J-POWERの強み|戦後の電力不足を支えた会社は、AI時代も日本を支えられるのか|企業研究 #017

J-POWERの強み|戦後の電力不足を支えた会社は、AI時代も日本を支えられるのか|企業研究 #017
おじー🦥
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「J-POWERは、何の会社なんでしょう?」
石炭火力のイメージが強いかもしれませんが、調べてみると水力発電や送電網、海外事業、大間原発、そして最近ではAI・データセンターまで関わっている会社なのです。

しかも、その始まりは1952年。戦後の日本で不足していた電気を増やすために生まれました。
J-POWERの強みはどこにあり、70年以上たった今も日本に必要とされる会社であり続けられるのか。一緒に企業研究していきましょう。

この記事で分かること
  • J-POWERは何の会社なのか、東京電力や東北電力とは何が違うのか
  • J-POWERの強みはどこにあるのか|水力・送変電・巨大インフラから解説
  • 石炭火力を抱えるJ-POWERは、脱炭素時代にどう変わろうとしているのか
  • 大間原発はJ-POWERの将来性にとって「切り札」か「重荷」か
  • AI・データセンター・ワット・ビット連携は新しい成長事業になるのか
  • J-POWERの業績・ROE・ROIC・配当・株主還元はどうなっているのか
  • J-POWERを長期投資先として見るときのリスクと株価の考え方
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J-POWERは、なぜ生まれたのか|戦後の電力不足から始まった歴史

J-POWERは、なぜ生まれたのか|戦後の電力不足から始まった歴史

J-POWERは何の会社なのか。

名前だけを見ると、東京電力や東北電力のように、家庭や企業へ電気を届ける電力会社を想像する人も多いと思います。私自身もJ-POWERの強みを調べる前は、石炭火力発電所を多く持つ大きな発電会社という印象が強くありました。しかし歴史を遡ってみると、J-POWERは東京電力や東北電力などの地域電力会社とは、生まれた理由そのものが違います。

J-POWERの前身である電源開発株式会社が誕生したのは1952年です。戦後復興を進めていた日本では、工場を動かすにも、暮らしを立て直すにも、大量の電気が必要でした。しかし当時は発電設備が十分ではなく、日本全体で深刻な電力不足が続いていました。そこで求められたのが、地域ごとの電力供給を担う会社とは別に、日本全体に必要となる大規模な電源を開発する存在でした。J-POWERは、その役割を担うために生まれた会社です。

現在のJ-POWERは完全民営化された上場企業ですが、その歴史を追うと、戦後の大規模水力から始まり、長距離送電、50Hzと60Hzをつなぐ周波数変換、火力、海外事業へと役割を広げてきました。J-POWERの企業理念には「人々の求めるエネルギーを不断に提供する」という考え方がありますが、この言葉を70年以上の歴史と重ねると、単なる理念ではなく、会社が実際に繰り返してきた行動とも重なって見えてきます。

だからこそJ-POWERの強みを理解するには、「今どんな発電所を持っているか」だけを見るのでは足りません。その時代の日本や世界がエネルギーについて何に困り、J-POWERはそれに対して何をつくってきたのか。 そこまで遡ることで、「J-POWERは何の会社なのか」という問いに対する答えも少しずつ見えてきます。

戦後の日本は、なぜ電力不足に直面していたのか

戦後の日本は、なぜ電力不足に直面していたのか

J-POWERが生まれた背景には、戦後日本の復興と深刻な電力不足があります。

1945年に戦争が終わると、日本は工場、鉄道、住宅などを立て直し、経済を復興させようと動き始めました。工場の生産を増やすにも、商店を動かすにも、家庭の生活を豊かにするにも電気は欠かせません。しかし当時は、戦争の影響や燃料不足などによって発電能力が十分ではなく、復興によって増えていく電力需要に供給が追いつかない状態が続いていました。

この電力不足は、単に「家庭で電気が使いにくかった」という話ではありません。電気が足りなければ工場を思うように動かせず、生産量を増やすこともできません。つまり当時の日本にとって、電源を増やすことは経済復興そのものを支える重要なインフラ投資でした。道路や港を整備するのと同じように、これから成長していく国には大量の電気を安定して供給できる仕組みが必要だったのです。

J-POWERの歴史でこの部分を丁寧に見たいのは、会社の出発点が単なる「発電事業」ではなく、戦後の日本が抱えていた社会課題に対する答えだったからです。当時求められていたのは、新しい電力会社のブランドではなく、足りない電気そのものを増やせる巨大な電源でした。

9つの地域電力会社ができても、なぜ新しい会社が必要だったのか

9つの地域電力会社ができても、なぜ新しい会社が必要だったのか

戦後の電力産業も大きく再編されました。

1951年には北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州という9つの地域電力会社が発足します。現在の東京電力や東北電力などにつながる体制で、各社がそれぞれの地域の発電や電力供給を担う仕組みが整えられました。

ただ、新しい電力会社が誕生したからといって、発電所まで一気に増えるわけではありません。特に巨大な水力発電所をつくるには、ダムだけではなく道路、水路、発電設備、さらにそこでつくった電気を都市へ運ぶ長距離送電線まで必要です。投資額は巨大になり、完成まで長い時間がかかります。地域ごとの電力供給を担う会社だけで、こうした全国的に重要な巨大プロジェクトを短期間に次々と進めるには限界がありました。

そこで求められたのが、地域別の電力会社を補完し、日本全体を見ながら大規模な電源開発を進める存在です。この違いを理解すると、「J-POWERは何の会社なのか」という疑問にも答えが見えてきます。東京電力や東北電力のように特定地域の需要家へ電気を届ける会社をもう一社増やしたのではなく、J-POWERの原点は、日本全体の供給力を増やすことにあったのです。

1952年、国策を担う「電源開発」が誕生

1952年、国策を担う「電源開発」が誕生

こうした深刻な電力不足を背景に、1952年に誕生したのが電源開発株式会社、現在のJ-POWERです。

設立の根拠となったのが電源開発促進法で、全国的な電力不足を解消するため、大規模な電源開発を進める役割が与えられました。

当時のJ-POWERは、政府が出資する特殊法人でした。特殊法人という言葉は少し難しく感じますが、民間企業だけでは進めにくい一方、社会全体として必要性の高い仕事を担うため、特別な法律に基づいて設立された組織と考えると分かりやすいと思います。

だからといって、「国営の電力会社をもう一つつくった」と理解するのは少し違います。J-POWERに求められたのは、地域の家庭や企業へ直接電気を販売することよりも、日本全体で不足している電源そのものを増やすことでした。国策会社として生まれた理由を理解すると、その後の巨大水力や地域を越えた送変電設備へつながっていく流れも自然に見えてきます。

J-POWERに任されたのは「難しくて大きな電源開発」

J-POWERに任されたのは「難しくて大きな電源開発」

J-POWERの原点を理解するうえで重要なのは、普通の発電所をたくさんつくるためだけの会社ではなかったという点です。

求められたのは、地域電力会社だけでは進めにくい、大規模で技術的にも難しい電源開発でした。つまり、J-POWERの役割は「一つの地域の需要に応える」というより、日本全体で不足している供給力をどう増やすかを考えることに近かったのです。

この視点で歴史を追うと、J-POWERがその後、巨大な水力発電所、長距離送電線、周波数変換設備、火力、海外発電へと事業を広げていったことにも一貫性が見えてきます。特定の地域で電気を販売することを起点にした会社ではなく、その時代に日本全体で必要となる大規模なエネルギーインフラをつくることから始まったからです。

J-POWERの強みは、現在保有している発電容量の大きさだけではありません。巨大インフラを計画し、難しい建設を実現し、それを何十年も運営する経験そのものが、70年以上かけて蓄積されてきたことにもあります。

企業理念は、創業時の使命とつながっているのか

企業理念は、創業時の使命とつながっているのか

このブログでは、企業理念を「会社が掲げているきれいな言葉」として紹介するだけではなく、実際の歴史や事業と一致しているのかまで見たいと考えています。

J-POWERの場合、この視点はかなり面白いです。

現在のJ-POWERは、

わたしたちは人々の求めるエネルギーを不断に提供し、日本と世界の持続可能な発展に貢献する。

という使命を掲げています。1952年まで遡って考えると、当時の日本で人々が求めていたエネルギーは、まず何よりも「足りない電気」でした。その社会課題に応えるため、難しい大規模水力開発へ挑むところからJ-POWERの歴史が始まっています。

さらに企業理念には、知恵と技術の先駆けとなることや、利益を成長の源泉とするという考え方も含まれています。社会に必要なインフラをつくるだけではなく、新しい技術を使ってそれを実現し、事業として成長していく。佐久間ダムの建設など創業期の行動を見る限り、この考え方にも歴史とのつながりを感じます。

もちろん、理念を掲げているだけで会社を評価するつもりはありません。重要なのは、現在の脱炭素、再生可能エネルギー、AI・データセンターといった新しい事業にも、この理念が本当に反映されているのかです。ただ、少なくとも創業の歴史を見ると、「社会が求めるエネルギーを見つけ、それを技術で実現する」という姿勢は、J-POWERの原点から続くものに見えてきます。

企業CMから見える、J-POWERが実現したい未来

企業CMから見える、J-POWERが実現したい未来

企業理念だけでは、J-POWERがこれから何を実現しようとしているのかまでは少し見えにくいかもしれません。

そこで参考になるのが、J-POWER自身が発信している企業CMです。発電所や送電設備を紹介するだけではなく、エネルギーを通じてこれからの社会とどう向き合おうとしているのかが映像として表現されています。

1952年のJ-POWERに求められたのは、戦後の日本で「足りない電気を増やすこと」でした。しかし現在は、脱炭素、再生可能エネルギー、AI・データセンターなどによって、社会がエネルギー会社へ求める役割そのものが変わっています。CMから感じるのは、J-POWERが発電量を増やすことだけではなく、エネルギーを通じて次の社会基盤をつくろうとしていることです。

もちろん、CMは企業が自ら描く理想像です。本当に重要なのは、そのメッセージが実際の事業や設備投資に落とし込まれているかどうかです。水力、送変電、火力の脱炭素、再生可能エネルギー、そしてAI・データセンターへと続くJ-POWERの取り組みを追いながら、企業理念と実際の経営が一致しているのかも確認していきます。

大規模水力と送電網で、日本の成長を支えた

大規模水力と送電網で、日本の成長を支えた

J-POWERが設立後に本格的に取り組んだのが、大規模水力発電でした。

日本は山が多く、降水量も多いため水力資源に恵まれていますが、巨大なダムを建設できる場所の多くは山間部にあります。発電所だけではなく、道路、水路、送電線まで一体で整備する必要があり、巨額の資金と高度な土木技術が求められます。まさにJ-POWERが設立された目的と重なる仕事でした。

現在のJ-POWERを「石炭火力の会社」というイメージだけで見ると見落としやすいのですが、会社の原点は大規模水力にあります。そして重要なのは、水力が昔の事業として終わったわけではないことです。現在でもJ-POWERは日本有数の水力発電会社であり、戦後につくられた設備を更新・増強しながら使い続けています。

さらにJ-POWERは、発電所をつくるだけではありませんでした。山間部でつくった電気を都市や工場へ届けるための送電設備を整え、東日本と西日本の周波数の違いを越えて電力を融通する設備まで開発します。「つくる」「運ぶ」「つなぐ」まで担ってきたことが、J-POWERの強みを理解するうえで重要です。

佐久間ダム|なぜJ-POWERは大規模水力から始まったのか

佐久間ダム|なぜJ-POWERは大規模水力から始まったのか

J-POWERの大規模水力を象徴するのが、天竜川につくられた佐久間ダム・佐久間発電所です。

戦後の日本に必要だったのは、少しずつ電力を増やすことではなく、大量の電気を供給できる巨大な電源を短期間で整備することでした。そのためJ-POWERは、当時としては非常に難しい大規模水力開発へ挑みます。

佐久間ダムの建設では、海外から大型土木機械や新しい工法を取り入れ、それまで日本では難しいと考えられていた規模の工事を進めました。単に大きなダムをつくっただけではなく、必要なインフラを実現するために、新しい技術を積極的に取り入れたことにもJ-POWERらしさがあります。

さらに面白いのが、佐久間発電所が70年前につくって終わった資産ではないことです。現在も設備の大規模更新・増強が進められており、脱炭素が求められる時代に、戦後につくられた水力資産へ再び投資しています。

「J-POWER 水力」というキーワードを考えても、この歴史は非常に重要です。J-POWERの水力発電は過去の遺産ではなく、燃料輸入に頼らず、長期間使い続けられる現在の強みでもあるからです。

50Hzと60Hzをつないだ佐久間周波数変換所

50Hzと60Hzをつないだ佐久間周波数変換所

山間部で大量の電気をつくっても、その電気を必要な地域へ送れなければ価値は生まれません。

そこでJ-POWERは、水力発電所の開発と同時に、長距離送電線や変電設備の整備も進めていきました。

その象徴の一つが、1965年に運転を開始した佐久間周波数変換所です。日本の電気は東日本が50Hz、西日本が60Hzという異なる周波数を使っています。そのため、東西間で大量の電力を融通するには周波数を変換する設備が必要です。佐久間周波数変換所は、日本の東西を電力でつなぐ重要な役割を担うことになりました。

この歴史を見ると、J-POWERの強みを「発電所を持っていること」だけで説明できない理由が分かります。

電気をつくる
↓
遠くへ運ぶ
↓
地域を越えてつなぐ

ところまで経験してきた会社だからです。

発電・送電・変電・配電の仕組みについては、「電力関連銘柄」の記事でも詳しく整理しています。電力産業全体の流れとJ-POWERの歴史を重ねると、この会社が発電と送変電という電力インフラの上流部分を長く担ってきたことが見えてきます。

水力から火力、そして海外へ|時代とともに役割も変わった

水力から火力、そして海外へ|時代とともに役割も変わった

J-POWERの歴史で興味深いのは、大規模水力の会社として成功したあとも、その事業だけを守り続けなかったことです。

日本社会が必要とするエネルギーの形が変化すると、J-POWERが担う役割も変わっていきました。

高度経済成長で電力需要がさらに増えると火力発電へ事業を広げ、オイルショックによって石油依存のリスクが高まると、電源の多様化へ向かいます。一方、日本国内で培ってきた水力発電や送変電の技術は海外でも活用されるようになり、海外コンサルティングから海外発電事業へと領域が広がっていきました。

この歴史を見ると、J-POWERの強みは「水力が得意」「火力発電所が大きい」といった個別の技術だけではなく、社会が必要とするエネルギーの変化に合わせ、自分たちの役割そのものを変えてきたことにもあるように感じます。

もちろん、過去に社会から求められた巨大資産が、次の時代には課題になることもあります。J-POWERの石炭火力はその象徴です。強みとリスクが、実は同じ歴史の延長線上にあることも、この会社を考える面白さだと思います。

なぜJ-POWERは石炭火力へ進んだのか

なぜJ-POWERは石炭火力へ進んだのか

現在の脱炭素という視点だけでJ-POWERの石炭火力を見ると、「なぜこれほど石炭火力を持つ会社になったのか」と疑問に感じます。

しかし歴史を遡ると、その背景には当時の日本が抱えていたエネルギー問題があります。

高度経済成長によって電力需要が伸び続けるなか、1970年代には二度のオイルショックが発生しました。石油へ大きく依存していた日本にとって、海外情勢によって燃料価格や供給が大きく揺れることは、エネルギー安全保障上の大きな問題でした。そこで必要になったのが、一つの燃料に依存せず、複数の電源を組み合わせることです。

J-POWERが石炭火力へ力を入れていった背景には、こうした安定供給と電源多様化という当時の課題がありました。つまり、今では脱炭素の観点から大きな経営課題になっている石炭火力も、もともとは「日本は石油だけに依存して大丈夫なのか」という問いへの答えの一つだったのです。

ここには企業経営の難しさも表れています。ある時代には社会から必要とされ、会社の強みだった巨大資産が、環境や技術が変化すると次の時代にはリスクになることがあります。J-POWERの石炭火力は、過去の成功を次の時代へどう転換するのかという現在の大きな経営課題につながっています。

海外事業は「日本で培った技術を世界へ」から始まった

海外事業は「日本で培った技術を世界へ」から始まった

J-POWERの海外展開もかなり早い時期から始まっています。

ただ、現在のように海外の発電所へ投資して電力を販売する事業から始まったわけではありません。その原点は、日本の大規模水力や送変電設備をつくる中で蓄積した調査、設計、建設、運営の技術を海外へ提供することでした。

つまりJ-POWERの海外事業は、

日本で巨大インフラをつくる
↓
技術と経験を蓄積する
↓
海外でその技術を活用する
↓
海外発電事業そのものへ広がる

という流れで成長してきたことになります。

この変化は、現在の企業理念に「日本」だけではなく「世界」が入っていることともつながって見えます。日本の電力不足を解消するために生まれた会社が、国内で蓄積した技術を使って海外の電力インフラにも関わるようになったからです。

J-POWERの将来性を考えるうえでも海外事業は重要ですが、成長機会だけでなく、為替、政治、電力市場、減損などのリスクも伴います。後半ではその両面を確認しますが、この歴史からまず分かるのは、J-POWERは日本国内だけの発電会社ではないということです。

2004年完全民営化|国策会社から民間企業へ

2004年完全民営化|国策会社から民間企業へ

J-POWERは国策を担う特殊法人として生まれましたが、その立場が現在まで続いているわけではありません。

1990年代になると、日本では特殊法人改革が進み、電力業界でも発電部門への新規参入や小売自由化など、市場へ競争を取り入れる改革が始まります。J-POWERにも、政策を実行する会社としてだけではなく、自ら事業を選び、投資し、収益を生み出す企業への転換が求められるようになりました。

そして2004年、J-POWERは東京証券取引所へ上場し、完全民営化します。現在のJ-POWERは政府が経営する国営企業でも、特殊法人でもありません。東証プライム市場に上場し、投資家から企業価値を評価される民間企業です。

