
INPEXの強みは、石油や天然ガスを持っていることだけではありません。
世界各地の資源権益、イクシスLNGのような巨大プロジェクトを動かす力、日本までエネルギーを届ける供給網、そして日本のエネルギー安全保障を支える役割があります。
さらに、資源開発で培った技術をCCSや水素など、次の時代のエネルギーへつなげられることも大きな強みです。
一緒に詳しく見ていきましょう。
- INPEXは何をしている会社なのか
- 石油・天然ガスだけではないINPEXの事業内容
- INPEXが利益を生み出すビジネスモデル
- 世界の資源権益やLNG、技術力にあるINPEXの強み
- 日本のエネルギー安全保障でINPEXが果たしている役割
- CCS・水素・再生可能エネルギーなど、今後10年の成長可能性
- 業績・配当・株価から見た長期投資先としての魅力とリスク
- INPEXは、何を目指す会社なのか|エネルギーを届け続け、未来へつなぐ
- INPEXの事業内容|「INPEXは何してる?」を6つの事業から見る
- INPEXのビジネスモデル|資源を見つけ、権益を持ち、長期で利益を生み出す
- INPEXの強み|石油だけじゃない、日本の未来を支えるエネルギー企業
- INPEXの将来性|AI・データセンター時代に今後10年も成長できるのか
- INPEXの業績推移|資源価格に左右されながらも、高い収益力とキャッシュ創出力を持つ
- INPEXのリスク|資源価格だけではない、巨大エネルギー事業が抱える不確実性
- INPEXの株価分析|資源価格で動く株を、長期ではどう見るべきか
- INPEXは長期投資先として魅力的か|社会を止めないエネルギー企業を、長く保有できるか
- INPEXの企業研究まとめ|「社会を止めないエネルギー」を届け、次の時代へつなぐ
- 投資家ノート
INPEXは、何を目指す会社なのか|エネルギーを届け続け、未来へつなぐ
INPEXは、石油や天然ガスを探し、開発し、生産する会社です。
しかし企業研究を進めていくと、それだけではINPEXという会社を十分に説明できないことが分かってきます。
INPEXは公式サイトで、自社を「日本最大規模のエネルギー開発企業」と表現しています。
現在の石油・天然ガスを安定して供給するだけでなく、CCS、水素・アンモニア、再生可能エネルギーなど、次の時代を支えるエネルギーにも事業を広げています。
INPEXが向き合っているのは、「何を掘るか」という問題だけではありません。
社会に必要なエネルギーを、どう確保し、どう安定して届け、そして次の時代へどうつないでいくのか。
その問いに向き合い続けている会社なのです。
INPEX公式YouTube
「INPEXは何してる?」
INPEXの歴史|日本のエネルギーを確保するために歩んできた
INPEXの源流の一つである帝国石油は1941年、国内の石油鉱業部門を一元化するため、半官半民の国策会社として設立されました。
その後1950年に民間会社として再出発し、1962年には新潟と東京を結ぶ国内初の長距離高圧天然ガス輸送パイプラインを完成させています。
一方、1966年には現在のINPEXにつながる北スマトラ海洋石油資源開発が設立され、海外で石油資源を自主的に開発する取り組みも始まりました。
その後の大きな流れを整理すると、
- 国内で石油・天然ガスを開発する
- 海外へ進出し、自ら資源権益を確保する
- 世界各地で石油・天然ガス開発を行う
- LNGとして日本へエネルギーを届ける
- 次世代エネルギーへ事業を広げる
という形で、事業の規模と役割を広げてきました。
2008年には国際石油開発、帝国石油などが統合して国際石油開発帝石が発足。2018年にはオーストラリアのイクシスLNGプロジェクトが生産を開始し、2021年に現在の「INPEX」へ社名を変更しています。
こうして歴史を見てみると、INPEXが昔から向き合ってきたテーマは変わっていません。
日本に必要なエネルギーを、どうすれば安定して確保できるのか。
国内の資源開発から始まり、海外の油田・ガス田、LNG、そして次世代エネルギーへ。
扱うエネルギーや技術は変化しても、「エネルギーを届け続ける」という役割は、現在のINPEXにも受け継がれています。
INPEXの経営理念|エネルギーの先にある「豊かな社会」を目指す
公式の経営理念では、
私たちは、エネルギーの開発・生産・供給を、持続可能な形で実現することを通じて、より豊かな社会づくりに貢献します。
つまり、
資源を見つける。
エネルギーを生み出す。
必要な場所へ届ける。
そのエネルギーによって社会が動く。
INPEXが目指しているのは、その一連の流れです。
さらにブランドメッセージには、
地球の力で未来へ挑む
という言葉が掲げられています。
INPEXは、地下に眠る石油や天然ガスだけを「地球の力」と考えているわけではありません。
地下構造、地熱、CO₂を地下へ貯留するCCS、そして地球上に存在するさまざまなエネルギー資源。
これまで培ってきた経験と技術を使いながら、地球の持つ力を次のエネルギーへつなげようとしています。
INPEXという会社を見るときには、「何を生産しているのか」だけではなく、そのエネルギーによって何を支えようとしているのかを見ることが大切です。
INPEXの使命|社会に必要なエネルギーを止めない
しかし、そのエネルギーが途絶えた瞬間、社会の多くの機能は動かなくなります。
- 家庭で電気やガスを使う
- 工場で製品を生産する
- 病院で医療機器を動かす
- 電車や自動車で人や物を運ぶ
- 通信設備を動かす
- AIやデータセンターを稼働させる
こうした当たり前の日常は、エネルギーが安定して届けられているからこそ成り立っています。
INPEXのサステナビリティ憲章でも、社会に不可欠なエネルギーを、よりクリーンな形で安定的かつ効率的に供給することが重要な方針として掲げられています。
エネルギー企業には、利益を生み出すことだけではなく、必要なエネルギーを必要な場所へ届け続ける責任があります。
特に日本は、エネルギー資源の多くを海外に依存しています。
だからこそ、世界各地で自らプロジェクトを進め、資源を確保し、日本へエネルギーを届けることには大きな意味があります。
この視点でINPEXを見ると、単なる資源開発会社とは少し違った姿が見えてきます。
INPEXが本当に届けているのは、石油そのものではありません。
石油や天然ガス、LNG、そして将来の新しいエネルギーを通じて、人々の暮らしや産業が止まらないためのエネルギーを届けているのです。
今のエネルギーを守りながら、次のエネルギーへ進む
現在の社会を動かすためのエネルギーを安定して供給しながら、CO₂排出量を減らし、次の時代を支えるエネルギーへ移行していく必要があります。
そこでINPEXが2035年に向けて掲げているのが、「責任あるエネルギー・トランジション」です。
INPEX Vision 2035では、既存プロジェクトの安全・安定操業を強化しながら、より低炭素なエネルギーの供給と新しい事業の成長を進めようとしています。
現在のエネルギーを支える事業だけでなく、
- 天然ガス・LNG
- CCS・CCUS
- 水素・アンモニア
- 再生可能エネルギー
- 電力関連事業
- 新たな地下資源
などへ事業領域を広げています。
ここで大切なのは、現在のエネルギーを否定して、すべてを新しいエネルギーへ置き換えようとしているわけではないことです。
今の社会に必要なエネルギーを届け続ける。
同時に、そのエネルギーをよりクリーンにする。
そして、次の時代に必要となるエネルギーを育てる。
この三つを同時に進めようとしていることが、INPEXの考える「責任あるエネルギー・トランジション」なのだと思います。
石油や天然ガスを開発してきた過去と、脱炭素を目指す未来。
その二つを切り離すのではなく、これまで培ってきた資源開発の技術を使って未来のエネルギーへつなげていくことが、これからのINPEXの大きな挑戦です。

INPEXを調べてみると、資源を掘るだけではなく、エネルギーを社会へ届け続けることを大切にしてきた会社だと感じます。
INPEXの事業内容|「INPEXは何してる?」を6つの事業から見る
世界各地で資源を開発し、LNGとして運び、日本国内ではパイプラインを通じて社会へ届ける。さらに、これまで培ってきた技術を使い、CCS・CCUS、水素・アンモニア、再生可能エネルギーといった次の時代のエネルギーにも取り組んでいます。
現在のINPEXが関わる主なエネルギー分野を整理すると、
- 石油・天然ガス
- LNG
- CCS・CCUS
- 水素・アンモニア
- 再生可能エネルギー
- 新しいエネルギー技術・イノベーション
まで広がっています。
大切なのは、これらが無関係に広がった事業ではないことです。
地下に眠る資源を見つける。
数千メートルの地下を掘る。
巨大な設備を建設し、安全に操業する。
海を越えてエネルギーを運ぶ。
地下の状態を長期間にわたって把握する。
石油・天然ガス開発で培ってきたこうした力が、新しいエネルギー事業にもつながっています。
現在のエネルギーを安定して届けながら、そこで培った技術を次のエネルギーへつなげていく。
INPEXの事業全体を見ると、この流れが見えてきます。
石油・天然ガス|地下の資源を見つけ、巨大プロジェクトを動かす
ただし、「地下に穴を掘って石油や天然ガスを取り出す」というイメージだけでは、実際の事業の一部分しか見えていません。
石油や天然ガスを生産するまでには、
- 地質や地下構造を調べる
- 石油・天然ガスが存在する可能性のある場所を探す
- 実際に井戸を掘って資源の存在を確認する
- 埋蔵量や採算性を評価する
- 生産施設やパイプラインを建設する
- 長期間にわたって安全に生産する
- 必要な場所へ輸送する
という長い流れがあります。
資源が見つかったからといって、すぐに事業になるわけではありません。
どれくらいの量があるのか。
何年間生産できるのか。
巨大な設備を建設しても採算が取れるのか。
安全に生産し続けられるのか。
環境や地域社会と共存できるのか。
こうした条件を一つずつ確認しながら、大規模なプロジェクトを動かしていきます。
その象徴ともいえるのが、オーストラリアのイクシスLNGプロジェクトです。
INPEXはイクシスで約67.8%の権益を持ち、日本企業として初めて大型LNGプロジェクトの操業主体であるオペレーターを務めています。
単に資金を出して利益を受け取るだけではなく、巨大なエネルギープロジェクトを自ら動かす立場にあることが大きな特徴です。
LNG|海外で生み出したエネルギーを日本へ届ける
INPEXのLNG事業を象徴するイクシスLNGプロジェクトでは、現在、年間約930万トンのLNGを生産できる能力があります。
