロボットにも、それぞれ得意な仕事があるんですね。
1台ですべてを自動化するのではなく、たくさんの設備がつながることで物流センター全体が動いているんですね!
フィジカルAIで物流はどう変わる?|「決められた動き」から「考えて動く」へ


AIと聞くと、ChatGPTのように文章をつくったり、画像を生成したり、データを分析したりする技術を思い浮かべる人が多いと思います。私も「AI」と「物流ロボット」は、どこか別々の技術として考えていました。
しかし物流自動化を調べていくと、この二つが急速に近づいていることが分かります。倉庫内を走るAMRが人や障害物を認識する。ロボットアームが箱の位置や向きをカメラで確認し、その場でつかみ方を変える。大量のロボットの動きをAIが調整する。さらに2026年には、人が言葉で指示した内容をAIが理解し、ロボットの作業へ分解して実行する実証まで始まっています。
こうした、AIが現実世界を認識し、判断し、ロボットや機械を通じて行動する技術が「フィジカルAI(Physical AI)」です。NVIDIAもフィジカルAIを、ロボットや自動運転車などが物理世界を認識・理解・推論し、複雑な行動を実行・調整するための技術として説明しています。
物流にとって大きいのは、これまでの自動化が得意だった「決められた仕事」から、状況を見ながら動きを変えなければならない仕事へ、自動化できる範囲が広がる可能性があることです。
フィジカルAIとは?|AIが「画面の中」から現実世界へ出てくる
現実世界は、コンピューターの中ほど整っていません。箱が少し傾いていることもあれば、パレットの位置が数cmずれていることもあります。人が突然通路へ入ってくるかもしれませんし、同じ商品でも袋がへこんだり、向きが変わったりします。
フィジカルAIでは、カメラやLiDAR、センサーなどを使って周囲の状況を捉え、その情報をAIが処理し、ロボットや自動搬送設備の動きへ反映します。NVIDIAは、フィジカルAIによって自律システムが物理世界を「認識・理解・推論」し、行動できるようになると説明しています。倉庫内AMRが障害物を避けたり、マニピュレーターが物体の形状に合わせて把持位置や力を変えたりする例も挙げています。
つまりフィジカルAIは、単にAIをロボットへ載せることではありません。現実世界を見るセンサー、判断するAI、実際に動くロボットを一つにつなぐ技術と考えると分かりやすいと思います。
従来の物流自動化とフィジカルAIは何が違う?
コンベヤは決められた方向へ荷物を流し、自動倉庫は指定された棚へ商品を格納し、産業用ロボットはあらかじめ設定された動作を正確に繰り返します。こうした仕組みは大量処理に非常に強く、フィジカルAIが登場したからといって不要になるわけではありません。
違いが出やすいのは、予定どおりにならない状況への対応です。
| 比較 | 従来型の自動化 | フィジカルAIを活用した自律化 |
|---|---|---|
| 動き方 | あらかじめ決めた動作を繰り返す | 状況に合わせて動きを変える |
| 周囲の認識 | センサーで位置・有無などを確認 | カメラ・3D認識などで状態を理解する |
| 商品変更 | 設定変更やティーチングが必要になりやすい | 未知の商品への対応範囲拡大を目指す |
| 経路 | 決められたルート中心 | 周囲を見て経路を調整 |
| 異常・例外 | 人が介入することが多い | AIによる判断・再計画を目指す |
| 得意な環境 | 整えられた固定的な環境 | 変化のある現実環境へ対応範囲を広げる |
大切なのは、「従来型=古い、フィジカルAI=優れている」と単純に分けないことです。毎日まったく同じ荷物を同じルートで大量に運ぶなら、決められた動作を高速・正確に繰り返す設備の方が合理的な場合もあります。
フィジカルAIの価値が大きくなるのは、環境や商品が変わるため、事前にすべての動作を決めきれない仕事です。
なぜ物流とフィジカルAIは相性がいい?
同じ段ボールでも大きさや重量は違います。ECなら商品の種類は膨大で、袋やボトル、不定形の商品も流れてきます。トラックは毎回同じ位置へ寸分違わず停車するわけではありませんし、コンテナの中では箱の積み方も変わります。倉庫内には人やフォークリフト、AMRが同時に存在します。
人なら、少しずれた箱を見て手を伸ばしたり、通路に人がいれば避けたり、「これはいつもと違う」と気づいて対応できます。しかし従来型の自動設備に同じことをさせるには、考えられる状況を事前に設定しておく必要がありました。
Mujinの物流ロボットでも、3Dビジョンで対象物を認識し、その情報をもとにロボットの動作経路を自動計算するモーションプランニング技術が使われています。同社は、3Dビジョンを「目」、コントローラを「脳」、ロボットハンドを「手」のような関係として説明しています。
物流にフィジカルAIが期待される理由は、単にロボットを賢くしたいからではありません。物流という仕事そのものが、現実世界の小さなズレや変化へ対応し続けなければ成立しない仕事だからだと思います。
ダイフク×JDSC|「言葉で指示してロボットが考える」物流へ
ダイフクとJDSCは、AIエージェントが人からの指示と周囲の状況を理解し、ロボットの動作を自律的に計画・実行するフィジカルAI技術を共同で検証しています。
興味深いのは、ロボットへ一つひとつ細かな動作をプログラムするのではなく、人が自然な言葉で仕事を指示することです。
AWSが紹介した実証では、たとえば「棚Aの3段目に品を2個補充して」といった指示をAIが受け取り、その仕事をロボットが実行できる小さな作業へ分解します。ロボットはそれぞれの工程を実行し、失敗した部分があればその部分を再実行する仕組みが検証されています。
これは、物流設備の使い方をかなり変える可能性があります。従来は商品や作業内容が変わるたびに、人が設備へ細かな設定やティーチングを行う必要がある場面がありました。AIが「何をしたいのか」を理解し、そのために必要な動作を自ら組み立てられるようになれば、物流センターの商品や作業が変わったときの対応も柔軟になります。
「97%成功」は完成ではなく、実用化へ向けた途中経過
ダイフクとJDSCは、シミュレーション環境で得られた成果をもとに、今後は実際の物流・生産現場での実証へ進めるとしています。
この「97%」はかなり興味深い数字ですが、すでに物流センターで何でも自律的にできるようになったという意味ではありません。 今回の成果はシミュレーション環境での検証であり、実際の倉庫には照明の違い、汚れ、商品の破損、人や設備の動きなど、さらに多くの変化があります。
むしろ重要なのは、事前に学習していない組み合わせでもAIが判断して作業できる可能性が示されたことです。物流自動化の課題だった「商品が変わるたびに設備を設定し直す」という部分を小さくできれば、多品種の商品を扱う物流センターほどメリットが大きくなる可能性があります。
フィジカルAIには「現実で試す前の仮想世界」も重要になる
商品を壊すかもしれませんし、人や設備へ接触すれば事故につながります。
そこで重要になるのがシミュレーションやデジタルツインです。実際の物流センターやロボットをコンピューター上に再現し、さまざまな環境や作業を仮想空間で試してから現実へ持ち込みます。
NVIDIAもフィジカルAIの開発では、物理法則を再現したシミュレーション環境が重要だと説明しています。同社の倉庫向けソリューションでも、デジタルツイン上で物流センター全体やロボット群をシミュレーションし、実際に設備へ投資・変更する前に影響を検証する考え方が示されています。
ダイフクとJDSCの実証でも、AWS上にAIモデルの学習からシミュレーションまでを繰り返せる開発環境を構築しています。
フィジカルAI関連銘柄を考えるときに、ロボットメーカーだけを見ていてはいけない理由もここにあります。ロボットを動かすAIだけでなく、大量の計算を行う半導体、クラウド、センサー、3Dシミュレーション、デジタルツイン、制御システムまで必要になるからです。
フィジカルAI関連銘柄は「ロボット会社」だけではない
現実世界を見るためのカメラやLiDAR、判断するAI、高速な演算装置、AIを学習させるクラウドやデータセンター、仮想空間でテストするシミュレーション、そして実際の物流設備へ組み込むシステムインテグレーションが必要です。
AIの学習やシミュレーションを支える計算基盤まで広げて考えると、物流のフィジカルAIはデータセンターともつながっています。データセンターの仕組みや関連企業については、「データセンター関連銘柄」でも詳しく整理しています。
投資の視点では、フィジカルAIを「人型ロボットのテーマ」とだけ考えると、かなり狭くなります。
| フィジカルAIを支える層 | 物流での役割 |
|---|---|
| ロボット・マテハン | 実際に荷物を運ぶ・つかむ・仕分ける |
| カメラ・LiDAR・センサー | 現実世界を見る |
| AI・制御ソフトウェア | 状況を理解し、動作を決める |
| 半導体・GPU | AIの学習・推論を計算する |
| クラウド・データセンター | 学習・データ処理・シミュレーション |
| デジタルツイン | 現実で動かす前に仮想空間で検証する |
| SI・物流システム | ロボットやWMS・WCSを現場へつなぐ |
2026年のダイフクとJDSCの実証だけを見ても、マテハン企業、AI企業、AWSのクラウド基盤が組み合わさっています。フィジカルAI関連銘柄を見るなら、「誰がロボットを作るか」だけでなく、「ロボットが見る・考える・学ぶ・現場で動くために、誰の技術が必要になるのか」まで分解することが重要だと思います。
物流ロボットは「動く機械」から「状況を理解する機械」へ
自動倉庫、コンベヤ、AGV、産業用ロボットは、これからも物流を支える重要な技術です。
そこへフィジカルAIが加わることで、物流ロボットが目指す方向は少し変わり始めています。箱の位置がずれていたら自分で認識する。人が通れば経路を変える。初めて見る商品でもつかみ方を考える。人の言葉を理解し、必要な作業へ分解する。「決められた動きを正確に繰り返す機械」から、「現実を見て、その場で動きを変える機械」へ近づいているということです。
ただし2026年現在、物流のフィジカルAIが完成したわけではありません。ダイフクとJDSCの事例も、97%という成果を出したのはシミュレーション環境であり、実際の物流現場での検証はこれからです。
それでも、人手不足が続く物流にとってこの変化は大きいと感じます。これまで「人にしか対応できない」と考えられていた予定外の仕事までロボットが支援できるようになれば、自動化できる範囲そのものが広がるからです。
フィジカルAIの本当の価値は、人のようなロボットをつくることではなく、人が重い荷物を持ち続けたり、同じ場所を何度も歩いたり、危険な環境へ入り続けたりしなくても物流を維持できる仕組みをつくることにあるのかもしれません。





フィジカルAIは、ただロボットを速くする技術ではないんですね。
周りを見て考え、状況に合わせて動けるようになれば、今まで人にしかできなかった仕事も少しずつ変わっていきそうです!
倉庫を出た荷物はどう運ばれる?|幹線輸送の仕組み
東京の物流センターから大阪へ送る荷物、メーカーの工場から全国の物流拠点へ向かう商品、ECで注文された荷物などは、地域と地域をまたぐ長い距離を移動する必要があります。
この長距離部分を担うのが幹線輸送です。ヤマトホールディングスも幹線輸送を「ベース(物流ターミナル)間をつなぐ大型トラックによる輸送」と説明しています。身近な宅配便でも、集荷したトラックがそのまま東京から福岡まで走って届けるわけではなく、一度物流拠点へ荷物を集め、行き先ごとにまとめて長距離輸送し、到着地側で再び細かく分けて配送します。
物流センターの自動化がどれだけ進んでも、この地域間輸送が詰まれば商品は届きません。しかも長距離トラック輸送では、ドライバー不足や労働時間の問題がより大きく影響します。そこで2026年の物流では、一人のドライバーが長距離を走り切る仕組みから、中継輸送、輸送の集約、ダブル連結トラックなどを組み合わせ、少ない人数でより多くの荷物を動かす仕組みへ変えようとしています。
幹線輸送とは?|地域と地域を結ぶ物流の「大動脈」
ラストワンマイルでは住宅や店舗を一軒ずつ回るため、小回りや配送順序が重要になります。一方、幹線輸送では大量の荷物をまとめ、物流ターミナルから別の物流ターミナルまで長距離を運ぶことが中心です。
宅配便なら、地域で集められた荷物はいったん営業所へ入り、中継センターや大型ターミナルへ集約されます。佐川急便では、営業所で仕分けされた荷物を中継センターまで長距離トラックで輸送し、中継センターで目的地別に再び仕分けたあと、各地域の営業所へ送っています。
つまり物流全体を道路に例えるなら、地域配送は住宅街へ入っていく細かな道路で、幹線輸送は都市と都市を結ぶ高速道路のような存在です。
| 役割 | 主な輸送 |
|---|---|
| 集荷 | 荷主・店舗・家庭などから地域拠点へ集める |
| 幹線輸送 | 大型物流拠点どうしを長距離で結ぶ |
| 地域配送 | 到着地の物流拠点から地域の営業所などへ運ぶ |
| ラストワンマイル | 最終的に店舗・企業・家庭へ届ける |
この構造があるからこそ、一つの大型トラックへ多くの荷物をまとめて運ぶことができます。幹線輸送では「何台走らせるか」だけではなく、限られたドライバーと車両で、どれだけ多くの荷物をまとめて運べるかが重要になります。
なぜ一度物流拠点へ集める?|少量の荷物を大型トラックへまとめる
そこで複数の荷主の商品を物流拠点へ集め、同じ方面の荷物を大型車へまとめて運びます。
西濃運輸の「メガEXP便」でも、4t・7t車で複数の荷主から商品を集めて拠点へ集約し、その後は大型13t車による幹線輸送で別地域の物流拠点へ運ぶ仕組みを採用しています。到着後は、再び地域ごとの車両へ荷物を分けます。
これは倉庫で行っていた「仕分け」の考え方を、輸送ネットワーク全体まで広げたものとも言えます。商品を行き先別にまとめ、なるべく積載スペースを無駄にせず長距離を移動させる。物流センターには保管する場所という役割だけでなく、小さな物流を大きな物流へ束ねる結節点としての役割があります。
佐川急便のXフロンティアでも、複数の中継センターを一つの大型拠点へ集約することで幹線輸送の効率化を図り、幹線輸送トラックの台数削減やドライバーの待機時間短縮を狙っています。
夜の高速道路で荷物が動く|私たちが寝ている間の物流
佐川急便は、地域の営業所から中継センターへ荷物を運ぶ幹線輸送について、長距離トラックが夜の間に荷物を運ぶと説明しています。到着した荷物は中継センターで再び営業所別に仕分けられ、朝から地域配送へつながります。
夜間に幹線輸送することで、昼間に集めた荷物を翌朝までに目的地側へ移動させ、朝から配送へ回すことができます。私たちがネット通販で「翌日配送」を当たり前のように選べる背景には、倉庫の自動化だけでなく、夜の間に地域間をつなぐ物流ネットワークがあります。
ただし、この速さを長距離ドライバーの長時間労働だけで維持することは難しくなっています。国土交通白書では、都市圏間の長距離輸送は宿泊を伴う場合があり、往復で2~3日の拘束が発生する働き方が担い手不足の一因になっていると指摘しています。
一人で長距離を走り切らない|「中継輸送」が重要になる
従来なら、たとえば大阪から東京まで一人のドライバーが約600kmを走り、宿泊や車中泊を伴って往復するケースがありました。中継輸送では、途中の名古屋などに中継拠点を設け、大阪側のドライバーと東京側のドライバーがそれぞれ約300kmずつ担当します。国土交通省は中継輸送を、一つの輸送行程を複数のドライバーで分担する輸送形態としており、日帰り運行をしやすくすることで拘束時間や負担を減らす考え方を示しています。
そして2026年には、この中継輸送を政策としてさらに進める動きがありました。「物資の流通の効率化に関する法律」の改正法が5月13日に成立し、5月20日に公布されています。中継輸送の計画認定制度などを設け、トラック事業者だけでなく、荷主や倉庫業者なども含めて中継輸送を進める仕組みが整えられました。
重要なのは、荷物は東京まで運ぶ必要があっても、一人のドライバーが東京まで行く必要はないという発想です。
物流は荷物のリレーであり、ドライバーまで同じ人が最初から最後まで走り続ける必要はありません。
中継輸送には3つの方法がある
| 中継方法 | 何を交換する? | 特徴 |
|---|---|---|
| ドライバー交替方式 | ドライバー | 車両はそのまま、運転する人だけ交替する |
| 貨物積替え方式 | 荷物 | 中継拠点で別のトラックへ貨物を積み替える |
| トレーラー・トラクター方式 | トラクターヘッド | 荷物を積んだトレーラーを残し、牽引する車両を交換する |
国土交通省によると、トレーラー・トラクター方式では貨物そのものを積み替える必要がないため、中継地点での作業を比較的短時間で行えます。一方、貨物積替え方式では荷役作業が発生します。ドライバー交替方式は車両をそのまま走らせることができますが、別のドライバーがその車両を運転することになります。
どの方法が適しているかは、荷物、車両、拠点、運送会社同士の連携によって変わります。中継輸送を広げるには、道路を走るトラックだけではなく、交換するための場所、荷役設備、予約・マッチングシステムまで含めた仕組みが必要になります。
1人で大型トラック2台分を運ぶ|ダブル連結トラック
通常の大型トラックよりも長い車両を連結し、一人のドライバーで大量の荷物を運びます。国土交通省によると、ダブル連結トラックは1台で通常の大型トラック2台分の輸送が可能で、トラック輸送の省人化を目的として導入されています。
利用できる道路も徐々に広がっており、2024年9月には対象路線が約5,140kmから約6,330kmへ拡大しました。北海道や首都高速、阪神高速が新たに加わったほか、災害時の迂回路となる高速道路も対象になっています。
ただし車両を長くすれば、どこでも走れるわけではありません。曲がれる道路、駐車できるスペース、休憩施設、中継拠点など、道路インフラ側も対応する必要があります。高速道路のSA・PAでは専用・優先駐車マスの整備も進められています。
つまりダブル連結トラックは「大きなトラックを作れば終わり」ではなく、車両と物流拠点と道路をセットで変える物流効率化です。
幹線輸送の効率化は「速く走ること」ではない
これから重要になるのは、一台へどれだけ荷物をまとめられるか、一人のドライバーがどれだけ効率よく輸送できるか、どこで荷物や車両を受け渡すかというネットワーク側の工夫です。
複数企業の荷物を集約して大型車へ載せる。中継拠点でドライバーを交替する。トレーラーだけを引き渡す。ダブル連結トラックで一度に運ぶ量を増やす。物流センターから直接幹線輸送へつなぎ、集荷のための走行を減らす。2026年度の国土交通省の物流効率化支援でも、「幹線輸送集約化」「中継輸送」が独立した支援対象になっています。
西濃運輸が2026年に開設した市川支店の新ターミナルでも、倉庫内でピッキング・梱包・出荷まで終え、そのまま幹線輸送へつなぐ「集荷レス」によって、集荷距離やドライバーの拘束時間を減らす考え方が採用されています。
物流関連銘柄を見るときにも、トラック保有台数だけでは見えない部分です。物流拠点の立地、積載率を高める仕組み、中継拠点、配車システム、車両の大型化まで含めて見ると、幹線輸送を効率化する企業がどこにいるのかが見えやすくなります。
幹線輸送は、日本中の物流センターをつなぐ大動脈
集荷された荷物をまとめ、大型トラックで地域を越えて運び、到着地で再び細かく分ける。幹線輸送は、日本中の物流センターを一つのネットワークとしてつなぐ役割を担っています。
一方で、長距離輸送を一人のドライバーへ依存する仕組みは変わり始めています。中継輸送では長距離を複数人で分担し、ダブル連結トラックでは一人当たりの輸送量を増やす。物流拠点も、荷物を保管する場所から、大量の荷物を集め、組み替え、次の輸送へ素早く渡す場所へと重要性を増しています。
ただし、トラックの積載効率や中継輸送を改善しても、ドライバー不足やCO₂排出量といった問題をすべて解決できるわけではありません。大量の荷物を数百km、数千km単位で動かす物流では、道路だけに頼らず、鉄道や船など別の輸送手段も組み合わせる考え方が重要になっています。国土交通白書でも、トラックの柔軟性と、鉄道・内航海運の定時性や大量輸送力を組み合わせることが期待されています。