この違いは、J-POWERを投資先として考えるうえで非常に重要です。日本にとって必要性の高いインフラを持っているからといって、それだけで企業価値が高くなるわけではありません。現在のJ-POWERには、社会に必要な設備をつくることに加えて、その巨大な資産を使って利益を生み出すことも求められています。

なぜJ-POWERは完全民営化されたのか

なぜJ-POWERは完全民営化されたのか

J-POWERの民営化を「国がJ-POWERを必要としなくなったから」とだけ考えると、少し違います。

背景には、日本の電力市場そのものが変化し、J-POWERにも自ら競争力を高めて事業をつくる企業への転換が求められたことがあります。

それまでのJ-POWERは、国のエネルギー政策の中で必要とされた大規模水力や火力、送電設備などを開発してきました。しかし電力市場へ競争が導入されるようになると、J-POWER自身も経営効率を高め、財務体質を改善し、海外事業や新しい事業を自ら開拓していく必要が生まれます。

つまり2004年は、単に株式市場へ上場した年ではありません。

国から与えられた役割を遂行する会社
↓
自ら事業を選び、投資し、利益を生み出す会社

へと、J-POWERの立場が大きく変わった転換点です。

この変化によって、投資家として見るべきポイントも変わりました。「日本に必要な会社か」だけではなく、投じた資本からどれだけ利益を生み、成長投資を続け、株主へ還元できるのかまで確認する必要があります。

民営化したのに、なぜ今も国のエネルギー政策と重なるのか

民営化したのに、なぜ今も国のエネルギー政策と重なるのか

現在のJ-POWERを調べると、水力、地域間送電、再生可能エネルギー、原子力、火力の脱炭素化など、日本のエネルギー政策上重要なテーマが数多く出てきます。

そのため、「完全民営化したのに、今でも国策企業なのでは?」と感じるかもしれません。

ただし、ここは明確に分けて考える必要があります。現在のJ-POWERを国が経営しているから、事業が国の政策と重なっているわけではありません。 日本が必要としている大規模なエネルギーインフラと、J-POWERが70年以上かけて蓄積してきた発電所、送変電設備、技術、人材、開発経験が重なっているのです。

だからこそ、「国策だからJ-POWERは安心」「国が必要としている事業だから株価が上がる」という考え方には注意が必要です。見るべきなのは、

国が必要としているインフラ
↓
J-POWERが持っている資産・技術
↓
そこでどんな事業機会が生まれるか
↓
投資した資本を利益へ変えられるか

という流れです。

J-POWERの企業理念には、社会へエネルギーを届けるだけでなく、利益を成長の源泉としていく考え方も含まれています。「日本に必要な会社であること」と「株主にとって魅力的な会社であること」は同じではない。 この二つを分けて考えることが、J-POWERの強みや将来性を長期投資の視点で考えるうえでは欠かせないと思います。

おじー🦥
おじー🦥

J-POWERは、今も日本に必要な電力インフラをたくさん持っている会社なんだね。でも、投資家として見るなら、それをどう利益につなげるかまで考えることが大事なんだね。

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J-POWERは何をしている?東京電力や東北電力との違い

J-POWERは何をしている?東京電力や東北電力との違い

J-POWERは何の会社なのか。

歴史を知ると「日本全体に必要な大規模電源を開発するために生まれた会社」だと分かりますが、現在の事業を見ても、東京電力や東北電力などの地域電力会社とは少し違う立ち位置にいます。家庭へ電気を届ける会社というより、全国各地に大規模な発電所を持ち、そこでつくった電気を電力会社や電力市場などへ販売する、電力産業の上流側に強い会社という理解が近いと思います。

2026年3月31日時点で、J-POWERが国内で運転する発電設備は98カ所、持分出力で合計約1,764万kWあります。しかも内訳を見ると、水力61カ所・859.0万kW、火力8カ所・823.5万kWで、国内設備容量では水力が火力を上回っています。私自身、「J-POWER=石炭火力」という印象を持っていましたが、数字を確認すると、日本有数の水力発電会社でもあることが分かりました。風力、地熱、太陽光も持ち、建設中の大間原子力発電所まで含めれば、扱っている電源はかなり幅広い会社です。

さらにJ-POWERの特徴は、発電した電気を売るだけではありません。グループのJ-POWER送変電は、本州と北海道・四国・九州を結ぶ地域間連系設備や、50Hzと60Hzをつなぐ佐久間周波数変換所などを運営しています。海外でも発電事業を展開しており、「国内の大きな発電会社」という説明だけでも足りません。発電する、売る、日本をつなぐ、海外でも発電する。 この4つを理解すると、現在のJ-POWERがどんな会社なのかがかなり見えやすくなります。

J-POWERはどんな発電所を持っているのか

J-POWERはどんな発電所を持っているのか

J-POWERの発電事業でまず驚いたのが、「石炭火力の会社」というイメージと実際の設備構成にはかなり差があることでした。

2026年3月31日時点の国内発電設備は98カ所、約1,764万kW。そのうち水力が859.0万kW、火力が823.5万kWで、設備容量だけを比べると水力のほうが大きくなっています。さらに風力66.3万kW、地熱4.0万kW、太陽光3.2万kWを保有しています。

電源発電所数持分出力
水力61カ所859.0万kW
火力8カ所823.5万kW
風力23カ所66.3万kW
地熱3カ所4.0万kW
太陽光2カ所3.2万kW
実証試験設備1カ所8.3万kW
合計98カ所約1,764万kW

※2026年3月31日時点、国内・運転中・持分出力ベース。大間原子力発電所は建設中のため、この98カ所には含まれません。

この数字を見ると、J-POWERの強みを「石炭火力が大きい」で終わらせると会社の半分しか見えていないことが分かります。一方で、設備容量が水力と火力で近いからといって、発電量や利益への貢献まで半々になるわけではありません。水力は雨量によって発電量が変わり、火力は燃料価格や稼働率、電力市場価格の影響を受けます。どんな設備を持っているかと、その設備からどれだけ利益を生み出せるかは別の問題なので、後半の業績分析では発電量や利用率まで確認する必要があります。

J-POWERの水力は国内2位|火力より大きな設備容量を持つ

J-POWERの水力は国内2位|火力より大きな設備容量を持つ

J-POWERの水力発電設備は国内859万kWで、公式サイトでは国内設備出力シェア2位と紹介されています。

会社設立直後から大規模水力を開発してきた歴史が、そのまま現在の資産として残っている形です。J-POWERの水力が興味深いのは、単に発電容量が大きいだけではありません。燃料となる石炭やLNGを海外から輸入する必要がなく、発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーであり、既存設備を更新すれば長期間使い続けられる特徴があります。

2026年3月期の決算資料でも、J-POWERグループは水力発電設備について国内2位と明示しています。石炭火力が脱炭素によって大きな転換を迫られる一方、創業時に整備した水力資産は、70年以上経った現在では逆に脱炭素時代に価値を持つ電源になっています。J-POWERの強みを考えるうえで、「昔からあるから古い資産」ではなく、「昔につくったからこそ今では簡単に再現できない資産」という見方も必要だと思います。

誰に電気を売って、どうやって稼いでいる?

誰に電気を売って、どうやって稼いでいる?

J-POWERと東京電力や東北電力との違いを理解するうえで、一番分かりやすいのが「つくった電気を誰に売っているのか」です。

地域電力会社は長い歴史の中で、地域の家庭や企業へ電気を届ける役割を担ってきました。一方、J-POWERは大規模発電所でつくった電気を、地域電力会社、日本卸電力取引所(JEPX)、新電力などへ販売してきました。J-POWER自身も、東京電力や関西電力などの各地域電力会社、JEPX、新電力へ電気を販売していると説明しています。

イメージすると、

J-POWERの発電所
↓
地域電力会社・JEPX・新電力などへ販売
↓
家庭・企業・工場などで使われる

という流れです。

「卸電力」という言葉もここで理解すると分かりやすいと思います。スーパーが商品を消費者へ売る前に、メーカーや卸売会社から商品を仕入れるのと同じように、J-POWERは大規模な発電所でつくった電気を、他の電力会社などへ大量に販売してきました。そのため、私たちが契約している電力会社がJ-POWERでなくても、実際に使っている電気の一部がJ-POWERの発電所でつくられている可能性があります。

J-POWERは家庭向け小売を中心とする電力会社ではない

J-POWERは家庭向け小売を中心とする電力会社ではない

ここは「J-POWERは何の会社」と検索した人が特に混乱しやすいところです。

J-POWERは電気を大量につくる会社ですが、東京電力や東北電力のように、一般家庭向けの小売を中心に成長してきた会社ではありません。会社の原点が全国規模の電源開発にあるため、現在でも大規模発電と電力取引という上流側の色が強く残っています。

ただし、「J-POWERは小売をまったくしていない」と書くのも現在では正確ではありません。J-POWERは北海道から九州までの9エリアで法人顧客向けの電力小売を行っています。つまり現在は、発電した電気を電力会社や市場へ販売するだけでなく、自ら法人顧客へ販売する領域にも広がっています。

この違いを整理すると、次のようになります。

見方J-POWER地域電力会社
歴史的な出発点全国規模の大規模電源開発地域の電力供給
発電全国に大規模発電所各地域を中心に保有
主な販売電力会社・市場・新電力など家庭・法人など
法人小売実施実施
家庭向け小売主力ではない主要事業の一つ
送変電地域間連系などに強み各地域の送配電網をグループ会社が運営

※現在の電力業界では発電・小売・送配電が分社化されている企業も多いため、ここでは各社グループの歴史的・事業上の特徴を簡略化して整理しています。

この表からも、J-POWERの特徴は「普通の電力会社より大きい・小さい」という違いではなく、そもそも電力産業の中で得意としてきた場所が違うと考えるほうが分かりやすいと思います。

発電だけじゃない|日本をつなぐ送変電設備

発電だけじゃない|日本をつなぐ送変電設備

J-POWERの強みを考えるうえで、発電所と同じくらい見落としたくないのが送変電事業です。

現在はグループ会社の電源開発送変電ネットワーク、通称J-POWER送変電が担当しており、2026年時点で送電設備は合計2,410.2km。さらに5カ所の変電設備、1カ所の周波数変換所、4カ所の交直変換設備を保有しています。

一般的な送電線を持っていること以上に重要なのが、設備の場所です。本州と北海道、本州と四国、本州と九州をつなぐ地域間連系設備や、東日本50Hzと西日本60Hzをつなぐ佐久間周波数変換所など、電力会社の供給地域と供給地域の間をつなぐ設備を持っています。災害や発電量の偏りが発生したとき、地域を越えて電力を融通するうえでも重要なインフラです。

発電、送電、変電、配電の違いは「電力関連銘柄」の記事でも詳しく整理していますが、J-POWERをその産業地図に置くと、発電に加えて「地域と地域を結ぶ送変電」というかなり特殊な位置を担っていることが分かります。戦後に日本全体の電源開発を任された会社だからこそ、現在まで地域を越える電力ネットワークが残っていると考えると、歴史と現在の事業がここでもつながります。

2,410kmの送電網|地域を越えて電力を融通する

2,410kmの送電網|地域を越えて電力を融通する

J-POWER送変電の送電設備2,410.2kmのうち、交流送電線が2,143.0km、直流送電線が267.2kmあります。

単純な距離だけを見れば、日本全国の送配電網全体から見て巨大という意味ではありません。J-POWERの送変電設備で重要なのは、電力系統の「境目」をつないでいることです。

たとえば北海道で電力が余っていて本州で足りない場合、地域間を結ぶ設備がなければ融通できません。再生可能エネルギーが増えていく時代にも、風が強い地域や日射条件の良い地域でつくられた電気を需要地へ届けるため、送電網の重要性は高まります。J-POWER自身も、地域間連系設備が電力の広域運用や安定供給に大きな役割を果たしていると説明しています。

これを見ると、J-POWERの送変電設備は「発電所のおまけ」ではありません。大量の電力をつくる力と、それを必要な地域へ動かす力をセットで持ってきたことが、この会社ならではの特徴です。

こうした送電網を物理的に支える電線やケーブルにも目を向けると、電力インフラの見え方はさらに広がります。電力ケーブルだけでなく、AI時代を支える光ファイバーまで手がける「住友電工の強み」もあわせて見ると、J-POWERがつくった電気を実際に「運ぶ側」の企業までつながって見えてきます。

海外でも電気をつくっている

海外でも電気をつくっている

J-POWERは日本の電力不足を解消するために生まれた会社ですが、現在は海外発電もかなり大きな事業になっています。

2026年3月31日時点で海外の運転中発電事業は32件、持分出力591.1万kW。内訳は火力527.0万kW、水力15.5万kW、太陽光・風力・バイオマス・蓄電池などその他再生可能エネルギー48.6万kWです。国内の約1,764万kWと比較しても、海外発電は「少し海外にも出ています」という規模ではありません。

さらにJ-POWERは、発電所への出資だけでなく、海外の電力インフラに関するコンサルティングも長年行っています。2026年3月末時点で、その実績は64カ国376件。国内で巨大水力や送変電設備を開発する中で培った調査・設計・建設・運営の経験を海外へ持っていき、そこから発電事業そのものへ領域を広げてきた歴史があります。

海外事業には、日本国内の人口や電力需要だけに依存しない成長機会があります。一方、為替、金利、現地の電力市場、政治・規制、設備トラブル、投資先の減損など、日本国内とは違うリスクも抱えます。J-POWERの将来性を見るうえでは、「海外に出ているから成長する」と単純に考えるのではなく、海外へ投じた資本からどれだけ安定して利益を回収できているのかまで確認する必要があります。

海外32件・591万kW|技術協力から発電事業へ

海外32件・591万kW|技術協力から発電事業へ

J-POWERの海外事業を考えるとき、数字だけでなく、その広がり方にも注目したいです。

海外事業の原点は、日本で培った水力や送変電の技術を海外へ提供するコンサルティングでした。そこから実際の発電プロジェクトへ投資し、自ら事業リスクを負いながら収益を得る形へと発展しています。

2026年3月末時点では、運転中32件に加えて建設中・計画中11件があり、海外コンサルティング実績も64カ国376件に達しています。J-POWERという名前から日本国内の発電会社を想像しやすいですが、実際には国内で磨いた電力インフラの技術と経験を世界へ展開している会社でもあります。

J-POWERは、全国に大規模な発電所を持つだけの会社ではありません。水力や火力で電気をつくり、その電気を電力会社・電力市場・法人へ販売し、地域間の送変電設備で日本をつなぎ、さらに海外でも発電事業や電力インフラを展開しています。1952年に「日本全体の供給力を増やす」という役割を担って生まれた会社が、70年以上かけて発電・送変電・海外へと領域を広げてきました。「その時代に必要な電力インフラをつくる」という原点が、形を変えながら現在まで続いているように見えます。

おじー🦥
おじー🦥

J-POWERは、電気をつくるだけでなく、日本をつなぎ、海外でも電力を支えている会社なのですね。
事業の広がりを見ると、「何の会社なのか」がかなり見えてきました。

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J-POWERの強み|なぜ70年以上、日本の電力を支え続けられたのか

J-POWERの強み|なぜ70年以上、日本の電力を支え続けられたのか

J-POWERの強みはどこにあるのか。

事業内容だけを見ると、水力発電、火力発電、送変電、再生可能エネルギー、海外発電など「いろいろな電力事業を持っている会社」と整理できます。しかし70年以上の歴史まで重ねてみると、それだけでは説明しきれません。J-POWERには、一度つくれば何十年も使われる巨大な電力インフラを開発し、運営し、必要に応じて更新しながら次の時代へつなげてきた経験があります。

特に大きいのが、簡単には新しくつくれない既存資産です。国内2位の設備出力を持つ水力発電、日本の地域間を結ぶ送変電設備、50Hzと60Hzをつなぐ周波数変換設備などは、資金だけ用意すれば短期間で再現できるものではありません。さらにJ-POWERは、発電所や送変電・情報通信設備について、開発・設計・建設から運用、電力販売まで一貫したノウハウを持つと説明しています。

J-POWERの主な強み

  • 国内2位の設備出力を持つ大規模な水力発電資産
  • 地域と地域を結ぶ特殊な送変電設備
  • 巨大インフラを計画・建設・運営する技術と経験
  • 水力・火力・再エネ・海外などに広がる電源ポートフォリオ
  • 日本全体の電力需給を見る立場で培ってきた広域運用の経験
  • 既存設備を更新・転換しながら長く使い続ける力

私がJ-POWERを調べていて特に重要だと感じたのは、「昔つくったものが、今でも強みになっている」ことです。ただし巨大資産は、持っているだけで永遠に強みになるわけではありません。社会が必要とする電源が変われば、古い設備を更新したり、新しい用途へ転換したりする必要があります。J-POWERの強みを本当に評価するなら、「どれだけ大きな資産を持っているか」だけではなく、その資産を次の時代でも価値あるものへ変えられるかまで見る必要があります。

昔つくった水力発電所が、なぜ今もJ-POWERの強みになる?

昔つくった水力発電所が、なぜ今もJ-POWERの強みになる?