さらに、契約されたLNGの約7割が日本の買主向けで、その生産規模は日本のLNG輸入量の約1割強に相当します。
つまり、イクシスは単なる海外投資ではありません。
海外で自ら天然ガスを開発し、LNGへ変え、日本を含む需要地へ届ける。
日本のように多くのエネルギー資源を海外に頼る国にとって、日本企業が大規模なLNGプロジェクトを主体的に運営していることには大きな意味があります。
また、イクシスでは海上で生産した天然ガスを長距離の海底パイプラインでダーウィンのLNGプラントへ送り、そこでLNGにして世界へ出荷しています。
地下から天然ガスを見つけるところから、巨大設備で生産し、液化し、海を越えて届けるところまで。
INPEXは、天然ガスを社会へ届けるための大きな仕組みそのものを動かしている会社ともいえます。
国内天然ガス事業|国産ガスと海外LNGを日本社会へつなぐ
その代表が、新潟県にある南長岡ガス田です。
南長岡ガス田は国内最大級の埋蔵量を持つ大型ガス田で、天然ガスは地下約4,000〜5,000mという非常に深い場所に存在しています。
1984年から生産を続け、現在もパイプラインを通じて都市ガス事業者や工業用需要家へ天然ガスを届けています。
さらに新潟県上越市には、海外から届くLNGを受け入れる直江津LNG基地があります。
海外から届いたLNGをここで再び気体の天然ガスに戻し、国内で生産した天然ガスと組み合わせてパイプラインへ送ります。
つまりINPEXは、
国内で天然ガスを生産する。
海外からLNGを調達する。
日本で受け入れて天然ガスへ戻す。
パイプラインを通して需要地へ届ける。
という流れまで持っています。
パイプラインを通じて届けられた天然ガスは、都市ガス会社や工場などで利用され、その先にある家庭や産業を支えています。
海外の巨大プロジェクトだけを見ると遠い存在に感じますが、日本国内のガス田、LNG基地、パイプラインまで見ると、INPEXの事業が私たちの生活へ直接つながっていることが分かります。
CCS・CCUS|地下を知る技術が、CO₂を地下へ戻す技術になる
CCSとは、発電所や工場などから発生するCO₂を分離・回収し、地下深くへ圧入して貯留する技術です。
CCUSでは、回収したCO₂を貯留するだけでなく、有効利用することも含まれます。
一見すると、石油や天然ガスの開発とは全く違う仕事に見えます。
しかし、CO₂を地下へ安全に貯留するためには、
- 地下にどのような地層があるのか
- CO₂を入れられる貯留層があるのか
- CO₂を閉じ込めることができるのか
- 地下でCO₂がどのように広がるのか
- 長期間にわたって安全に貯留できるのか
を詳しく調べなければなりません。
これは、石油や天然ガスがどこに存在し、地下でどのように動くのかを調べてきたINPEXの経験と非常に近い分野です。
石油・天然ガス開発で培ってきた地下を理解する力が、脱炭素社会ではCO₂を地下へ安全に戻す力として活かされようとしています。
つまり、脱炭素が進めばINPEXの過去の技術が不要になるとは限りません。
資源を取り出すために培った地下技術が、今度はCO₂を安全に貯留する技術へ進化する。
ここは、INPEXの技術力を考えるうえで非常に重要なポイントです。
水素・アンモニア|天然ガスとCCSを組み合わせ、新しいエネルギーへ
新潟県柏崎市では、南長岡ガス田で生産した国産天然ガスを原料にブルー水素を製造し、その製造過程で発生するCO₂を地下へ圧入する実証を進めています。
製造した水素は発電に利用し、一部はブルーアンモニアへ転換して需要家へ供給することも目指しています。
ここでは、
国産天然ガス
↓
水素を製造する
↓
発生したCO₂を地下へ貯留する
↓
水素を発電などに利用する
↓
一部をアンモニアへ変える
という流れが生まれます。
INPEX自身も、ブルー水素では天然ガス資産だけでなく、地下・掘削、LNG操業、海上輸送、パイプラインなど、これまで蓄積してきた技術的な強みを活かせるとしています。
つまり、全く新しい会社へ生まれ変わろうとしているのではありません。
天然ガス、地下技術、CCS、輸送という既存の強みを組み合わせながら、新しいエネルギーへ進もうとしている。
これがINPEXのエネルギー転換の特徴です。
再生可能エネルギー|風・太陽・地球の力を新しいエネルギーへ
再生可能エネルギーにも事業領域を広げています。公式サイトでも、石油・天然ガスに加えて、水素・アンモニア、CCS・CCUS、再生可能エネルギーまでを世界各地で推進するエネルギー開発企業として事業を紹介しています。
風力や太陽光は、発電時のCO₂排出を抑えられる一方で、風や日照によって発電量が変化します。
そのため、これからのエネルギー社会では一つの発電方法だけを見るのではなく、蓄電池、送電網、安定した電源などを組み合わせながら、必要なときに必要なエネルギーを届ける仕組みをつくることが重要になります。
INPEXが目指しているのも、単に石油を再生可能エネルギーへ置き換えることではありません。
さまざまなエネルギーの特徴を組み合わせ、社会に必要なエネルギーを安定して届けながら、全体をよりクリーンにしていくことです。
石油、天然ガス、風、太陽、地下。
使う資源は変わっても、地球が持つ力をエネルギーへ変え、社会へ届けるという役割はつながっています。
5つのコアエリア|世界中でエネルギープロジェクトを進める
INPEXは現在、
- オーストラリア
- アブダビ
- 東南アジア
- 日本
- 欧州
という5つのコアエリアを中心に、石油・天然ガスから水素・アンモニア、CCS・CCUS、再生可能エネルギーまで、世界各地でプロジェクトを推進しています。
オーストラリアにはイクシスLNG。
アブダビには大規模な油田事業。
東南アジアでは天然ガス・LNG開発。
日本では国産天然ガス、LNG、CCS、水素・アンモニア。
欧州を含む海外では、新しいエネルギーへの取り組みも広がっています。
単に海外で多くの事業を行っているというだけではありません。
エネルギーは、一つの国や地域だけに依存すると、紛争、政治情勢、災害などによって供給が不安定になる可能性があります。
複数の地域で資源やプロジェクトを持つことは、エネルギーを安定して確保し続ける力にもつながります。
世界中に広がるプロジェクトは、INPEXの規模を示すだけではなく、日本のエネルギー供給を考えるうえでも重要な意味を持っています。
INPEXの技術・イノベーション|エネルギー開発の技術を次の時代へ
その土台にあるのが、INPEXが長年のエネルギー開発で積み重ねてきた技術です。
INPEXは公式サイトで、エネルギー開発で培った技術と未来を創るイノベーションを掛け合わせ、責任あるエネルギー・トランジションを実現する方針を示しています。
技術分野としても、
- 石油・天然ガス
- 水素・アンモニア
- CCS
- デジタル戦略
- 新しい技術・事業を生み出すイノベーション
を掲げています。
石油・天然ガスを探すために培った地下評価技術は、CCSへ。
天然ガスの生産や輸送で培った技術は、水素・アンモニアへ。
巨大な設備を安全に運営してきた経験やデジタル技術は、新しいエネルギープロジェクトへ。
これまで積み重ねてきた技術そのものが、次の事業を生み出す土台になっています。
INPEXを見るときには、「石油の次にどんな新事業を始めるのか」だけを見るのではなく、
「石油・天然ガスで培った技術を、次のエネルギーへどこまで広げられるのか」
を見ることが大切だと思います。
石油から別の会社へ変わろうとしているのではありません。
エネルギー開発企業として持っている力を、時代に合わせて進化させようとしている。
そこにINPEXの事業の面白さがあります。

INPEXの事業を見ていくと、石油や天然ガスだけではないことがよく分かります。
これまで培ってきた技術を、次のエネルギーへつないでいる会社なのですね。
INPEXのビジネスモデル|資源を見つけ、権益を持ち、長期で利益を生み出す

INPEXのビジネスモデルは、一般的な製造業とは大きく異なります。
自動車メーカーであれば、工場で車をつくり、販売することで売上が生まれます。小売企業であれば、商品を仕入れ、販売価格との差から利益を得ます。
一方、INPEXは地下に眠る石油や天然ガスを探し、長い年月と巨額の資金をかけて開発し、プロジェクトの権益を持つことで、生産されたエネルギーから長期間にわたって収益を得る会社です。
大きな流れを整理すると、
資源を探す
↓
権益を取得する
↓
開発へ巨額の投資を行う
↓
石油・天然ガスを生産する
↓
LNGなどにして販売する
↓
長期間キャッシュを生み出す
↓
次の資源開発・成長投資・株主還元へ回す
という循環になります。
そのため、INPEXの利益を見るときには原油価格だけを見るのでは不十分です。
- どれだけの資源権益を持っているか
- どれだけ生産できているか
- 設備を安定して動かせているか
- どのような契約で販売しているか
- 開発・生産コストを抑えられているか
- 原油・天然ガス価格がどう動いているか
- 為替がどう動いているか
といった複数の要素が重なり、最終的な利益とキャッシュフローが決まります。INPEXの2026年度の事業リスク説明でも、海外天然ガスの多くは油価に連動する一方で正比例するわけではなく、販売価格や売上計上のタイミングなど複数の要因が影響すると説明されています。
つまりINPEXは、「資源価格が上がれば儲かる会社」だけではなく、世界の資源を見つけ、権益を確保し、大規模プロジェクトを長期間動かすことで価値を生み出す会社なのです。
資源権益|INPEXの利益を生み出す「地下の資産」
INPEXは資源国の政府や国営石油会社などと契約を結び、特定の地域で石油・天然ガスを探し、開発・生産する権利を取得します。
契約の代表的な形には、
- 利権契約(コンセッション)
- 生産分与契約(PSC)
があります。
例えば、イクシスLNGプロジェクトではINPEXグループが67.820%の権益を保有し、プロジェクトのオペレーターを務めています。
契約形態は、生産終了まで続く利権契約です。
一方、インドネシアなどで利用されている生産分与契約では、企業が自ら探鉱・開発費を負担し、資源の生産に成功すると、生産物の一部によって投資費用を回収します。その残りを資源国と企業で決められた割合に応じて分ける仕組みです。
つまりINPEXにとって重要なのは、単に「大きな油田やガス田がある」ことではありません。
そのプロジェクトにどれだけの権益を持ち、どのような契約条件で、どれだけ長く生産できるのか。
ここが将来の利益を左右します。
一度、大規模な資源を発見して開発に成功すれば、そのプロジェクトは長期間にわたって石油や天然ガスを生産し続けます。
INPEXにとって世界各地の資源権益は、将来のエネルギーとキャッシュフローを生み出す地下の資産ともいえるのです。