幹線輸送は、ただ遠くまでトラックで走る仕事ではないんですね。
荷物をまとめたり、途中で人や車両を交替したりして、少ない人数でも日本中へ荷物をつなげようとしているんですね!
トラックだけでは物流を支えられない|モーダルシフトとは?
しかし、数百km離れた都市へ大量の荷物を運ぶ仕事まで、すべてトラックとドライバーだけで支え続ける必要があるのでしょうか。
そこで重要になるのがモーダルシフトです。モーダルシフトとは、トラックなどで運んでいた貨物を、鉄道や船舶など別の輸送手段へ転換する考え方です。国土交通省も、ドライバー不足への対応やCO₂排出量の削減という観点からモーダルシフトを推進しています。2026年度から始まった「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」でも、鉄道・海運だけでなく航空機なども含めた「新モーダルシフト」が物流効率化の施策として位置付けられました。
考え方はシンプルです。工場や物流センターから貨物駅・港まではトラックで運び、長距離部分を鉄道や船へ任せ、到着した貨物駅・港から目的地までは再びトラックで運ぶ。トラックをなくすのではなく、それぞれの輸送手段が得意な区間を担当するのがモーダルシフトです。
モーダルシフトとは?|「全部トラック」から得意な輸送手段を組み合わせる
トラックは工場や店舗、物流センターのすぐ近くまで行けます。一方、貨物列車は決められた線路を走るため自由に目的地を変えることはできませんが、大量の貨物を一度に長距離輸送できます。船も港から港という制約はあるものの、一度に大量の貨物を運べます。
その違いを組み合わせるのがモーダルシフトです。
| 輸送手段 | 得意なこと | 主な弱点 |
|---|---|---|
| トラック | 出発地・目的地の近くまで直接運べる | 長距離ではドライバー負担が大きい |
| 貨物鉄道 | 大量・長距離・定時輸送 | 貨物駅までの輸送が必要 |
| 船舶 | 大量・長距離輸送 | 港までの輸送、航路・時間の制約 |
| 航空 | 高速・長距離 | コスト・積載量などに制約 |
物流のすべてを一つの輸送手段で完結させる必要はありません。都市の中や工場から駅までの柔軟な区間はトラック、都市間の大量輸送は鉄道、海を挟む長距離や大量輸送は船というように、物流を区間ごとに分解して最適な輸送手段へ渡していくことができます。
2026年度の総合物流施策大綱でも、政府は鉄道、RORO船、航空機の空きスペースなど陸・海・空の輸送モードを総動員する「新モーダルシフト」を掲げています。
なぜ今モーダルシフト?|ドライバー不足だけではない
数百kmの幹線区間を鉄道や船へ移せば、トラックドライバーは貨物駅や港までの比較的短い区間を担当し、その日のうちに拠点へ戻れる働き方を増やせます。
もう一つ大きいのが、CO₂排出量です。
国土交通省が示す2024年度の輸送量当たりCO₂排出量では、1トンの貨物を1km運ぶ「1トンキロ」当たり、営業用トラックが195g-CO₂なのに対し、船舶は41g、鉄道は19gです。単純比較では、船舶はトラックの約5分の1、鉄道は約10分の1まで排出量を抑えられます。
| 輸送手段 | CO₂排出量(1トンキロ当たり・2024年度) |
|---|---|
| 営業用トラック | 195g |
| 船舶 | 41g |
| 鉄道 | 19g |
もちろん、実際の物流では貨物駅や港までトラックで運ぶ必要があるため、輸送全体がこの割合になるわけではありません。それでも、走行距離の長い部分を鉄道や船へ移すほど、ドライバーの運転時間と環境負荷の両方を減らせる余地があります。
だからモーダルシフトは「環境にやさしい物流」というだけではなく、ドライバー不足が深刻になる日本で物流を維持するための仕組みとしても重要になっています。
貨物鉄道|貨物列車1本で大型トラック何台分を運べる?
JR貨物によると、貨物列車26両編成の輸送力は10トントラック約65台分に相当します。貨物駅から貨物駅まで列車でまとめて輸送することで、それだけの長距離トラック輸送を鉄道へ置き換えられる可能性があります。
鉄道には、道路渋滞の影響を受けにくく、時刻表に沿って大量の貨物を運べる特徴もあります。JR貨物は全国約140か所にコンテナを扱う貨物駅を持ち、鉄道輸送とトラック輸送を組み合わせたネットワークを構築しています。
ただ、貨物列車が工場の玄関まで来るわけではありません。
工場・物流センター
↓ トラック
貨物駅
↓ 貨物列車
到着側の貨物駅
↓ トラック
物流センター・店舗
というリレーになります。
ここでも大切なのは、「トラックか鉄道か」という二者択一ではなく、トラックの柔軟性と鉄道の大量輸送力を組み合わせることです。
31フィートコンテナ|大型トラックの荷物をそのまま鉄道へ移しやすくする
「鉄道を使えばいい」と言っても、トラックと鉄道で荷物の積み方や荷役方法が大きく変われば、荷主側の作業まで作り直さなければなりません。
そこで使われているのが31フィートコンテナです。
JR貨物によると、31フィートウイングコンテナは大型トラックとほぼ同等の積載容量を持ち、1,100mm×1,100mmのパレットを16枚積載できます。ウイング仕様なら両側面からフォークリフトで荷役できるため、これまで大型ウイング車で運んでいた物流を比較的そのまま鉄道へ移しやすくなっています。
これは単なる「大きな鉄道コンテナ」ではありません。
物流のやり方を大きく変えずに、輸送手段だけトラックから鉄道へ切り替えやすくするための共通インターフェースとも考えられます。
物流標準化でパレットやデータの共通化が重要だったのと同じように、モーダルシフトでも「違う輸送手段へ荷物を渡しやすい形」が重要になります。
船へモーダルシフト|トラックやトレーラーごと海を渡る
内航海運へのモーダルシフトで使われる代表的な船には、フェリー、RORO船、内航コンテナ船があります。国土交通省もこれら3種類を対象に利用検討ガイドや航路情報を公開し、トラックから海上輸送への転換を進めています。
なかでも物流を理解するうえで面白いのがRORO船です。ROROは「Roll-on/Roll-off」の略で、トレーラーなどを船内へそのまま乗り入れて輸送できます。
たとえば関東から九州まで荷物を運ぶ場合、
関東の物流センター
↓ トラクターヘッドで港へ
港でトレーラーを船へ積載
↓ RORO船で海上輸送
九州の港
↓ 現地のトラクターヘッドが牽引
九州の物流センター
という運び方ができます。
トレーラーに積んだ荷物を一度すべて降ろして船へ積み直さなくても、荷物を載せたトレーラーごと長距離部分を船へ渡せるのが大きなポイントです。
鉄道と船はどちらが優れている?|「荷物とルート」で正解は変わる
鉄道は全国の貨物駅を結び、時刻表に沿った大量輸送に向いています。一方、船は沿岸部や北海道・九州など海を使いやすい区間で大量の貨物を運びやすく、フェリーやRORO船ならトラック・トレーラーとの連携もしやすくなります。
| 比較 | 貨物鉄道 | 内航海運 |
|---|---|---|
| 主な強み | 大量・定時・長距離輸送 | 大量・長距離・海上輸送 |
| 接続点 | 貨物駅 | 港 |
| 荷物の渡し方 | 鉄道コンテナ | トレーラー・コンテナなど |
| トラックとの連携 | 駅まで・駅からトラック | 港まで・港からトラック |
| 向いているルート | 貨物鉄道網で結びやすい都市間 | 港を利用しやすい沿岸・長距離区間 |
さらに、災害や輸送障害を考えると、複数の輸送手段を持つ意味もあります。一つの道路だけに物流を依存するより、鉄道や船を含めて複数のルートを組み合わせられれば、物流ネットワークの選択肢を増やせます。
2026年度の総合物流施策大綱でも、物流効率化だけでなくサプライチェーンの強靱化が主要施策に位置付けられています。
モーダルシフトにも弱点がある|「乗り換え」が増える物流
トラックなら荷物を積んだまま出発地から目的地へ直接運べますが、鉄道へ移せば貨物駅、船へ移せば港という乗り換え地点が増えます。
そこで、
- 貨物駅や港までトラックで運ぶ
- コンテナやトレーラーを積み替える
- 列車・船の出発時刻へ合わせる
- 到着後に再びトラックへ接続する
といった工程が必要になります。
また、鉄道なら利用できる貨物駅や列車ダイヤ、船なら航路や出港時刻に制約があります。JR貨物も、大型コンテナは貨車の能力や輸送ルートによって一部輸送できない場合があると案内しています。
だからモーダルシフトを成功させるには、列車や船だけ増やせばよいわけではありません。貨物駅、港、物流センター、コンテナ、荷役機械、トラック、予約・配車システムまで一つの物流としてつなぐ必要があります。
ここでも、物流は「モノを運ぶ会社」だけで成立する産業ではないことが分かります。
「新モーダルシフト」へ|鉄道・船だけではなく陸・海・空を総動員する
2026年度~2030年度の総合物流施策大綱では、陸・海・空の輸送モードを総動員した「新モーダルシフト」が掲げられています。鉄道やRORO船だけでなく、航空機の空きスペース、ダブル連結トラック、自動運転、自動物流道路なども含め、日本全体の物流ネットワークを再構築する方向です。
これは「トラックを鉄道へ置き換える」という話より、かなり大きな考え方です。
物流センター、トラック、鉄道、船、航空機、港、貨物駅を別々に考えるのではなく、一つの商品を届けるために利用できる輸送能力を日本全体でどう組み合わせるかという発想へ変わりつつあります。
自動倉庫で設備同士をデータでつないだのと同じように、日本全体の物流でも異なる輸送手段をつなぐことが重要になっていると感じます。
トラックを減らすのではなく、「トラックにしかできない仕事」へ集中させる
工場から貨物駅へ運ぶ。港から物流センターへ運ぶ。地域の店舗や家庭まで荷物を届ける。最後に細かな場所へ荷物をつなぐ仕事では、トラックの柔軟性が必要です。
だからモーダルシフトの本質は、トラックをなくすことではなく、長距離・大量輸送を鉄道や船へ渡すことで、限られたトラックとドライバーを「トラックだからこそできる仕事」へ集中させることなのだと思います。
2026年の物流政策も、鉄道・海運だけを伸ばすのではなく、トラック、鉄道、船、航空、物流拠点を一つのネットワークとして組み直す方向へ進んでいます。国も陸・海・空を総動員する「新モーダルシフト」を、2030年度へ向けた物流効率化策の一つに位置付けています。
そして、鉄道や船でどれだけ効率よく遠くまで運んでも、最後には商品を一軒一軒の家庭や店舗へ届けなければなりません。大量輸送とは反対に、荷物が細かく分かれるほど難しくなる物流も残っています。