J-POWERの強みを象徴するのが水力発電です。

2026年3月31日時点で国内61カ所、持分出力859.0万kWを保有し、国内の水力発電設備出力では2位。戦後の電力不足を解消するためにつくった巨大な水力資産が、70年以上たった現在も会社の大きな競争力として残っています。

水力発電の魅力は、単に再生可能エネルギーだからというだけではありません。石炭やLNGのように発電のたびに海外から燃料を輸入する必要がなく、発電時に燃料を燃やすことによるCO2排出もありません。一方、大規模水力を新しく開発しようとすれば、適した地形や豊富な水資源だけでなく、巨額の建設費、環境への配慮、地域との調整、長い建設期間が必要になります。だからこそ、すでに巨大な水力発電所を全国に持っていること自体が、簡単には再現できない資産だと考えられます。

さらに面白いのは、J-POWERが古い水力発電所をそのまま使い続けているわけではないことです。設備を更新し、同じ水資源からより多くの電気を取り出せるようにする投資も進めています。つまりJ-POWERの水力は、「昔につくった発電所」ではなく、「長期間使いながら価値を高められる電力資産」として見るほうが実態に近いと思います。

NEXUS佐久間|70年前の発電所を40万kWへ増強する

NEXUS佐久間|70年前の発電所を40万kWへ増強する

水力資産を「古い設備」と「価値ある資産」のどちらにするかは、その後の投資によって変わります。

その分かりやすい例が、2026年7月に更新工事が始まったNEXUS佐久間プロジェクトです。佐久間発電所は1956年に運転を開始し、2026年で70年を迎えました。J-POWERは発電機や水車だけを交換するのではなく、発電所建屋まで含めて発電所全体を約10年かけて一新します。

更新後は最大出力を現在の35万kWから40万kWへ5万kW増強し、年間発電電力量も約5,500万kWh増やす計画です。水車、発電機、制御装置、主要変圧器などを最新鋭・高効率の設備へ置き換え、同じ河川・同じ発電地点を使いながら発電能力を高めようとしています。Ⅰ期工事は2026年7月から2030年度、Ⅱ期工事は2031年度から2035年度を予定しています。

ここにJ-POWERの水力の強さがよく表れていると思います。ゼロから新しい巨大ダムをつくるのではなく、70年前に確保した立地・水資源・設備基盤を活かしながら、技術の進歩によって発電量を増やす。 これは新規開発とは違う成長の形です。戦後につくった巨大資産が、脱炭素時代には再生可能エネルギーの成長投資先へ変わっていることを考えると、J-POWERの水力は過去の遺産ではなく、将来性にもつながる資産だと感じます。

「日本全体を見る」というDNAは今もJ-POWERの強みなのか

「日本全体を見る」というDNAは今もJ-POWERの強みなのか

J-POWERは、一つの地域を担当する電力会社として生まれた会社ではありません。

1952年の設立時から、日本全体で足りない電源をどこにつくるか、つくった電気をどう地域を越えて動かすかという視点で事業を進めてきました。この「地域ではなく、日本全体を見る」という立場は、J-POWERの強みを考えるうえでかなり重要だと思います。

1958年には9電力会社とJ-POWERによる広域運営体制が始まり、1965年には東日本50Hzと西日本60Hzの間で初めて電力融通を可能にした佐久間周波数変換所を運転開始。1979年には北海道と本州を結ぶ北本連系設備を完成させました。現在もJ-POWER送変電は約2,410kmの送電線、本州と北海道・四国・九州を結ぶ地域間連系設備、周波数変換設備などを持ち、日本全体の電力系統の広域運用に関わっています。

この役割は、再生可能エネルギーが増えるほど重要になる可能性があります。風力は風の強い場所、水力は水資源のある場所、太陽光は日射条件の良い場所で発電しますが、電気を大量に使う都市や工場、AI・データセンターが必ず同じ場所にあるわけではありません。「発電できる場所」と「電気を必要とする場所」をどうつなぐかは、これからの電力産業でも大きな課題です。AI時代にデータセンターがなぜ大量の電気を必要とするのかは、データセンター関連銘柄の記事でも詳しく整理しています。

戦後は「電気そのものが足りない」という課題に向き合い、現在は再エネの地域偏在や新しい大口需要など、電気をどこでつくり、どこへ動かすかという課題が大きくなっています。社会課題の中身は変わっても、日本全体を見ながら電源とネットワークを考える必要があるという点では、J-POWERの原点と現在は意外とつながっています。

東日本大震災でも動いた「地域を越えて電気を運ぶ力」

東日本大震災でも動いた「地域を越えて電気を運ぶ力」

地域間連系設備の価値がはっきり表れた例の一つが、2011年の東日本大震災です。

J-POWERの70周年資料によると、北海道と本州を結ぶ北本連系設備は、震災発生から2日後の3月13日に本州側への送電を開始し、その後約半年にわたって60万kWでフル稼働しました。半年間の累積通過電力量は約23億kWhに達したとされています。

発電所をたくさん持っていても、必要な場所へ電気を動かす設備がなければ、地域を越えた支援はできません。J-POWERが長い時間をかけて整備してきた地域間連系設備は、普段は電力系統を効率的に運用するためのインフラですが、供給力が大きく失われる非常時には電力を融通するルートとしても機能します。

私はこの事例を見ると、J-POWERの強みは「何万kWの発電所を持っている」という数字だけでは測れないと思います。必要なときに、地域を越えて電気を動かせるネットワークを持っていること。 これも、日本全体の電力インフラを見てきたJ-POWERならではの資産です。

巨大インフラをつくり、何十年も運営する力

巨大インフラをつくり、何十年も運営する力

発電所は、工場で製品をつくって販売する事業とは時間軸が大きく違います。

調査を始めてから計画、環境調査、地域との調整、設計、建設、運転開始まで長い時間がかかり、完成後はさらに何十年も設備を保守・更新しながら使い続けます。J-POWERは発電所や送変電・情報通信設備について、開発・設計・建設から運用、さらに電力販売まで一貫したノウハウを持つと説明しています。

これまで見てきた佐久間発電所は2026年で運転開始から70年。送変電設備も、1960年代から現在まで更新を重ねながら利用されています。こうした巨大インフラを長期間動かすには、発電技術だけでなく、設備保全、安全管理、工事、人材育成、地域との関係、資金調達など、幅広い能力が必要になります。一つの発電技術だけをまねても、同じ事業をすぐに再現するのが難しい理由の一つです。

一方で、巨大インフラを持つことは必ずしも強みだけではありません。何十年も使う前提で巨額の資金を投じるため、社会の価値観やエネルギー政策が変われば、昔つくった設備が重荷になることもあります。J-POWERにとって石炭火力はまさにその問題に直面しています。だからこそ、長期運営力を強みとして評価するなら、「昔つくったものを守れるか」ではなく、「必要に応じて更新し、別の価値へ転換できるか」まで見る必要があります。

J-POWERの強みは「巨大資産」ではなく、それを次の時代へ変える力

J-POWERの強みは「巨大資産」ではなく、それを次の時代へ変える力

巨大な発電所や送電設備をすでに持っていることは、J-POWERの大きな強みです。

しかし、資産の大きさだけを評価するのは危険だと思います。70年前につくった水力が現在も価値を持つのは、設備を保守し、更新し、NEXUS佐久間のように発電能力まで高めようとしているからです。反対に、社会から求められなくなった設備を昔のまま抱え続ければ、巨大資産はそのまま巨大な負担へ変わります。

J-POWER自身も、脱炭素戦略「BLUE MISSION 2050」で、既存設備に新しい技術を加えて価値を高めることを「アップサイクル」と位置付けています。再生可能エネルギーを増やすだけでなく、今ある設備をどう次の時代へ使い直すかという発想です。

この考え方は、J-POWERの将来性を評価するうえでかなり重要だと思います。水力ではすでに「70年前の資産を更新して発電量を増やす」という形が見えています。一方、823.5万kWもの国内火力発電設備を抱えるJ-POWERにとって、同じことを石炭火力でも実現できるのかは、はるかに難しい問題です。

J-POWERの本当の強みが、巨大な設備を持っていることなのか。
それとも、社会が変わるたびに巨大な設備そのものを変えられることなのか。

この問いは、J-POWERを長期投資先として考えるうえでも重要です。70年以上積み上げてきた資産・技術・経験が参入障壁になる一方、それを次の時代でも利益を生む資産へ変えられるかどうかで、J-POWERの強みの価値は大きく変わってくると思います。

おじー🦥
おじー🦥

J-POWERの強みは、大きな発電所をたくさん持っていることだけではないのですね。
長い時間をかけて築いた資産や技術を、社会の変化に合わせて次の価値へ変えられるかが大切になりそうです。

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J-POWER最大の転換点|石炭火力をどう脱炭素へ変えるのか

J-POWER最大の転換点|石炭火力をどう脱炭素へ変えるのか

J-POWERの強みを調べると、大規模水力や送変電設備、巨大インフラを長期間運営する技術など、簡単には再現できない資産が数多く見えてきます。

その一方で、この会社の将来性を考えるとき、避けて通れないのが石炭火力です。J-POWERはオイルショック後、日本の石油依存を減らし、電力を安定して供給するために海外炭火力を拡大してきました。当時は日本のエネルギー安全保障を支えた強みでしたが、脱炭素が世界的な課題となった現在では、その巨大な火力資産をどう変えていくかが経営の大きな課題になっています。

2026年3月31日時点で、J-POWERの国内火力発電設備は8カ所、持分出力823.5万kW。中期経営計画では、国内の石炭火力について非効率な設備をフェードアウトし、高効率設備は地点ごとの特徴に合わせて水素、アンモニア、CCSなどを組み合わせながら低炭素化・脱炭素化する方向性を示しています。単純に「石炭火力を全部やめて再エネへ置き換える」という戦略ではありません。

J-POWERが掲げる長期戦略が「J-POWER BLUE MISSION 2050」です。2030年に発電事業のCO2排出量を2013年度比46%削減し、2050年には実質ゼロを目指します。その手段として、再生可能エネルギーなどのCO2フリー電源を増やすだけではなく、既存火力へ新しい技術を加える「アップサイクル」、水素・アンモニア、CO2を回収して地下へ貯留するCCSなど、複数の選択肢を同時に進めています。

私がJ-POWERを見ていて難しいと感じるのは、石炭火力を減らせばそれで終わりではないことです。AI・データセンター、半導体工場、電化によって電力需要が増える可能性があるなか、安定供給を守りながらCO2も減らさなければなりません。過去に日本のエネルギー安全保障を支えた巨大な石炭火力を、次の時代にも必要とされる電源へ変えられるのか。ここはJ-POWERの強みが本物なのかを試す、大きな転換点だと思います。

石炭火力は、J-POWERの強みであり最大の課題でもある

石炭火力は、J-POWERの強みであり最大の課題でもある

J-POWERが石炭火力を増やしてきた背景には、日本のエネルギー事情があります。

1970年代のオイルショックを経験した日本では、石油だけに依存しない電源構成が求められました。J-POWERは海外から調達できる石炭を使った大規模火力を開発し、1981年には松島火力発電所を運転開始。その後も高効率な石炭火力を開発し、日本の電力安定供給を支えてきました。

その結果として蓄積されたのが、現在の大型火力発電所、燃料調達、運転・保守、送電設備などの資産とノウハウです。しかしCO2排出量の大きさという点では、同じ資産がJ-POWERの大きな課題にもなっています。現在の国内火力設備は8カ所、823.5万kWに達し、J-POWERの発電能力の中でも非常に大きな存在です。

この関係を整理すると、J-POWERの石炭火力には二つの顔があります。

石炭火力が持ってきた価値現在直面している課題
大量の電力を安定して供給できるCO2排出量が大きい
石油依存を減らした脱炭素政策との整合性
大規模設備の運営技術を蓄積巨大設備の転換に資金が必要
燃料調達・発電ノウハウ水素・アンモニア・CCSの経済性
電力需給の調整に使える長期的な座礁資産リスク

つまり、石炭火力を持っていること自体を強みとも弱みとも決めつけられないのがJ-POWERの難しいところです。重要なのは、その設備をこれから何に変えられるのかです。巨大な火力資産が低・脱炭素電源へ転換できれば、過去に蓄積した設備や人材を活かせます。一方、技術やコストの問題で転換が進まなければ、長年積み上げてきた資産そのものが将来の負担になる可能性もあります。

非効率石炭火力は廃止、高効率火力は「変えて使う」

非効率石炭火力は廃止、高効率火力は「変えて使う」

J-POWERが選んでいるのは、すべての石炭火力を同じように扱う方法ではありません。

中期経営計画では、非効率石炭火力はフェードアウトする一方、高効率な石炭火力については、発電所ごとの立地や設備特性を見ながら、水素、アンモニア、バイオマス、CCSなどを組み合わせて低・脱炭素化する方針を示しています。

実際、兵庫県の高砂火力発電所では、1号機・2号機を2028年度末までに停止・廃止する方針が2025年に決まりました。2基はいずれも25万kWで、1968~1969年に運転を開始した非効率な石炭火力です。一方、高効率設備については残して新しい技術を加える方向が示されています。

これはJ-POWERが掲げる「アップサイクル」という考え方とも重なります。すべてを一から新しく建て替えるのではなく、まだ価値のある場所、設備、送電接続、人材などを使いながら新技術を追加することで、投資額や時間を抑えつつ脱炭素へ移行しようとしています。

廃止する設備と、変えて使う設備を分ける。 この判断を間違えれば古い設備へ資金を投じ続けることになりますが、うまくいけば既存資産を活かしながら脱炭素へ移行できます。巨大資産を持つJ-POWERだからこそ、この選別は非常に重要です。

BLUE MISSION 2050|J-POWERは何を目指しているのか

BLUE MISSION 2050|J-POWERは何を目指しているのか

J-POWERが脱炭素への長期戦略として掲げているのが「J-POWER BLUE MISSION 2050」です。

目標は、2030年に発電事業のCO2排出量を2013年度比46%削減し、2050年には実質ゼロにすること。そのために一つの技術へ賭けるのではなく、複数の手段を組み合わせる考え方を取っています。

大きく整理すると、BLUE MISSION 2050には3つの柱があります。

  1. 再生可能エネルギーなどCO2フリー電源を増やす
  2. 既存火力を水素・アンモニア・CCSなどでゼロエミッション化する
  3. 電力ネットワークを安定化・増強する

ここがJ-POWERらしいところだと思います。脱炭素というと「火力を減らして再エネを増やす」という一本の線で考えやすいですが、J-POWERは発電所だけでなく送変電設備まで持っています。再エネを増やしても、天候によって発電量が変動し、つくる地域と使う地域が離れていれば、その電気を安定して届ける仕組みが必要です。そこでCO2フリー電源、火力の転換、電力ネットワークを同時に進める戦略になっています。

ただし、目標を掲げたことと実現できることは別です。水素やアンモニアの供給網、CCSの貯留場所、設備改造コスト、再エネ開発、電力市場制度など、J-POWERだけでは決められない条件も多くあります。実際、BLUE MISSION 2050のロードマップも、政府のGX政策や電力需給、制度設計、産業の進展に合わせて随時見直すとしています。

「加速性」と「アップサイクル」|新しくつくるだけではない脱炭素

「加速性」と「アップサイクル」|新しくつくるだけではない脱炭素

BLUE MISSION 2050を理解するうえで面白いのが、J-POWERが重視している「加速性」と「アップサイクル」という二つの考え方です。

「加速性」は再生可能エネルギーを国内外で増やし、揚水発電や水素発電、電力ネットワークなども組み合わせながら再エネ拡大を後押しすること。一方、「アップサイクル」は、既存の発電所へ最新技術を加えて価値を高め、早く、経済的にCO2を減らそうという考え方です。

水力ではすでにNEXUS佐久間のように、既存のダムや水路を使いながら設備を最新化して出力を増やす動きが進んでいます。そしてJ-POWERがさらに難しい挑戦をしているのが、石炭火力のアップサイクルです。

新しい発電所をゼロから建てれば、土地の確保、環境アセスメント、送電接続、建設などに長い時間と巨額の資金が必要になります。既存地点を活用できれば、それらの一部を引き継げる可能性があります。しかし水力と違って、石炭火力の場合はCO2という根本的な問題があります。既存設備を使うメリットが、脱炭素技術にかかる追加コストを上回るのか。 ここがJ-POWERのアップサイクル戦略の成否を見るポイントになりそうです。

GENESIS松島|石炭火力を水素発電へつなげられるのか

GENESIS松島|石炭火力を水素発電へつなげられるのか

J-POWERの火力トランジションを象徴する計画が、長崎県のGENESIS松島計画です。

松島火力発電所は1981年に運転を開始した石炭火力で、1号機・2号機ともに50万kW。2024年度末で従来設備の稼働を停止し、1号機を廃止、2号機をGENESIS松島に向けて休止する方針が示されています。

GENESIS松島では、2号機の既存設備をすべて捨てるのではなく、新たにガス化設備を追加します。石炭やバイオマスを一度ガス化し、そのガスを使って発電する仕組みにすることで発電効率を高め、将来的にはCO2を分離・回収して水素を多く含むガスを利用する「CO2フリー水素発電」へつなげようとしています。J-POWERは、大崎クールジェンで実証してきた技術を商用化する第一歩と位置付けています。

現在公表されている計画では2026年着工、2028年度運転開始を目指しています。さらに将来的にはバイオマスやアンモニア、CCS・CCUSを組み合わせ、松島地点をカーボンフリー火力の先進地へ変える構想です。

ここで実現しようとしているのは、「古い石炭火力を少し効率化する」だけではありません。石炭火力として築いた設備・立地・人材を残しながら、将来的に水素を利用する発電拠点へ変えることです。もし実現できれば、J-POWERが掲げる「巨大資産を次の価値へ変える力」を象徴するプロジェクトになります。一方で、計画どおりのコストやスケジュールで商用化できるか、水素やCCSの供給網まで含めて成立するかは、まだ確認が必要です。

大崎クールジェン|研究で終わらせず、商用化できるか

大崎クールジェン|研究で終わらせず、商用化できるか

GENESIS松島の前段には、広島県で進められた大崎クールジェンプロジェクトがあります。

ここでは石炭をガス化する技術とCO2分離・回収を組み合わせ、高濃度の水素を製造し、そのガスを使ってガスタービンを運転する実証が行われました。J-POWERは、この成果を将来のCO2フリー水素発電の商用化につなげようとしています。

研究開発の流れを見ると、若松研究所でのEAGLEプロジェクトから、大崎クールジェンでの大型化実証、そしてGENESIS松島での商用化へと、20年以上かけて技術を段階的に大きくしています。これはJ-POWERの技術開発の強みを感じる部分です。

ただし投資家として重要なのは、「技術的にできた」と「商売として成立する」は違うことです。実証設備で水素をつくり発電できても、その技術を大型発電所へ導入したときの設備費、燃料費、CO2輸送・貯留費などを含めて競争力がなければ、企業価値にはつながりません。J-POWERの技術力を見ると同時に、商用化したときにどれだけ利益を生めるのかまで確認する必要があります。