上流事業|生産量・販売価格・権益が利益を左右する
ビジネスモデルを簡単に考えると、
どれだけ生産するか × いくらで販売するか × どれだけの権益を持つか
が収益を決める大きな要素になります。
例えば同じ油田でも、生産量が増えれば販売できる石油の量が増えます。
原油価格が上昇すれば、同じ量を販売しても売上が増える可能性があります。
さらに権益比率が大きければ、そのプロジェクトからINPEXに帰属する生産や利益も大きくなります。
しかし、実際はそれほど単純ではありません。
利益には、
- 原油・天然ガスの販売価格
- 生産量
- 権益比率
- プロジェクトの操業率
- 開発・生産コスト
- 契約条件
- 産油国へ支払う税金や分配
- 為替
などが影響します。
実際、2026年1〜3月期には原油販売量が前年同期比2.6%減少する一方、海外天然ガス販売量は4.8%増加しました。原油の平均販売価格も前年同期から下落しており、「資源価格」と「販売量」の双方が売上を動かしていることが分かります。
つまり、原油価格が多少下がっても、生産量を増やす、設備を安定して動かす、コストを改善するといった企業努力によって、その影響を一定程度補うことはできます。
地下からエネルギーを取り出すだけでなく、巨大な資産を効率よく、長く、安全に動かすこと。
そこまで含めて、INPEXの上流事業なのです。
LNG|長期契約によって「売る先」まで確保する
そのため、「天然ガスが見つかったから工場をつくる」という順番ではありません。
生産したLNGを将来誰が買ってくれるのかをあらかじめ見通し、長期の売買契約を確保したうえで大規模投資を進めることが重要になります。
イクシスLNGでは、当初想定した年間840万トンのLNGについて売買契約を締結しており、その約7割が日本の買主向けです。現在は年間約930万トンを生産できる設備能力まで引き上げています。
これはINPEXにとって大きな意味があります。
資源を見つけるだけではなく、
天然ガスを生産する
↓
LNGにする
↓
長期契約を結ぶ
↓
LNG船で運ぶ
↓
需要家へ販売する
ところまで、一つの大きな事業としてつながっているからです。
もちろん、長期契約だから販売価格が完全に固定されるわけではありません。
INPEXの海外天然ガス販売価格の多くは原油価格などの影響を受けるため、市況によって収益は変動します。
それでも、「生産したLNGを誰に売るのか」が長期契約によってある程度見えていることは、巨額投資を行うLNG事業にとって重要です。
さらにINPEXはVision 2035で、保有プロジェクトから供給するLNGだけでなく、外部からの調達などを組み合わせるLNGトレーディング機能の強化も進めています。
2026年7月にはADNOCグループとルワイスLNGの長期売買契約を締結し、より柔軟にLNGを供給する能力を高めようとしています。
単に「自分たちが生産したLNGを売る会社」から、複数の供給源を組み合わせ、必要な場所へエネルギーを届ける会社へ。
INPEXのLNG事業も少しずつ進化しています。
国内天然ガス|「つくる・受け入れる・運ぶ・売る」を一つにつなぐ
南長岡ガス田などで生産した国産天然ガスに加え、海外から輸入したLNGを直江津LNG基地で受け入れ、天然ガスに戻してパイプラインへ送ります。
その天然ガスを都市ガス会社や工場などへ販売することで売上が生まれます。
つまり国内では、
天然ガスを生産する
+
海外LNGを受け入れる
↓
パイプラインで輸送する
↓
需要家へ販売する
という一連の流れを持っています。
ここで重要なのが、約1,500kmに及ぶ国内パイプライン網です。
資源を持っているだけでは、それを社会で使うことはできません。
実際に都市や工場まで運ぶインフラを持つことで、エネルギーを「地下にある資源」から「社会で使える商品」へ変えることができます。
一方、国内天然ガス事業も市況から完全に独立しているわけではありません。INPEXは、国産天然ガスと輸入LNGを原料としているため、LNG市場価格の変動が原料価格と販売価格の双方に影響すると説明しています。
それでも、海外の資源開発だけではなく、日本国内でエネルギーを実際に届けるネットワークまで持っていることは、INPEXのビジネスモデルの特徴です。
INPEXの利益は、原油価格だけでは決まらない
海外事業で販売する原油や天然ガスの価格は国際市況の影響を受け、円安になれば海外で稼いだドル建て収益を円へ換算したときに利益を押し上げる方向に働きます。
そのため、
原油高・円安=INPEXに追い風
という見方は、大きな方向性として間違いではありません。
しかし、企業研究としてはそこで止めたくありません。
実際の利益を左右する要因は、
- 原油・天然ガス価格
- 為替
- 石油・天然ガスの生産量
- プロジェクトの権益比率
- LNGの販売量
- 設備の稼働率
- 開発・生産コスト
- 契約条件
- 新規プロジェクトの立ち上がり
など複数あります。
例えば、設備を安定して動かし、生産量を増やすことができれば、資源価格が大きく上昇しなくても事業の収益力を高められる可能性があります。
逆に、原油価格が高くても、大規模設備にトラブルが起きて生産量が減少すれば、本来得られるはずだった利益を逃すことになります。
INPEX自身も、2025年度の純利益について油価・為替影響を調整したベースでは過去最高になったと説明しています。つまり会社側も、資源価格と為替だけではなく、事業そのものの収益力を高めることを重視しています。
資源価格はINPEXにとって非常に重要です。
しかし、
良い資源を持つ。
安定して生産する。
コストを管理する。
長期間販売する。
次の資源へ投資する。
この力を積み重ねることも、長期的な企業価値を決めています。
巨額投資を長期のキャッシュへ変え、次の成長へ回す
石油や天然ガスは、資源を探すだけでも費用がかかります。
資源を発見した後も、
- 掘削設備
- 海上生産施設
- 海底パイプライン
- LNGプラント
- LNG船に対応する港湾設備
- 国内パイプライン
など、巨大なインフラを整える必要があります。
しかも、開発に何年もかけたあとで、ようやく生産と販売が始まります。
そのため、このビジネスで重要なのは短期間の売上だけではありません。
巨額の先行投資を行い、その後何十年にもわたって安全にエネルギーを生産し、投資を回収しながらキャッシュを生み続けられるか。
ここが重要です。
INPEX Vision 2035でも、既存プロジェクトの維持・拡張、天然ガス・LNGの成長、CCS・水素・電力関連などへ資金を振り向けながら、投資規律を守る方針を示しています。
2025〜2027年には、3年間累計の営業キャッシュフロー2.2兆円以上を目標とし、そのキャッシュを成長投資と株主還元の双方へ配分する計画です。前提は原油価格70ドル/バレル、1ドル135円とされています。
つまり、
過去に開発した資源からキャッシュを得る
↓
次の資源・LNG・新エネルギーへ投資する
↓
新しい収益源をつくる
↓
さらにキャッシュを生み出す
という循環を何十年単位で回していくことが、INPEXの成長モデルです。
同時に、そのキャッシュの一部を配当や自己株式取得によって株主へ還元します。
地下資源を見つける力だけではなく、生み出したキャッシュを次の20年、30年の事業へどう配分するか。
そこまで見ると、INPEXという会社のビジネスモデルがよりはっきり見えてきます。

INPEXは、資源を見つけて終わりではなく、権益を持ち、長く生産し、そこで得た利益を次のエネルギーへつないでいます。
何十年という時間で考えるビジネスなのですね。
INPEXの強み|石油だけじゃない、日本の未来を支えるエネルギー企業
世界各地で資源権益を確保し、イクシスLNGのような巨大プロジェクトを自ら運営する。
海外で生産したLNGを日本へ届け、国内では国産天然ガスや約1,500kmのパイプライン網を通じて需要地までつなぐ。
さらに、長年の資源開発で培ってきた地下技術を、CCSや水素など次の時代のエネルギーへ広げていく。
INPEXの強みは、これらの力を別々に持っていることではなく、資源開発から供給、そして次世代エネルギーまでを一つにつなげられることにあると考えます。
INPEXの強みを整理すると、
- 世界各地に持つ資源権益とプロジェクト
- 日本企業として大型LNGプロジェクトを動かす操業力
- 海外から日本までエネルギーを届けるバリューチェーン
- 日本のエネルギー安全保障を支える役割|経済産業大臣が「黄金株」を保有
- 長年の資源開発で蓄積してきた技術
- 既存エネルギーの強みを次世代エネルギーへつなぐ力
にあると考えます。
これらの強みは、それぞれが独立しているのではなく、互いにつながっています。ここからは、その中身を一つずつ見ていきます。
世界5つのコアエリア|一つの地域に依存しない資源基盤
これは単に「海外展開している企業」という話ではありません。
エネルギーは、地政学の影響を強く受けます。
紛争が起きる。
政府が政策を変更する。
輸送ルートが使えなくなる。
自然災害によって設備が停止する。
一つの国や地域だけにエネルギー供給を依存していれば、そこで問題が起きたときに大きな影響を受けます。
INPEXが世界各地に資源権益を持つことは、こうしたリスクを完全になくすものではありません。
しかし、
- オーストラリアの天然ガス・LNG
- アブダビの大規模油田
- 東南アジアの天然ガス・LNG
- 日本の天然ガス
- 欧州などで進める新しいエネルギー
と、供給源や事業地域を複数持つことで、一つの地域だけに依存しないエネルギー基盤をつくることができます。
さらに重要なのは、その権益を短期間で売買するのではなく、長期間にわたって資源国と関係を築きながら開発・生産していることです。
石油や天然ガスの権益は、お金さえあれば簡単に手に入るものではありません。
資源国との長期的な関係、技術力、安全操業の実績、巨大プロジェクトを実行できる資金力などを積み上げて初めて、重要なプロジェクトへ参加することができます。
世界に持つ資源権益そのものが、長い年月をかけて築いたINPEXの競争力なのです。
イクシスLNG|「出資する側」ではなく、巨大プロジェクトを動かす側
さらに重要なのは、単なる出資者ではなく、日本企業として初めて世界規模の大型LNGプロジェクトを操業主体であるオペレーターとして動かしていることです。
オペレーターには、巨大なプロジェクト全体をまとめる力が求められます。
地下にある天然ガスを評価する。
海上施設を安全に運営する。
長距離の海底パイプラインを管理する。
LNGプラントを安定して稼働させる。
設備を保守する。
地域社会や政府と関係を築く。
長期間にわたって安全に生産を続ける。