トラックを全部やめるのではなく、鉄道や船が得意なところを任せるんですね。
みんなが得意な仕事を分担することで、少ない人でも物流をつなぎ続けられるんですね!
地域配送拠点から自宅へ|ラストワンマイルの難しさ
しかし目的地の地域へ到着すると、物流の姿は大きく変わります。何百個、何千個とまとめて運ばれてきた荷物を、今度は一つひとつの住所へ分け、住宅や店舗、企業まで届けなければなりません。
この最終区間がラストワンマイルです。「1マイル」という名前ですが、必ずしも約1.6kmを意味するわけではなく、地域の配送拠点などから最終的な受取人へ商品を届ける物流の最後の区間を指します。
しかも現在の日本では、この最後の区間を流れる荷物そのものが巨大です。国土交通省によると、2024年度の宅配便取扱個数は50億3,147万個でした。約50億個の荷物を最終的には一軒一軒へ届けなければならないわけです。
幹線輸送では「できるだけ荷物をまとめる」ことが効率化につながりました。しかしラストワンマイルでは逆に、目的地へ近づくほど荷物が細かく分かれていきます。大量輸送から個別配送へ切り替わる最後の区間こそ、物流の中でも人手と時間がかかりやすい場所なのです。
ラストワンマイルとは?|物流の最後に待っている「一軒ずつ届ける仕事」
ところが地域配送拠点へ到着すると、一台のトラックに積まれた荷物の届け先はすべて違います。
住宅Aへ1個、マンションBへ2個、店舗Cへ5個、企業Dへ3個。同じ地域を走りながら何度も停車し、そのたびに荷物を探し、建物へ入り、受取人へ渡します。マンションなら駐車場所を探し、オートロックを通り、エレベーターで上階まで移動することもあります。
そのためラストワンマイルでは、走行距離だけで効率を測ることができません。「何軒回るか」「どこへ停車できるか」「荷物を何階まで運ぶか」「受取人がいるか」といった一件ごとの条件が、配送時間を大きく左右します。
幹線輸送が物流の「大動脈」なら、ラストワンマイルは住宅や店舗まで伸びる無数の「毛細血管」のような存在です。最後の一本がつながらなければ、どれだけ長距離輸送を効率化しても商品はユーザーへ届きません。
なぜ最後の数kmが難しい?|荷物が細かく分かれるほど効率は落ちる
| 比較 | 幹線輸送 | ラストワンマイル |
|---|---|---|
| 主な移動 | 拠点→拠点 | 拠点→住宅・店舗・企業 |
| 荷物 | 大量にまとめる | 一件ごとに分ける |
| 停車回数 | 比較的少ない | 多い |
| 配送先 | 大型物流拠点中心 | 一軒一軒異なる |
| 主な課題 | 積載率・長距離輸送 | 配送順・不在・駐車・建物内移動 |
| 効率化の方向 | 一度に多く運ぶ | 一回で確実に届ける |
たとえば一台のトラックに100個の荷物が積まれていても、それを一つの物流センターへ届けるのと、100軒の家庭へ届けるのでは仕事量がまったく違います。ラストワンマイルでは道路を走る時間だけでなく、停車、荷物探し、玄関までの移動、受け渡しという細かな作業が何度も発生します。
だから物流の最後では、「一台に何個積めるか」だけではなく、「一回の訪問で確実に届けられるか」が非常に重要になります。
再配達|同じ荷物をもう一度運ぶと配送能力を二重に使う
配送員が住所まで行っても受取人が不在なら、その荷物を営業所などへ持ち戻り、別の時間にもう一度同じ場所へ届ける必要があります。商品そのものは一個でも、配送に必要な走行、停車、荷物の積み降ろし、玄関までの移動が繰り返されます。
国土交通省が大手宅配事業者6社を対象に行った2026年4月の調査では、宅配便の再配達率は約7.6%でした。2025年10月の8.3%から改善しているものの、現在も一定数の荷物で再配達が発生しています。
しかも、物流の供給能力が不足する状況では、この7.6%の意味が大きくなります。新しい荷物を届けるために使えるはずだった車両と人の時間を、すでに一度運んだ荷物へもう一度使うからです。
再配達を減らすことは、単なる「宅配会社の効率化」ではありません。今いるドライバーでより多くの荷物を届けるため、社会全体の配送能力を無駄にしない取り組みとも言えます。
「受け取る場所」を増やす|置き配・宅配ボックスが物流を変える
そこで広がっているのが、置き配、宅配ボックス、コンビニ受取、駅などの宅配ロッカー、受取日時の指定といった多様な受取方法です。国土交通省の2026年4月調査では、こうした多様な受取方法の利用率は約31.0%まで上昇しました。政府は2026年度~2030年度の総合物流施策大綱で、2030年度までに利用率を50%程度へ引き上げる目標を設定しています。
2026年度には、置き配サービスの事業者間連携や、駅・公共施設などの宅配ロッカー活用を支援する事業も始まっています。つまり政策の方向も、「配送員が毎回受取人と対面する」ことを前提とした物流から、受取人が場所や時間を選びやすい物流へ変わっています。
これは小さな変化に見えますが、物流全体で考えると重要です。ロボットを一台増やさなくても、最初の訪問で荷物を置ければ、その分だけ再配達の走行や作業を減らせます。
都市と地方では難しさが逆になる|「荷物が多すぎる」と「荷物が少なすぎる」
都市部では荷物が集中するため、一見すると効率よく配送できそうに見えます。しかし高層マンション、オートロック、エレベーター、駐車場所、時間指定など、一つの住所へ到着してからの作業に時間がかかることがあります。2026年4月の再配達率も、国土交通省の大手6社調査では都市部8.5%、都市部近郊7.2%、地方6.0%と地域差がありました。
一方、地方や過疎地域では別の問題があります。住宅が広範囲に点在し、一軒届けたあと次の家まで何kmも走ることがあります。人口減少によって荷物の密度が下がると、一台の配送車が長い距離を走っても届けられる荷物が少なくなり、採算を維持すること自体が難しくなります。
国土交通省もラストマイル配送の課題として、地方・過疎地域では人口減少による需要縮小や積載効率の低下、地域の宅配ドライバー減少の中で広範囲の配送先へ届けなければならない点を挙げています。
つまり、都市では「荷物と届け先が集中する難しさ」、地方では「荷物と届け先が分散する難しさ」があります。同じラストワンマイルでも、解決方法は一つではありません。
ロボットやドローンは「最後の数km」をどこまで担える?
代表的なのが自動配送ロボットです。日本では2023年4月の改正道路交通法施行によって、一定の条件を満たす低速・小型の自動配送ロボットが公道を走行できる制度が始まりました。経済産業省は、人手不足や買い物困難者への対応を目的に社会実装を進めており、2026年5月にも官民協議会で、より配送能力の高いロボットの実装や地図基盤などについて議論しています。
山間部や離島などでは、ドローンを使って道路を走らず荷物を届ける考え方もあります。2026年度の国土交通省「ラストマイル配送効率化促進事業」でも、地域の受取拠点、貨客混載、共同配送と並んでドローン等の活用が支援対象になっています。
ただし、2026年現在、自動配送ロボットやドローンが宅配便を全面的に置き換えているわけではありません。歩道の安全性、天候、荷物の大きさ、マンションへの入館、受取方法、運行管理など、現実の配送には多くの条件があります。
だから現時点では、「人の配送がなくなる」というより、人だけでは維持しにくい場所や区間をロボットやドローンが補うという見方の方が実態に近いと思います。
物流は最後の一軒まで届いて初めて完成する
しかし最後には、その大量の荷物をもう一度細かく分け、一軒一軒の住宅や店舗へ届けなければなりません。
ラストワンマイルが難しいのは、その最後の区間に人、住所、時間、建物、交通、不在、地域差といった現実世界の条件が一気に集まるからです。
だから解決策も一つではありません。再配達を減らす。置き配や宅配ボックスを使う。共同配送を進める。地方では地域の受取拠点を活用する。ロボットやドローンが一部の配送を補う。2025年に国土交通省がまとめたラストマイル配送の提言でも、ドライバー不足、再配達、過疎地域での積載効率低下などを一体の問題として捉え、持続可能な配送サービスをどう維持するかが論点になりました。
物流自動化というと、巨大な倉庫のロボットに目が向きやすいですが、商品を受け取る私たち自身も物流の一部です。「いつ・どこで受け取るか」を変えるだけでも、最後の配送を支える力になります。





遠くまで大量に運ぶより、最後に一軒ずつ届ける方が難しいこともあるんですね。
受け取り方を少し変えるだけでも、配送する人の負担を減らせるんですね!
物流を効率化するのはロボットだけではない
しかし物流を調べるほど、「高性能なロボットを入れれば解決する」というほど単純ではないことも分かります。トラックが倉庫の前で何十分も待っている。会社ごとに違うパレットを使うため荷物を積み替える。荷物の少ないトラックが同じ道路を何台も走る。商品より大きな箱を使い、トラックの中で空気まで運んでいる。こうした無駄は、ロボットを導入しなくても減らせる余地があります。
2026年現在の物流効率化法でも、重要なテーマは大きく積載効率を上げること、荷待ち時間を減らすこと、荷役時間を減らすことに整理されています。政府の基本方針では、日本全体の積載効率を44%へ高めることや、荷待ち・荷役等時間を原則として1回の受け渡し1時間以内へ短縮する方向が示されています。
物流を効率化するとは、「機械を増やすこと」だけではありません。待たない、積み替えない、空気を運ばない、別々に運ばない、情報を何度も入力しない。 こうした小さな無駄を物流全体から取り除くことも、自動化と同じくらい重要です。
トラックは「走っていない時間」にも拘束される|荷待ちを減らす
前のトラックの荷役が終わっていない。同じ時間帯に何台も到着する。倉庫側の準備ができていない。受付を済ませてもバースが空いていない。こうした理由で、トラックが駐車場や道路沿いで待つ時間が発生します。
国土交通省は「荷待ち時間」を、荷主などの都合によって貨物の受け渡しを待っている時間として定義しています。物流効率化法では、ドライバーの拘束時間を減らすため、荷待ちと荷役を合わせた時間の短縮そのものが重要な指標になっています。
これは考えてみると非常にもったいない時間です。トラックもドライバーもその場所にいるのに、荷物は1mも動いていません。しかも荷待ち時間を減らせれば、新しいトラックを購入したり、ドライバーを増やしたりしなくても、同じ人と車両で動かせる荷物を増やせる可能性があります。
バース予約システム|トラックが来る時間を先に整理する
国土交通省の物流デジタルサービス事例集でも、バース予約システムは、複数のトラックが同時刻に集中することで発生する荷待ちを抑え、倉庫側でも事前準備や作業員配置を行いやすくする仕組みとして整理されています。
物流センターを大きく建て替えなくても、「何時に誰が来るのか」を整理するだけで効率が変わる。物流DXというと高度なAIを想像しがちですが、情報を先に共有して待ち時間をなくすことも立派な物流DXです。
パレット標準化|「荷物を積み替える仕事」そのものを減らす
しかしメーカー、運送会社、物流センターごとにサイズや運用方法が違えば、物流の途中で荷物を別のパレットへ積み替える必要が出てきます。
そこで進められているのがパレットの標準化です。国土交通省の官民物流標準化懇談会では、新たにパレット化する事業者へ、平面サイズ1,100mm×1,100mmの11型パレットを標準規格として推奨しています。もちろん商品特性などによって別規格が合理的な場合もありますが、共通サイズを増やすことで輸送・保管・荷役をつなぎやすくする考え方です。
工場で商品をパレットへ載せる。そのパレットをフォークリフトでトラックへ積む。物流センターでそのまま降ろし、自動倉庫へ格納する。別の拠点でも同じパレットを使える。
こうなれば物流の途中で段ボールを一箱ずつ積み替える必要が減ります。さらに設備側も同じサイズを前提に設計しやすくなるため、標準化は人の荷役を減らすだけでなく、自動化しやすい物流をつくる土台にもなります。フィジカルインターネットの議論でも、物流資材の共通化は機械化・自動化につながる重要な要素として位置付けられています。
商品の箱から物流を考える|DFLという考え方
たとえばパレットの幅に箱がうまく収まらなければ隙間が生まれます。箱が必要以上に大きければ、トラックや倉庫では商品ではなく空気まで運び、保管することになります。
そこで使われる考え方がDFL(Design For Logistics)です。商品や外装を設計する段階から、運びやすさ、保管しやすさ、パレットへの積みやすさまで考えます。国土交通省も紙おむつ・生理用品の物流改善で、T11型パレットの利用とともに、パレットへの積載効率を考慮して外装サイズを設計するDFLを推進しています。
これは個人的にも面白い考え方でした。物流改善というと「完成した商品をどう効率よく運ぶか」から考えがちですが、本当に効率化するなら、商品をつくる段階から「どう運ばれるか」を考える必要があるからです。
共同配送|会社が違っても同じトラックに荷物を載せる
A社のトラックは半分、B社も半分、C社も半分しか積まれていない。それぞれが同じ地域へ向かえば、道路には3台のトラックが走ります。
そこで、行き先や配送条件が近い荷物をまとめ、一台のトラックで運ぶのが共同配送・共同輸配送です。
物流効率化法の判断基準でも、複数荷主の貨物の積み合わせ、配送の共同化、帰り荷の確保、配車計画の最適化などが積載効率を高める取り組みとして示されています。
共同配送の面白いところは、ロボットを一台も増やさなくても、物流能力を増やせる可能性があることです。3台で運んでいた荷物を2台へまとめられれば、必要なドライバー、燃料、車両、道路スペースも減らせます。
ただし企業をまたいで荷物をまとめるには、出荷時間、配送先、温度帯、荷物の大きさ、納品条件などを調整しなければなりません。つまり共同配送は「同じトラックへ積めば終わり」ではなく、企業同士が物流情報や条件を合わせられるかが重要になります。
積載効率|トラックが運んでいるのは「荷物」だけとは限らない
物流効率化法では積載効率=積載率×実車率という考え方を採用しています。積載率は「荷台にどれだけ荷物を積めているか」、実車率は「走行のうち実際に貨物を積んでいる割合」と考えると分かりやすく、政府は日本全体で積載効率44%を目指しています。
つまり、行きのトラックを満載にするだけでは足りません。
東京から大阪まで荷物を満載で運んでも、帰りが空車なら、その車両は帰路で荷物を運べる能力を使っていません。大阪から東京へ向かう別企業の荷物を見つけられれば、帰り道も物流として使えます。
高速道路をもっと速く走るよりも、空いている荷台と空いている帰り道を埋める方が、物流全体では大きな効率化になる場合があるということです。
物流データの標準化|会社が違っても情報をつなげられるか
フィジカルインターネットの実現に向けた取り組みでも、物流資材だけでなく、商品・事業所・物流資材などに関わるコード体系やデータの標準化が重要なテーマになっています。
たとえばメーカーのシステムで持っている「商品A・100ケース・10時納品」という情報が、そのまま運送会社の配車システム、物流センターのWMS、バース予約へつながれば、同じ情報を何度も入力する必要がありません。
さらにデータがつながれば、「このトラックにはまだ空きがある」「同じ地域へ向かう別企業の荷物がある」「11時のバースが混雑している」といった情報を使って、物流全体を調整しやすくなります。
ロボットが物流の「手足」だとすれば、標準化されたデータは企業や設備をまたいで情報を流す神経のような存在なのかもしれません。
物流の無駄を減らすだけでも、運べる量は増やせる
トラックが荷物を待つ時間を減らす。パレットをそろえて積み替えをなくす。商品を運びやすい箱にする。複数企業の荷物を一緒に運ぶ。帰りの空車を減らす。会社をまたいでデータをつなぐ。こうした改善には、派手なロボットが登場しないものも多くあります。
しかし、一つひとつの無駄が減れば、今あるトラック、倉庫、設備、人員でも、より多くの荷物を動かせる可能性があります。
自動化と標準化は別々の話でもありません。パレットのサイズがそろえば無人フォークリフトや自動倉庫は扱いやすくなり、データ形式がそろえばAIや配車システムも物流全体を判断しやすくなります。2026年3月に経済産業省・国土交通省系機関が開催したフィジカルインターネットのセミナーでも、企業連携、標準化、一貫パレチゼーション、倉庫DXが同じ物流改革のテーマとして扱われています。
物流の未来は、「全部をロボットに任せる世界」だけではありません。人がやらなくてもいい作業を減らし、トラックが待たなくてもいい時間をなくし、会社同士が共有できるものを増やす。 その積み重ねも、日本の物流を維持する大きな力になります。





最新ロボットを入れなくても、待つ時間や積み替える仕事、空いている荷台を減らすだけで物流は変わるんですね。
効率化って、無駄を見つけることから始まるんですね!
物流は届けたら終わりではない|返品・回収する物流