水素・アンモニア・CCS|石炭火力を変える3つの選択肢

水素・アンモニア・CCS|石炭火力を変える3つの選択肢

J-POWERはすべての発電所を一つの技術で脱炭素化しようとしているわけではありません。

中期経営計画では、発電所ごとの設備や立地を見ながら、水素・アンモニア・CCSなどから最適な手段を選ぶ考え方を示しています。

それぞれの役割を簡単に整理すると、次のようになります。

技術何をする?J-POWERでの狙い
水素燃やしてもCO2を出さない燃料を使う磯子・GENESISなど将来のCO2フリー火力
アンモニア石炭と混ぜる、将来は燃料転換橘湾・松浦などで検討
CCS発電時に出たCO2を回収し地下へ貯留松浦など既存火力の脱炭素化
バイオマス石炭の一部を植物由来燃料へ置換竹原などで活用・拡大を検討

中期経営計画では、8地点15基の石炭火力について地点別のトランジション方向性も示しています。松島ではIGCC+CCS、松浦2号ではアンモニアまたはCCS、橘湾ではアンモニア、竹原ではバイオマス混焼拡大+CCSなど、設備ごとに異なる道を想定しています。

これは合理的にも見えますが、裏返せば「どの技術が最終的な勝ち筋になるか、まだ決まっていない」とも読めます。水素もアンモニアもCCSも、発電所だけを改造すれば終わりではありません。燃料の製造、輸送、貯蔵、CO2の回収・輸送・地下貯留まで大きなサプライチェーンが必要です。J-POWERの火力トランジションは、発電所の技術だけではなく、日本全体のエネルギーインフラが整うかどうかにも左右されます。

松浦火力でCCSが一段進んだ|2026年、基本設計へ

松浦火力でCCSが一段進んだ|2026年、基本設計へ

J-POWERの火力トランジションの中で、2026年に具体的な進展があったのが松浦火力発電所です。

J-POWERと九州電力は2026年8月、長崎県松浦市にそれぞれ保有する100万kWの石炭火力2号機を対象に、CO2の分離・回収、液化、一時貯蔵、出荷設備のFEED(基本設計)へ進むことを発表しました。

計画ではJ-POWER側、九州電力側それぞれ年間100万トンの液化CO2を出荷する想定で、設備を両社で共有することで合理化や運用効率化も狙います。2030年代初頭の事業化を目指して検討を進めるとしています。三菱重工業、千代田化工建設、ジェイパワー・エンテック、三菱電機なども協力企業として挙げられています。発電設備や水素・CCSなどエネルギー転換を支える技術については、「三菱重工の強み」でも詳しく整理しています。

CCSはCO2そのものを出さなくする技術ではありません。発電によって発生したCO2を回収し、液化して運び、地下深くへ閉じ込める技術です。そのため、回収率、追加エネルギー、輸送費、貯留場所、長期的な管理コストまで含めて経済性を考える必要があります。

それでも2026年8月に「実現可能性を調べる段階」から実際の設備仕様や配置を決める基本設計へ進んだことは、J-POWERの石炭火力トランジションを見るうえで注目したい動きです。石炭火力を残せるかどうかという議論が、少しずつ具体的な設備投資の検討へ移ってきています。

脱炭素できれば強み、できなければ巨大なリスクになる

脱炭素できれば強み、できなければ巨大なリスクになる

J-POWERの石炭火力を見ていると、この会社の強みとリスクがほとんど同じ場所にあることが分かります。

巨大な発電設備、送電接続、運転技術、人材、燃料調達のノウハウは、新規参入企業が簡単にまねできない資産です。しかし、脱炭素に対応できなければ、その巨大さゆえに更新費用や廃止費用、CO2対策費なども大きくなります。

BLUE MISSION 2050で示されている水素、アンモニア、CCSは、どれも将来の可能性がありますが、経済性やサプライチェーンまで完成した技術ではありません。J-POWER自身も、政府のGX政策、電力需給、制度設計、産業発展などの前提条件に応じてロードマップを更新するとしています。

だから長期投資では、「J-POWERは脱炭素に取り組んでいるから安心」と見るのではなく、

  • 石炭火力の廃止が計画どおり進んでいるか
  • GENESIS松島が商用運転まで進むか
  • 水素・アンモニアの燃料コストは下がるか
  • CCSが基本設計から実際の事業化へ進むか
  • 脱炭素投資が利益やROICへつながっているか

まで追っていきたいところです。

戦後の電力不足では巨大水力をつくり、オイルショック後には石炭火力へ進んだJ-POWERにとって、次に求められているのは「安定供給と脱炭素を同時に実現する電源」です。70年以上、時代ごとのエネルギー課題に合わせて役割を変えてきた会社が、今回も自分自身を変えられるのか。ここがJ-POWERの将来性を左右する大きなポイントだと思います。

おじー🦥
おじー🦥

石炭火力は、昔のJ-POWERを支えた大切な資産だったのですね。
でもこれからは、その巨大な設備を水素やアンモニア、CCSなどで次の時代へ変えられるかが重要になりそうです。

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大間原発はJ-POWERの「切り札」か「重荷」か

大間原発はJ-POWERの「切り札」か「重荷」か

J-POWERの将来性を考えるとき、水力、再生可能エネルギー、水素、アンモニア、CCSと並んで、もう一つ避けて通れない巨大プロジェクトがあります。

青森県大間町で建設が続く大間原子力発電所です。J-POWERにとって初めての原子力発電所で、計画出力は138.3万kW。完成すれば、現在のJ-POWERにはない大規模な原子力電源が電源ポートフォリオへ加わることになります。2026年度供給計画でも出力138.3万kWとされていますが、使用開始時期は現在も「未定」です。

大間原発が重要なのは、発電所が一つ増えるからだけではありません。原子力は発電時に大量のCO2を排出せず、天候に左右されず大規模に発電できるため、J-POWERが進める脱炭素と安定供給の両方に関わります。さらに大間原発には、使用済み燃料から回収されたプルトニウムとウランを利用するMOX燃料を全炉心で使用できる「フルMOX」という、日本の他の原子力発電所にはない特徴があります。2026年5月には2025年度の長期脱炭素電源オークションで138.1万kWが落札され、J-POWER自身も大間を長期的に活用する脱炭素電源として位置付けています。

一方、大間原発は2008年の着工から18年以上が経過しても、まだ電気を生み出していません。東日本大震災と福島第一原発事故、新規制基準への対応、追加の安全対策、審査の長期化によって工程は何度も見直されてきました。2026年3月期の有価証券報告書では、従来目標としていた2029年後半の安全強化対策工事終了についても、達成が厳しい状況として工程を精査していることが明記されています。

つまり大間原発は、J-POWERに大規模な脱炭素電源をもたらす可能性がある一方、完成するまで利益を生まない巨大投資でもあります。稼働すればJ-POWERの電源構成を大きく変える「切り札」になり得る。しかし稼働がさらに遅れれば、長期間資本を拘束する「重荷」にもなり得る。 この両面を見ることが、J-POWERの強みや将来性を考えるうえでは欠かせないと思います。

なぜJ-POWERは大間原発をつくろうとしているのか

なぜJ-POWERは大間原発をつくろうとしているのか

J-POWERと原子力の関係は、2008年に突然始まったものではありません。

大間で原子力発電所を開発する構想は1970年代まで遡り、1982年にはJ-POWERを実施主体とする新型転換炉(ATR)実証炉計画が決定されました。その後、ATR計画は中止され、1995年に代替計画としてフルMOXに対応したABWR(改良型沸騰水型軽水炉)を大間へ建設する方針へ転換しています。2008年4月に原子炉設置許可を取得し、同年5月に本格着工しました。

背景にあるのは、安定供給だけではなく、日本の核燃料サイクルです。通常の原子力発電所で使った燃料には、再利用できるウランやプルトニウムが残っています。これを再処理し、回収したプルトニウムとウランからつくるのがMOX燃料です。日本では、このMOX燃料を軽水炉で利用する「プルサーマル」が原子燃料サイクル政策の一つとして位置付けられてきました。大間原発は、そのMOX燃料を大量に利用できる発電所として計画されています。

現在のJ-POWERにとっては、もう一つ意味が加わっています。J-POWERは2030年に国内発電事業のCO2排出量を2013年度比46%削減し、2050年には実質ゼロを目指しています。大間原発が稼働すれば、石炭火力への依存度を下げながら大規模な発電能力を確保できる可能性があります。J-POWER自身もBLUE MISSION 2050のロードマップで、大間原発の建設・運転開始をCO2フリー電源拡大の一つに位置付けています。

つまり大間原発には、「電力を安定してつくる」「CO2を減らす」「使用済み燃料を資源として再利用する」という複数の役割が重なっています。J-POWERが長い時間をかけてもこのプロジェクトを続けている理由は、一基の原発を建てるというより、日本のエネルギー政策とJ-POWER自身の脱炭素戦略の両方に深く関わる電源だからだと考えると分かりやすいと思います。

大間原発最大の特徴|「フルMOX」とは何か

大間原発最大の特徴|「フルMOX」とは何か

大間原発について調べると必ず出てくる言葉が「フルMOX」です。

MOXは「Mixed Oxide」の略で、日本語ではウラン・プルトニウム混合酸化物燃料と呼ばれます。原子力発電所で使い終わった燃料を再処理すると、まだ利用できるウランとプルトニウムを取り出せます。そのプルトニウムとウランを混ぜて再び燃料として利用するものがMOX燃料です。

一般的なプルサーマルでは、炉心の一部にMOX燃料を入れて利用します。それに対して大間原発は、最終的に全炉心でMOX燃料を使用できるよう設計されているのが大きな違いです。J-POWERの採用サイトでも、日本で唯一MOX燃料を全炉心で使用できる発電所と説明しており、J-POWERのInnovation Catalogでは世界初のフルMOX炉として紹介されています。

ただし、運転開始直後からいきなり全炉心をMOX燃料にする計画ではありません。J-POWERは初装荷を炉心の3分の1程度以下とし、安全性などを確認しながら段階的にMOX燃料の割合を増やし、最終的に全炉心まで広げる方針です。2026年2月に公表した計画では、フルMOXになった段階で1年間に利用するプルトニウムの目安を約1.7トンとしています。

大間原発の価値を単に「138.3万kWの原発」として見ると、この特徴を見落としてしまいます。日本が使用済み燃料を再処理して資源として利用する政策を続けるのであれば、大量のMOX燃料を受け入れられる大間原発には独特の役割があります。一方、裏返せば核燃料サイクル政策や再処理事業の進展とも深く結びつくため、J-POWERだけの努力では完結しないプロジェクトでもあります。

大間原発はどこまでできている?建設状況と運転開始時期

大間原発はどこまでできている?建設状況と運転開始時期

大間原発は2008年5月に着工しましたが、2011年3月の東日本大震災を受けて本体建設工事を休止し、2012年10月に再開しました。

その後、福島第一原発事故を踏まえて原子力発電所の新規制基準が導入され、J-POWERは2014年12月に原子炉設置変更許可と工事計画認可を申請。現在も原子力規制委員会による適合性審査が続いています。

ここで注意したい数字があります。J-POWERが2026年9月に公開している建設工事資料には、「総合進捗率37.6%」と書かれています。しかし脚注を見ると、この進捗率は2011年3月20日時点の数字です。現在の工事が37.6%までしか進んでいないという意味ではなく、東日本大震災前の進捗率を基準として掲載している数字なので、現在の建設進捗率としてそのまま使うのは注意が必要です。2026年8月には主建屋、取・放水設備、格納容器モジュール保管庫、地盤改良工事などの状況が公開されています。

さらに重要なのが工程です。J-POWERは以前、安全強化対策工事を2029年後半までに終える目標を示していましたが、2026年3月期の有価証券報告書では、審査状況や追加対応を踏まえると2029年後半という目標の達成は厳しい状況として、工程を精査していることを明らかにしました。2026年度供給計画でも使用開始時期は「未定」のままです。

原子力規制委員会では2026年8月18日にも大間原発の安全施設、外部事象、重大事故対策などについて審査会合が開かれ、8月末までヒアリングや資料提出が続いています。さらに9月10~11日には地震・津波審査に関する現地調査も予定されており、2026年9月5日時点でも審査は現在進行形です。

なぜ大間原発は、これほど長い時間がかかっているのか

なぜ大間原発は、これほど長い時間がかかっているのか

大間原発の着工は2008年です。

そこだけを見ると「なぜ18年以上も完成しないのか」と感じますが、最大の転換点は2011年の東日本大震災と福島第一原発事故でした。震災後に本体工事を休止し、その後工事を再開したものの、日本の原子力発電所には従来より厳しい新規制基準が導入されます。大間原発も完成前の設備だからそのまま建設を続けられるわけではなく、新しい基準に適合するための審査と安全強化対策が必要になりました。

審査は大きく、地震・津波など自然現象に関する部分と、原子炉や安全設備などプラント施設に関する部分があります。大間地点固有の地質・地質構造の確認にも時間がかかり、現在は重大事故対策や安全設備を含むプラント側の審査も進められています。原子力規制委員会の公開資料を見ると、2026年になっても複数回の審査会合や事業者ヒアリングが行われており、「建物をつくれば完成」という段階ではありません。

長期化による影響は、時間だけではありません。2026年3月期には、大間原発で使用予定だった一部の計測制御機器について、品質・信頼性を確保するため廃棄することを決め、約185億円の固定資産除却損を計上しました。長期間にわたる巨大プロジェクトでは、完成前に設備が古くなったり、新しい安全基準へ対応するため追加投資が必要になったりすることを示す具体例です。

ここは長期投資で大間原発を見るときに重要だと思います。時間が延びれば、単に売上が後ろ倒しになるだけではなく、設備更新、追加工事、資金調達などのコストも増える可能性があります。大間原発のリスクは「完成するかどうか」だけではなく、「完成するまでにどれだけ追加の時間と資本が必要になるか」にもあります。

大間原発が動けば、J-POWERに何が起きる?

大間原発が動けば、J-POWERに何が起きる?

大間原発が実際に稼働した場合、一番分かりやすい変化は138.3万kWの大規模な原子力電源が新たに加わることです。

2026年3月31日時点でJ-POWERの国内発電設備は約1,764万kWなので、単純比較では現在の国内設備容量の約8%に相当する規模になります。しかも原子力は風力や太陽光とは異なり、天候によって出力が大きく変わる電源ではありません。

J-POWERにとってさらに重要なのが、電源構成の変化です。現在の国内設備では水力859.0万kWと火力823.5万kWが大部分を占めています。そこへ大間原発が加われば、発電時のCO2排出量が小さい大規模電源を増やしながら、石炭火力への依存度を下げる選択肢が広がります。水力、原子力、再生可能エネルギー、脱炭素化した火力をどう組み合わせるかというBLUE MISSION 2050の実現にも大きく関わります。

そして2026年には、投資回収という面でも動きがありました。大間原発は2025年度の長期脱炭素電源オークションで138.1万kWを落札しています。この制度は、巨額の初期投資が必要な脱炭素電源について長期的な投資回収の予見性を高め、新規投資を促すためにつくられたものです。大間原発にとっては、「完成すれば電気を売れる」というだけでなく、長期投資をどう回収するかという経済面にも政策的な枠組みが加わったことになります。

大間原発が本当にJ-POWERの強みになるためには、138.3万kWという大きさではなく、その電源から安定してキャッシュフローを生み出せることが必要です。原発の価値を発電容量だけで判断せず、稼働率、販売条件、追加投資、運営コストまで含めて見る必要があります。

AI・データセンター時代に原子力の価値は高まるのか

AI・データセンター時代に原子力の価値は高まるのか

AIやデータセンターの拡大によって、新しい電力需要として注目されているのが24時間、大量かつ安定して使われる電気です。

データセンターはサーバーやGPUを止めずに動かし続け、冷却設備などにも電力を使います。風力や太陽光のような再生可能エネルギーを増やすことは重要ですが、天候による変動があるため、蓄電池、送電網、調整電源などと組み合わせる必要があります。

大間原発が稼働すれば、J-POWERは大規模水力に加えて、天候に左右されにくい138.3万kWの原子力電源を持つことになります。これだけで「大間原発の電気をそのままAIデータセンターへ売る」という話になるわけではありませんが、AI・半導体工場・データセンターなどによって日本の電力需要が増えていく場合、安定した脱炭素電源をどれだけ確保できるかという価値は以前より重要になる可能性があります。

ここは、戦後のJ-POWERとの重なりを感じるところでもあります。1952年には工場や暮らしを支えるための「足りない電気」が問題でした。70年以上後の現在は、AIやデータセンターという新しい産業が大量の電力を求め始めています。大間原発が完成する時期と新しい電力需要が本格化する時期が重なれば、J-POWERにとって大間の意味も変わってくるかもしれません。

しかし大間原発は「利益を生まない巨大資産」でもある

しかし大間原発は「利益を生まない巨大資産」でもある

将来のメリットだけを見ると大間原発は魅力的に見えますが、投資家としては稼働するまでの資本効率も考えなければなりません。

2008年に着工してから18年以上が経過していますが、2026年9月時点でも営業運転には至っておらず、当然ながら大間原発そのものから発電による売上はまだ生まれていません。一方で、建設、設備維持、安全対策、審査対応などへの支出は続いています。

2026年3月期の有価証券報告書では、連結貸借対照表に7,749億円の建設仮勘定が計上され、その中に大間原発関連の建設仮勘定が含まれていることが記載されています。ただし、この7,749億円すべてが大間原発の投資額という意味ではありません。重要なのは、大間原発の建設仮勘定について毎年回収可能性が検討され、監査上の主要な検討事項にもなっていることです。現時点では将来キャッシュフローが帳簿価額を上回るとして減損損失は認識されていませんが、将来の販売収益、追加工事費、運営コストなどには不確実性があります。

さらに2026年3月期には、長期化によって一部設備を廃棄し約185億円の固定資産除却損が発生しました。「完成すれば138.3万kWの価値ある電源になる」という未来と、「完成するまで資本を投じ続けなければならない」という現在が、同時に存在しています。

この構造は、J-POWERのROEやROICを考えるときにも重要です。巨大インフラ企業では、利益額だけを見るのではなく、どれだけの資本を使ってその利益を生み出しているかを見る必要があります。大間原発が動き始めれば長年積み上げてきた資産が収益を生む側へ回りますが、工程がさらに延びれば、その転換も先送りになります。