こうした仕事を一つにつなぎ、プロジェクトそのものを動かします。
イクシスは2018年に生産を開始して以降、安定生産を継続しています。
現在のLNG生産能力は年間約930万トンで、当初の年間840万トン分については売買契約を締結済み。その約7割が日本の買主向けで、日本の年間LNG輸入量の1割強に相当する規模です。
つまりイクシスは、
世界で稼ぐための巨大プロジェクト
であると同時に、
日本へエネルギーを届けるための重要な供給拠点
でもあります。
そして、この規模のプロジェクトを実際に動かしてきた経験そのものが、次のLNG、CCS、水素などの大型プロジェクトを進めるときの強みになります。
巨大な設備を持っていること以上に、巨大なエネルギープロジェクトを動かした経験を持っていることが、INPEXの大きな財産です。
日本のエネルギー安全保障|世界からエネルギーを届ける役割
天然ガスについても国内生産だけですべてを賄うことはできず、大部分をLNGとして海外から輸入しています。INPEXの公式説明では、国内天然ガス生産は国内消費量の4%未満で、残る約96%を輸入に依存するとしています。
だからこそ重要になるのが、
「必要なエネルギーを海外から買えるか」
だけではありません。
「日本企業自身が海外の資源権益を持ち、自ら開発し、日本へ届けられるか」
という視点です。
INPEXにはイクシスLNGをはじめ、世界各地に石油・天然ガスの権益があります。
そして海外から到着したLNGは、日本国内のLNG基地やパイプラインなどを通じて需要地へ届けられます。
世界で資源を確保するところから、日本社会で使われるところまで。
この一連の流れに関わっていることが、INPEXの大きな特徴です。
だからINPEXは、単に利益を生み出す資源会社ではありません。
日本が必要なエネルギーを安定して確保するための一翼を担っている企業でもあるのです。
なぜ日本政府は「黄金株」を持っているのか
INPEXが発行している甲種類株式は、わずか1株。
その1株を経済産業大臣が保有しています。2025年12月31日時点では、経済産業大臣はこれとは別に普通株式も約23.74%保有しています。
「たった1株なら意味がないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、この甲種類株式には通常の株式にはない役割があります。
取締役の選解任、重要な資産の処分、定款変更、統合、資本金の減少、解散など、経営上の一定の重要事項について拒否権を行使できる仕組みになっています。
なぜ、こうした特別な株式が存在するのでしょうか。
公式資料では、INPEXにつながる企業がナショナル・フラッグ・カンパニーとして日本向けエネルギーの安定供給を担うことが期待されたことが背景にあります。
投機的な買収や外国資本による経営支配などによって、日本へのエネルギー安定供給という役割へ悪影響が及ぶことを防ぎながら、民間企業としての経営効率や柔軟性を不当に損なわないよう設計されています。
ここは誤解しないようにしたいところです。
INPEX自身も、経営判断は民間企業として自主的に行っており、国からの役員派遣などによる支配関係はないと説明しています。
つまり、
「政府が経営する会社」ではありません。
一方で、
「日本のエネルギー安定供給に重要な役割を持つため、国としてもその役割を守る仕組みが置かれている会社」
だと考えると分かりやすいと思います。
黄金株の存在は、それだけINPEXが日本のエネルギー政策と深く関わる企業であることを象徴しています。
国が重要なインフラ企業の株式を保有する例としては、NTTもあります。
ただし、INPEXの「黄金株」とNTTの政府保有株では仕組みが異なります。
NTTの強みを調べると、日本にとって通信インフラがどれほど重要なのかも見えてきます。
日本国内までつながる供給網|エネルギーを「持っている」だけではない
INPEXは海外からLNGを調達するだけでなく、日本国内でも天然ガスを生産し、LNG基地とパイプラインを通じて需要地へ供給しています。
海外から届いたLNGは直江津LNG基地などで受け入れ、再び天然ガスへ戻します。
そこへ国内で生産した天然ガスを組み合わせ、パイプラインで都市ガス会社や製造工場などへ届けます。
この仕組みの強みは、
海外の資源
+
国内の資源
+
LNG受入基地
+
パイプライン
+
需要家とのつながり
を持っていることです。
資源開発会社の中には、地下から石油や天然ガスを生産する「上流」へ強みを持つ企業もあります。
一方のINPEXは、海外での資源開発に加え、日本国内で実際にエネルギーを届ける部分まで事業をつないでいます。
これは、日本のエネルギー供給を考えるときに大きな意味を持ちます。
世界で確保したエネルギーを、日本社会で使えるところまでつなげる。
INPEXの強みは、資源の量だけではなく、この「届ける力」にもあります。
エネルギーは、つくるだけでは社会へ届きません。
電力をつくる場所と使う場所を電力ケーブルでつなぐ住友電工の強みを見ると、エネルギーインフラがさまざまな企業によって支えられていることが分かります。
長年の資源開発で培った技術|地下を知ることが未来の強みになる
INPEX自身も、エネルギー開発で培った技術と未来をつくるイノベーションを組み合わせ、責任あるエネルギー・トランジションを実現する方針を掲げています。
石油・天然ガス開発では、
- 地下構造を調べる
- 石油・天然ガスがある場所を予測する
- 数千メートルの地下へ井戸を掘る
- 地下の資源がどのように動くかを分析する
- 巨大設備を安全に運営する
- 長期間にわたって地下や設備を監視する
といった高度な技術が必要です。
ここで重要なのは、これらの技術が石油時代だけのものではないことです。
地下構造を評価する技術はCCSへ。
井戸を掘る技術は地熱や地下資源開発へ。
天然ガスを扱ってきた経験は水素・アンモニアへ。
巨大プロジェクトを運営してきた力は、新しいエネルギー事業へ。
これまでの技術が、そのまま次のエネルギーを生み出す土台になります。
脱炭素が進めば、石油会社が持つ技術は価値を失う。
そう考えたくなるかもしれません。
しかしINPEXの場合は、むしろ逆の可能性があります。
地下を知り、エネルギーを開発し、巨大な設備を長期間動かしてきた経験があるからこそ、エネルギー転換でもできることがある。
これが、INPEXを単なる資源株として見るだけでは見えてこない強みです。
INPEXの強みは、「今のエネルギー」と「次のエネルギー」を両方持てること
しかし、現実の社会はそれほど単純ではありません。
AIやデータセンターの普及、電化、人口増加、経済成長によって、世界では今後も大量のエネルギーが必要になります。
一方で、CO₂排出量を減らしていくことも避けられません。
つまり社会には、
今必要なエネルギーを安定して供給すること
と、
次のエネルギーへ移行すること
の両方が必要です。
INPEXは、石油・天然ガス・LNGという現在の社会を支える大規模な事業基盤を持っています。
そして、その事業から得られる技術とキャッシュを使い、
- CCS
- 水素・アンモニア
- 再生可能エネルギー
- 電力関連事業
- 新しい地下資源
へ投資しています。
新しいエネルギーだけを開発する企業には、巨大な既存事業から生まれるキャッシュがありません。
逆に、既存の石油・天然ガスだけに依存していれば、エネルギー転換が進んだときに成長の余地が小さくなります。
INPEXには、その両方があります。
今の社会を支えるエネルギーで利益を生み、その利益と技術を使って次のエネルギーを育てる。
この橋渡しができることこそ、これからのINPEXを考えるうえで重要な強みだと思います。

INPEXの強みは、資源を持っていることだけではありません。
世界でエネルギーを確保し、自ら開発し、日本へ届け、その技術を未来へつないでいる。日本にとって、とても大切な役割を担っている企業だと感じます。
INPEXの将来性|AI・データセンター時代に今後10年も成長できるのか
しかし、世界ではエネルギー転換が進む一方で、電力需要そのものが減るとは限りません。
INPEXも、AIの普及などによって世界の電力需要が中長期的に増加する可能性を指摘し、今後は安定した効率の良い電力供給システムの重要性がさらに高まると見ています。特にデータセンターのような電力を大量に使う産業に対して、より効率的でクリーンなエネルギー供給を提供することまでVision 2035に盛り込んでいます。
その中でINPEXが掲げているのが、2035年に向けた「60-60」です。
- 事業規模を2024年比で60%拡大
- GHG排出原単位を2019年比で60%削減
成長を止めて脱炭素するのではなく、エネルギー供給を拡大しながら、そのエネルギーをよりクリーンにしていくという目標です。
その実現に向けた成長軸は、
- 天然ガス・LNGの拡大
- CCS・水素を使った低炭素化
- 再生可能エネルギーや電力事業
- 新しい地下資源
- LNGトレーディングなど供給機能の強化
へ広がっています。
INPEXの今後10年を見るときに大切なのは、「石油がいつまで必要か」だけではありません。
増え続けるエネルギー需要に対して、天然ガス・LNGと次世代エネルギーを組み合わせながら、どこまで新しい収益源をつくれるか。
ここが将来の成長を左右すると考えます。
AI・データセンター|増え続ける電力需要が新しい成長機会になる
その中心となるデータセンターでは、高性能な半導体を大量に動かすだけでなく、サーバーを冷却するためにも大きな電力が必要です。
INPEX自身も、AI需要などによって世界の電力需要が増加する流れが中長期に続く可能性を認識しています。Vision 2035では、データセンターなどの電力多消費産業に対し、エネルギー供給を効率化・クリーン化する機会を提供する方針まで明記しています。
ここでINPEXにとって重要なのは、単に再生可能エネルギーを増やすことではありません。
データセンターは24時間動き続けます。
太陽が出ない。
風が吹かない。
その時間でも、電力供給を止めることはできません。
そこでINPEXが考えているのが、
再生可能エネルギー
+
蓄電池
+
天然ガス火力などの調整電源
+
将来的な水素・CCS
という組み合わせです。
天然ガスは、石炭などと比べてCO₂排出量を抑えやすく、必要に応じて出力を調整しやすいという特徴があります。
そのため、再生可能エネルギーが増えるほど、その変動を補うエネルギーの価値が高まる可能性があります。
INPEXが持つ、
- LNG
- 国内天然ガス
- パイプライン
- 再生可能エネルギー
- 蓄電池
- CCS・水素
を一つにつなげることができれば、「燃料を売る会社」から「安定した電力を支える会社」へ事業領域を広げられる可能性があります。