物流というと、メーカーでつくられた商品が物流センターを通り、トラックや鉄道、船で運ばれ、最後にユーザーへ届くまでの流れを想像します。しかし、商品が玄関へ届いたところで物流が必ず終わるわけではありません。
サイズが合わなかった服は返品されます。故障した家電は回収されます。店舗で使い終わった食品トレーや容器が回収されることもあります。パレットや折りたたみコンテナのように、商品を運んだ物流資材そのものを回収して繰り返し使う場合もあります。
つまり物流には、「つくったものを届ける流れ」だけでなく、「使い終わったものや返品された商品を戻す流れ」もあります。国土交通省では、製品を製造者から消費者へ運ぶ流れを「動脈物流」、消費者などから排出されたものを回収し、再利用・再資源化へつなぐ物流を「静脈物流」と表現しています。
しかもサーキュラーエコノミーが広がれば、物流は「届けて終わり」ではなくなります。商品や資源をもう一度回収し、検品し、再利用し、再資源化して、再び社会へ戻す。一方通行だった物流が、循環する物流へ変わっていくことになります。
物流には「戻る流れ」もある|動脈物流と静脈物流
メーカーでつくられた商品を工場から物流センター、店舗、家庭へ届けるのが動脈物流。一方、使用済みの商品、廃棄物、回収品などを消費者側から集め、再利用や再資源化へ戻していくのが静脈物流です。国土交通省も静脈物流を、廃棄物などを循環資源として再利用・再資源化するための輸送として定義しています。
ただし、「戻る物流」は一種類ではありません。
| 戻ってくるもの | 主な目的 |
|---|---|
| ECなどの返品商品 | 検品して再販・交換する |
| 故障・使用済み製品 | 修理・再利用・リサイクル |
| 家電 | 回収して再商品化・資源回収 |
| 食品トレー・容器 | 回収して再生原料へ |
| パレット・通い箱 | 回収して繰り返し使用 |
| 廃材・スクラップ | 資源として再利用・再資源化 |
「戻る」といっても、同じ倉庫へ戻れば終わりではありません。商品の状態や目的によって、その先の行き先が変わります。
EC返品|戻ってきた商品は、ただ棚へ戻せばいいわけではない
物流側から見ると、返品は「配送の逆再生」ではありません。
戻ってきた荷物を受け取り、注文データと照合する。箱を開けて商品を確認する。破損や汚れがないかを見る。付属品がそろっているか確認する。再販できるなら在庫へ戻し、必要であれば再包装する。不具合があれば修理やメーカー確認へ回し、再販できなければ別の処理へ振り分ける必要があります。
新品の商品なら、入荷した時点で「何の商品が何個入っているか」がある程度決まっています。しかし返品商品は、戻ってくる理由も状態も一つずつ違うため、人の確認や判断が多くなりやすい物流です。
ECが成長するほど、「販売した商品を速く届ける仕組み」だけでなく、戻ってきた商品をどれだけ早く次の状態へ戻せるかも物流センターの重要な仕事になります。
返品された商品は「再販できるか」で行き先が分かれる
たとえば、未開封で問題がなければ在庫へ戻せる商品もあります。開封済みでも問題がなければ、検品や再包装を行って再販できる場合があります。不具合があれば修理やメーカー確認へ回し、販売が難しい商品ならリユース、資源回収、適正処理など別のルートへ進みます。
これは一例ですが、返品物流では「運ぶ」よりも、その商品を次にどこへ流すのか判断する工程が重要になります。
回収物流|家電は「届ける方向」と逆向きにも動く
日本の家電リサイクル制度では、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目について、小売業者による引取りと、製造業者などによる再商品化が役割として定められています。消費者側も、廃棄時には収集運搬料金とリサイクル料金を負担する仕組みです。
新品の冷蔵庫なら、
メーカー
→物流センター
→店舗・配送拠点
→家庭
へ進みます。
しかし古い冷蔵庫は反対に、
家庭
→回収
→指定された引取・集約地点
→再商品化施設
という方向へ動きます。
2026年にも家電の適正回収体制やリサイクル制度の見直しに向けた議論が続いており、環境省の2026年版白書でも、回収体制や制度運用に関する検討が紹介されています。
商品を売るための物流だけでなく、社会から使い終わった商品を回収するための物流網も必要ということです。
使い終わったものを「資源」に戻す|サーキュラーエコノミーと物流
分解して部品を再利用する。プラスチックや金属を素材へ戻す。容器を洗浄してもう一度使用する。修理して中古品として再販売する。こうして商品や材料を社会の中で循環させる考え方がサーキュラーエコノミー(循環経済)です。
経済産業省でも2026年に資源循環経済小委員会を開催するなど、資源循環を経済システムとして進める議論が続いています。また、2026年度には分別・回収・運搬・処理から再生材を再び製造工程へ組み込むまでのサプライチェーン構築に向けた実証も進められています。
ここで物流が重要になります。
どれだけ高度なリサイクル技術があっても、全国に散らばった使用済み製品を回収施設まで運べなければ資源は集まりません。逆に、回収のためだけに長距離を少量ずつ運べば、物流コストが高くなります。
サーキュラーエコノミーは「リサイクル工場の技術」だけの話ではありません。使い終わったものを、必要な量だけ、必要な場所へ集める物流まで設計できて初めて循環するのだと思います。
帰り道を空車にしない|「届けた帰り」に回収する物流
商品を店舗へ届けたトラックが、そのまま空車で物流センターへ戻るのであれば、帰り道にはまだ輸送能力が残っています。そのスペースを利用して、使用済み容器や物流資材などを回収できれば、配送と回収を一つの往復で行うことができます。
実際に食品トレー大手のエフピコでは、商品をスーパーなどへ納品したトラックの帰り便を利用して、店頭で回収された使用済み食品トレーを回収しています。回収したトレーを原料へ戻し、新しいトレーへ再生する「トレーtoトレー」の仕組みを構築しており、環境省系の循環経済事例でも、納品の帰り便を活用した静脈物流が特徴として紹介されています。
これは非常に物流らしい仕組みだと思います。
行きは商品を運ぶ。帰りは使用済みの商品や資材を回収する。新しい車両を一本増やすのではなく、すでに走っている物流の空いている方向を使って循環をつくるわけです。
「帰り荷」を増やして積載効率を高める考え方は、商品だけでなく資源循環にも使うことができます。
返品・回収物流が難しい理由|「何が、どれだけ戻るか」が読みにくい
いつ返品されるのか。どの商品が戻るのか。箱は開封されているのか。壊れているのか。そのまま再販できるのか。修理が必要なのか。資源として回収するのか。一つひとつ状態が違います。
さらに使用済み製品の回収では、全国に少量ずつ発生するものをどの拠点へ集めるのかという問題もあります。国土交通省も静脈物流について、効率的で低コストな回収システムの構築が資源循環には重要だとしています。
だから返品・回収物流では、単に「逆向きのトラックを走らせる」だけでは足りません。
回収→集約→検品・選別→行き先を決める→再利用・修理・再資源化へ送る。
商品が戻ってきて初めて、その後の物流ルートが決まる場合もあります。通常物流よりも分岐が多いことが、リバース物流の難しさです。
物流は「直線」から「循環」へ変わっていく
しかし実際には、返品された商品が倉庫へ戻り、使用済み家電がリサイクル施設へ運ばれ、食品トレーや物流資材が回収されます。戻ってきたものの中には、そのまま再び商品として使えるものもあれば、修理されるもの、部品や素材へ戻るものもあります。
国土交通省が静脈物流という言葉を使っているように、物流には社会へ送り出す流れと、社会から戻す流れの両方があります。
サーキュラーエコノミーが進めば、この戻る物流の重要性はさらに高まります。経済産業省でも、再生材を製造工程へ再び組み込むサプライチェーンの構築や、回収・再資源化モデルの実証が2026年度にも進められています。
物流の役割は、「新品の商品を早く届けること」だけではありません。使い終わった商品や資源を次の場所へ戻し、もう一度社会で使える状態につなげることも物流の仕事です。
商品が一周して再び原料や商品へ戻るまでを見ると、物流は「モノをA地点からB地点へ運ぶ産業」というより、社会の中でモノと資源を循環させる仕組みなのだと感じます。





商品は家に届いたら終わりだと思っていました。
でも、返品したり回収したり、資源としてもう一度戻したりする物流もあるんですね。物流って本当にぐるっと一周しているんですね!
同じ物流でも全然違う|何を運ぶかで仕事は変わる
さらに物流を複雑にしているのが、何を運ぶかによって必要な設備や管理方法まで変わることです。
段ボールに入った日用品なら常温の倉庫で保管できますが、冷凍食品なら温度を維持しなければなりません。薬なら品質を守るための厳格な管理が必要です。アパレルでは色やサイズ違いの商品を大量に管理し、大型家具なら一個の商品だけでトラックの荷台を大きく使います。
つまり物流会社の仕事は、単純に「荷物をA地点からB地点へ運ぶこと」ではありません。商品の性質に合わせて、保管方法、設備、荷役、輸送車両、情報管理、配送方法まで設計する仕事でもあります。
物流関連銘柄を見るときにも、この違いは重要です。同じ「倉庫」「トラック」「物流」という名前でも、食品物流に強い企業、大型品を得意とする企業、ECの多品種物流を得意とする企業では、競争力の源泉がまったく違います。
物流の難しさを決めるのは「大きさ」だけではない
| 商品を見るポイント | 物流へ与える影響 |
|---|---|
| 大きさ・重量 | 保管設備、荷役機械、車両が変わる |
| 温度 | 常温・冷蔵・冷凍など設備が変わる |
| 壊れやすさ | 梱包、振動・衝撃対策が必要になる |
| 商品種類 | 在庫管理、ピッキング方法が変わる |
| 使用期限・鮮度 | 在庫の出し方や配送速度が重要になる |
| 商品価値 | セキュリティや追跡管理が重要になる |
| 返品の多さ | 返品処理・検品能力が必要になる |
| 納品条件 | 時間指定、店舗別仕分けなどが必要になる |
たとえば同じ10kgの商品でも、中身が飲料なのか、医薬品なのか、精密機器なのかで扱い方は変わります。
物流を見るときに重要なのは、荷物の量だけではありません。「その商品を品質を落とさず、間違えず、安全に届けるには何が必要なのか」まで考えると、それぞれの物流の難しさが見えてきます。
食品物流|「運べたか」ではなく「品質を保ったまま届いたか」
常温で運べる飲料や菓子もあれば、野菜や乳製品のように低温管理が必要な商品、冷凍食品やアイスクリームのように凍った状態を維持しなければならない商品もあります。
そのため食品物流では、保管する倉庫だけを冷やせば終わりではありません。
製造
→冷蔵・冷凍倉庫
→冷蔵・冷凍車
→物流センター
→店舗
という移動中も含めて、必要な温度帯を維持する必要があります。こうした温度管理された一連の物流はコールドチェーンと呼ばれます。
さらに食品には賞味期限・消費期限があります。在庫があるからといって好きな順番に出荷するのではなく、期限を確認しながら先に出す商品を判断する必要があります。
食品物流の価値は、単に荷物を早く運ぶことではありません。工場を出たときの品質を、消費者が手に取るところまで守ることにあります。
医薬品物流|商品だけでなく「品質の記録」も一緒に運ぶ
薬は、箱が破れていなければ問題ないとは限りません。保管・輸送中の温度や取り扱いによって品質へ影響する可能性があるため、物流の途中でも適切な管理が必要です。
そのため医薬品物流では、温度管理された倉庫や車両だけでなく、いつ、どこで、どのような状態で保管・輸送されたのかを記録できることも重要になります。
特に温度管理が必要な医薬品では、温度センサーやデータロガーなどを使い、輸送中の環境を確認することがあります。
つまり医薬品物流では、
モノを届ける
+
品質を維持する
+
その品質を説明できる記録を残す
という三つを同時に成立させる必要があります。
物流DXというと効率化ばかりに目が向きますが、こうした商品では「効率化するためのデータ」ではなく、「品質を証明するためのデータ」にも大きな価値があります。
アパレル・EC物流|「一個ずつ違う商品」を大量に扱う
しかしアパレルでは、一つの商品に色・サイズという違いがあります。
同じTシャツでも、
白・黒・青
×
S・M・L・XL
と分かれれば、それだけで多数の商品コードになります。さらにブランド、デザイン、シーズンが増えると、物流センターで管理するSKUは一気に増えます。
ECでは、そこから「黒のMを1枚」「白のLとパンツを1本」といった注文を一件ずつ正確に組み合わせなければなりません。
しかも衣料品はサイズやイメージ違いによる返品も発生します。
つまりアパレル物流では、大きな荷物を動かす力よりも、膨大な種類の商品を一個単位で正確に管理し、注文ごとに組み替える能力が重要になります。
ZOZOBASEやユニクロの物流で、商品情報、仕分け、自動搬送が重要だった理由もここにあります。
家具・家電物流|「重い・大きい」は倉庫から玄関まで続く
ソファ、ベッド、冷蔵庫、洗濯機などは一個の商品だけでも大きく、重量があります。物流センターの棚に保管するスペースも必要ですし、トラックでは商品の重量だけでなく荷台の容積を大きく使います。
そして大型商品は、玄関まで届ければ終わりとは限りません。
室内まで運び込む。階段を上げる。壁や床を傷つけないように搬入する。家電なら設置や接続を行う場合もあります。古い家電を同時に回収することもあります。
つまり大型品物流では、物流センターだけ自動化しても、最後の配送で人の作業が大きく残ります。
ニトリの物流で、自動倉庫や搬送設備だけでなく、コンテナから大型商品を降ろすデバンニングまで自動化対象になっていたのも、「商品そのものが重く大きい」という物流特性が背景にあります。
精密機器・半導体関連物流|高価で壊れやすい商品をどう守る?
精密機器や半導体関連の部材・装置などでは、一つの部品や設備の価値が高く、輸送中のわずかな損傷が大きな損失につながる場合があります。
そのため、衝撃を吸収する専用梱包、温湿度管理、振動監視、固定方法、セキュリティ、輸送状況の追跡など、一般的な段ボール商品とは違う物流が必要になります。
特に生産設備や重要部材では、「届けばいい」だけではなく、指定された日時に、指定された状態で、安全に到着すること自体が物流サービスの価値になります。
物流関連企業を見るときにも、「何トン運んだか」だけでは、その会社の付加価値は測れません。少量でも高度な管理が必要な物流では、一件当たりのサービス内容が大きく変わります。
同じ物流センターをそのまま使い回せるわけではない
冷凍食品なら冷凍設備が必要です。アパレルなら大量のSKUを管理できる棚や仕分け設備が重要になります。家具なら広い保管スペースや大型品を扱える設備が必要です。医薬品なら品質管理や記録が重要になります。
| 商品 | 物流で重要になるもの |
|---|---|
| 食品 | 温度・鮮度・期限 |
| 医薬品 | 品質管理・温度・記録 |
| アパレル・EC | 多品種・1点管理・返品 |
| 家具・家電 | 大型・重量・搬入 |
| 精密機器 | 衝撃・振動・温湿度・安全 |
| 日用品 | 大量処理・積載効率 |
そのため物流会社が新しい顧客を獲得するとき、「空いている倉庫へ入れればいい」とは限りません。
何を保管するためにつくられた倉庫なのか。どんな商品を運ぶノウハウがあるのか。どんな設備・車両・人材・システムを持っているのか。
この違いが、物流企業ごとの強みにもつながります。
物流関連銘柄を見るなら「何を運んで稼いでいるか」まで見る
たとえば同じ倉庫会社でも、常温の日用品を大量に扱う会社と、冷凍食品を扱う会社では必要な設備が違います。同じ配送会社でも、宅配便、大型家具、医薬品、企業間物流では仕事の内容が変わります。
投資するときには、
誰の荷物を運んでいるのか
何を運んでいるのか
どの工程を担っているのか
その物流にはどんな専門性が必要なのか
まで見ることで、その企業がどこで利益を生み出しているのか理解しやすくなります。
単純な荷物量だけなら景気や荷主の動向に左右されやすい一方、温度管理、特殊荷役、高度な在庫管理、全国ネットワークなど、簡単には再現できない物流能力を持つ企業もあります。
物流企業の強みは、トラックや倉庫を「持っていること」だけではなく、特定の商品を安全・正確・効率的に動かす仕組みを持っていることに表れるのだと思います。
物流の仕事は「荷物」に合わせて姿を変える
食品なら温度と鮮度を守る。医薬品なら品質と記録を残す。アパレルなら膨大な種類の商品を一個ずつ管理する。家具なら大きく重い商品を安全に運び、最後は室内まで届ける。精密機器なら振動や衝撃から商品を守る。
物流は「運ぶこと」が目的なのではなく、商品の価値を失わない状態で、必要な場所へつなぐことが目的なのだと思います。
そしてこの違いは、物流関連銘柄を見るときにも重要です。売上高や倉庫面積、トラック台数だけではなく、その企業は何を運ぶことが得意なのか。そのためにどんな設備・技術・人材・ノウハウを持っているのか。そこまで見ることで、物流企業の強みがより具体的に見えてきます。