動けば「切り札」、動かなければ「重荷」

動けば「切り札」、動かなければ「重荷」

大間原発を調べる前は、「J-POWERが新しく原発をつくっている」という一つの事業として見ていました。

しかし詳しく追うと、このプロジェクトにはJ-POWERの将来性を左右する要素がかなり集まっています。138.3万kWの大規模電源、脱炭素、フルMOX、日本の核燃料サイクル、長期脱炭素電源オークション、そしてAI時代に増える可能性がある電力需要。一方には、建設長期化、新規制基準への対応、追加投資、資本効率という問題があります。

大間原発の評価を整理すると、かなりシンプルです。

大間原発が稼働すれば稼働がさらに遅れれば
138.3万kWの大規模電源が加わる発電収益の発生がさらに先送り
脱炭素電源を増やせる建設・維持・追加対策費が続く
石炭火力依存を下げる選択肢資本効率を圧迫する可能性
フルMOXで独自の役割核燃料サイクル等の外部要因にも左右される
AI時代の安定電源として価値が高まる可能性技術・制度・工程の不確実性が残る

2026年5月の決算説明会では、J-POWERは大間原発について、原子力規制委員会の審査状況を踏まえながら2026年9月頃までに工事開始時期や運転開始時期を示したいとの考えを説明していました。しかし2026年9月5日時点で、公式の2026年度供給計画に記載された使用開始時期はまだ「未定」です。審査そのものも続いています。

だから私は、大間原発を「原発を持っているからJ-POWERは将来有望」と評価するのも、「長期間完成していないから失敗」と決めつけるのも早いと思います。見るべきなのは、審査を終え、実際に建設を進め、稼働させ、これまで投じてきた資本を利益へ変えられるかです。

戦後の電力不足に大規模水力で応え、オイルショック後には石炭火力へ進んだJ-POWERにとって、大間原発もまた「次の時代に必要とされる電源をつくれるか」という挑戦です。稼働すれば、石炭火力から脱炭素へ進むJ-POWERの大きな切り札になる。動かなければ、長期間資本を拘束する巨大な重荷になる。 大間原発ほど、J-POWERの可能性とリスクが同じ場所に存在する事業は少ないと思います。

おじー🦥
おじー🦥

大間原発は、動けばJ-POWERの電源構成を大きく変える可能性があるのですね。
ただ、長期投資で見るなら「いつ完成するか」だけでなく、これまで投じてきた資本をきちんと利益へ変えられるかまで追いたいですね。

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J-POWERの将来性|AI時代に「電気を売る会社」からどこまで変われるか

J-POWERの将来性|AI時代に「電気を売る会社」からどこまで変われるか

AIやデータセンターの拡大によって電力需要が増えるのであれば、発電所を多く持つJ-POWERには追い風になる。私自身、最初はそのくらいの理解でした。

しかし2026年にJ-POWERが発表した取り組みを追うと、もう少し大きな変化が始まっています。J-POWERはデータセンターへ電気を供給するだけではなく、自らAIデータセンターを建設・運営し、GPUを使った「計算力」そのものを販売する事業へ踏み出しました。2026年8月には北海道上ノ国町でJ-POWER初のデータセンター事業を実施すると発表し、2027年夏のサービス開始を予定しています。

さらにJ-POWERは、全国に分散したAIデータセンターを光ネットワークでつなぎ、電力が余っている地域や時間帯へ計算処理そのものを移動させる「ワークロードシフト」の実証にも参加しています。2026年8月には総務省の「ワット・ビット連携関連実証」に採択されました。これは「発電所で電気をつくり、送電線で需要地まで運ぶ」という従来の電力会社の発想から、電力と通信を組み合わせ、電気ではなく計算を動かして需給を調整するという新しい発想です。

1952年のJ-POWERに求められたのは、工場や暮らしを支えるために「足りない電気を増やすこと」でした。70年以上後の現在は、AI、GPU、データセンター、半導体工場によって大量の電力と計算資源が必要になろうとしています。AIによってGPUやHBM、先端半導体の需要がなぜ増えているのか、そして半導体産業のどこに設備投資が広がるのかは、「半導体関連銘柄」の記事でも詳しく整理しています。こうした新しい電力需要を前に、J-POWERが目指しているのは単に発電量を増やすことではなく、発電・送電・再生可能エネルギー・通信・データセンターを組み合わせ、新しい社会インフラそのものをつくることなのかもしれません。

AI・データセンターは、なぜJ-POWERに追い風になるのか

AI・データセンターは、なぜJ-POWERに追い風になるのか

生成AIの普及によって注目されているのが、データセンターの電力消費です。

AIモデルの学習や推論では大量のGPUを動かし続ける必要があり、サーバーそのものだけでなく、冷却設備、通信設備、電源設備にも電気を使います。経済産業省と総務省も、AI利用や通信トラフィックの増加によってデータセンター需要が急速に拡大すると見ており、大量の電力を必要とするデータセンターの整備には、電力・通信インフラを一体で考える必要があるとしています。

ここでJ-POWERの既存資産が生きてきます。全国各地に大規模な水力、風力、火力などの発電設備を持ち、地域を越えて電気を動かす送変電設備を持ち、さらに北海道から沖縄まで広いエリアをカバーする独自の情報通信ネットワークも保有しています。その通信網は主にマイクロ波無線と光ファイバーで構成され、もともとは発電所や送変電設備を安定して運用するためにつくられたものです。

つまりAI時代のJ-POWERには、

J-POWERが持っているものAI・データセンターでの意味
全国の発電所大量の電力を供給できる
水力・風力など非化石電源グリーンDCへ活用できる
地域間送電設備発電地と需要地をつなげる
全国の事業拠点地方分散DCの候補になり得る
光ファイバー通信網分散した計算資源をつなぐ可能性
電力運用ノウハウ電力需給と計算負荷を組み合わせられる

という、これまで別々に見えていた資産が一つの事業へつながる可能性があります。

AI時代にデータセンターへどれだけ電力が必要になるのか、電線・変圧器・発電所などどこへ利益が流れるのかは、「データセンター関連銘柄」の記事でも詳しく整理しています。J-POWERを電力産業全体の地図に置くと、AI需要の増加によって「発電量が増える会社」というだけでなく、電力とデジタルインフラの接点そのものへ事業を広げられる会社として見えてきます。

電力会社がGPUを持つ?「計算力を売る」という新しい発想

電力会社がGPUを持つ?「計算力を売る」という新しい発想

J-POWERのAI戦略で最も面白いと思ったのが、電気を売るだけではなく「計算力」を売ろうとしていることです。

これまでのJ-POWERは、発電所でつくった電気を電力会社、市場、法人などへ販売する会社でした。ところがAIデータセンターでは、自らGPUサーバーを保有し、生成AIの開発やシミュレーションなどに必要な計算処理能力を顧客へ提供します。

イメージすると、

これまで

発電所
↓
電気
↓
顧客

だったものが、

AIデータセンターでは

発電・電力調達
↓
GPUを動かす
↓
計算処理
↓
「計算力」として顧客へ販売

へ変わります。

これはビジネスとして大きな違いがあります。電気は基本的にkWhという商品として販売されますが、計算力まで提供できれば、GPU、ソフトウェア、データセンター運営、ジョブ管理などを組み合わせて電気より一段下流の付加価値を取り込める可能性があります。

ただし、電力会社がGPUを置けば簡単に儲かるという話でもありません。最新GPUの調達費は大きく、世代交代も速く、サーバー稼働率が低ければ投資回収は進みません。電力会社として培った巨大設備の運営力が、更新サイクルの速いデジタル事業でも通用するのか。ここはJ-POWERの将来性を見るうえでかなり面白い実験だと思います。

上ノ国データセンター|J-POWER初の「計算力販売事業」

上ノ国データセンター|J-POWER初の「計算力販売事業」

その構想が実際の事業になったのが、2026年8月17日に発表された北海道上ノ国データセンター(仮称)です。

J-POWERにとって初めてのデータセンター事業で、自社でDCを建設・運営し、最新鋭GPUを搭載して計算力を販売します。サービス開始は2027年夏予定。主なGPUとして「NVIDIA HGX B300」と「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition」を導入する計画です。

J-POWER自身が「DCの建設から計算力販売まで一気通貫で担う」と説明している点にも注目したいです。データセンター用地を提供したり、電力だけを販売したりするのではありません。建設 → 運用 → GPU管理 → 計算力販売まで事業領域を広げ、自社にデータセンター運営のノウハウを蓄積しようとしています。

上ノ国データセンター(仮称)内容
所在地北海道上ノ国町
事業J-POWER初の計算力販売
主設備40ftコンテナ、GPUサーバー、冷却設備
GPUNVIDIA HGX B300など
EPCミライト・ワン
サービス開始2027年夏予定
今後全国で段階的な拡大を検討

場所が北海道上ノ国町なのも偶然ではありません。上ノ国町は風力発電を中心に再生可能エネルギー導入へ取り組む地域で、J-POWER自身も長年風力事業を行ってきました。J-POWERは上ノ国で得た知見をもとに、全国の事業拠点や各地域の再エネポテンシャルを考慮しながら、データセンター事業を段階的に拡大していく方針を示しています。

なぜ北海道上ノ国町なのか|再エネとデータセンターを近づける

なぜ北海道上ノ国町なのか|再エネとデータセンターを近づける

データセンターは電気を大量に使うため、「どこに建てるか」が非常に重要です。

これまでは利用者や通信設備に近い東京・大阪などへ集まりやすい傾向がありましたが、そこへ巨大な電力需要が集中すれば、送電網の増強や新しい電源開発が必要になります。国のワット・ビット連携でも、データセンターを脱炭素電源や電力インフラの条件が良い地域へ誘導することが重要なテーマになっています。

上ノ国町には風力を中心とした再エネのポテンシャルがあり、J-POWER自身も地域との事業基盤を持っています。つまり、

電力を大量に使う施設を、都市の近くにつくって電気を遠くから運ぶ

だけではなく、

電気をつくりやすい場所の近くに計算設備を置く

という発想です。

もちろん、実際の電力供給は電力系統や契約を介して行われるため、「隣の風車からそのままGPUへ電気が流れる」という単純な構造ではありません。J-POWERは水力・風力・地熱・太陽光など全国の非化石電源と、発電・消費を1時間単位で照合するHourly Matchingなどを活用し、より透明性の高い「グリーンDC」の実現を目指しています。

ワット・ビット連携|「電気を動かす」から「計算を動かす」へ

ワット・ビット連携|「電気を動かす」から「計算を動かす」へ

J-POWERのAI戦略でさらに面白いのが、国が進める「ワット・ビット連携」との関係です。

ワットは電力、ビットは情報通信を表します。経済産業省と総務省は、AI時代のデータセンター整備について、発電所・送電網・データセンター・通信網をそれぞれ別々につくるのではなく、最初から一体で配置・整備する必要があるとしています。

J-POWERは2026年4月、日立製作所、シスコシステムズ、ビットメディア、JR東日本、JR西日本光ネットワーク、名古屋鉄道と共同で、分散型AIデータセンターを一体運用する技術検討を始めました。J-POWERグループや鉄道会社が持つ未使用光ファイバー「ダークファイバー」を使って全国を縦断する高速な光ネットワークを構築し、各地域に分散するAIデータセンターを、あたかも一つの巨大データセンターのように動かす構想です。

さらに2026年8月には、この取り組みが総務省のワット・ビット連携関連実証に採択されました。実証では、再エネ発電量予測、電力取引価格、電力需給、計算資源の利用状況、災害情報などを組み合わせ、どの場所・どの時間に計算させるのが最も効率的かを検証します。

発電会社がデータセンターへ進むだけなら、「電力需要が増えるから顧客の近くへ行く」という話です。しかしワット・ビット連携では、J-POWERが持つ発電・電力運用の知識と、通信・計算資源を組み合わせることになります。これはJ-POWERの役割そのものが変わる可能性を持った取り組みです。

AI時代には、電力だけでなく大容量・低遅延の通信ネットワークも社会基盤になります。光通信やデータセンター、AIを組み合わせて次世代通信基盤をつくろうとしている「NTTの強み」と比べると、J-POWERが電力側から同じ社会課題へ近づいていることが見えてきます。

ワークロードシフトとは?|電気ではなく「計算」を移動させる

ワークロードシフトとは?|電気ではなく「計算」を移動させる

ワット・ビット連携の核心にあるのが、ワークロードシフト(WLS)です。

名前は難しいですが、考え方はシンプルです。AIの計算処理を、電力の状況に合わせて別の場所や時間へ移動させます。

たとえば北海道で風が強く、風力発電量が多い一方、東京では電力需給が厳しいとします。従来の電力システムでは、北海道でつくられた電気を送電網で東京方面へ運ぶことを考えます。しかし送電線には容量の限界があります。

そこで、

北海道で電気が余っている
↓
東京のAI計算の一部を北海道のDCへ送る
↓
北海道側のGPUで計算する
↓
計算結果だけ通信ネットワークで戻す

という方法が使えれば、必ずしも大量の電気そのものを遠距離へ運ぶ必要はありません。

ここはJ-POWERの歴史と重ねるとかなり面白いです。1965年には佐久間周波数変換所で50Hzと60Hzをつなぎ、1979年には北本連系設備で北海道と本州をつなぎました。長い間J-POWERは、「必要なところへ電気を動かす会社」でした。

AI時代にはそこへ、

「電気があるところへ計算を動かす」

という新しい選択肢が加わろうとしています。

戦後につくった電力インフラは、AI時代のデジタルインフラになれるのか

戦後につくった電力インフラは、AI時代のデジタルインフラになれるのか

J-POWERがAI・データセンターへ進む意味を考えると、「流行しているAI事業へ電力会社も参入した」というだけでは少しもったいないと思います。

J-POWERには全国の発電設備、地域間をつなぐ送変電設備、北海道から沖縄まで広い地域をカバーする情報通信ネットワーク、全国各地の事業拠点があります。これらの多くは、AIデータセンターを想定してつくられた資産ではありません。日本へ電気を安定して届けるため、70年以上かけて築いてきた資産です。

しかしAI時代になると、それらの資産を組み合わせることで、

発電する
↓
電気を運ぶ
↓
再エネの環境価値を提供する
↓
GPUを動かす
↓
計算力を販売する
↓
全国のデータセンターを光でつなぐ

ところまで事業が広がる可能性があります。

これは、J-POWERの記事冒頭で見た企業理念とも重なって見えます。1952年に人々が求めていたエネルギーは「足りない電気」でした。現在は電気そのものに加えて、生成AIを動かす計算力、脱炭素電源、通信ネットワークといった新しい社会基盤が求められています。「人々の求めるエネルギーを不断に提供する」という使命を、AI時代にどう事業へ落とし込むのか。 上ノ国データセンターやワット・ビット連携は、その答えを探している取り組みに見えます。

一方で、投資家としては期待だけで評価できません。上ノ国データセンターはまだサービス開始前であり、ワークロードシフトも実証段階です。今後見るべきなのは、

  • 2027年夏に上ノ国DCが予定どおりサービス開始するか
  • GPUの稼働率を高く維持できるか
  • 計算力販売から十分な利益を得られるか
  • 全国の事業拠点へDC事業を広げられるか
  • ワークロードシフトが実証から商用化へ進むか
  • 電力とデジタルを組み合わせることでROICを高められるか

という点です。

もしこれらが事業として成立すれば、J-POWERの評価は「巨大な発電資産を持つ会社」から変わるかもしれません。戦後につくった電力インフラを、AI時代のデジタルインフラへつなげられるか。 ここに、J-POWERの将来性を見るうえでかなり大きな可能性があると思います。

おじー🦥
おじー🦥

J-POWERがAI時代に目指しているのは、電気をたくさん売ることだけではないのですね。発電・送電・通信という長年の強みを使って、計算力まで届けられる会社になれるのか。ここはこれからの成長を追ううえで楽しみなポイントですね。

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J-POWERの業績・株主還元|巨大な発電資産を利益へ変えられているか

J-POWERの業績・株主還元|巨大な発電資産を利益へ変えられているか

J-POWERの事業をここまで調べると、大規模水力、火力、送変電設備、海外発電、大間原発、再生可能エネルギー、そしてAIデータセンターまで、とにかく保有・開発する資産の大きさが目につきます。

ただ、投資先として考えるなら「日本に必要なインフラをたくさん持っている」で終わるわけにはいきません。それだけの資本を使って、どれだけ利益を生み出せているのか。 J-POWERの強みが本当に企業価値へつながっているのかを考えるには、発電設備の規模だけではなく、業績、ROE・ROIC、配当、株主還元まで見る必要があります。

2025年度(2026年3月期)の連結業績は、売上高1兆1,822億円、営業利益1,009億円、経常利益1,585億円、親会社株主に帰属する当期純利益585億円でした。前年と比べると売上高と営業利益は減少した一方、経常利益は13.2%増えています。ただし、この経常増益には北米ガス火力権益の売却による海外事業の利益が大きく寄与しています。その一方、大間原発で使用予定だった一部設備の廃棄による約185億円の固定資産除却損などを含む、合計518億円の特別損失を計上したことで、最終利益は36.7%減少しました。「経常利益は増えたのに純利益は大きく減った」という、一見すると分かりにくい決算です。

さらに2026年度(2027年3月期)は、売上高1兆3,800億円、営業利益1,250億円、経常利益1,250億円、純利益810億円を予想しています。2026年4〜6月の第1四半期も売上高2,802億円、営業利益362億円と前年同期を上回りましたが、経常利益は395億円と45.9%減少しています。前年同期には米国火力発電事業の持分譲渡による大きな利益が含まれていたためで、J-POWERの業績を見るときは「利益が増えた・減った」だけではなく、何によって動いたのかを見る必要があります。

私がJ-POWERの財務を見ていて特に重要だと感じるのは、会社自身もすでに「利益額だけでは足りない」と考えていることです。J-POWERはROEだけでなくROICも経営指標として使い、巨大な資産へ投じた資本をどれだけ効率よく利益へ変えられているかを意識しています。大間原発、再エネ、水力更新、海外発電、AIデータセンターなどへ投資が続くこれからは、巨大な設備をつくる力から、その設備を利益へ変える力へ評価軸が移っていくと考えています。