もちろん、INPEXがデータセンターそのものを運営するという話ではありません。
しかしAI時代に必要になる「止まらない電力」を支える側として考えると、データセンター需要はINPEXにとって無関係ではないのです。
こうしたAI・データセンターによる電力需要の拡大は、INPEXだけの成長テーマではありません。
発電用ガスタービンなどを手がける三菱重工業も、AI時代の電力需要拡大が追い風になる企業の一つです。
天然ガス・LNG|2030年代の成長を支える最大の柱
その理由は、現在の社会が必要とする大量のエネルギーを安定して供給しながら、より低炭素なエネルギー体系へ移行する必要があるからです。
INPEXが2035年に向けて特に力を入れているのが、
- イクシスLNGの拡張
- アバディLNGの開発
- LNGトレーディング機能の強化
です。
イクシスLNGでは、現在の安定操業を維持しながら、2030年代前半の液化能力拡張を目指しています。
一方、インドネシアのアバディLNGプロジェクトは、2030年代初頭の生産開始を目標に開発が進められています。
計画では、LNGを年間約950万トン生産し、パイプラインガスを含めた天然ガス総生産量はLNG換算で年間約1,050万トンになる想定です。
2025年には基本設計(FEED)が始まり、2026年5月にはLNGやパイプラインガスの販売に向けた基本合意も進みました。INPEXは2027年までの最終投資決定(FID)を目指しています。
つまり、現在のイクシスに加えてアバディが立ち上がれば、INPEXのLNG事業はさらに大きくなります。
ここは今後10年を見るうえで非常に重要です。
一方で、巨大LNGプロジェクトには、
- 建設費の上昇
- 工期の遅れ
- LNG需要の変化
- 資源価格
- 地政学
- 環境規制
など多くのリスクもあります。
だからこそ見るべきなのは、「アバディがあるから成長する」という期待だけではありません。
予定どおりFIDできるか。
建設費を管理できるか。
2030年代初頭に生産を開始できるか。
イクシス拡張を収益性を保ちながら実現できるか。
これらを一つずつ確認していく必要があります。
LNGトレーディング|「自分でつくったLNGを売る」だけではなくなる
これまでのビジネスは、自ら持つ天然ガス田からLNGを生産し、契約先へ販売する形が中心でした。
しかしINPEXはVision 2035で、自社プロジェクトだけでなく外部から調達したLNGも組み合わせ、より柔軟に需要地へ供給できる体制を目指しています。
2026年7月には、アブダビのADNOCグループとルワイスLNGの長期売買契約を締結しました。
これは、自社で生産するLNGを補完しながら、必要な地域へより効率よく供給するための取り組みです。
さらに2026年4月には、新造LNG船の長期定期傭船契約も締結しています。
この船はINPEXのLNGポートフォリオ向け輸送に活用され、トレーディング機能と輸送力の強化につながります。
つまり将来のINPEXは、
自分たちが生産したLNGを売る
だけではなく、
世界の複数のLNGを調達し、船で運び、需要に合わせて最適な場所へ届ける
という役割まで広がろうとしています。
この機能が育てば、資源を持つ強みだけでなく、世界のエネルギー需給をつなぐ力も収益源になる可能性があります。
CCS|脱炭素への対応を、新しい収益源へ変えられるか
Vision 2035では、天然ガス・LNGプロジェクトへCCSを導入して自社のGHG排出量を減らすだけでなく、第三者にもCO₂削減ソリューションを提供し、新しい収益源にすることを目指しています。
例えば計画では、
- イクシスCCS
- アバディCCS
- 首都圏CCS
- 日本海側東北地方CCS
などが検討されています。
イクシスではINPEX権益分で年間約200万トン、アバディでは年間約150万トンのCO₂貯留を想定しています。
そして、計画だけではありません。
2026年7月には、千葉県九十九里沖で首都圏CCSの試掘1坑目の作業が開始されました。
東京湾岸などの工場から回収したCO₂を輸送し、地下深くへ貯留する事業の実現可能性を調べるための一歩です。
もしCCSが社会インフラとして本格的に広がれば、
CO₂を回収する企業
↓
輸送する
↓
地下へ圧入する
↓
長期間安全に管理する
という新しい産業が生まれます。
地下を調査し、掘削し、長期間監視する技術は、INPEXが長年培ってきた分野です。
そのためCCSは、脱炭素によって従来の技術が不要になる話ではなく、
石油・天然ガスで培った技術そのものを、新しいサービスへ変える可能性
を持っています。
ただし、CCSが本格的な利益を生むためには、CO₂の価格、国の支援制度、貯留責任、輸送インフラなどの制度整備も必要です。
今後は、実証から商用化へ進めるかどうかが重要になります。
水素・アンモニア・e-メタン|実証から「使われるエネルギー」へ進み始めている
新潟県の柏崎水素パークでは、南長岡ガス田の国産天然ガスからブルー水素・アンモニアをつくり、製造時に発生するCO₂を地下へ貯留する一連の実証を進めています。
2025年11月には施設が開所し、2026年6月には水素を使った発電と電力供給を開始しました。
これは、
天然ガスを生産する
↓
水素へ変える
↓
CO₂は地下へ戻す
↓
水素で発電する
↓
電気として需要家へ届ける
という流れを実際につなげる取り組みです。
また長岡では、CO₂と水素から都市ガスの主成分であるメタンを合成するe-メタンの実証も進んでいます。
2026年には実証運転が始まり、つくられたe-メタンの環境価値を管理する仕組みも運用されています。
ここが面白いところです。
新しいエネルギーを使うために、すべてのインフラを一からつくり直すのではなく、既存の天然ガス設備やパイプラインを活用できれば、エネルギー転換のコストを抑えられる可能性があります。
一方、水素やe-メタンはまだコストが高く、大規模商用化には課題があります。
だから現時点では「次の大きな利益柱になる」と決めつける段階ではありません。
しかし、研究だけではなく、実際につくり、運び、発電し、供給するところまで進んでいることは、今後を見るうえで大切なポイントです。
再生可能エネルギーと電力|「発電する会社」から「安定供給する会社」へ
しかしVision 2035を見ると、目指しているのは単純に風力発電所や太陽光発電所を増やすことだけではありません。
再生可能エネルギーは、天候によって発電量が変わります。
そこで、
- 風力・太陽光などの再生可能エネルギー
- 蓄電池
- 天然ガス火力
- 将来的な水素
- CCS
を組み合わせ、電力の需給を調整する力まで持とうとしています。
特にINPEXには、日本国内の天然ガスパイプラインがあります。
この既存ネットワークを使ってガス火力へ燃料を供給し、将来的には水素混焼やCCSも組み合わせる構想です。
つまり将来、
風が吹けば風力を使う。
太陽が出れば太陽光を使う。
余った電力は蓄電池へためる。
足りないときはガス火力で補う。
そのCO₂はCCSで減らす。
という仕組みを一つの事業として提供できる可能性があります。
INPEXが本当に総合エネルギー企業へ進化できるかどうかは、この「複数のエネルギーを最適に組み合わせる力」を利益へ変えられるかにかかっています。
地下資源|石油・天然ガス以外にも「地下を知る力」を広げる
Vision 2035では、
- ヨウ素
- 地下水に含まれる金属資源
- その他の鉱物・希少資源
などへ、INPEXが持つ地下技術を広げる方針を示しています。
特にヨウ素は、次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池にも使われます。
AI、データセンター、EV、再生可能エネルギーが増えるほど、電力設備や蓄電池、電子機器に必要な鉱物資源も重要になります。
INPEXは石油・天然ガスで長年、
地下に何があるのかを調べる
ことを仕事にしてきました。
その技術を使い、
地下にあるエネルギーを探す会社から、
エネルギー社会に必要な地下資源を探す会社
へ広がる可能性もあります。
現時点では石油・天然ガスに比べれば小さな事業です。
しかし、INPEXが将来どこまで総合エネルギー・資源企業へ変わるのかを見るうえでは、面白い取り組みだと思います。
今後10年で確認したいのは、「投資」が本当に利益へ変わるか
INPEXは2025〜2027年の投資候補として、
- 既存プロジェクトの維持・拡大:約1.1兆円
- 天然ガス・LNGのクリーンな形での拡大:約5,000億円
- CCS・水素・電力関連:約2,000億円
を示しています。
さらに、そのほかにも1兆円を超える潜在的な投資案件があります。
低炭素・電力関連分野には投資キャッシュフローの2割程度を充てる想定ですが、INPEXは投資時に採算性を厳しく評価する方針も示しています。
2035年へ向けて確認したいのは、
- イクシスを安全に稼働しながら拡張できるか
- アバディLNGを予定どおり立ち上げられるか
- LNGトレーディングを新しい利益源へ育てられるか
- CCSを第三者向けビジネスへ広げられるか
- 水素・アンモニアを実証から商用化へ進められるか
- 再エネ・蓄電池・ガスを組み合わせた電力事業で利益を出せるか
- 巨額投資を行ってもROICとキャッシュフローを守れるか
です。
Vision 2035で掲げる「事業規模60%拡大」は、かなり大きな目標です。
実現すれば、INPEXは現在の資源会社というイメージから、より本格的な総合エネルギー企業へ進むことになります。
一方で、アバディ、イクシス拡張、CCS、水素などはどれも大規模な投資を必要とします。
だから長期投資では、
「未来のエネルギーをやっているから成長する」
ではなく、
「投じたお金が、将来どれだけの利益とキャッシュを生み出したのか」
まで確認することが重要です。
私はINPEXの今後10年を、石油から離れる10年ではなく、石油・天然ガスで培った力を使いながら、エネルギー企業としての範囲を広げていく10年だと考えます。

INPEXの未来は、石油や天然ガスをやめることではなく、今ある強みを次のエネルギーへ広げていくことにあると感じます。
AI時代に増えるエネルギー需要を支えながら、新しい事業を本当の利益へ育てられるか。これからが楽しみですね。
INPEXの業績推移|資源価格に左右されながらも、高い収益力とキャッシュ創出力を持つ
原油・天然ガス価格、為替、生産量などによって、年度ごとの業績は大きく動きます。