同じ物流でも、食品と服と家具では必要な仕組みが全然違うんですね。
「何を運んでいる会社なのか」を見ると、物流企業それぞれの強みも分かりやすくなりそうです!
自動化が進んでも、今の物流を支えているのは「人」
こうした物流の未来を調べていると、「物流センターから人がいなくなる日も近いのではないか」と感じるかもしれません。
しかし実際の物流を見ると、2026年現在も多くの工程を人が支えています。トラックから荷物を降ろす人、商品を検品する人、フォークリフトを運転する人、ピッキングする人、箱を梱包する人、トラックで拠点間を運ぶ人、最後に玄関まで届ける人。そして自動化された物流センターでも、設備を監視し、トラブルに対応し、商品の状態を確認し、現場を改善する人がいます。
国が2026年3月に決定した「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」でも、物流人材の地位・能力の向上と労働環境の改善が5つの主要な柱の一つに位置付けられました。自動運転やAIを活用できる物流人材の育成、荷役設備やアシストスーツによる省力化なども盛り込まれています。つまり政策としても、「人をなくす」のではなく、物流で働く人の負担を減らしながら、仕事そのものを変えていく方向が示されています。
物流自動化の意味を考えるうえで忘れたくないのは、未来のロボットではなく、今日注文した商品を今日も実際に動かしている人がいることです。
物流センターには、まだ人にしかできない仕事がたくさんある
段ボールが潰れている。バーコードが読めない。注文とは違う商品が入っている。パレットから荷物がずれている。設備が止まった。いつもと違う荷姿の商品が入ってきた。食品の状態を見て品質を判断する。返品された商品が再販できる状態なのか確認する。
こうした「いつもと違うこと」が起きたとき、現在は人が状況を見て判断している場面が少なくありません。
自動化が得意なのは、大量に繰り返される仕事です。しかし物流センターを最後まで動かすためには、通常処理だけでなく、例外処理まで成立させなければなりません。
物流にフィジカルAIが期待されている理由も、この部分にあります。ロボットが現実世界を認識し、予定外の状況にも対応できるようになれば自動化できる範囲は広がりますが、2026年現在はまだ発展途中です。
だから「ロボットを導入した=人が不要になった」ではありません。むしろ自動化された現場ほど、機械が処理できる仕事と、人が判断する仕事をどう分けるかが重要になっています。
現場の負担は「重い荷物」だけではない
物流現場の大変さというと、重い荷物を持つ仕事を想像しやすいのですが、それだけではありません。同じ場所を何度も往復する。広い倉庫を一日中歩く。同じ動作を何百回も繰り返す。夏は暑く、冷凍・冷蔵の現場では寒さの中で働くこともあります。
一つひとつの作業だけを見れば、それほど大きな負担には見えないことがあります。しかし、それを8時間、毎日繰り返すと負担は積み重なります。
だから物流自動化を見るとき、私は「何人削減できるか」だけで評価するのは少し違うと感じます。
AMRによって倉庫を歩く距離を減らす。パレタイザーが重い箱を積む。デバンニングロボットがコンテナの奥で荷物を降ろす。無人フォークリフトが同じルートのパレット搬送を繰り返す。
こうした技術の価値は、人より速く作業することだけではなく、人が毎日繰り返してきた身体的負担の大きい仕事を機械へ渡せることにもあります。
国の2026~2030年度の物流政策でも、荷役設備やアシストスーツなどによる省力化と、物流人材が働きやすい環境づくりが施策として位置付けられています。
自動化は「人を減らす技術」だけではなく、「働ける人を増やす技術」でもある
しかし重量物の搬送を機械へ任せたり、商品を作業者のところまで運んだり、アシスト機器を使ったりできれば、仕事内容そのものを変えることができます。
これは物流の人手不足を考えるうえでも重要です。
国の総合物流施策大綱では、物流を支える人材について、単純な人数確保だけでなく、荷役設備による省力化、多様な人材が活躍できる産業への転換、AIや自動運転を使いこなす人材の育成まで一体的に進める方針が示されています。
2026年1月には「物流倉庫分野」が特定技能・育成就労の対象分野にも追加されました。人手不足へ対応する方法が、自動化だけではなく、人材育成や働く人の多様化まで広がっていることが分かります。
物流自動化というと「10人で行っていた仕事を5人にする」という発想になりがちですが、もう一つ重要なのは、これまで身体的な理由などで担当しにくかった仕事を、より多くの人が担当できる仕事へ変えることだと思います。
ロボットが増えるほど、「設備を止めない人」が必要になる
センサーが反応しない。AMRが停止する。コンベヤに商品が詰まる。ロボットが商品をつかめない。WMSと設備の情報が合わない。
設備が高度になるほど、一か所のトラブルが物流センター全体へ影響する可能性もあります。
そこで必要になるのが、設備の状態を監視する人、異常の原因を調べる人、メンテナンスする人、データを分析して作業方法を改善する人です。
2026~2030年度の総合物流施策大綱でも、自動運転やAIなどの活用を見据えた物流人材の育成や、スキルに応じたキャリアアップの道筋を可視化する方針が示されています。
物流の仕事は、
荷物を運ぶ人
から
機械と一緒に物流を動かす人
へ少しずつ広がっていくのかもしれません。
自動化が進むほど「人が不要になる」というより、人に求められる役割が変わっていくと考えた方が、現在の物流には近いように感じます。
AIやロボットにも、「現場を知っている人」が必要になる
しかし物流センターを改善するとき、「なぜこの作業で時間がかかるのか」「なぜこの場所で荷物が詰まるのか」「なぜこの商品だけミスが多いのか」を最もよく知っているのは、日々その仕事をしている人であることが少なくありません。
設備メーカーが高性能なロボットをつくっても、どの工程へ入れれば効果があるのかは現場によって違います。
AMRを導入しても通路設計が悪ければ渋滞する。自動倉庫を導入しても、その前後の工程が人力のままなら商品が滞留する。新しいシステムを導入しても、現場の作業方法と合わなければ使われなくなることもあります。
だから物流DXには、ITやロボットに詳しい人だけではなく、「物流の現場がどう動いているのか」を理解している人も必要です。
現場経験とデジタル技術がつながったとき、初めて「この仕事は機械へ渡した方がいい」「ここは人が判断した方がいい」という設計ができるのだと思います。
派遣・パート・ドライバー・倉庫スタッフ|物流はたくさんの人でつながっている
しかし実際の現場には、物流会社の社員だけでなく、ドライバー、フォークリフト作業者、倉庫スタッフ、派遣スタッフ、パート・アルバイト、設備会社の技術者、システム担当者など、さまざまな立場の人が関わっています。
荷物が工場を出てから家庭へ届くまでには、何度も人から人へ引き渡されます。
朝に倉庫でピッキングした商品を別の人が検品し、フォークリフト作業者がトラックへ積み、ドライバーが別地域へ運び、到着したセンターで別のスタッフが仕分け、最後に配送員が玄関まで届ける。
一人ひとりから見れば物流の一工程ですが、その仕事がつながって初めて一個の商品が届きます。
現在、派遣コーディネーターとして物流現場で働く方と接している立場から見ても、物流を支えているのはニュースに登場する最新ロボットだけではありません。毎日決められた時間に現場へ入り、商品を確認し、運び、仕分け、積み込み、届けている人たちがいるから物流は成立しています。
だから自動化が進むほど、その目的を「人を減らすこと」だけに置くのではなく、そこで働く人が少しでも安全に、長く働ける物流をつくれるかという視点も持っておきたいと思います。
自動化の目的は「人をなくすこと」ではない
しかし物流で働いた経験を思い返すと、自動化してほしい仕事は確かにあります。重い荷物を何度も持つ仕事、長い倉庫を往復する仕事、暑さや寒さの厳しい場所で繰り返す作業、コンテナの奥で続ける荷下ろし。こうした仕事を機械へ渡せるのであれば、それは物流で働く人にとっても大きな意味があります。
一方で、商品を見る、異常に気づく、設備を直す、予定外の状況を判断する、作業そのものを改善するといった仕事には、今も人の力が必要です。
2026年の物流政策でも、自動化・DXだけでなく、物流人材の育成、労働環境の改善、省力化設備の導入が同じ物流改革の中に位置付けられています。
物流の未来は、人かロボットかを選ぶ世界ではないと思います。
機械が得意な仕事は機械へ任せ、人にしかできない判断や改善へ人の時間を使う。
その結果として、重いものを持ち続けなくてもいい、同じ場所を何度も歩かなくてもいい、危険な環境へ入り続けなくてもいい物流になれば、自動化の価値は「人を減らした人数」以上に大きくなるはずです。
そして忘れたくないのは、そんな未来が完成する前の今この瞬間も、日本の物流を動かしているのは現場で働いている人たちだということです。