J-POWERの業績推移|売上高より「利益の中身」を見たい

J-POWERの業績推移|売上高より「利益の中身」を見たい

J-POWERの直近5年間を並べると、売上高も利益もかなり大きく動いています。

2022年度には燃料価格や電力販売価格の上昇などによって売上高が1兆8,419億円まで膨らみましたが、その後は1兆2,000億円前後まで低下しています。一方、経常利益は2021年度の728億円から、2025年度には1,585億円まで増えています。数字の振れ幅が大きいからこそ、「売上高が増えたから好調」と単純に判断しにくい会社です。

年度売上高営業利益経常利益当期純利益
2021年度1兆846億円869億円728億円696億円
2022年度1兆8,419億円1,838億円1,707億円1,136億円
2023年度1兆2,579億円1,057億円1,185億円777億円
2024年度1兆3,166億円1,383億円1,400億円924億円
2025年度1兆1,822億円1,009億円1,585億円585億円

※J-POWER連結。億円未満切り捨て。2025年度=2026年3月期。

この表を見ると、売上高が大きい年ほど企業価値が高まるわけではないことが分かります。電力事業では燃料価格が上がれば販売価格も動き、実際の収益力以上に売上高だけが膨らむことがあります。J-POWERの場合は、それに水力の出水率、火力発電所の利用率、卸電力市場価格、石炭価格、為替、海外発電なども加わります。

だから私はJ-POWERの業績を見るなら、「売上高が何%伸びたか」よりも、発電事業や海外事業からどのように利益が生まれているのかを重視したいです。特にこれから大間原発や再エネ、AIデータセンターへ資本を投じていく以上、資産売却などの一時的な利益ではなく、長期間続く収益基盤をどれだけ増やせるかが重要になります。

J-POWERの利益は何で動く?電力価格・燃料・水・海外まで見る

J-POWERの利益は何で動く?電力価格・燃料・水・海外まで見る

J-POWERの業績が毎年同じように推移しない理由は、利益を動かす要因が多いからです。

水力なら雨や雪によって出水率が変わり、火力なら発電所の利用率、燃料価格、電力市場価格によって採算が変わります。さらに海外発電や豪州炭鉱権益も持っているため、為替や海外の電力市場、資源価格まで連結利益へ影響します。

2025年度を例にすると、発電事業の経常利益は前年の685億円から453億円へ減少しました。一方、海外事業は北米ガス火力権益の売却などによって345億円から948億円へ大きく増えています。その結果、連結経常利益は1,400億円から1,585億円へ増えましたが、これは「国内の発電所が前年より大きく稼いだから」という決算ではありません。

この違いはかなり重要です。「電力関連銘柄」の記事でも、電力会社へ投資するときには発電量、燃料価格、市場価格、設備利用率などを確認する必要があると整理しましたが、J-POWERではさらに海外事業、為替、資源価格まで加わります。決算を見るときは経常利益の数字だけではなく、「水力」「火力」「海外」「一時的な資産売却益」のどこから利益が生まれたのかまで分解して見たいところです。

2026年度の業績はどうなる?第1四半期は「増収・経常減益」

2026年度の業績はどうなる?第1四半期は「増収・経常減益」

2026年度(2027年3月期)の会社予想は、売上高1兆3,800億円、営業利益1,250億円、経常利益1,250億円、親会社株主に帰属する当期純利益810億円です。

前年と比べると売上高は16.7%増、営業利益は23.8%増を見込む一方、経常利益は21.2%減る予想になっています。前年に利益を大きく押し上げた米国火力発電事業の持分譲渡による利益がなくなるため、前年との単純比較では減益に見えやすくなります。

そして2026年7月31日に公表された第1四半期を見ると、売上高は前年同期比12.0%増の2,802億円、営業利益は11.7%増の362億円でした。一方、経常利益は395億円と45.9%減、純利益も274億円と47.3%減っています。この数字だけを見ると急激に業績が悪化したように見えますが、前年同期には米国火力発電事業の持分譲渡による持分法投資利益が含まれており、その反動減が大きく影響しています。

むしろ本業を見るうえで注目したいのは、火力発電所の利用率が前年同期の43%から49%へ上昇し、タイでも販売電力量が増えていることです。一方、水力出水率は105%から94%へ低下しました。J-POWERの業績を継続的に見るなら、こうした発電・販売の実態と、一時的な売却益などを分けて確認する必要があります。

ROE・ROICで見るJ-POWER|巨大資産を効率よく使えているか

ROE・ROICで見るJ-POWER|巨大資産を効率よく使えているか

ここまで利益額を見てきましたが、J-POWERのような巨大インフラ企業では、もう一つ見たい数字があります。

それがROEとROICです。ROEは株主資本を使ってどれだけ利益を生み出したかを見る指標で、ROICは事業へ投じた資本に対してどれだけ利益を生み出せているかを見る指標です。J-POWERでは独自に「稼働資産ROIC」も使い、まだ稼働していない建設中資産などを除いた資本効率を確認しています。

2025年度のJ-POWERはROEが4.3%、稼働資産ROICが4.5%でした。稼働資産ROICは中期経営計画で設定した3.5%を上回っていますが、会社自身は2025年度のROEについて株主資本コストを下回っていると分析しています。一方、中期経営計画では2030年代にROE8%以上を目標とし、非稼働資産比率を10%程度まで下げた場合、その実現に必要な稼働資産ROICを3.5%程度と想定しています。

ここがJ-POWERを調べていて非常に面白いところです。すでに稼働している資産からは一定のROICを確保できています。それなのにROEが低い背景には、大間原発をはじめ、多額の資本を投じながら、まだ稼働資産になっていない設備が大きいという構造があります。

つまりJ-POWERの企業価値を高める方法は、既存発電所の利益率を少し改善することだけではありません。

建設中の資産
↓
運転開始
↓
稼働資産へ
↓
利益・キャッシュフローを生む
↓
ROE・ROICの改善へ

という転換自体が重要になります。

8,120億円の固定資産仮勘定|「建設中の資産」が資本効率を左右する

8,120億円の固定資産仮勘定|「建設中の資産」が資本効率を左右する

ROEとROICを考えるうえで見落としたくないのが、貸借対照表にある固定資産仮勘定です。

簡単に言えば、発電所などを建設している途中で、まだ完成した固定資産へ振り替えられていない投資額です。2025年度末には7,749億円でしたが、2026年6月末には8,120億円まで増えています。同時点の総資産は3兆8,376億円なので、J-POWERにとって決して小さな金額ではありません。

もちろん、この8,120億円すべてが大間原発への投資という意味ではありません。海外発電や再生可能エネルギーなど、グループで進めるさまざまな建設中資産が含まれています。実際、2026年6月末には米国チャージャー太陽光発電所の建設やラオス水力発電事業への出資などによって総資産も増加しています。

重要なのは、この巨額の建設中資産をいつ稼働させ、どれだけの利益を生み出せるかです。水力更新、再エネ、海外発電、大間原発などが完成すれば、「資本を使う段階」から「資本が収益を生む段階」へ移ります。しかし完成が遅れたり、稼働後の利益が想定を下回ったりすれば、投資額が大きくても資本効率は改善しません。

設備投資額が増えていることを、そのまま「成長している」と評価するのではなく、その投資がいつ完成し、いくらの利益やキャッシュフローを生むのか。 J-POWERの将来性を見るうえでは、ここまで追う必要があると思います。

J-POWERの配当・株主還元|安定配当に自社株買いも加わった

J-POWERの配当・株主還元|安定配当に自社株買いも加わった

J-POWERの配当や株主還元を調べると、巨大な成長投資を続けながら、株主へどのように利益を返すかという考え方も変化しています。

現在は総還元性向30%を目安とし、安定配当を基本にしながら、自社株買いなど機動的な株主還元も組み合わせる方針です。中期経営計画2024-2026の期間中は、1株100円を下限とする考え方も示してきました。

配当は2022年度90円、2023年度100円、2024年度100円、2025年度100円と推移し、2026年度は年間105円を予想しています。内訳は中間50円、期末55円です。J-POWERは発電所の利用率、水力の出水率、燃料価格、海外事業などによって利益が動きやすい会社なので、その年の利益だけに連動して配当を大きく上下させるのではなく、安定的な配当を土台に置いている点は長期投資では見やすい部分です。

さらに2025年5月には、資本効率の向上と株主還元の拡充を目的として取得総額上限200億円の自己株式取得を決定しました。その後、2026年5月には6,713,200株を消却しています。これは消却前の発行済株式総数の3.7%に当たり、配当だけではなく、自社株買いと消却によって1株当たりの価値を意識する姿勢も見えてきました。

ただし、株主還元を増やせばそれだけで良い会社になるわけではありません。J-POWERには大間原発、火力の脱炭素、水力更新、再エネ、海外発電、AIデータセンターなど、多額の投資を必要とするテーマが並んでいます。成長投資、財務健全性、株主還元へ資本をどう振り分けるのか。 配当利回りだけではなく、この資本配分まで見ることがJ-POWERへの長期投資では重要だと思います。

巨大資産を「稼ぐ資産」へ変えられるかが、これからのJ-POWERを見るポイント

巨大資産を「稼ぐ資産」へ変えられるかが、これからのJ-POWERを見るポイント

J-POWERの業績を調べてみると、単純な高収益企業とも、毎年ほぼ同じ利益を生む安定企業とも少し違う姿が見えてきました。

2025年度の経常利益は1,585億円まで増えましたが、北米ガス火力権益売却という一時的な要因が大きく、大間原発関連の約185億円を含む特別損失518億円によって純利益は585億円まで減っています。一方、2026年度第1四半期では前年の売却益がなくなったことで経常利益は大幅減益となったものの、売上高と営業利益は増えました。利益の数字だけを追うと、会社の実力を読み違えやすい会社だと思います。

そして長期的には、もっと大きな問いがあります。すでに動いている巨大資産から、もっと利益を生み出せるのか。そして建設中の巨大資産を、実際に稼ぐ資産へ変えられるのか。 水力ではNEXUS佐久間によって昔につくった資産の発電能力を高めようとしています。石炭火力では水素・アンモニア・CCSなどによる転換を目指し、大間原発は巨大な脱炭素電源として収益化を目指しています。AIデータセンターでは、発電した電気を売るだけではなく「計算力」という下流の付加価値まで取り込もうとしています。

ここまで記事で見てきたJ-POWERの戦略は、別々のようで実はすべて「持っている資産や新たに投じた資本から、より大きな価値を生み出す」という資本効率の話につながっています。

J-POWERは2030年代にROE8%以上を目標としています。しかし、目標を掲げるだけなら企業価値は変わりません。本当に確認したいのは、大間原発が稼働するのか、水力更新が発電量と利益を増やすのか、火力の脱炭素投資が経済的に成立するのか、AIデータセンターが新しい利益源へ育つのか。そして、その結果としてROEやROICが実際に上がっていくのかです。

安定したJ-POWERの配当を受け取りながら成長投資の成果を待てることは魅力の一つです。ただ、この会社の評価が本当に大きく変わるのは、巨大な発電設備を「持っていること」が評価されたときではなく、これまで積み上げてきた巨大資産が、次々と利益を生む資産へ変わったときなのだと思います。

おじー🦥
おじー🦥

J-POWERは、利益額だけを見ると分かりにくい会社ですね。大間原発や再エネ、AIデータセンターなどへ投じた資本が実際に動き始め、ROEやROICの改善につながるのか。「大きな資産を持っている会社」から「大きな資産で稼げる会社」へ変われるかを追っていきたいですね。

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J-POWERのリスク|「日本に必要な会社だから安心」ではない

J-POWERのリスク|「日本に必要な会社だから安心」ではない

J-POWERには、大規模水力、石炭火力、地域間送電、大間原発、海外発電など、簡単には再現できない電力インフラがあります。

AI・データセンターによって電力需要が増える可能性まで考えると、「日本に必要な会社なのだから長期投資でも安心なのでは」と感じたくなります。しかし、社会に必要な会社であることと、投資家に安定して利益をもたらすことは別の話です。実際、J-POWER自身も気候変動、電力制度、大間原発、新規事業、海外事業、資金調達、石炭燃料、自然災害などを事業上のリスクとして開示しています。

むしろJ-POWERは、巨大な資産を長期間保有する会社だからこそ、社会や政策、技術が変わったときの影響も大きくなります。石炭火力が必要とされた時代には安定供給を支える強みでしたが、脱炭素時代には巨額の転換投資が必要になります。大間原発は稼働すれば138.3万kWの大規模な脱炭素電源になりますが、2026年度供給計画でも使用開始時期は「未定」です。海外発電は成長機会になる一方、為替、政治、制度、共同事業者など自社だけでは管理できない要因も増えます。

J-POWERで特に見ておきたいリスク

  • 石炭火力を低・脱炭素電源へ転換できるか
  • 大間原発の審査・建設がさらに長期化しないか
  • 巨額設備投資を利益へ変え、資本効率を高められるか
  • 燃料価格・為替・金利・海外事業の変動
  • 発電所や送変電設備の事故・自然災害
  • AIデータセンターなど新規事業が本当に収益化するか

私がJ-POWERのリスクを考えるうえで最も重要だと思うのは、個別の設備トラブルよりも、「70年以上かけて築いた巨大資産を、社会が変化するたびに価値ある形へ変え続けられるか」ということです。昔につくった水力が現在でも強みになっている一方、石炭火力のように社会環境の変化によって大きな課題へ変わった資産もあります。J-POWERの強みとリスクは、実はかなり近い場所にあります。

石炭火力|過去の強みを、脱炭素時代にも価値ある資産へ変えられるか

石炭火力|過去の強みを、脱炭素時代にも価値ある資産へ変えられるか

J-POWER最大のリスクとして最初に確認したいのは、やはり石炭火力です。

J-POWER自身も、石炭火力はLNGなど他の化石燃料を使う発電方式と比較して発電量当たりのCO2排出量が多いことを事業リスクとして明記しています。政府の気候変動政策や新しい規制によって事業計画や発電所の運営へ大きな変更・制約が生じれば、財務や業績へ悪影響を及ぼす可能性があるとしています。

だからJ-POWERは、すべての石炭火力を残す方針ではありません。非効率石炭火力はフェードアウトし、高効率設備については水素、アンモニア、CCSなどを地点ごとに選択しながら低・脱炭素化する戦略です。実際、高砂火力発電所は1・2号機合わせて50万kWを2028年度末までに停止・廃止することが決まっています。

一方、石炭火力を減らせば自動的に問題が解決するわけでもありません。AI・データセンター、半導体工場、産業の電化などによって大量かつ安定した電力が必要になる可能性があるなか、J-POWERにはCO2を減らしながら供給力も維持する必要があります。つまりリスクは「石炭火力をたくさん持っていること」だけではなく、石炭火力の代わりになる安定した収益源を、十分な速度で育てられるかにもあります。

水素・アンモニア・CCSは、「できるか」より「採算が合うか」

水素・アンモニア・CCSは、「できるか」より「採算が合うか」

火力の脱炭素で特に注意したいのは、技術的に実現できることと、事業として利益を生めることは違う点です。

水素・アンモニア・CCSはいずれもJ-POWERが検討・実証を進めている重要技術ですが、燃料製造、輸送、貯蔵、設備改造、CO2の回収・輸送・地下貯留まで含めれば、発電所の中だけでは完結しません。

J-POWER自身も中期経営計画について、政府のGX政策、電力需給、電力制度設計、産業の進展などの前提条件に合わせて随時更新・見直し・詳細化する方針を示しています。これは柔軟な戦略とも言えますが、裏返せば、脱炭素技術の経済性や制度がまだ完全には固まっていないことも意味します。

投資家としては、

技術実証に成功したか

だけでなく、

商用設備へ導入できたか
↓
十分な稼働率を確保できたか
↓
追加投資を回収できる利益が出たか

まで確認する必要があります。

GENESIS松島や松浦CCSのようなプロジェクトが注目されるのは、技術そのものが珍しいからだけではありません。石炭火力という巨大資産を、本当に次の時代でも稼げる資産へ変えられるのかを試す場だからです。

大間原発|138.3万kWの「将来電源」が、いつ利益を生み始めるのか

大間原発|138.3万kWの「将来電源」が、いつ利益を生み始めるのか

大間原発はJ-POWERの将来性を大きく変える可能性がある一方、同じだけ大きなリスクも抱えています。

2026年度供給計画では計画出力138.3万kW、2008年5月着工、そして使用開始は現在も「未定」です。2008年の着工から長い年月が経っているにもかかわらず、まだ営業運転による売上を生んでいません。

J-POWERが開示する事業リスクでも、大間原発については原子力規制委員会の審査状況、新しい安全対策への追加対応、原子力を取り巻く政策や市場環境などによって工事期間が延びれば、建設費の増加や関連費用が発生する可能性が明記されています。原子力事業には、放射性物質の管理、自然災害、予期しない事故など、運転開始後にも独特のリスクがあります。

それでも大間原発が稼働すれば、J-POWERには大規模な脱炭素電源が加わります。だからこそ重要なのは「原発だから危険」「原発だから将来性がある」という二択ではありません。いつ稼働し、追加投資をどこまで抑え、長期間安定して収益を生み出せるか。 大間原発の価値は最終的にそこによって決まると思います。

大間原発は、J-POWERだけではスケジュールを決められない

大間原発は、J-POWERだけではスケジュールを決められない

大間原発の難しさは、J-POWERが「早く完成させたい」と考えれば自社だけで進められる事業ではないことです。

新規制基準への適合性については原子力規制委員会の審査を受ける必要があり、地震・津波、重大事故対策、安全設備など幅広い項目を確認しなければなりません。J-POWER自身も、審査の進捗を事業者側から予測することは難しく、審査状況や追加対応によって工程や建設費が変わる可能性をリスクとして説明しています。

さらに大間原発は、フルMOXという特徴から日本の核燃料サイクル政策とも深く結びついています。つまりJ-POWERの経営努力だけではなく、規制、原子力政策、核燃料サイクル、地域との関係など複数の外部条件によってプロジェクトの価値が左右されます。