実際、資源価格が高騰した2022年には大きく利益が伸び、その後は油価の下落などで利益が減少しました。しかし、イクシスLNGを中心とした大型プロジェクトが安定してキャッシュを生み出し、2024年には再び利益が拡大。2025年は油価下落の影響を受けながらも、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,938億円を確保しました。
そして2026年は、8月7日に公表された最新予想で、
- 売上収益:1兆9,730億円
- 営業利益:1兆2,230億円
- 親会社の所有者に帰属する当期利益:5,100億円
- ROE:10.5%
- ROIC:8.2%
を見込んでいます。
売上収益は2025年より減少する予想ですが、当期利益は過去最高となる見込みです。
INPEXの業績を見るときに大切なのは、売上が増えたか減ったかだけではありません。
資源価格が変動する中でも、プロジェクトそのものがどれだけ利益とキャッシュを生み出せているのか。
ここを見ることで、INPEXの本当の収益力が見えてきます。
売上・利益の推移|2022年の資源高から、収益力を積み上げてきた
| 年度 | 売上収益 | 営業利益 | 親会社の所有者に帰属する当期利益 |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 約2兆3,161億円 | 約1兆5,037億円 | 約4,985億円 |
| 2023年 | 約2兆1,645億円 | 約1兆1,142億円 | 約3,217億円 |
| 2024年 | 約2兆2,658億円 | 約1兆2,718億円 | 約4,273億円 |
| 2025年 | 約2兆113億円 | 約1兆1,354億円 | 約3,938億円 |
| 2026年予想 | 約1兆9,730億円 | 約1兆2,230億円 | 約5,100億円 |
2022年は原油・天然ガス価格の上昇によって大きな利益を上げました。
その反動で2023年は売上・利益とも減少しましたが、2024年には親会社の所有者に帰属する当期利益が4,273億円まで回復しました。
2025年は平均ブレント原油価格が2024年の79.86ドルから68.19ドルへ下落したことなどで減収減益となりましたが、それでも3,938億円の利益を確保しています。
そして2026年は、売上収益が前年比1.9%減となる一方で、営業利益は7.7%増、親会社の所有者に帰属する当期利益は29.5%増の5,100億円を見込んでいます。
ここがINPEXの業績を見るうえで面白いところです。
売上高が過去最高にならなくても、利益は過去最高を狙える。
保有するプロジェクトの収益性、安定操業、コスト、税金、為替、販売価格などが組み合わさるため、単純な売上高だけでは企業の稼ぐ力を判断できません。
2026年中間決算|売上は減っても、利益は増えている
2026年1〜6月の実績は、
- 売上収益:1兆4億円(前年同期比4.6%減)
- 営業利益:6,187億円(0.3%増)
- 税引前利益:6,443億円(0.1%減)
- 親会社の所有者に帰属する中間利益:2,631億円(17.7%増)
- EPS:226.33円(21.3%増)
となりました。
一見すると少し不思議です。
売上が減っているのに、最終的な利益は約18%増えている。
大きな理由の一つが販売量です。
原油販売量は前年同期比22.8%減少し、売上収益を押し下げました。
一方で、海外原油の平均販売価格は8.2%上昇し、為替も前年同期より円安で推移しました。
売上収益への影響を会社側は、
- 販売数量減少:▲1,695億円
- 平均単価上昇:+492億円
- 円安:+556億円
- その他:+162億円
と分析しています。
さらに法人税等の減少やイクシスの利益拡大などもあり、最終利益は前年同期を大きく上回りました。
つまり最新決算からも、
「原油価格だけでINPEXの業績は決まらない」
ということが確認できます。
販売数量、価格、為替、操業状況、税金、プロジェクトごとの利益。
これらを組み合わせて見る必要があります。
イクシスLNG|INPEXの利益を支える巨大な柱
2026年上期のイクシスによる利益貢献額は1,730億円。
2025年上期の1,390億円から24.5%増加しました。
通期では約3,800億円の利益貢献を見込んでいます。
2026年上期にはLNGを64カーゴ出荷し、安定操業を継続しました。
下期には低圧生産設備の接続作業に伴う一時的な停止が予定されていますが、上期の生産が好調だったため、2026年のLNG出荷数は従来想定していた「平均月10カーゴ程度」を年間で数カーゴ上回る見込みです。
ここまで企業研究してきた内容と、業績がつながります。
イクシスは巨大な設備を持っているだけではありません。
安定して動かし、LNGを生産し、販売して初めて利益になります。
そして現在、その大型プロジェクトがINPEXの利益を支える大きなエンジンになっています。
一方で、INPEXの利益がイクシスへ大きく依存していることは、将来リスクを見るときにも重要になります。
強みとリスクは、表裏一体なのです。
ROE・ROIC|利益の大きさだけでなく、資本効率も改善できるか
重要になるのが、
ROE=株主から預かった資本をどれだけ利益へ変えたか
そして、
ROIC=事業へ投じた資本をどれだけ効率よく利益へ変えたか
です。
2025年の実績は、
- ROE:8.2%
- ROIC:7.3%
でした。
これに対して2026年の最新予想では、
- ROE:10.5%
- ROIC:8.2%
まで改善する見込みです。
会社が想定する株主資本コストは約8%、WACCは約6%です。そのため2026年予想では、ROE・ROICともに資本コストを上回る水準となります。
さらに2035年には、
ROE 10%以上
ROIC 10%以上
を目標としています。
これは今後のINPEXを見るうえでかなり重要です。
アバディLNG、イクシス拡張、CCS、水素、電力などへ巨額の資金を投じても、その投資から十分な利益が生まれなければ企業価値は高まりません。
だから、
利益が増えたか
だけではなく、
投じた資本以上の価値を生み出せたか
を見る必要があります。
今後のINPEXにとって、ROICは売上高以上に注目したい指標の一つだと思います。
キャッシュフロー|巨大投資と株主還元を両立できるか
会計上利益が出ていても、実際に現金を生み出せなければ、
- 新しい油田・ガス田を開発する
- イクシスを拡張する
- アバディLNGを建設する
- CCS・水素へ投資する
- 配当を支払う
- 自己株式を取得する
ことはできません。
2026年上期の制度会計ベースの営業活動によるキャッシュフローは5,538億円で、前年同期から1,259億円増加しました。
一方で、成長投資の拡大によって投資活動では4,247億円の資金を使用しています。
またINPEXが中期経営計画で使う管理指標ベースでは、2026年通期の営業キャッシュフローを1兆550億円と予想しています。
2025〜2027年の3年間では累計2兆2,000億円を目標としており、現在の大型プロジェクトが生み出すキャッシュを次の成長へ回す考えです。
ここは長期投資では特に確認したいところです。
これからINPEXには大型投資が続きます。
既存事業が生み出すキャッシュで、成長投資と株主還元をどこまで両立できるのか。
この循環を維持できれば、INPEXの成長モデルはかなり強いものになります。
配当・株主還元|累進配当と自己株取得で還元を強化する
1株当たり年間配当は、
- 2020年:24円
- 2021年:48円
- 2022年:62円
- 2023年:74円
- 2024年:86円
- 2025年:100円
- 2026年予想:112円
と増加しています。
さらに現在の2025〜2027年中期経営計画では、年間90円を起点とした累進配当を導入しています。
累進配当とは、基本的に前年度の配当水準を維持または増配していく考え方です。
累進配当は、長期保有を考える投資家にとって安心材料の一つです。
同じく累進配当を掲げながら、成長投資と株主還元の両立を進めている企業として、丸紅の企業研究でもこの考え方を見ています。
加えてINPEXは、配当だけではなく自己株式取得も積極的に行っています。
2026年8月7日の決算では、当期利益が過去最高となる見込みであることや、会社自身が現在の株価を割安と認識していることから、1,400億円の自己株式取得を決定しました。年間配当112円と合わせた2026年の総還元性向は約53%になる見込みです。
配当総額は約1,303億円の予想なので、当期利益5,100億円に対する配当だけの割合は単純計算で約26%です。
しかしINPEXは配当性向だけではなく、
配当+自己株式取得
を合わせた総還元性向50%以上を中期的な方針としています。
これは、これから巨額の成長投資が必要になるINPEXらしい考え方でもあります。
利益をすべて株主へ返すのではなく、
将来の成長へ投資する。
財務基盤を守る。
それでも余力があれば株主へしっかり還元する。
成長と還元を両立できるかが、長期保有を考えるうえでも重要になります。
業績を見るときは、「何で利益が増えたのか」まで確認する
ただし、長期投資で大切なのは「過去最高益だから良い会社」と判断することではありません。
毎回の決算で確認したいのは、
- 原油・天然ガス価格にどれだけ支えられたのか
- 円安による利益押し上げはどれくらいか
- イクシスの生産量と利益は伸びているか
- 新しいプロジェクトが利益へ貢献し始めているか
- 営業キャッシュフローは増えているか
- ROICは資本コストを上回っているか
- 成長投資をしながら株主還元を続けられているか
です。
資源価格や為替は、INPEX自身がコントロールすることはできません。
一方で、
良い権益を確保する。
設備を安定して動かす。
生産コストを下げる。
新しいプロジェクトを立ち上げる。
投資した資本から利益を生み出す。
ここは企業自身の力です。
だから私はINPEXの業績を見るとき、原油価格によって一時的に利益が増えたかどうか以上に、外部環境を除いても会社そのものの稼ぐ力が強くなっているかを確認していきたいと思います。

INPEXは資源価格で利益が動く会社ですが、それだけを見ていては本当の成長を見逃してしまいそうです。
イクシスの安定操業やキャッシュ、ROIC、そして増配まで含めて、会社そのものの稼ぐ力を見ていきたいですね。
INPEXのリスク|資源価格だけではない、巨大エネルギー事業が抱える不確実性
しかし、その強みの裏側には、エネルギー企業ならではの大きなリスクもあります。
特に確認しておきたいのは、
- 原油・天然ガス価格と為替の変動
- イクシスなど大型プロジェクトへの依存
- 地政学・資源国の政策変更
- 巨額投資とプロジェクト遅延
- 脱炭素によるエネルギー需要の変化
- CCS・水素など新事業の採算性