ロボットが増えても、物流を動かしている人がいなくなるわけではないんですね。
大変な仕事を機械に任せて、人がもっと安全に働ける物流になってほしいです!
物流関連銘柄【2026年版】|メーカーからユーザーまで企業を並べてみる
しかし物流の仕組みを調べてみると、それだけでは日本の物流を支える企業の全体像は見えてきません。
商品を実際に運ぶトラック会社がある。荷物を保管し、荷主の物流そのものを請け負う3PL企業がある。海や空で国境を越えて運ぶ会社がある。倉庫を自動化する企業、WMSを提供する企業、物流センターそのものを開発する不動産会社もあります。
つまり物流関連銘柄は、「荷物を運ぶ会社」だけではなく、「物流を動かす仕組みを提供する会社」まで広げて考える必要があります。
2026年9月時点で、代表的な上場企業を物流の役割ごとに整理すると、次のようになります。上場銘柄の最新情報は日本取引所グループが毎月公表しており、2026年8月末時点の東証上場銘柄一覧も公開されています。
| 物流での役割 | 代表的な物流関連銘柄 | 証券コード | 主に支えているもの |
|---|---|---|---|
| 宅配・陸上輸送 | ヤマトHD | 9064 | 宅配・法人物流・ラストワンマイル |
| SG HD | 9143 | 宅配・3PL・低温物流・国際物流 | |
| NX HD | 9147 | トラック・鉄道・航空・海運・国際物流 | |
| セイノーHD | 9076 | 企業間物流・幹線輸送 | |
| AZ-COM丸和HD | 9090 | EC・食品・医薬3PL | |
| 倉庫・3PL | 三菱倉庫 | 9301 | 倉庫・国際物流・医薬品物流 |
| 三井倉庫HD | 9302 | 倉庫・3PL・国際物流 | |
| 鴻池運輸 | 9025 | 工場請負・物流・複合サービス | |
| ハマキョウレックス | 9037 | 物流センター運営・3PL | |
| 上組 | 9364 | 港湾・倉庫・国際物流 | |
| 海運・航空 | 日本郵船 | 9101 | 海上輸送・総合物流 |
| 商船三井 | 9104 | 海上輸送・物流 | |
| 川崎汽船 | 9107 | 海上輸送 | |
| ANA HD | 9202 | 航空貨物 | |
| JAL | 9201 | 航空貨物 | |
| 自動化・ロボット | ダイフク | 6383 | 自動倉庫・搬送・仕分け |
| 安川電機 | 6506 | 産業用ロボット・モーション制御 | |
| ファナック | 6954 | ピッキング等の産業用ロボット | |
| オムロン | 6645 | センサー・制御・AMR等 | |
| キーエンス | 6861 | センサー・画像認識・コード読取 | |
| 物流DX | ロジザード | 4391 | クラウドWMS・在庫管理 |
| NEC | 6701 | 物流システム・AI・データ基盤 | |
| 物流施設 | 三井不動産 | 8801 | MFLPなど物流施設開発 |
| 大和ハウス工業 | 1925 | DPLなど物流施設開発 | |
| 三菱地所 | 8802 | 物流施設・産業用不動産 |
この表で大切なのは、銘柄数の多さではありません。同じ「物流関連銘柄」でも、物流量が増えたときに利益へつながる場所が違うことです。
荷物を直接運ぶ企業もあれば、物流センターが増えるほど需要が生まれる企業もあります。人手不足が深刻になるほど自動化投資の恩恵を受けやすい企業もあります。
企業だけでなく「業界全体」を見たい人へ
私自身、関連銘柄を見るときは一社だけでなく、企業同士がどこでつながっているのかを見ることを大切にしています。『会社四季報 業界地図 2027年版』は、物流だけでなくフィジカルAI、FA、データセンターなど今回の記事とつながる業界も横断して確認できます。
ヤマト・SG・NX・セイノー・AZ-COM丸和|「運ぶ」物流関連銘柄
ヤマトホールディングスは宅急便のイメージが強い会社ですが、2026年4月には東京都江東区に、仕分け・輸配送とロジスティクス機能を一体化した大型拠点を開設しました。約18,000坪のロジスティクスエリアには温湿度管理や保税機能も計画されており、宅配だけでなく法人物流へ事業領域を広げています。
SGホールディングスも佐川急便の宅配だけではありません。倉庫運営、流通加工、WMSを使った3PLに加え、冷蔵・冷凍食品や医薬品にも対応するコールドチェーンを展開しています。大型家具・家電の設置や特殊輸送まで持っているため、「宅配会社」というだけでは事業の全体像を捉えきれません。
NIPPON EXPRESSホールディングスはさらに範囲が広く、陸上輸送だけでなく鉄道、航空、海運を組み合わせた国際物流を展開しています。2026年にも鉄道コンテナ、Sea&Rail、国際航空・海上輸送など複数の輸送モードを組み合わせたサービスを展開しており、モーダルシフトとの関係も深い企業です。証券コードは9147で、2026年6月時点でも東証上場が確認できます。
そして企業間輸送を考えると、西濃運輸を中心とするセイノーHDも外せません。宅配便とは違い、企業から企業へまとまった荷物を運ぶBtoB物流が重要な領域です。西濃グループではトラックだけでなく、航空・鉄道・船を組み合わせた輸送や、倉庫・国際物流まで展開しています。
AZ-COM丸和ホールディングスは、EC・常温物流、低温食品物流、医薬・医療物流という3つの3PL領域を成長の中心に置いています。2026年3月期の売上高は2,305億円で、中期経営計画でも3PLと輸配送プラットフォームの強化を掲げています。証券コードは9090です。
同じ陸運でも、個人宅へ一個ずつ届ける企業、企業間で大量に運ぶ企業、荷主の物流センターそのものを運営する企業では、収益を生む場所が違うことが分かります。
三菱倉庫・三井倉庫・鴻池運輸・ハマキョウレックス|「保管する会社」ではなく物流を預かる会社
しかし現在の倉庫・3PL企業は、それほど単純ではありません。
三菱倉庫は倉庫だけでなく、港湾運送、国際輸送、陸上輸送、物流情報システム、医薬品・医療機器の保管や流通加工まで事業を広げています。2026年には武田薬品、JR貨物と共同で、31フィート温度管理コンテナを使った医療用医薬品の鉄道輸送も開始しています。
三井倉庫HDも証券コード9302の東証プライム上場企業で、倉庫を起点に3PLや国際物流まで事業を展開しています。
鴻池運輸はさらに特徴的で、物流センターだけでなく、メーカーの工場内に入り製造工程や構内物流を請け負う事業も持っています。つまり荷物が工場を出てから物流を担当するのではなく、製造と物流の境界そのものに入る会社として見ることができます。2026年3月期決算を公表しており、証券コードは9025です。
ハマキョウレックスは3PL・物流アウトソーシングを主力とし、荷主企業の物流センター運営を請け負う企業です。2026年3月期の有価証券報告書や2027年3月期第1四半期決算も公表されています。
3PL企業を見るときには、倉庫面積だけでなく、「どんな荷主から、どこまで物流を任されているか」が重要になります。入荷、保管、ピッキング、梱包、配送まで深く入り込むほど、荷主にとって簡単には入れ替えにくい存在になる可能性があります。
日本郵船・商船三井・川崎汽船・航空会社|日本の物流を世界へつなぐ
海外から原材料を輸入し、日本でつくられた製品を海外へ輸出するには、海運と航空貨物が欠かせません。
日本郵船、商船三井、川崎汽船は、日本を代表する海運会社です。2026年現在の証券コードはそれぞれ9101、9104、9107。日本郵船は自社を海・陸・空をカバーする総合物流グループとして位置付けており、海上輸送だけでなく物流事業まで展開しています。
航空ではANAホールディングスやJALも貨物輸送を担っています。ANA HDの普通株式は証券コード9202、JALは東証プライム上場企業です。
ただし、ここは注意が必要です。航空会社を「物流関連銘柄」と呼べても、会社全体では旅客事業の影響も非常に大きくなります。同様に海運会社も、コンテナ物流だけでなく自動車船、エネルギー輸送など複数の事業を持っています。
物流に関係していることと、物流テーマだけで業績が決まることは同じではありません。
関連銘柄を見るときには、その企業の売上や利益のうち、物流テーマがどの程度を占めるのかまで確認する必要があります。
ダイフク・ファナック・安川電機など|「荷物を運ばない物流関連銘柄」
ダイフクは、自動倉庫、シャトル、AGV・AMR、ピッキング、仕分けなど、物流センターの内部を自動化するマテハン企業です。2026年7月には「ダイフクレポート2026」を発行しており、証券コード6383で東証プライムに上場しています。2026年の同社の物流自動化に関する解説でも、自動倉庫、モバイルロボット、ピッキング、積み込みなどを組み合わせる「ハイブリッド型」の自動化が現実的な方向として示されています。
ファナックや安川電機は物流専業ではありませんが、ピッキングやパレタイジングなどに使われる産業用ロボットを供給します。ファナック自身も2026年、物流倉庫のピッキングでは商品の形や重なり方によって自動化が難しく、ビジョンやロボット制御が重要になることを解説しています。安川電機は証券コード6506で東証プライムに上場しています。
オムロンやキーエンスまで広げれば、センサー、画像認識、コード読取、制御機器など、ロボットが現実世界を見るための技術も物流自動化とつながります。
つまり物流自動化関連銘柄を見るときは、完成した物流ロボットだけを見るのではなく、自動化設備を構成する「目・頭・手足」のどこを提供している企業なのかを見ると分かりやすくなります。
ロジザード・NEC|物流DXは「荷物ではなく情報を動かす」
そこで関わるのが物流DX企業です。
ロジザードは証券コード4391の上場企業で、クラウドWMS「ロジザードZERO」を中心に、倉庫や店舗の在庫管理システムを提供しています。物流企業のように大量のトラックや倉庫を保有するのではなく、物流現場を動かすソフトウェアそのものを商品にしている会社です。
NECのような大手IT企業も、物流システムやAI、データ活用を通じて物流へ関わっています。ただしNECは物流専業ではなく、AI、通信、防衛、ITサービスなど事業領域が非常に広いため、「物流関連銘柄」として見る場合には会社全体の中で物流事業がどの程度の位置を占めるかを分けて考える必要があります。
物流DXで重要なのは、荷物そのものを運ぶことではありません。
どの商品がどこにあるか。何時にトラックが来るか。どの設備が空いているか。どこで荷物が滞留しているか。
こうした情報をリアルタイムにつなぎ、物流全体を動かすことが価値になります。物流設備が「筋肉」なら、WMSやデータ基盤は物流をつなぐ神経系と考えると分かりやすいと思います。
関連するIT・通信領域については、企業研究で扱ったNECの強みでも、AI・通信ネットワーク・社会インフラという視点から詳しく整理しています。
三井不動産・大和ハウス・三菱地所|物流センターそのものをつくる企業
三井不動産は「MFLP」を中心に物流施設を展開しており、2026年7月時点で国内外の開発施設は計88物件、総延床面積は約630万㎡、累計総投資額は約1兆4,000億円まで拡大しています。物流施設だけでなく研究開発施設などを含む「産業デベロッパー」へ領域を広げる方針も打ち出しています。
大和ハウス工業も「DPL」ブランドで全国に物流施設を開発しており、2026年にも札幌、埼玉などで新しい物流施設の開発を続けています。物流DXや働きやすさまで含めた物流施設サービスも展開しています。証券コードは1925です。
三菱地所も物流施設を手掛ける不動産会社で、証券コードは8802です。
物流施設関連銘柄の特徴は、荷物を直接運ばないことです。
その代わり、EC拡大、在庫拠点の再編、大型物流センターへの集約、自動化設備を入れられる高機能施設への需要など、「物流を行う場所が必要になること」から収益機会が生まれます。
三井不動産については、既存の企業研究「三井不動産の強み」でも、物流施設を同社の成長領域の一つとして扱っています。
「重要な物流企業=上場企業」とは限らない
たとえばMujinは、3Dビジョンやモーションプランニングを使った物流ロボットを展開し、ピッキングやデパレタイズ、トラック荷下ろしなどの自動化を進めています。村田機械も自動倉庫や搬送システムを手掛ける大手マテハン企業ですが、株式市場には上場していません。
これは物流関連銘柄を探すときに意外と重要です。
「物流で重要な技術だから、その会社の株を買える」とは限りません。
一方、非上場企業の技術が普及すれば、その周辺にいるセンサー企業、半導体企業、物流施設会社、SI企業などへ需要が広がる可能性があります。
フィジカルAIでも同じでした。テーマの中心にいる企業だけでなく、その技術が広がることで誰の商品やサービスが必要になるのかまで考えることで、関連銘柄の範囲が見えてきます。
「物流関連銘柄」は一本のサプライチェーンとして見る
しかし一つの商品を追えば、すべてつながっています。
メーカーから商品が出る。3PL企業が倉庫を運営する。自動倉庫やAMRが商品を動かす。WMSが在庫を管理する。トラックが物流センターから荷物を運ぶ。海運・航空が海外を結ぶ。そして、それらの物流を行う建物を不動産会社がつくっています。
だから私が物流関連銘柄を見るときは、「物流会社かどうか」よりも、物流のどこに位置し、どんなボトルネックを解決して利益を生み出しているのかを見たいと思います。
人手不足なら、自動化企業だけが関係するとは限りません。積載効率を高める輸送会社、3PL、WMS、共同配送、物流施設にも変化が起こります。ECが伸びれば宅配だけでなく、倉庫、自動化、物流施設、返品物流にも需要が広がります。
物流関連銘柄は、一社ずつバラバラに覚えるより、「メーカーからユーザーまでの一本の物流の中で、どこを支えている企業なのか」を置いていく方が理解しやすいと思います。
そして同じテーマに関係する会社でも、物流への依存度、利益率、設備投資、景気への感応度はまったく違います。テーマが成長することと、その企業の株主利益が増えることは同じではありません。





物流関連銘柄って、トラック会社だけではなかったんですね。
一つの荷物を追っていくと、倉庫やロボット、IT、建物まで、いろいろな会社がつながっていることが分かります!
物流関連銘柄へ投資するとき、私は何を見る?
だから「物流市場が成長するなら、物流関連銘柄も上がるのでは?」と考えたくなります。
しかし企業を投資先として見るなら、私は「物流が成長するか」だけでは足りないと思っています。荷物が増えても、人件費や外注費がそれ以上に増えれば利益は残りません。人手不足が深刻になれば、運送会社にとってはコスト増になる一方、自動化設備を販売する企業には新しい需要が生まれる可能性があります。同じ物流テーマでも、企業が立っている場所によって影響は逆になります。
だから私が物流関連銘柄を見るときは、まず「この会社は物流のどこで稼いでいるのか」を確認し、そのうえで売上が増えたときに利益も増える構造なのか、人手不足や設備投資を成長へ変えられるのか、そして生み出した利益が最終的に株主価値へつながっているのかを見たいと思います。
物流というテーマの大きさではなく、物流のボトルネックを解決した結果、その企業にどのように利益が残るのか。ここが物流関連銘柄を調べるときの出発点です。
まず見るのは「物流のどこで利益を生む会社なのか」
宅配会社なら荷物を運ぶことで運賃を受け取り、3PL企業なら荷主から物流センターの運営そのものを任されます。ダイフクのような企業は荷物を運ぶのではなく、物流会社やメーカーが自動化へ投資したときに設備を販売します。WMS企業はシステム利用料、不動産会社は物流施設の開発や賃貸などから収益を得ます。
この違いを理解しないまま「物流関連銘柄」という一つのテーマでまとめてしまうと、人手不足やEC拡大が企業業績へどう影響するのかも見えにくくなります。たとえば人件費が上昇した場合、運送会社にはコスト増として作用する可能性がありますが、その人手不足を解決する自動倉庫やロボットを販売する企業には投資需要が生まれるかもしれません。
私はまず、「この会社は誰からお金を受け取り、物流のどの問題を解決することで利益を得ているのか」を一文で説明できる状態にしてから、数字を見るようにしたいと思います。
荷物が増えたかより、「一個運んで利益が残るか」を見る
しかし荷物が増えれば必ず利益も増えるわけではありません。荷物一個を運ぶためには、ドライバー、仕分けスタッフ、車両、燃料、物流拠点、外注先など多くのコストが必要だからです。
2026年3月期のヤマトHDでも、プライシング適正化によって宅急便単価は上昇した一方、低採算荷物の取扱い抑制や荷動きの鈍化で大口法人の取扱数量が想定を下回り、さらに調達単価上昇や輸送効率低下が利益へ影響しました。最終的な2026年3月期決算では営業利益は前期比で増加しましたが、会社自身も安定的に利益を確保できる事業構造へ変えるため、価格と輸送効率の両方を改善しています。
この事例を見ると、物流会社では単純な「荷物の数」より、数量×単価から生まれる売上に対して、一個を処理するコストをどこまで抑えられているかを見る必要があります。荷物が少し減っても不採算案件を整理して利益率が改善する場合もあれば、荷物が増えても配送能力が追いつかず外注費や人件費が膨らむ場合もあります。
値上げできるか|物流では「価格転嫁力」も重要になる
そのとき重要になるのが、増えたコストを荷主や顧客へどこまで適正に反映できるかです。
値上げすると荷物が他社へ移ってしまうのか。それともサービス品質、配送網、専門物流、3PLとの深い関係などがあるため、一定の価格改定を受け入れてもらえるのか。この差は長期的な利益率に大きく影響します。
SGホールディングスもリスク情報の中で、労働力不足や賃金上昇によって委託費が増える可能性を挙げる一方、パートナー企業との適正な取引価格に向けた取り組みを進めています。物流会社を見るなら「荷物が多い会社」だけでなく、コストが上がったときにも適正な価格で仕事を受けられる会社なのかを確認したいところです。
人手不足は「追い風」にも「向かい風」にもなる
トラック会社や倉庫運営会社では、人材確保のための賃上げや外注単価の上昇によってコストが増える可能性があります。一方、人を採用できないからこそ、自動倉庫、AMR、ロボット、WMSなどへの投資が進めば、設備やシステムを販売する企業には需要が生まれます。
実際、ダイフクは2026年上期の事業環境について、国内や米国を中心とした労働力不足・人件費上昇を背景に、省人化・自動化投資の需要が堅調だったと説明しています。同社の2026年1~6月期の受注高は4,401億円で前年同期比31.6%増となり、8月には2026年12月期の年間受注高予想を8,600~9,000億円へ引き上げました。もちろん物流だけでなく半導体や自動車、空港向け設備も含む数字ですが、人手不足が「設備投資需要」に変わる企業もあることが分かります。
だから私は「人手不足」というニュースを見たら、まずその会社は人を雇う側なのか、人手不足を解決する商品を売る側なのかを分けて考えたいと思います。
設備投資を見る|「お金を使った」ではなく、その後どれだけ稼げるか
そのため物流関連銘柄では、設備投資額が増えたこと自体を成長と考えるのではなく、その投資によって何が改善するのかを見る必要があります。
たとえば自動化へ100億円投資しても、処理能力が増えず、人件費も減らず、顧客も増えないのであれば投資効果は小さくなります。一方で、同じ設備によって処理能力が増え、必要人数を抑え、荷待ち時間を短縮し、新しい荷主を受け入れられるなら、その設備は将来の利益を生む資産になります。
これは設備を買う物流会社だけでなく、設備を売る側を見るときも同じです。ダイフクのような大型システム企業では、受注→受注残→設計・施工→売上計上という時間差があるため、現在の売上だけでは将来の仕事量を読み切れません。同社も2026年上期について、豊富な前期末受注残高が売上増につながったと説明しています。
物流関連銘柄によって見る数字が違う理由はここにあります。運送会社なら輸送量や単価、自動化企業なら受注や受注残、物流施設なら稼働率や賃料など、そのビジネスで利益が発生する一歩手前の数字まで見ることが重要です。
3PLでは「何社と、どれくらい深く付き合っているか」を見る
荷主の商品特性を理解し、在庫管理、ピッキング、流通加工、配送などを組み合わせ、その会社専用の物流をつくることにあります。
業務が深く入り込むほど物流会社を簡単に変更しにくくなり、長期的な関係につながる可能性があります。一方で、一社の大口荷主に売上を大きく依存していれば、その顧客が物流拠点を変更したときの影響も大きくなります。
私は3PL企業を見るなら、売上成長だけでなく、新規センターを何件受託したか、既存顧客との取引が拡大しているか、特定顧客への依存が大きすぎないか、契約終了時にどれだけ売上が動くのかも確認したいと思います。
物流センターが一度動き始めると毎日大量の商品が流れます。その意味では、物流企業にとって「荷主との関係そのもの」が設備と同じくらい重要な資産になる場合があります。
「物流関連」と「物流で稼いでいる」は分けて考える
たとえば物流センター需要が大きく伸びても、不動産会社全体ではオフィス、商業施設、住宅など別事業の影響を受けます。NECなら物流DXが成長しても、会社全体ではIT、防衛、通信など他の事業の方が大きな影響を持つ可能性があります。航空会社も貨物だけでなく旅客需要が業績を左右します。
これは悪いことではありません。事業が分散していることで物流市場の変動だけに左右されにくい会社もあります。ただし「物流が伸びるからこの会社も大きく伸びる」と考えるなら、会社全体の売上・利益のうち、物流テーマがどの程度を占めているのかまで確認する必要があります。
私は関連銘柄を見るとき、物流への直接度が高い企業と、物流にも関係している企業を分けるようにしています。テーマとの距離を把握しておけば、物流ニュースをそのまま企業業績へ結び付けてしまうことも減ります。
最後は業績だけでなく「キャッシュと資本効率」まで確認する
私は物流関連銘柄でも、まず売上高と営業利益を見て、利益率が改善しているのかを確認します。そのうえで営業キャッシュフロー、設備投資、フリーキャッシュフロー、有利子負債、ROEやROIC、配当・自社株買いなどへ広げます。
| 見る数字 | 私が確認したいこと |
|---|---|
| 売上高 | 物流需要を実際に取り込めているか |
| 営業利益率 | 売上が利益へ変わっているか |
| 単価・数量 | 成長が値上げなのか荷物増なのか |
| 営業CF | 本業から現金を生み出しているか |
| 設備投資 | 成長投資か、維持のための投資か |
| FCF | 投資後にも現金が残っているか |
| ROE・ROIC | 投じた資本を効率よく利益へ変えているか |
| 有利子負債 | 投資拡大に無理がないか |
| 配当・自社株買い | 生み出した利益をどう株主へ還元しているか |
物流企業は大型設備や車両を必要とする会社も多いため、利益が出ていても設備投資へ現金が大量に出ていくことがあります。逆にWMSなどのソフトウェア企業や設備メーカーでは資本構造が違います。同じPERや配当利回りだけを横に並べるのではなく、その会社が利益を生むために、どれくらいの資本を必要とするビジネスなのかまで考えたいところです。
私は「物流のボトルネックが利益へ変わる道筋」を見る
しかし、テーマが大きいからといって、その中にいるすべての企業の利益が増えるわけではありません。
人手不足は運送会社のコストを増やす一方、自動化企業には需要を生む可能性があります。荷物が増えても一個当たりの採算が悪ければ利益は残りません。大型の物流施設やロボットへ投資しても、その設備が処理能力や収益性を高めなければ企業価値にはつながりません。
だから私は、「物流のどこで問題が起きているのか→その会社は何を使って解決するのか→顧客はその価値にいくら払うのか→コストを引いたあと利益が残るのか→投じた資本に対して十分な利益を生み出せているのか」という順番で見たいと思います。
物流効率化法でも、現在は積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役時間の短縮が具体的な改善項目になっており、日本全体で積載効率44%などの目標が設定されています。企業側から見れば、こうした物流の無駄は同時に新しいサービスや設備需要が生まれる場所でもあります。
「物流関連だから買う」のではなく、社会の物流課題を解決した結果として、企業の利益とキャッシュが増えているか。 私はそこまで確認して、初めて長期投資先として考えたいと思います。