ここは長期投資ではかなり重要です。大間原発が完成すればJ-POWERの脱炭素と安定供給を支える資産になる可能性がありますが、スケジュールがさらに後ろへずれれば、資金が利益を生まない期間も延びます。「完成するか」ではなく、「いつ完成し、そのときまでにいくら資本を使うのか」を追い続けたいところです。

燃料・為替・海外事業|J-POWERは日本国内だけを見ても分からない

燃料・為替・海外事業|J-POWERは日本国内だけを見ても分からない

J-POWERの業績リスクは国内の発電所だけではありません。

石炭火力では主に海外から石炭を調達しており、調達価格だけでなく、輸送船市場の需給や供給元の設備トラブルなどによって燃料費が変動します。主要な石炭火力では燃料価格を電力販売価格へ反映する仕組みがあるため影響は一定程度抑えられますが、石炭価格が急騰した場合には販売価格へ反映されるまでの時間差によって一時的に業績が悪化する可能性があります。

さらにJ-POWERは海外で発電事業を展開し、海外プロジェクトの中には第三者との共同事業もあります。J-POWER自身も、海外事業には為替リスク、政治情勢などのカントリーリスクがあり、共同事業では自社が経営を十分にコントロールできない場合もあると説明しています。事業環境や需要、規制が変化すれば、想定した利益を得られなかったり、計画変更・中止によって追加費用が発生したりする可能性もあります。

実際、2026年3月期には事業環境の変化を理由に陸上風力発電の開発案件1件を取りやめ、約40億円の減損損失を計上しています。巨大インフラへの投資は、計画を発表した時点では成長投資でも、環境が変われば途中で撤退する判断も必要になります。

リスクJ-POWERへの主な影響長期投資で見る点
石炭・燃料価格火力の燃料費販売価格へ転嫁できているか
為替海外利益・燃料調達円高・円安による影響
海外電力市場発電収益国・地域ごとの採算
政治・規制計画変更・事業停止カントリーリスク
共同事業経営統制の制限持分・契約条件
開発案件減損・撤退損失投資判断の規律

国内だけを見ればJ-POWERは日本の電力インフラ企業ですが、利益の中身まで見れば世界の資源・為替・政治・電力市場にも影響される会社です。海外事業を成長性として評価するなら、その裏側にあるリスクまでセットで考える必要があります。

金利上昇・資金調達|巨大投資を続ける会社だからこそ無視できない

金利上昇・資金調達|巨大投資を続ける会社だからこそ無視できない

J-POWERは発電所や送変電設備などへ非常に大きな資金を投じる会社で、これまで設備投資資金を主に借入金や社債によって調達してきました。

今後も再生可能エネルギー、大間原発、国内外の新規事業への投資や既存債務の返済に資金が必要になるため、J-POWER自身も、金融市場や信用状態によって必要資金を適切な条件で調達できなければ事業や財務へ影響する可能性をリスクとして挙げています。

これは金利上昇局面では特に確認したいポイントです。金利が上がれば、新たな借入や社債の調達コストが高くなり、完成まで長いプロジェクトほど資金コストの影響を受けやすくなります。一方、巨大インフラ投資を止めれば将来の成長源もつくれません。

つまり、

投資を続ける
↓
将来の利益をつくる

一方で、

借入・社債が増える
↓
資金コストも増える可能性

というバランスがあります。

設備投資の大きさだけではなく、営業キャッシュフローでどこまで投資を賄えているのか、有利子負債や利払い負担がどう変化しているのかも、今後の決算で追っていきたい数字です。

AIデータセンター|期待は大きいが、まだ「稼げる事業」と証明されたわけではない

AIデータセンター|期待は大きいが、まだ「稼げる事業」と証明されたわけではない

AI・データセンターはJ-POWERの記事の中でも特に面白い将来テーマですが、投資家としては期待と実績を分けて見る必要があります。

北海道上ノ国町で計画するJ-POWER初のデータセンターは2027年夏のサービス開始予定であり、2026年9月時点ではまだ計算力販売による実績はありません。J-POWERはここで得た知見をもとに全国へ段階的に拡大する方針ですが、現時点ではこれから事業モデルを証明していく段階です。

データセンター事業では、GPUを導入しただけで利益が生まれるわけではありません。高価なGPUをどれだけ高い稼働率で動かせるのか、計算力をどの価格で販売できるのか、次世代GPUへの更新費用はどれだけかかるのか、冷却や通信、運用費を含めて十分な利益率を確保できるのかを見る必要があります。これはJ-POWERの新規事業リスクに関する公式説明とも重なり、会社は新しい国内外事業について、需要、市場環境、規制などの変化によって想定した利益を生まない可能性をリスクとして開示しています。

今後は、

  • 2027年夏に上ノ国DCが予定どおり稼働するか
  • GPU稼働率は十分か
  • 計算力販売の売上・利益が開示されるか
  • 次のデータセンターへ展開できるか
  • ワークロードシフトが実証から商用化へ進むか

を追いたいと思います。

J-POWER最大のリスクは、「時代の変化より巨大資産の転換が遅れること」

J-POWER最大のリスクは、「時代の変化より巨大資産の転換が遅れること」

J-POWERのリスクを個別に並べると、石炭火力、大間原発、燃料価格、為替、金利、海外事業、自然災害、新規事業など数多くあります。

しかし、私はこれらを一つにまとめると、「社会の変化する速度に対して、巨大資産を変える速度が追いつかないこと」が最大のリスクなのではないかと思います。

発電所は数年で入れ替える設備ではありません。一度つくれば数十年間利用することを前提に、巨額の資金を投じます。そのため、投資した後にエネルギー政策、環境規制、技術、電力需要が大きく変われば、対応にも長い時間と追加資金が必要です。J-POWERの中期経営計画が、政府のGX政策、電力需給、制度設計、産業の進展などに応じて事業ポートフォリオを見直すとしているのも、こうした長期資産と社会変化のズレへ対応するためだと考えられます。

ただ、この問題はJ-POWERの弱さだけを表しているわけではありません。70年前につくった水力をNEXUS佐久間で更新し、石炭火力を水素・アンモニア・CCSへ転換しようとし、全国の発電・通信資産をAIデータセンターへつなげようとしていることも事実です。巨大資産を抱えているから変化が難しい。一方、その巨大資産を変えられれば他社には簡単にまねできない強みになる。 ここがJ-POWERという会社の面白さだと思います。

長期投資で見るなら、「J-POWERは日本の電力を支える会社だから大丈夫」と考えるのではなく、

社会が何を必要としているか
↓
J-POWERの資産がそこへ合っているか
↓
必要なら設備を変えられているか
↓
その転換が利益へつながっているか

を追い続ける必要があります。

最終的に、J-POWERの最大のリスクは巨大資産を持つことそのものではありません。巨大資産を「昔必要だった設備」のまま残してしまうことです。そして逆に、それを次の時代のインフラへ変え続けられるのであれば、このリスクはそのままJ-POWERの強みにも変わると思います。

おじー🦥
おじー🦥

J-POWERは「大きな発電所を持っているから安心」と考えるだけでは足りないのですね。石炭火力、大間原発、海外事業、AIデータセンターまで、投じた資本を時代に合った形へ変え、きちんと利益を生み出せるか。そこを追い続けることが長期投資では大切ですね。

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J-POWERの株価分析|4,071円は割安?PBR0.5倍をどう見る

J-POWERの株価分析|4,071円は割安?PBR0.5倍をどう見る

J-POWERの株価を初めて見ると、数字だけではかなり割安に見えます。

2026年9月4日の終値は4,071円。会社予想ベースのPERは8.85倍、PBRは約0.5倍、予想年間配当105円に対する配当利回りは約2.58%です。特にPBR0.5倍という数字を見ると、「会社が持っている純資産の半分程度しか株式市場から評価されていないのだから、かなり安いのでは」と感じます。

ただ、ここまでJ-POWERを調べてきたからこそ、私はPBR0.5倍=そのまま割安とは考えないほうがいいと思います。2025年度のROEは4.3%程度にとどまり、会社自身も株主資本コストを下回っていると認識しています。さらに大間原発など多額の資金を投じながらまだ利益を生んでいない資産もあり、石炭火力の脱炭素には今後も巨額投資が必要です。株式市場から見れば、「大きな資産を持っていること」以上に、その資産を使って十分な利益を生み出せるのかが問われています。

一方で、株価そのものはここ数年かなり上昇しています。2020年末の1,421円から、2021年1,527円、2022年2,096円、2023年2,288円、2024年2,572円、2025年3,163円と上昇し、2026年9月4日には4,071円。2020年末と比べると約2.9倍です。2026年だけでも前年末3,163円から約29%上昇しています。つまりJ-POWERは「ずっと放置されたPBR1倍割れ株」というわけでもなく、市場からの評価はすでに少しずつ変わり始めています。

だからこの章では、現在の4,071円が高いか安いかを一つの数字で決めるのではなく、株価がこれまで何を評価して上昇してきたのか、PBR0.5倍にどんな意味があるのか、そして今後どんな変化が起きればもう一段評価が変わるのかを考えてみます。

J-POWERの株価はどう動いてきた?2020年末から約2.9倍へ

J-POWERの株価はどう動いてきた?2020年末から約2.9倍へ

J-POWERの株価を長期で見ると、2020年を底にかなり大きく回復してきたことが分かります。

2020年の年末終値は1,421円でしたが、その後は2021年1,527円、2022年2,096円、2023年2,288円、2024年2,572円、2025年3,163円と、年末ベースでは5年連続で上昇しました。さらに2026年9月4日の終値は4,071円。2020年末と比べると約2.86倍、上昇率では約186%です。

年年末終値・直近株価
2020年1,421円
2021年1,527円
2022年2,096円
2023年2,288円
2024年2,572円
2025年3,163円
2026年9月4日4,071円

この上昇を「電力株だから上がった」と一つの理由だけで説明するのは難しいと思います。業績だけでなく、配当の引き上げ、自社株買い、資本効率を意識した経営への変化、エネルギー安全保障への関心、脱炭素電源の価値、そしてAI・データセンターによる将来の電力需要など、J-POWERを見る材料そのものが増えてきました。2025年9月から2026年3月にかけては約200億円の自己株式取得も実施されています。

ただし、株価が約2.9倍になったからといって、J-POWERが抱える課題がすべて解決したわけではありません。PBRは現在でも0.5倍程度です。これは、「昔よりJ-POWERを評価する理由は増えた。一方、大間原発や脱炭素投資、資本効率まで含めて高い評価を付けるには、まだ確認したいことが残っている」という市場の見方が表れているようにも感じます。

2026年は3,185円から4,514円へ|上昇しても値動きは大きい

2026年は3,185円から4,514円へ|上昇しても値動きは大きい

2026年だけを見ても、J-POWERの株価はかなり動いています。

2026年9月4日時点の年初来安値は2月3日の3,185円、年初来高値は4月2日の4,514円。9月4日の終値4,071円は、年初来安値から約28%上昇している一方、年初来高値からは約10%下の水準です。

つまり、電力インフラ企業だからといって株価まで安定しているわけではありません。J-POWERは燃料価格、為替、海外事業、電力市場、大間原発、脱炭素政策など多くの材料で評価が変わります。さらに現在はAI・データセンターという新しい成長期待まで加わっているため、以前よりも「安定した電力株」という一言では説明しにくい銘柄になってきています。

私が現在の4,071円を見るなら、「4,514円から下がったから安い」とも、「3,185円からかなり上がったから高い」とも決めません。重要なのは、4,000円台という株価を正当化し、さらに市場評価を高められるだけの利益と資本効率が今後ついてくるかだと思います。

PER8.85倍・PBR0.50倍|J-POWERは本当に割安なのか

PER8.85倍・PBR0.50倍|J-POWERは本当に割安なのか

2026年9月4日時点のJ-POWERは、会社予想EPSベースのPERが8.85倍、実績BPSベースのPBRが0.50倍です。

1株当たり純資産であるBPSは約8,137円なので、株価4,071円は帳簿上の1株純資産のおよそ半分に当たります。数字だけを見るなら、かなり割安に見えます。

ただし、PBRは単純に「資産を何割引きで買えるか」を見る指標ではありません。重要なのは、その株主資本を使って会社がどれだけ利益を生み出せているかです。J-POWERの2025年度ROEは4.3%で、会社自身も株主資本コストを下回る水準だと認識しています。一方、中期経営計画では2030年代にROE8%以上を目標としています。

ここまで記事を読んできた人なら、PBR0.5倍の背景もかなり見えてくると思います。大間原発などまだ稼働していない巨大資産があり、石炭火力にも追加の転換投資が必要で、脱炭素技術の経済性にも不確実性があります。つまり市場は「8,000円を超えるBPSを持っていること」より、その資本から現在どれだけ利益を生み出せているのかを重く見ている可能性があります。

逆に言えば、ここには評価が変わる余地もあります。大間原発や再エネなどの建設中資産が稼働し、火力の脱炭素投資が収益へつながり、AIデータセンターのような新規事業が利益を生み、ROEが8%へ近づいていけば、現在のPBR0.5倍という市場評価そのものが変わる可能性があります。

PBR1倍を目指すなら、まずROEを上げる必要がある

PBR1倍を目指すなら、まずROEを上げる必要がある

PBR1倍割れ企業を見ると、「1倍まで戻れば株価は大きく上がる」と考えたくなります。

J-POWERの現在のBPS約8,137円を単純に使えば、PBR1倍に相当する株価は約8,137円です。現在の4,071円と比べれば約2倍になります。

ただし、8,137円は目標株価ではありません。 現在と同じBPSを固定し、市場が純資産と同額まで評価した場合を機械的に計算しただけです。

PBRBPS約8,137円を固定した株価の目安
0.5倍約4,068円
0.6倍約4,882円
0.7倍約5,696円
0.8倍約6,510円
1.0倍約8,137円

※現在のBPS約8,137円を固定した単純計算です。将来の株価や目標株価を示すものではありません。

重要なのは「PBR1倍まで上がるはず」と考えることではなく、なぜ市場が現在0.5倍程度しか評価していないのか、その理由を会社が解消できるかです。J-POWERが2030年代にROE8%以上を目標としていることも、資本を使って生み出す利益を増やさなければ市場からの評価を高めにくいという問題につながっています。

だから私は、

ROE・ROICが改善する
↓
株主資本から生まれる利益が増える
↓
巨大資産を保有する意味が利益で証明される
↓
市場がより高い評価を付ける理由が増える
↓
PBRの再評価につながる可能性

という順番で見たいです。

PBRが上がることを期待する前に、PBRが上がる理由が生まれているかを見る。 J-POWERでは、この視点がかなり重要だと思います。

J-POWERの株価がもう一段評価されるには、何が必要なのか

J-POWERの株価がもう一段評価されるには、何が必要なのか

ここまで調べた内容を株価につなげると、J-POWERにはすでにかなり多くの「将来の材料」があります。

ただ、株式市場が最終的に評価するのは、計画を発表したことではなく、その計画が実際に利益やキャッシュフローへ変わったかです。

私が特に見たいのは、次の5つです。

  1. 大間原発の工程が具体化する
    使用開始時期が見え、138.3万kWの建設中資産が稼働へ近づけば、長期間資本を拘束してきた巨大プロジェクトの見え方が変わります。
  2. 火力の脱炭素投資が商用化する
    GENESIS松島、水素、アンモニア、CCSなどが「技術としてできる」段階から「利益を生む」段階へ移れるかが重要です。
  3. ROEが8%へ近づく
    J-POWER自身が2030年代にROE8%以上を目標としています。資本効率の改善を数字で確認できれば、低PBRの見方も変わる可能性があります。
  4. AIデータセンターが利益源になる
    上ノ国データセンターで計算力販売が始まり、そのモデルを全国へ展開できれば、J-POWERの評価軸が「発電会社」だけではなくなるかもしれません。
  5. 株主還元を継続できる
    2025年9月から2026年3月にかけて約200億円の自己株式取得を実施したように、成長投資と株主還元を両立できれば、1株当たり価値の向上にもつながります。

反対に、大間原発がさらに遅れ、脱炭素投資のコストが膨らみ、AIデータセンターも利益を生まず、ROEが低いままであれば、現在のPBR0.5倍という評価にはそれなりの理由があるという状態が続く可能性があります。

つまりJ-POWERは、「割安株だから上がる会社」というより、「企業そのものが変われば割安さが解消される可能性がある会社」として見るほうが面白いと思います。

配当をもらいながら待てる?長期投資では何を追えばいいのか

配当をもらいながら待てる?長期投資では何を追えばいいのか

現在のJ-POWERは年間105円の配当を予想しており、2026年9月4日の株価4,071円に対する予想配当利回りは約2.58%です。

高配当株として見ると3〜4%台の銘柄より利回りは低いですが、J-POWERは安定配当を基本としながら、総還元性向30%を目安に自社株買いなども組み合わせて株主還元を行う方針です。

だから私は、J-POWERへの長期投資を「高い配当だけを受け取り続ける銘柄」と見るより、配当を受け取りながら会社そのものが変わる過程を追う銘柄として考えるほうが合っていると思います。

長期で確認したいのは、

  • ROE・ROICが改善しているか
  • 建設中資産が稼働資産へ移っているか
  • 大間原発の工程が具体化しているか
  • 脱炭素投資が利益へつながっているか
  • AIデータセンターが収益化しているか
  • 安定配当や自社株買いを継続できているか

です。

J-POWERは2020年末から株価が約2.9倍になりました。それでもPBRは約0.5倍です。この一見すると不思議な状態は、株価は大きく上がったものの、巨大な純資産や将来投資を「十分な利益を生む資産」として市場がまだ高く評価していないことの表れとも考えられます。

ここから企業価値がさらに大きく変わるのであれば、「AI関連だから」「原発関連だから」というテーマだけで株価が動く場面よりも、ROE、ROIC、キャッシュフローという数字でJ-POWERの変化を確認できたときのほうが、長期投資では重要だと思います。