- 事故・災害・サイバー攻撃
- 新しい資源を確保し続けられるか
です。
INPEX自身も、これらを事業上の重要なリスクとして開示しています。
特に石油・天然ガス開発は、資源を探してから実際に販売して投資資金を回収するまで10年以上かかることもあり、一度の判断が長期間の収益を左右するビジネスです。
だからINPEXを見るときには、
「エネルギー需要があるから大丈夫」
だけでも、
「原油価格が下がったら危ない」
だけでも十分ではありません。
大切なのは、外部環境が変化する中で、大型プロジェクトを安全に動かし、投資した資本を長期的な利益とキャッシュへ変え続けられるかを見ることだと思います。
原油価格・天然ガス価格・為替|会社ではコントロールできない大きな変動要因
世界景気、エネルギー需給、OPEC+の生産政策、地政学、脱炭素の進展などによって資源価格は大きく動きますが、INPEX自身がこれをコントロールすることはできません。
INPEXは期初時点の試算として、2026年12月期では原油価格が1バレル1ドル変動すると年間損益に約55億円、ドル円が1円変動すると約30億円の影響があるとしています。
円安になれば、ドル建てで得た売上や利益を円へ換算したときに押し上げ要因になります。
反対に、
原油安+円高
が同時に進めば、INPEXには大きな逆風となる可能性があります。
もちろん会社側も、一部について価格・為替変動のリスクを抑える手段を取る場合があります。
しかし公式にも、これらの変動リスクを完全に取り除くことはできないと説明しています。
ここはINPEXへ投資するときに避けられない特徴です。
ただし、これまで見てきたように利益を決めるのは資源価格だけではありません。
価格はコントロールできなくても、生産量、安定操業、コスト、権益、販売方法は企業努力で改善できる。
だからこそ、原油価格が下がったときに、会社そのものの収益力がどこまで耐えられるのかを見ることが重要になります。
大型プロジェクトへの依存|イクシスの強さは、そのまま集中リスクにもなる
つまり、
イクシスが順調に動けば大きな利益を生む。
一方で、
イクシスに大きなトラブルが起きれば、その影響も大きくなる。
ということです。
INPEXは世界5つのコアエリアへ事業を広げていますが、生産量が完全に分散しているわけではありません。
2025年度の生産量では、豪州・東南アジア地域が約40%、アブダビ・ユーラシア等地域が約54%を占めています。会社自身も、現状では特定地域・鉱区への依存度が高く、主要鉱区で操業が困難になった場合には業績へ悪影響を及ぼす可能性があると説明しています。
ここは強みとリスクが完全に表裏一体です。
巨大な資源権益へ集中することで効率よく大きな利益を生み出せます。
しかし、一つの設備停止による影響も大きくなります。
だから今後、
- イクシスの安定操業を維持できるか
- アブダビの生産を安定して続けられるか
- アバディLNGを新しい利益の柱へ育てられるか
- LNGトレーディングや新事業によって利益源を広げられるか
を見る必要があります。
イクシスが強いこと自体が問題なのではありません。
イクシスで稼いでいる間に、次の利益の柱をつくれるかが重要なのだと思います。
地政学リスク|世界で資源を持つ強みは、世界情勢の影響を受けることでもある
これは資源供給先を分散できる大きな強みです。
しかし同時に、世界情勢の変化から逃れられないということでもあります。
資源開発は、その国の政府や国営石油会社との契約をもとに進めます。
そのため、
- 紛争や政情不安
- 資源国による政策変更
- OPEC+などによる生産制限
- 税制・法制度の変更
- 外国送金や為替への規制
- 資源国から契約条件の見直しを求められる可能性
などが事業へ影響します。
通常の商品であれば、仕入先を変えるという選択肢があります。
しかし油田やガス田は動かせません。
地下にある資源と、その国との長期的な契約を前提に何十年も事業を行います。
だからこそ、資源国との信頼関係もINPEXの競争力になっていますが、政治情勢が大きく変われば企業努力だけでは解決できない場合があります。
世界に資源を持つことは分散であり、同時に世界情勢へさらされることでもある。
この両面を理解しておきたいところです。
巨額投資と開発遅延|期待の大きいプロジェクトほど、失敗したときの影響も大きい
公式のリスク説明でも、探鉱・開発投資から生産・販売による資金回収まで10年以上かかる場合があるとしています。
しかも、その間には、
- 政府の許認可
- 地下構造や地質上の問題
- 建設費・資機材価格の上昇
- 原油・天然ガス価格
- 為替
- LNG長期販売契約
- 建設工期
など多くの不確実性があります。
条件が悪化すれば、プロジェクトの遅延だけでなく、投資そのものの採算が悪化する可能性があります。
今後特に注目したいのが、アバディLNGとイクシス拡張です。
INPEXはアバディについて2027年までのFIDを目指し、2030年代初頭の生産開始を目標としています。またイクシスについても、安全・安定操業を続けながら2030年代前半の液化能力拡張を目指しています。
実現すれば大きな成長につながります。
しかし裏返せば、
建設費が想定以上に膨らむ。
予定より生産開始が遅れる。
完成した頃にLNG市場の環境が変わる。
という可能性もあります。
だから大型プロジェクトでは、「完成したか」だけではなく、
いくら投資して、いつ稼働し、どれだけのROICとキャッシュを生み出したのか
まで確認する必要があります。
脱炭素政策と需要変化|石油・天然ガスが想定より早く減る可能性
一方で、世界のエネルギー転換がINPEXの想定より速く進む可能性も考えておく必要があります。
INPEX自身も、ネットゼロへの移行が想定以上の速度で進んだ場合、石油・天然ガスの埋蔵量評価が減少する可能性があると開示しています。
例えば、
再生可能エネルギーのコストが急速に低下する。
蓄電池性能が大きく向上する。
炭素税や排出規制が強化される。
石油・天然ガス需要が想定より早く減少する。
こうした変化が起きれば、長期間の生産を前提として投資した資産から十分な利益を回収できなくなる可能性があります。
INPEXは2035年までにGHG排出原単位を2019年比60%削減する目標を掲げていますが、この目標自体も、技術進展、経済合理性、各国の政策など一定の事業環境を前提としています。
つまり、
脱炭素が遅すぎてもリスク。
速すぎてもリスク。
という難しさがあります。
今のエネルギー需要へ応えながら、次のエネルギーへ投資する。
INPEXが掲げる「責任あるエネルギー・トランジション」は、まさにこの難しいバランスを取るための戦略でもあります。
CCS・水素・電力事業|未来の成長分野が、本当に利益になるとは限らない
これは将来の大きな成長機会です。
しかし、成長市場であることと、INPEXが利益を出せることは同じではありません。
Vision 2035では、低炭素・電力関連分野へ投資キャッシュフローの2割程度を振り向ける想定ですが、会社自身も投資に移行する段階でプロジェクトの採算性を厳しく評価するとしています。CCS・水素・電力関連だけでも約2,000億円の有力投資案件を示し、さらに全分野で1兆円を超える潜在的な投資案件があるとしています。
CCSには制度整備やCO₂の価格。
水素には製造コストや需要。
再生可能エネルギーには発電価格や金利、設備コスト。
電力事業には競争環境。
それぞれ異なる条件があります。
だから、
「CCSをやっている」
「水素をやっている」
「再エネをやっている」
だけでは投資判断にはなりません。
大切なのは、
その事業にいくら投資し、誰がお金を払い、どれだけの利益とキャッシュが残るのか。
ここです。
石油・天然ガスで稼いだ大切なキャッシュを、採算の取れない新規事業へ大量に使ってしまえば、むしろ企業価値を下げることもあります。
INPEXがエネルギー転換を本当の成長へ変えられるかどうかは、新しい技術以上に「投資を選ぶ力」が重要になると思います。
事故・災害・サイバー攻撃|安全操業が止まれば、エネルギーも利益も止まる
事故、自然災害、設備故障、サイバー攻撃などによって操業が停止すれば、修繕費だけでなく、その間に本来生産できたはずのエネルギーと利益も失われます。
特に現在のエネルギー設備はデジタル化が進んでいるため、サイバー攻撃による情報システム障害も操業リスクとしてINPEX自身が挙げています。
エネルギーや通信など社会インフラのデジタル化が進むほど、それをサイバー攻撃から守る技術も重要になります。
AI・通信・サイバーセキュリティを組み合わせて社会インフラを支えるNECの強みも、こうした視点から見るとつながってきます。
またINPEXは、2025年に操業現場で重大事故が2件発生したことを公表し、HSE(健康・安全・環境)リスク管理や教育、プロジェクトマネジメントをさらに強化する方針を示しています。
イクシスのような巨大プロジェクトでは、
安全に動いていること自体が利益を生み出している
ともいえます。
だから決算では生産量や利益だけでなく、
- 大きな事故が起きていないか
- 設備停止が増えていないか
- 計画外停止が長期化していないか
- 安全指標が悪化していないか
も確認したいところです。
安全操業は、INPEXにとって最も基本的な収益力の一つです。
資源を見つけ続けられるか|地下の資産は、使えば少しずつ減っていく
そのためINPEXが現在大きな利益を上げていても、それだけで将来も同じ利益が続くとは限りません。
新しい資源を探す。
既存油田・ガス田の生産量を維持する。
新しい権益を取得する。
発見した資源を商業化する。
これを継続する必要があります。
しかし探鉱は、技術が進歩しても必ず成功するわけではありません。
INPEX自身も、商業生産できる規模の資源を発見できる確率は低く、発見しても採算が合わない場合があると説明しています。
失敗した探鉱費や、採算性が低下した資産については損失を計上する可能性もあります。
さらに既存の鉱区にも契約期限があります。
契約を延長できなかったり、更新時に権益比率などの条件が悪化したりすれば、将来の生産や利益へ影響します。
だからINPEXの長期的な価値を見るときには、
今どれだけ生産しているか
と同時に、
その先の10年、20年に生産する資源を確保できているか
を見る必要があります。
アバディLNGやイクシス拡張、新しいアブダビの開発などが重要なのも、そのためです。
INPEXのリスクを見るときは、「コントロールできること」と「できないこと」を分けて考える
会社自身ではコントロールしにくいものには、
- 原油・天然ガス価格
- 為替
- 世界情勢
- 資源国の政策
- エネルギー需要や脱炭素の速度
があります。