物流が成長しているだけでは足りないんですね。困っている場所を解決して、その価値がちゃんと利益や現金として残る会社なのか。そこまで見て企業を調べてみたいです!
物流関連銘柄のリスク|必要不可欠な産業でも安心とは限らない
食品、医薬品、日用品、ECの商品、工場で使う部品まで、モノを届けなければ経済そのものが動かないからです。
だから物流関連銘柄を調べていると、「社会に絶対必要な産業なら、長期投資でも安心なのでは?」と感じることがあります。しかし、必要とされ続けることと、企業が高い利益を生み続けられることは別の話です。
荷物が増えても、それ以上に人件費や外注費が増えるかもしれません。燃料価格が上昇しても、すべてを運賃へ転嫁できるとは限りません。大型物流センターへ何百億円も投資したあとに需要が想定を下回る可能性もあります。自動化企業なら、人手不足という追い風があっても、顧客の設備投資が止まれば受注は変動します。
さらに物流は、道路、電力、通信、クラウド、燃料、人、港、鉄道など、多くの社会インフラにつながっています。そのため一か所の問題が、想像以上に広い範囲へ波及することがあります。
物流関連銘柄を見るなら、成長テーマだけでなく、「この会社の利益は、何が起きると崩れるのか」まで考えておきたいと思います。
人件費・外注費・燃料費|売上が伸びてもコストがそれ以上に増える
SGホールディングスは現在の事業リスクとして、労働力不足や賃金上昇によって外注費が高騰した場合、自社が負担する費用が増える可能性を挙げています。さらに同社のデリバリー事業では、個人宅向け輸送の約7割、拠点間の長距離輸送の大部分をパートナー企業へ委託しており、必要な委託先を確保できなければ、人件費増加や配送遅延につながる可能性も示しています。
燃料も同じです。トラックを大量に使う企業では原油価格や為替によって燃料費が変動します。SGホールディングスは、燃料価格が急騰した場合や、増えたコストを運賃へ転嫁できない場合だけでなく、値上げした結果としてサービス需要が減少する場合も業績リスクとして挙げています。
物流企業の難しさは、「コストが上がったから値上げすればいい」で終わらないことです。値上げ、数量、コストの三つを同時に見なければ、本当の収益性は分かりません。
値上げできても、荷物が減れば意味がない|価格と数量の難しいバランス
競争相手が多い市場では、運賃を上げることで荷主が他社へ移る可能性があります。反対に価格を据え置けば、コスト上昇によって利益率が低下します。SGホールディングスも、宅配便、3PL、フォワーディングなどで競争が強まっており、競争激化によるサービス価格の低下や自社の優位性低下をリスクとして挙げています。
だから物流企業を見るときには、単に「値上げできたか」だけではなく、値上げ後の取扱数量、顧客離れ、利益率まで確認する必要があります。
全国配送網、専門物流、温度管理、3PL、システム連携など、顧客が簡単には代替できないサービスを持っていれば価格交渉力につながる可能性があります。一方、「どこへ頼んでも同じ仕事」と判断されるサービスほど、価格競争へ巻き込まれやすくなります。
物流企業の強みは、運賃を上げられることだけではなく、値上げしても選ばれる理由を持っているかどうかにも表れるのだと思います。
荷物が多すぎても止まる|物流は「需要増」そのものがリスクになることもある
SGホールディングスでは2026年3月期、想定以上の取扱個数増加によって一時的な集荷停止や配送遅延が発生しました。同社はその対応として、需要予測の高度化、オペレーション改善、中継機能の強化を重点課題に挙げています。
これは物流企業を見るうえで非常に面白いポイントだと思います。
工場なら需要が増えれば生産量を増やせばよいように見えますが、物流ではドライバー、車両、仕分け能力、バース、幹線輸送、地域配送まで、すべての工程を同時に通過しなければ荷物は届きません。一か所だけ能力が足りなければ、そこがボトルネックになります。
だから成長を見るときは荷物量だけでなく、その会社が増えた荷物を品質を落とさず処理できる能力を持っているかも重要です。
大型設備投資は「成長資産」にも「重い固定費」にもなる
需要が想定どおり伸びれば、その設備が将来の利益を生みます。しかし需要が伸びなかったり、技術が変わったり、顧客が離れたりすれば、大きな設備が固定費として残る可能性があります。
物流施設でも、「物流センター需要が伸びる」という大きなテーマだけでなく、どこに建てるのか、誰が使うのか、どれくらい稼働するのかを見る必要があります。大型で最新設備を備えた施設でも、荷主が集まらなければ収益は生まれません。
設備メーカーにも別のリスクがあります。ダイフクは2026年5月時点の重要リスクとして、市場環境の変化、景気変動、重要顧客の喪失、部材調達の遅延・不足などを挙げています。物流自動化需要が強くても、顧客企業の設備投資判断が延期されれば受注時期はずれますし、大規模システムでは部品調達や施工の遅れが納入にも影響します。
設備投資額が大きいことを、そのまま「成長している証拠」と見ないことが大切です。投資した設備が何年かけて利益を取り戻せるのかまで見たいと思います。
3PLは顧客との関係が深いからこそ、「大口顧客依存」にも注意する
商品の特徴を理解し、専用の棚、作業工程、システム、人員配置までつくり込めば、物流会社を簡単には変更しにくくなるからです。
しかし裏返せば、一社の荷主へ売上を大きく依存している場合、その契約終了が大きなリスクになります。
大口顧客が物流を内製化する。物流拠点を統合する。競合3PLへ切り替える。荷主自身の業績悪化で取扱量が減る。こうした変化によって、一つの物流センターの売上が大きく動く可能性があります。
これは自動化企業でも似ています。ダイフクは重要顧客の喪失を重大な事業リスクの一つとして認識しています。
顧客との関係が深いことを強みとして見るなら、同時に「その関係が切れたら、どれだけ業績へ影響するのか」を見る必要があります。
景気・消費・世界情勢|物流量そのものが減ることもある
個人消費が弱くなればECや宅配の伸びが鈍る可能性があります。企業の生産活動が落ちれば部品や製品の輸送量も減ります。輸出入が減れば国際物流にも影響します。
SGホールディングスも、景気低迷や地政学リスクによって個人消費や企業物流が減少した場合、事業や業績へ影響する可能性を明示しています。
特に海運、航空貨物、国際フォワーディングでは世界経済の影響が大きくなります。一方、食品、医薬品、日用品など生活必需品中心の物流は、景気変動の影響が比較的小さい場合があります。
つまり「物流関連銘柄」という一言ではなく、誰の、何の商品を、どの地域で運んでいる会社なのかによって景気への強さも変わります。
災害・事故・システム障害|効率化するほど「止まったとき」の影響も大きくなる
自動倉庫や物流ロボット、データセンターなどが増えるほど、物流を止めないための電力インフラも重要になります。AI・データセンター時代の電力需要については、「電力関連銘柄」でも詳しく整理しています。
ヤマトHDは大規模自然災害や停電によって、従業員やパートナーの被災、車両・施設だけでなくデータセンターやパブリッククラウド基盤の損傷、燃料・電力不足などが発生し、事業停止や修復費用につながる可能性をリスクとして挙げています。
物流DXが進めば、一つのWMSやネットワークが物流センター全体を動かすようになります。それによって効率は上がりますが、システムが停止したときには入荷、在庫確認、ピッキング、出荷まで一斉に止まる可能性もあります。
自動化のメリットを見るときほど、「その設備が止まったとき、どうやって物流を継続するのか」というBCPや冗長性も確認したいところです。
法規制への対応もコストになる|物流改革は「対応できる会社」との差を広げる
2025年度から物流事業者や荷主には物流効率化への努力義務が課され、2026年度からは一定規模以上の特定事業者に中長期計画や定期報告などが求められています。国は、荷待ちや荷役の削減、積載効率の改善などを企業側にも求める仕組みへ移行しています。
物流全体では必要な改革ですが、企業側にはシステム導入、設備投資、データ計測、人員配置の見直しなどの負担も発生します。
一方、すでに物流DXや自動化、データ管理を進めている企業には、こうした制度変化が競争力の差につながる可能性もあります。国の2026~2030年度の物流政策でも、自動化・省人化、価格転嫁、取引環境の適正化などが主要施策として掲げられています。
規制そのものを「悪い材料」と見るのではなく、制度が変わったときに追加コストだけが発生する会社なのか、それとも変化へ対応して競争力を高められる会社なのかを見ることが重要です。
「何が伸びるか」と同じくらい、「何が崩れるか」を見る
しかし企業を見るときには、そのテーマがどれだけ魅力的かだけでなく、利益を支えている前提が崩れたときに何が起きるのかも考える必要があります。
人件費や燃料費が上がっても価格転嫁できるのか。荷物が急増しても品質を維持できるのか。大型設備へ投資したあとも十分な需要があるのか。大口顧客を失っても経営を維持できるのか。災害やシステム停止が起きても物流を継続できるのか。
私はリスクを見るとき、「危ない会社を探す」というより、その会社がどこで壊れやすく、それに対してどんな備えをしているのかを見るようにしたいと思います。
物流は社会から必要とされ続ける産業です。しかし、必要不可欠だからこそ止められず、品質を落とせず、簡単には価格を上げられない難しさもあります。
「社会に必要な会社」と「株主に利益を残せる会社」は同じではない。
その違いを理解しておくことが、物流関連銘柄を長期で見るうえでは大切だと思います。