私はJ-POWERをどう見る?|「PBR0.5倍」より、その先の変化に注目したい

私はJ-POWERをどう見る?|「PBR0.5倍」より、その先の変化に注目したい

J-POWERの株価を詳しく調べる前は、PER8倍台、PBR0.5倍という数字を見ると「かなり割安な電力株なのでは」という結論になりそうだと思っていました。

しかし事業をここまで追ってみると、現在の低いPBRにはそれなりの理由があることも分かります。大間原発など多額の建設中資産があり、石炭火力の転換には追加投資が必要で、ROEもまだ4%台です。

一方で、だからこそ面白さもあります。水力ではNEXUS佐久間によって70年前につくった資産の価値を高め、大間原発では138.3万kWの新しい脱炭素電源を目指し、火力では水素・アンモニア・CCSへ挑戦しています。そしてAIデータセンターでは、発電した「電気」を売るだけではなく、その電気を使った「計算力」まで販売しようとしています。

これらが別々の取り組みに見えて、実はすべて同じ問いにつながっています。

J-POWERは、巨大な資産を持っているだけの会社なのか。

それとも、

巨大な資産を時代に合わせて変え、より大きな利益を生み出せる会社なのか。

J-POWERは2030年代にROE8%以上を目標としています。私は現在のPERやPBRだけを理由に買う銘柄というより、「巨大資産を利益へ変える会社へ本当に変われるか」を追う銘柄として見たいです。

現在の4,071円が将来振り返って安かったかどうかは、今のPBR0.5倍だけでは分かりません。

大間原発が動いたか。
脱炭素投資が稼いだか。
AIデータセンターが利益源になったか。
ROEが本当に8%へ近づいたか。

その答えが数字として表れたとき、J-POWERに対する株式市場の評価も、現在とはかなり違うものになっている可能性があります。

おじー🦥
おじー🦥

PBR0.5倍という数字だけを見ると、かなり安く感じますね。でも、その背景まで調べると見方が変わります。大間原発、脱炭素、AIデータセンターへの投資を本当に利益へ変え、ROEを高められるのか。「今の株価が安いか」だけではなく、「これから市場が高く評価したくなる会社へ変われるか」を追うことが大切ですね。

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まとめ|戦後の電力不足を支えたJ-POWERは、AI時代も日本を支えられるのか

まとめ|戦後の電力不足を支えたJ-POWERは、AI時代も日本を支えられるのか

J-POWERを調べる前は、私自身「全国に大きな発電所を持つ会社」「石炭火力の比率が高い電力会社」という印象が強くありました。

しかし歴史、事業、強み、脱炭素、大間原発、AIデータセンター、そして財務や株価まで追ってみると、この会社の本質はもう少し違うところにあるように感じます。

J-POWERが1952年に生まれた理由は、戦後の日本で不足していた電気を増やすためでした。巨大水力を開発し、地域と地域を送電設備でつなぎ、オイルショック後には石油依存を下げるため石炭火力へ進みました。時代ごとに日本が抱えていたエネルギー問題へ対応しながら、その時代に必要とされる巨大インフラをつくってきた会社だと言えます。

そして現在、J-POWERが向き合っている問題は再び大きく変わっています。脱炭素によって石炭火力のあり方を変えなければならず、大間原発では138.3万kWの新しい脱炭素電源を実現できるかが問われています。一方、AI・データセンターの拡大によって大量の電力と計算資源が必要になり始め、J-POWER自身も発電・送電・通信・GPUを組み合わせて「電気を売る会社」から「計算力まで提供する会社」へ事業領域を広げようとしています。

だからJ-POWERの将来性を考えるとき、「水力をたくさん持っている」「原発が動けば強い」「AI需要が増えるから電力会社は有利」と一つの材料だけを見るのでは足りないと思います。

重要なのは、

社会が必要とするものが変わる
↓
J-POWERが持つ巨大資産・技術を変える
↓
新しい事業へつなげる
↓
投じた資本を利益へ変える

という流れを、これからも実現できるかです。

戦後につくった水力が70年以上たった現在でも価値を持っているように、今進めている大間原発、火力の脱炭素、再エネ、AIデータセンターへの投資が、10年後、20年後のJ-POWERを支える資産になるのか。私はそこを追っていきたいと思います。

J-POWERの強みを一言で表すなら|「巨大資産を、時代に合わせて変える力」

J-POWERの強みを一言で表すなら|「巨大資産を、時代に合わせて変える力」

J-POWERの強みを一つだけ挙げるなら、私は「巨大な発電設備をたくさん持っていること」ではなく、「長い時間をかけて築いた巨大資産を、次の時代でも価値あるものへ変えていく力」だと考えています。

もちろん、国内2位の設備出力を持つ水力発電、地域間を結ぶ送変電設備、巨大インフラを計画・建設・運営してきた技術、人材、海外事業の経験など、それぞれ単体でも簡単には再現できない強みがあります。ただ、それらを「昔につくった立派な設備」として保存するだけなら、社会が変わった瞬間に価値を失う可能性があります。

水力ではNEXUS佐久間によって70年前の発電所を更新し、出力を35万kWから40万kWへ高めようとしています。石炭火力では、非効率設備を廃止する一方、残す設備には水素・アンモニア・CCSなどを加えて次の電源へ変えようとしています。さらに発電所や送変電設備を運営するためにつくった通信ネットワークまで、AI時代には分散データセンターをつなぐ資産として使おうとしています。

私が最初に抱いていた「J-POWER=昔からある大きな発電会社」という印象は、調べた後にはかなり変わりました。

昔につくったものを守る会社ではなく、昔につくったものを次の用途へ使い直そうとしている会社。

そこにJ-POWERらしさがあると思います。

長期投資で追いたいJ-POWERの5つのポイント

長期投資で追いたいJ-POWERの5つのポイント

J-POWERには多くの事業がありますが、長期投資で毎回すべてを確認する必要はないと思います。

この記事をつくった今の段階で、私は特に5つの変化を追いたいと考えています。

注目ポイント確認したいこと
大間原発審査・工程が進み、138.3万kWを稼働資産へ変えられるか
石炭火力の転換水素・アンモニア・CCSが実証から商用化へ進むか
水力・再エネ既存資産の更新と新規開発で利益を増やせるか
AIデータセンター計算力販売が新しい収益源へ育つか
ROE・ROIC巨額投資が利益へ変わり、資本効率が改善するか

この中でも最終的な答えになるのは、やはりROE・ROICだと思います。大間原発が完成しても、AIデータセンターを全国へ増やしても、水素やCCSを導入しても、投じた資本に対して十分な利益が生まれなければ、投資家にとって企業価値が高まったとは言い切れません。

反対に、現在は建設中・開発中の資産が次々と稼働し、キャッシュフローを生み、J-POWERが目標とする2030年代ROE8%以上へ近づいていくのであれば、現在0.5倍程度のPBRに対する市場の見方も変わる可能性があります。

つまり長期投資では、ニュース一つ一つに反応するより、

計画
↓
建設・実証
↓
運転開始
↓
利益・キャッシュフロー
↓
ROE・ROIC改善

という順番で、事業が本当に進んでいるかを見ることが大切だと思います。

J-POWERは長期投資先として魅力的か|私は「変化を追いながら持ちたい会社」

私はJ-POWERをどう見る?|「PBR0.5倍」より、その先の変化に注目したい

J-POWERを長期投資先として考えると、私の中では「安心して放置できる電力株」という評価にはなりません。

石炭火力の脱炭素、大間原発の長期化、巨額設備投資、海外事業、AIデータセンターなど、これから結果を確認しなければならないテーマがかなり多いからです。

一方で、「不確実性が多いから避けたい会社」とも感じませんでした。むしろ70年以上の歴史を見ると、J-POWERは社会が必要とするエネルギーインフラが変わるたびに、自分自身の役割も変えてきています。

戦後には大規模水力。
オイルショック後には石炭火力。
地域間では送変電設備。
脱炭素時代には再エネ、大間原発、水素・アンモニア・CCS。
そしてAI時代には、データセンターと計算力です。

この会社を調べていて面白かったのは、1952年の創業理由と2026年のAI戦略が意外なほど同じ線上にあることでした。時代によって必要なものは変わっても、「社会が必要とするエネルギーやインフラをつくる」という役割自体は変わっていません。

ただし、投資家としてもう一つ付け加える必要があります。

社会に必要なものをつくるだけではなく、それを利益へ変えられるか。

これがこれからのJ-POWERに求められる条件です。

現在のPBR0.5倍前後という評価も、この問いに対する市場の答えがまだ出ていないからこそ残っているのかもしれません。大間原発が動き、石炭火力の転換が進み、AIデータセンターが利益を生み、ROEが8%へ近づいていくのであれば、J-POWERを見る景色は大きく変わる可能性があります。

だから私はJ-POWERを、「今の数字だけを見て割安だから買う会社」ではなく、「巨大資産を次の時代の利益へ変えられるかを追いながら持ちたい会社」として見ています。

1952年、J-POWERに求められたのは「足りない電気をつくること」でした。

そしてAI時代。

大量の電気、脱炭素電源、送電網、通信、計算力という新しい社会基盤が必要になろうとしています。

70年以上前と同じように、J-POWERはもう一度「次の時代に必要なインフラ」をつくれるのか。

私はそこに、この会社をこれからも追い続けたい理由があります。

おじー🦥
おじー🦥

J-POWERを知ると、「昔からある電力会社」という印象がずいぶん変わりますね。70年以上かけて築いた水力、火力、送電網を次の時代へどうつなげるのか。そして、大間原発やAIデータセンターまで含めた新しい投資を、本当に利益へ変えられるのか。社会に必要な会社であり続けることと、株主にとって魅力的な会社になること。その二つを同時に実現できるかを、これからも見ていきたいですね。

企業を「1社」ではなく「業界」で見たい人へ
企業研究をしていると、その会社だけを見るより「同じ業界にどんな会社がいて、どこでつながっているのか」を知ったほうが強みが見えやすくなります。
『会社四季報 業界地図 2027年版』は、電力だけでなく半導体、データセンター、通信、商社など、日本企業を横断して見たい人に使いやすい一冊です。

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参考資料・出典

本記事では、主に以下のJ-POWER(電源開発)公式資料・IR資料、J-POWER送変電の公開資料、および原子力規制委員会・電力広域的運営推進機関などの一次情報を参照しています。

J-POWER|企業理念・会社概要・歴史

企業理念・行動規範|J-POWER

企業データ・事業データ|J-POWER

J-POWERの歴史|J-POWER

J-POWER 70周年特設サイト

J-POWER|企業CM・ブランド発信

企業広告・広報ライブラリ|J-POWER

J-POWER公式YouTubeチャンネル

J-POWER|国内発電設備・事業構成

企業データ・事業データ|J-POWER

J-POWER|送変電設備・地域間連系

送変電事業地図|J-POWER送変電

2026年度供給計画の概要|J-POWER送変電

J-POWER|東日本大震災と北本連系設備

J-POWER 70周年特設サイト|電力系統をつないで、日本を明るく

J-POWER|海外発電・海外コンサルティング

企業情報・海外事業データ|J-POWER

企業データ|J-POWER

J-POWER|水力発電・NEXUS佐久間

NEXUS佐久間プロジェクト|J-POWER

J-POWER|BLUE MISSION 2050・中期経営計画

J-POWER BLUE MISSION 2050

中期経営計画2024-2026|J-POWER

J-POWER|石炭火力のトランジション・GENESIS松島

GENESIS松島計画|J-POWER

CO2フリー水素によるゼロエミッションへの取り組み|J-POWER

J-POWER|非効率石炭火力の廃止

高砂火力発電所の廃止方針について|J-POWER

J-POWER|松浦火力・CCS

松浦地点におけるCO2分離回収・液化・一時貯蔵・出荷設備のFEED(基本設計)|J-POWER

J-POWER|大間原子力発電所・建設計画

2026年度供給計画における大間原子力発電所の計画|J-POWER

大間原子力発電所 建設工事状況|J-POWER

J-POWER|大間原発・フルMOX

大間原子力発電所でのMOX燃料利用計画について|J-POWER

MOX燃料とは|J-POWER

J-POWER|大間原発・長期脱炭素電源オークション

2025年度長期脱炭素電源オークションの落札について|J-POWER

長期脱炭素電源オークション(応札年度2025年度)|電力広域的運営推進機関

原子力規制委員会|大間原発の新規制基準適合性審査

第1426回 原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合|原子力規制委員会

J-POWER|大間原発関連損失・特別損失

通期業績予想の修正及び特別損失の計上について|J-POWER

J-POWER|AIデータセンター・上ノ国データセンター

北海道上ノ国町におけるデータセンター事業の実施について|J-POWER

J-POWER|ワット・ビット連携・ワークロードシフト

分散型AIデータセンターの一体運用・ワークロードシフト共同検討|J-POWER

総務省「ワット・ビット連携関連実証」採択について|J-POWER

J-POWER|決算・業績・ROE・ROIC

決算・発表資料|J-POWER

2026年3月期 決算説明資料|J-POWER

2027年3月期 第1四半期決算|J-POWER

J-POWER|株主還元・配当・自社株買い

株主還元|J-POWER

自己株式の取得状況及び取得終了に関するお知らせ|J-POWER

自己株式の消却完了に関するお知らせ|J-POWER

J-POWER|リスク管理・気候変動リスク

リスク管理|J-POWER

TCFD提言に基づく情報開示|J-POWER

株価・市場データについて

J-POWER(9513)株価・株式情報|Yahoo!ファイナンス

J-POWER(9513)株価時系列|Yahoo!ファイナンス

J-POWER(9513)年次株価|株探

最終確認日:2026年9月6日

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J-POWER 投資家ノート|決算・株価を継続チェック

おじー🦥
おじー🦥

この記事の分析内容をもとに、J-POWERの業績や株価を長期的に追いかけていきます。

企業研究は一度記事を書いて終わりではなく、決算、実態的な収益力、配当金、成長分野への投資、株価、信用需給などの変化を確認しながら、この投資家ノートを継続的に更新していく予定です。

※この記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。企業の新しい取り組みがあれば、随時内容を更新していきます。

投資研究メモ 2026年9月6日時点

【現在の評価】
★★★★☆

【長期保有】
★★★★☆

【企業理念】
★★★★★

【成長性】
★★★★☆

【株価妙味】
★★★★☆

【配当】
★★★☆☆

【働きたい会社】
★★★★☆

【注目ポイント】

・J-POWER最大の強みは、単に巨大な発電設備を持っていることではなく、70年以上かけて築いた資産を時代に合わせて更新・転換してきたこと。戦後は水力、オイルショック後は石炭火力、現在は脱炭素・原子力・AIへと役割を変えている

・国内発電設備は2026年3月末時点で98カ所・約1,764万kW。水力859.0万kW、火力823.5万kWで、実は水力のほうが大きい。水力設備出力は国内2位で、「J-POWER=石炭火力だけ」ではない

・発電だけでなく、2,410.2kmの送電設備や地域間連系設備、50Hz/60Hzをつなぐ佐久間周波数変換所などを保有。電力会社同士の「境目」をつなぐインフラも大きな強み

・水力ではNEXUS佐久間を進め、1956年運転開始の発電所を35万kW→40万kWへ増強予定。昔つくった資産を維持するだけでなく、更新によって価値を高められることがJ-POWERらしい

・最大の転換点は石炭火力。国内823.5万kWの火力を抱える一方、非効率設備は廃止し、高効率設備は水素・アンモニア・CCSなどで低・脱炭素化する方針。BLUE MISSION 2050では2030年CO246%削減、2050年実質ゼロを目指す

・大間原発は計画出力138.3万kWの巨大な将来資産。稼働すれば脱炭素・安定供給の大きな切り札になる一方、2008年着工から長期化し、使用開始時期は未定。2026年3月期には約185億円の固定資産除却損も発生しており、「切り札」と「重荷」の両面がある

・AI戦略はかなり面白い。2027年夏開始予定の北海道上ノ国DCでは、電気だけでなくGPUを使った「計算力」を販売する。さらにワット・ビット連携では、電気を遠くへ運ぶだけでなく、電気がある場所へAI計算を移すワークロードシフトを実証している

・2026年3月期は売上高1兆1,822億円、営業利益1,009億円、経常利益1,585億円、純利益585億円。2027年3月期会社予想は純利益810億円。一時的な資産売却益なども大きいため、利益額だけでなく何から利益が生まれたかを確認したい

・2025年度のROE4.3%、稼働資産ROIC4.5%に対し、2030年代はROE8%以上が目標。2026年6月末の固定資産仮勘定は8,120億円あり、今後は「投資→稼働→利益→ROE・ROIC改善」へつながるかが最大の確認ポイント

・2026年9月4日終値は4,071円、会社予想PER8.85倍、実績PBR0.50倍、予想配当利回り約2.58%。数字だけなら割安に見えるが、ROEの低さや大間原発・脱炭素投資の不確実性もある。個人的には、「PBR0.5倍だから買う会社」ではなく、「巨大資産を次の時代の利益へ変えられるかを追いながら持ちたい会社」

【気になること】

・国内823.5万kWの火力を、水素・アンモニア・CCSなどで採算の取れる低・脱炭素電源へ転換できるか。技術実証ではなく商用化後の利益まで確認したい

・大間原発のさらなる長期化。138.3万kWの大規模電源になる一方、稼働まで利益を生まず、追加安全対策や設備更新によって投資額が膨らむ可能性がある

・固定資産仮勘定8,120億円など、巨額の建設中資産が本当に稼働してキャッシュフローを生む資産へ変わるか

・AIデータセンターとワークロードシフトはまだ事業モデルを証明する段階。GPU稼働率・販売価格・更新コスト・利益率を確認し、実証から全国展開まで進めるか見たい

・燃料価格、為替、海外電力市場、政治・規制、金利など、J-POWERだけではコントロールできない外部要因が多い。特に巨額投資を続けるため資金調達コストには注意

・PBR0.5倍だけを理由に割安と判断しない。最大のチェックポイントはROE8%へ本当に近づくか。J-POWER最大のリスクは「社会の変化より巨大資産の転換が遅れること」であり、逆に変え続けられれば最大の強みにもなる

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