社会に必要な会社だからといって、利益まで自動的に守られるわけではないんですね。
伸びる理由と一緒に、「何が起きたら苦しくなるのか」も調べておきたいです!
日本の物流はこれからどうなる?|2030年・2040年の未来
しかし、2026年現在の政策や企業の取り組みを追っていくと、少し違う未来が見えてきます。日本が目指しているのは、単純に人をロボットへ置き換えることではありません。荷主ごと、企業ごと、輸送手段ごとに分断されていた物流をつなぎ、少ない人と限られた設備でも社会全体の荷物を動かせる仕組みへ変えることです。
政府が2026年3月に閣議決定した「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」では、2030年度までを物流革新の「集中改革期間」と位置付けています。柱になっているのは、徹底した物流効率化、商慣行や荷主・消費者行動の見直し、物流人材の労働環境改善、標準化とDX・GX、そしてサプライチェーンの強靱化です。つまり2030年へ向けた物流改革は、ロボットだけではなく、人・設備・データ・輸送・商慣行まで同時に変える取り組みとして進められています。
さらにその先には、経済産業省が2040年を目標として掲げる「フィジカルインターネット」があります。企業の壁を越えて物流資産や情報を共有し、インターネットでデータが効率よく流れるように、モノも社会全体のネットワークで効率よく動かそうという考え方です。2026年度も実現会議が継続されており、ロードマップの進捗確認や見直しが進められています。
2030年はゴールではありません。今ある物流を持続可能な形へつくり直す節目であり、その先の2040年へ向けて企業や輸送手段の境界そのものを越えていく。 日本の物流は、そんな段階へ入り始めています。
2030年|「人を増やす」だけではなく、少ない人でも回る物流へ
だから2030年へ向けた物流政策では、単純な採用強化だけではなく、積載効率を高める、荷待ちを減らす、荷役を短くする、共同配送を進める、自動化設備を使うといった方法を組み合わせ、一人・一台・一つの物流拠点が処理できる量そのものを増やす方向へ進んでいます。政府も2030年度までを「集中改革期間」とし、物流効率化だけでなく、荷主や消費者の行動変容、物流人材の労働環境改善まで同時に進める方針です。
ここまで調べてきたバース予約、パレット標準化、共同配送、モーダルシフト、自動倉庫などは、別々の技術に見えて実は同じ方向を向いています。
トラックを速く走らせるのではなく、待つ時間を減らす。人に急いでもらうのではなく、歩く距離や積み替えを減らす。一社だけで車両を増やすのではなく、空いている輸送能力を別企業と共有する。
2030年の物流は、今より大量のロボットがいること以上に、「今ある人・車両・倉庫を無駄なく使える物流になっているか」が重要なのだと思います。
倉庫の自動化は「無人化」より、人とロボットの役割分担が進む
商品は一つひとつ違い、返品や破損、荷崩れ、設備トラブルなどの例外もあります。食品なら鮮度を確認し、大型家具なら形や重量も変わる。物流は現実世界を相手にするため、最後まで完全に同じ条件にはなりません。
そこで広がっていくのが、機械が得意な反復作業を自動化し、人は判断・監視・改善へ移る物流センターです。自動倉庫が商品を保管し、AMRが搬送し、ロボットアームが荷役を行う。その周囲で人が品質を確認し、設備を保守し、異常へ対応する。
さらにフィジカルAIが発展すれば、ロボット側も「決められた動き」だけでなく、商品の形や周囲の状況を認識して動きを変えられる範囲が広がっていく可能性があります。
2030年の物流センターは、人が消えた倉庫というより、人が「運ぶ・歩く・持ち上げる」ことから少しずつ離れ、物流全体を動かす側へ移っている倉庫なのかもしれません。
物流センターは「倉庫」から、モノとデータをつなぐ拠点へ変わる
入荷予定を受け取り、トラックの到着時間を調整する。商品を保管し、EC注文を受け取る。WMSが在庫を管理し、ロボットへ作業を指示する。出荷後は配送状況を追跡し、返品された商品も再び処理する。
さらに共同配送やフィジカルインターネットへ近づけば、自社の商品だけを見るのではなく、「この拠点にどれだけ輸送能力があり、どこへ向かう荷物をまとめられるか」という役割も大きくなります。
つまり未来の物流センターは、大きな箱ではありません。
モノ、人、車両、設備、データを結び付け、次の物流へ渡すネットワークのノードになっていくのだと思います。
トラックの未来|「ドライバーが全部運転する」から役割を分ける
中継輸送では一人のドライバーが長距離を走り切る必要をなくし、ダブル連結トラックでは一人当たりの輸送量を増やします。自動運転が実用化される区間が広がれば、高速道路など条件の整った幹線区間だけを自動化し、市街地や荷役など複雑な部分を人が担当するような役割分担も考えられます。
さらに国土交通省は「自動物流道路(オートフロー・ロード)」の実装を進めています。道路空間に物流専用スペースを設け、無人・自動化された輸送手段で荷物を運ぶ構想です。2026年度には技術課題や運用条件を確認する実証が予定され、2027年度までには新東名高速道路の建設中区間などで社会実験を進める計画です。現時点の国交省資料では、先行ルートなどでの運用開始は2030年代半ばを想定しており、2030年時点で全国に完成している構想ではありません。
ここでも共通するのは、トラックをなくすことではありません。
人が必要な区間と、自動化できる区間を分ける。 その結果としてドライバーが長距離を走り続けなくても、日本中へ荷物を運べる仕組みをつくろうとしています。
鉄道・船・航空も「別々の輸送手段」ではなくなる
2026~2030年度の総合物流施策大綱では、輸送モードを横断した物流効率化も進められています。鉄道、海運、航空、トラックそれぞれの空いている輸送能力を活用し、長距離部分をより効率のよい手段へ渡していく考え方です。政府が掲げる物流改革そのものも、関係者・輸送モードを越えた連携を重視しています。
将来は「この会社はトラック会社」「この会社は鉄道会社」と輸送手段だけで見るより、荷物ごとに最適なルートを組み合わせることが重要になっていくはずです。
東京から九州まで一台のトラックが走るのではなく、トラックで貨物駅へ運び、鉄道で長距離を移動し、到着地で再びトラックへ渡す。ある荷物はRORO船へ、急ぐ荷物は航空へ回す。
モノの移動が一社、一車両、一輸送手段で完結する物流から、「その時に空いていて、効率のよい輸送能力をつなぐ物流」へ変わっていくことになります。
2040年|フィジカルインターネットで「会社の壁」を越える物流へ
経済産業省は2022年にフィジカルインターネット・ロードマップを策定し、2040年を目標とした物流の将来像として実現を目指しています。2026年度にも実現会議が開催され、ロードマップに掲げた施策の進捗確認や必要な見直しが続けられています。
インターネットでは、一つのデータを届けるために「A社専用の通信線」を最初から最後まで用意するわけではありません。利用できるネットワークを組み合わせながら目的地まで届けます。
物流も同じように、A社の荷物だからA社のトラックとA社の倉庫だけを使うのではなく、パレットやデータを標準化し、複数企業の倉庫・車両・輸送網をつないで、空いている物流能力を社会全体で使えるようにする。
これは非常に大きな変化です。
物流企業の競争力も「トラックを何台持っているか」から、他社の物流網ともつながりながら、どれだけ効率よくネットワークを使えるかへ変わる可能性があります。
「持っている企業」より「つなげられる企業」が強くなる可能性
これまでは全国に営業所を持ち、多くのトラックや倉庫を保有することが大きな競争力でした。もちろん物理的な物流資産はこれからも必要です。しかし企業間で輸送能力を共有できるようになれば、空いているトラック、倉庫、貨物列車、船を見つけて組み合わせるプラットフォームやデータ連携の価値も大きくなります。
そのため投資の視点でも、運送会社だけを見るのではなく、WMS、TMS、配車、データ基盤、センサー、クラウド、標準化された物流資材などへ利益機会が広がる可能性があります。
2040年へ向けた物流は、「誰が一番大きな物流網を持っているか」だけではなく、誰が物流網同士をつなげられるのかにも注目したいと思います。
ラストワンマイルは「玄関まで運ぶ」から、受け取り方まで設計する物流へ
地域まで大量に運ばれた荷物を、一個ずつ住宅や店舗へ届けなければならないからです。人口減少が進む地方では配送先がさらに分散し、都市ではマンションや時間指定など別の難しさがあります。
そのため未来のラストワンマイルでは、配送車そのものの自動化だけでなく、そもそも一軒一軒へ何度も行かなくてもよい仕組みが重要になると思います。
置き配、宅配ボックス、駅や地域拠点での受け取り、共同配送、自動配送ロボット、ドローン。これらは別々の技術に見えますが、共通しているのは「配送員と受取人が同じ時間・同じ場所にいなければ成立しない物流」から離れることです。
未来の配送は「どの車で届けるか」だけではなく、どこまで運び、誰に、どこで受け取ってもらうのが一番効率的なのかまで設計する仕事になっていくのだと思います。
物流関連銘柄の未来は「物流量」より、ボトルネックの変化を見る
荷物が増えるなら運送会社を見る、というだけでは足りません。
ドライバー不足がボトルネックなら、自動化、中継輸送、モーダルシフトが必要になる。倉庫内の人手が足りなければ、AMRや自動倉庫、フィジカルAIへの投資が増える。企業間で情報がつながらなければ、WMSやクラウド、データ標準化が必要になる。物流施設が不足すれば不動産会社の出番が増え、道路輸送だけでは支えられなければ鉄道や海運の役割が大きくなります。
つまり物流の未来へ投資するということは、単純に「物流市場が大きくなる企業」を探すことではありません。
これから10年で物流のどこが詰まり、その詰まりを誰が解決するのか。
私はそこを追い続けることが、物流関連銘柄を長期で見る一番面白い部分だと思います。
物流の未来は「無人化」ではなく、「つながること」にある
2030年へ向けて進んでいるのは、人がいなくても動く物流ではなく、少ない人でも社会全体の荷物を動かし続けられる物流です。そのために荷待ちを減らし、パレットをそろえ、データをつなぎ、自動化し、鉄道や船を使い、会社同士で輸送能力を共有する。
そして2040年のフィジカルインターネットが目指しているのは、その連携をさらに企業の壁を越えて広げることです。経済産業省は2040年を目標とした将来像としてフィジカルインターネット実現を掲げ、2026年度もその進捗確認を続けています。
未来の物流センターにも人はいるでしょう。トラックもなくならないでしょう。すべての荷物をドローンが運ぶ世界にも、すぐにはならないと思います。
それでも、物流の形は大きく変わるはずです。
「自分の会社の荷物を、自分の会社の設備で運ぶ物流」から、「人・ロボット・企業・輸送手段・データがつながり、社会全体で荷物を動かす物流」へ。
私は、この「つながる」という変化こそが、2030年から2040年へ向かう日本の物流で最も大きな変化なのではないかと思います。





未来の物流って、ロボットだけの世界ではないんですね。
人も会社も乗り物もデータもつながって、みんなで一つの荷物を届ける仕組みに変わっていくんですね!
まとめ|荷物が届くことを「当たり前」と思わなくなった


この記事では、「物流とは何なのか」というところから始まり、一つの商品がメーカーを出て、物流センターへ入り、保管され、ピッキングされ、トラックや鉄道、船で運ばれ、最後に私たちの家へ届くまでを追いかけてきました。
物流センターの中には自動倉庫やAMRがあり、コンテナの荷下ろしにはデバンニングロボットが登場し、幹線輸送ではダブル連結トラックやモーダルシフトが進む。その先では自動運転やフィジカルAI、フィジカルインターネットといった、少し前なら未来の話に見えた技術や仕組みまで現実の物流とつながり始めています。
一方で、ここまで調べて最も強く感じたのは、「物流の未来はすごい」ということだけではありませんでした。
私たちが何気なく受け取っている一個の荷物の後ろには、想像していた以上に長い物流と、たくさんの人の仕事がつながっている。
そのことを知ったことで、私は以前よりも「荷物が届く」という出来事を当たり前には見られなくなりました。
映画『ラストマイル』から始まった「物流の裏側」への興味
普段の生活では、注文ボタンを押した瞬間と、玄関に荷物が届いた瞬間しか見えません。その間に何が起きているのかを意識することは、ほとんどありませんでした。
しかし物流を一つずつ追ってみると、メーカーから工場内物流が始まり、トラックで物流センターへ運ばれ、荷下ろし、検品、保管、ピッキング、仕分け、梱包、出荷を経て、幹線輸送へつながる。その後も地域配送拠点、ラストワンマイルがあり、返品されれば物流は逆方向にも流れます。
「ラストマイル」は最後の数kmだけを表す言葉ですが、その最後の数kmへ到達するまでに、とてつもなく長いリレーがある。
この記事を書きながら、そのことを改めて実感しました。
物流センターで働いた経験があるからこそ、自動化の見え方も変わった
その頃は、自分が担当している仕事を「物流という巨大な仕組みの一部」として深く考えていたわけではありませんでした。ただ目の前の商品を動かし、決められた作業をこなし、一日が終わる。その繰り返しだったように思います。
でも今回、物流全体をメーカーからユーザーまでつなげて調べると、当時やっていた一つひとつの仕事も、その先の工程へ商品を渡すためのバトンだったのだと分かりました。
そして、自動化の見え方も変わりました。
AMRが歩く距離を減らす。パレタイザーが重い箱を積む。ロボットが暑いコンテナの奥で荷物を降ろす。無人フォークリフトが同じルートを何度も往復する。
以前なら「人の仕事がロボットに置き換わる」と考えていたかもしれません。しかし現場で働いた経験から考えると、人が毎日繰り返している負担の大きな仕事を、機械へ渡せることそのものに価値があると感じます。
そして機械が増えれば、人の仕事もなくなるのではなく、品質確認、例外対応、設備監視、保守、データ分析、改善へ変わっていく。物流自動化は、「人を消す技術」よりも、人が担当する仕事を変えていく技術として見た方が、今の物流には近いのだと思います。
物流関連銘柄を見る視点も、「荷物が増える会社」から変わった
でも物流全体を追ってみると、その見方では狭すぎます。
物流センターを自動化する企業がいる。ロボットの目になるセンサーをつくる企業がいる。WMSで在庫情報を動かす企業がいる。巨大な物流施設を開発する不動産会社がいる。鉄道や船でモーダルシフトを支える企業があり、フィジカルインターネットが進めば、企業間の物流をつなぐデータ基盤にも新しい役割が生まれます。
そのため、私がこれから物流関連銘柄を見るときは、「物流市場が伸びそうだから」という理由だけでは判断したくありません。
物流のどこが詰まっているのか。そのボトルネックを誰が解決しているのか。その解決策に顧客はお金を払い、その企業に利益とキャッシュが残っているのか。
そこまで追いたいと思います。
人手不足なら、運送会社にはコスト増になる一方、自動化企業には需要になる可能性があります。ECが成長すれば宅配だけでなく、物流施設、自動倉庫、WMS、返品物流にも影響します。道路輸送が限界に近づけば、鉄道や海運にも役割が生まれる。
物流関連銘柄は、一社ずつ覚えるよりも、一つの商品が届くまでの地図へ企業を置いていくと、その会社が何を解決しているのかが見えやすくなると感じました。
物流を知ると、普段の生活の見え方まで少し変わる
スーパーへ行けば食品が並んでいる。ネットで商品を注文すれば数日後には届く。薬局へ行けば薬があり、家具を買えば大きな商品でも家まで運ばれてきます。
その結果だけを見ていると、「そこに商品があること」が当たり前に感じられます。
でも、その商品がそこへ到着するまでには、メーカーで商品をつくった人がいて、倉庫で保管した人がいて、ピッキングした人がいて、フォークリフトで積み込んだ人がいて、長距離を運んだドライバーがいて、地域で仕分けた人がいて、最後に玄関まで運んだ人がいます。
現在、派遣コーディネーターとして物流現場で働く方と関わっていると、求人票では「ピッキング」「仕分け」「フォークリフト」と数文字で表される仕事も、その一つが止まれば次の工程へ商品を渡せなくなる仕事なのだと感じます。
自動化が進んでも、今この瞬間の物流を動かしているのは、そうした現場の人たちです。
そして私たち消費者も、物流の外側にいるわけではありません。置き配を選ぶ、宅配ボックスを使う、受取時間を指定する。小さな選択でも、最後の配送の形に関わっています。
物流を知ることで、社会の裏側にある仕事が少し見えるようになりました。
一個の荷物から、日本の物流の未来まで見えてきた
その流れを追いかけるだけでも、工場内物流、物流センター、倉庫作業、幹線輸送、モーダルシフト、ラストワンマイル、返品・回収まで、これだけ多くの物流がつながっていました。
そして今、その一つひとつが変わろうとしています。
自動倉庫やAMRが人の負担を減らし、フィジカルAIがロボットの対応範囲を広げる。共同配送や標準パレットが企業の壁を越え、鉄道や船を組み合わせたモーダルシフトが長距離輸送を支える。さらに2040年へ向けては、フィジカルインターネットによって物流網そのものを社会全体でつなぐ未来が描かれています。
でも、この記事を最後まで書いて一番印象に残ったのは、最先端技術ではありません。
物流は、一人では完成しない。
メーカー、倉庫スタッフ、派遣スタッフ、フォークリフト作業者、ドライバー、設備会社、IT企業、鉄道、船、配送員、そして荷物を受け取る私たち。そのすべてが少しずつ役割を持ち、一個の商品を次の人へ渡しています。
だからこれから物流関連銘柄を見るときも、株価だけではなく、その企業がこの長いリレーのどこにいて、何を支え、どんな問題を解決しようとしているのかを追っていきたいと思います。
そして次に自宅へ荷物が届いたときには、箱だけでなく、その後ろにある長い物流の旅を少し思い出すかもしれません。
荷物が届くことは、当たり前ではない。
たくさんの人と技術と企業がつながり、今日も物流を動かしているから、私たちの生活は成り立っています。





「荷物が届く」という一つの出来事の中に、こんなにたくさんの人や技術がつながっていたんですね。
次に荷物を受け取るときは、少しだけその旅を想像してみたいです。
参考資料・出典
本記事は、国土交通省、経済産業省、JR貨物などの公的機関、および記事内で取り上げた物流・倉庫・自動化・物流DX・物流施設関連企業の公表資料を中心に確認したうえで作成しています。
日本の物流政策・2030年問題
- 国土交通省|総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)
- 国土交通省|物流効率化法 理解促進ポータル
- 国土交通省|2030年度の輸送力不足 再検証資料
フィジカルインターネット・標準化・物流DX
- 経済産業省|2026年度 フィジカルインターネット実現会議
- 国土交通省|物流標準化・官民物流標準化懇談会
- 国土交通省|パレット標準化
自動倉庫・ロボット・物流自動化
- ダイフク|物流ソリューション
- Amazon|名古屋みなとフルフィルメントセンター
- Amazon|Amazon Robotics・DeepFleet
- ZOZO|ZOZOBASEつくば3
- 楽天グループ|楽天マート物流倉庫
- ニトリHD|デバンニングロボット関連資料
モーダルシフト・自動物流道路
- 国土交通省|モーダルシフト
- JR貨物|モーダルシフト
- JR貨物|31フィートコンテナ
- 国土交通省|自動物流道路(オートフロー・ロード)
ラストワンマイル・再配達
- 国土交通省|2024年度 宅配便取扱実績
- 国土交通省|再配達率・多様な受取方法の調査
- 国土交通省|ラストマイル配送効率化促進事業
- 経済産業省|自動配送ロボット官民協議会
物流関連企業・関連銘柄
上場状況・証券コードについては、日本取引所グループの上場銘柄一覧、および各社の最新IR資料を確認しています。
主な参照先:
- 日本取引所グループ|東証上場銘柄一覧
- ヤマトホールディングス|IR情報
- SGホールディングス|IR情報
- 三菱倉庫|IR情報
- ダイフク|IR情報・物流自動化資料
- NEC|物流・ロジスティクスソリューション
- ロジザード|クラウドWMS「ロジザードZERO」
- 三井不動産|MFLP 物流施設
- 大和ハウス工業|物流施設・DPL
- 三菱地所|物流施設事業
2030年・2040年の物流
- 国土交通省|総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)
- 経済産業省|2026年度 フィジカルインターネット実現会議
- 国土交通省|自動物流道路(オートフロー・ロード)
- 国土交通省|モーダルシフト
最終確認日:2026年9月20日
本記事に掲載している物流政策、輸送力不足見通し、宅配便取扱個数、再配達率、自動物流道路、フィジカルインターネット、企業業績・設備投資などは、上記日時点で確認できる公表資料をもとにしています。今後、統計の確定値や制度・計画、企業情報が更新される可能性があります。
※本記事は、日本の物流の仕組みや物流関連企業について学ぶことを目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断の際は、各企業の最新の決算資料、IR情報、キャッシュフロー、設備投資、財務状況、株価水準などをご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
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