一方で、INPEX自身の力で改善できるものもあります。
- 安全・安定操業
- 生産コスト
- 新規プロジェクトの投資判断
- 工期と建設費の管理
- 新しい権益の確保
- ROIC
- キャッシュフロー
- 次世代エネルギーの事業化
INPEXは新規・既存プロジェクトについて、IVAS(INPEX Value Assurance System)などを使って技術面、経済性、リスクを評価し、主要プロジェクトについては定期的に取締役会へ報告する仕組みを設けています。
だから長期投資では、
原油価格が下がったからINPEXはダメ
と考えるのではなく、
厳しい外部環境の中でも、会社自身がコントロールできる部分を改善できているか
を見ることが大切です。
原油価格や世界情勢は変えられません。
しかし、安全に設備を動かし、良いプロジェクトへ投資し、キャッシュを生み、次の資源とエネルギーへつなげることはできます。
私はINPEXのリスクを見るとき、外部環境の予想以上に、変化へ対応できる会社であり続けられるかを確認していきたいと思います。

INPEXには、資源価格や世界情勢など自分たちでは変えられないリスクがあります。
だからこそ、安定操業や投資判断、次の利益の柱をつくる力を見ていきたいですね。
INPEXの株価分析|資源価格で動く株を、長期ではどう見るべきか
INPEXは世界各地に石油・天然ガスの権益を持ち、大型LNGプロジェクトを動かしながら、CCS、水素・アンモニア、再生可能エネルギー、電力などへ事業領域を広げています。
しかし株式市場では今も、
- 原油・天然ガス価格
- 為替
- 世界情勢
- OPEC+などの供給動向
- 四半期ごとの生産量
といった短期的な材料によって株価が大きく動くことがあります。
だからINPEXでは、
株価が上がった=会社の価値が同じだけ高まった
とも、
株価が下がった=会社の競争力が失われた
とも限りません。
長期投資で見るべきなのは、株価そのものよりも、その奥にある三つの層です。
- 原油価格・為替・世界情勢などの外部環境
- 生産量・安定操業・コスト・ROIC・キャッシュフローなどの企業自身の収益力
- PER・PBRなどに表れる株式市場からの評価
この三つを分けて考えることで、INPEXの株価がなぜ動いているのかを理解しやすくなります。
そして今後のINPEXを見るうえで特に面白いのは、市場がこの会社をいつまで「資源価格で動く会社」として評価するのかという点です。
INPEXの株価は、なぜ原油価格や為替で大きく動くのか
これは偶然ではありません。
INPEXが海外で販売する石油・天然ガスの価格は国際的な資源価格の影響を受けます。
さらに海外で得る収益の多くは外貨建てなので、円安になれば円へ換算したときの売上や利益を押し上げる方向に働きます。
そのため大きな方向性として、
原油高・円安は追い風
原油安・円高は逆風
になりやすい企業です。
しかし、ここまで企業研究してきたように、利益を決めるのはそれだけではありません。
- 石油・天然ガスの生産量
- イクシスなど大型設備の稼働率
- 保有する権益比率
- LNGの販売量
- 生産・開発コスト
- 長期販売契約
- 新しいプロジェクトの立ち上がり
も利益を左右します。
2026年8月にINPEXが通期純利益予想を5,100億円へ引き上げた際にも、会社側は高い原油価格だけでなく、イクシスLNGの好調な生産を要因として挙げています。
だから、
「原油価格が上がったからINPEXを買う」
だけでは、企業研究としては少し足りません。
原油価格は外から与えられるものです。
それに対して、設備を安定して動かし、生産量を増やし、コストを管理し、良い権益を確保することはINPEX自身の力です。
長期的には、原油価格に恵まれたときにどれだけ稼げるかより、原油価格に恵まれないときにもどこまで利益を残せるかを確認したいと思います。
PER・PBRが低いからといって、すぐに「割安」とは判断しない
しかし資源株では、PERが低い=市場が間違っているとは限りません。
資源価格が高い時期には利益が急増するため、株価がそれほど上がらなくてもPERは自動的に低くなります。
例えば、
株価が変わらない。
↓
原油価格が上がる。
↓
利益が大きく増える。
↓
EPSが増える。
↓
PERが低下する。
ということが起こります。
一見すると非常に割安ですが、その利益が資源価格の低下によって翌年減少すれば、同じPERでは考えられません。
PBRについても同じです。
INPEXは巨大な油田・ガス田、LNG設備など多くの資産を持っています。
しかし地下資源は生産すれば減少し、大型設備には維持・更新投資も必要です。
だから長期投資では、
「PERが何倍か」
だけを見るのではなく、
「その利益を何年間続けられるのか」
まで考える必要があります。
私はINPEXを見るとき、現在のPERよりも、
- 資源価格を平準化したときの利益
- 営業キャッシュフロー
- ROE
- ROIC
- 将来の生産量
- 次の利益源
を合わせて確認したいと思います。
安い株価なのか。
それとも、利益の不確実性を織り込んだ株価なのか。
ここを分けて考えることが、INPEXの株価分析では重要です。
「資源株」から「総合エネルギー企業」へ変われば、市場評価も変わる可能性がある
現在のINPEXの利益は、石油・天然ガス・LNGが大部分を支えています。
そのため株式市場も、資源価格の影響を強く受ける企業として評価します。
しかし事業そのものは少しずつ変わっています。
INPEX Vision 2035では、天然ガス・LNGを拡大しながら、CCS、水素・アンモニア、電力などへ資金を振り向け、ROEは株主資本コスト、ROICはWACCを上回ることを目標としています。
もし今後、
イクシスから安定した利益を得る
↓
アバディLNGなど新しい利益の柱が加わる
↓
LNGトレーディングが利益を生む
↓
CCS・水素・電力が事業として成立する
↓
資源価格が下がっても一定のROE・ROICを維持する
という状態になれば、市場からの見え方は変わる可能性があります。
つまり、
「原油価格が上がれば利益が増える会社」
から、
「複数のエネルギー事業から長期的にキャッシュを生み出す会社」
への変化です。
ただし、未来の事業が存在するだけでは評価は変わりません。
市場が見るのは、
本当に利益を生んだか。
です。
CCS、水素、再生可能エネルギーを始めたというニュースより、そこから実際に売上・利益・キャッシュが生まれたときの方が、企業価値への影響は大きくなります。
私はINPEXの株価を見るとき、新しいエネルギー事業が「期待」から「利益」へ変わる瞬間を確認していきたいと思います。
株主還元|資源価格だけではない「保有する理由」をつくれるか
2025〜2027年の中期経営計画では、年間90円を起点とする累進配当を導入し、自己株式取得も含めて総還元性向50%以上を目指す方針です。
累進配当の特徴は、利益が多少変動したからといって、すぐに配当を引き下げる考え方ではないことです。
資源株は利益が大きく変動します。
そのため、配当まで資源価格と一緒に大きく上下すれば、長期保有する投資家からすると不安定になります。
そこで、
資源価格によって利益は変動する。
しかし配当はできるだけ安定させる。
という方向へ進めれば、株式の性格も少し変わります。
さらに、株価が企業価値に対して割安だと会社自身が判断した場面では、自己株式取得も有効です。
2026年8月7日には、通期利益予想の引き上げとともに、年間配当予想を112円へ引き上げ、最大1,400億円の自己株式取得も発表しました。
ただし、株主還元だけ多ければ良いわけではありません。
INPEXにはアバディLNG、イクシス拡張、CCS、水素など、将来に向けた大きな投資もあります。
だから理想なのは、
良い成長投資を行う。
↓
投資からキャッシュを生む。
↓
次の成長へ再投資する。
↓
余力を株主へ還元する。
という循環です。
株価分析では、配当利回りそのものよりも、成長投資と株主還元を両立できるキャッシュ創出力が続いているかを見たいと思います。
信用残・短期需給|企業価値とは分けて考える
信用残は、企業価値そのものではなく、短期的な株価の動きやすさを見る指標だからです。
信用買いが大量に積み上がると、将来の返済売りが増えるため、株価上昇時の上値を重くしたり、下落時の売りを加速させたりする可能性があります。
一方で、信用倍率が高いから必ず株価が下がるわけでもありません。
大切なのは倍率だけではなく、
- 信用買い残が増えているか減っているか
- 株価上昇と同時に買い残が増えていないか
- 出来高は増えているか
- 現物の買いが入っているか
という推移を見ることです。
だから長期投資では、
企業価値を考える材料
と、
購入タイミングを考える材料
を分けたいと思います。
イクシスの競争力や将来のキャッシュフローは企業価値。
信用残や短期チャートは購入タイミング。
この二つを混ぜないことが大切です。
長期投資では、「株価がいくらか」より企業価値がどう変わったかを見る
だから私は短期的な株価だけで、
「安くなったから買い」
「上がったからもう高い」
とは考えたくありません。
長期的に確認したいのは、次の五つです。
- 既存事業の収益力
イクシスを中心とした石油・天然ガス・LNG事業が安定してキャッシュを生んでいるか。 - 次の利益の柱
アバディLNG、LNGトレーディング、CCS、水素、電力などが利益へ変わっているか。 - 資本効率
巨額投資を続けてもROICがWACCを上回っているか。INPEXも中期計画でROICがWACCを上回ることを目標としています。 - 株主還元
累進配当と自己株式取得を、無理なく生み出したキャッシュで続けられているか。 - 市場からの評価
利益構造が変わることで、PERやPBRなどの評価も変化しているか。
この五つが改善しながら株価だけが下落しているなら、長期投資では魅力が高まる可能性があります。
反対に、株価が上昇していても、利益が資源価格だけに支えられ、ROICが悪化し、新規投資の採算性が下がっているなら慎重に見る必要があります。
株価を追いかけるのではなく、企業価値の変化を追いかける。
INPEXのように外部環境による株価変動が大きい企業ほど、この考え方が重要だと思います。
最新の株価指標は、「企業の答え」ではなく「現在地」として見る
確認するのは、
- 株価
- PER
- PBR
- 予想配当利回り
- 信用買い残・信用売り残
- 年初来高値・安値
などですが、これらは「現在、株式市場がINPEXをどのように評価しているのか」を確認するためのものです。
そして数字を更新するたびに、
企業の実力が変わったのか。
外部環境が変わったのか。
市場の期待だけが変わったのか。
を考えます。
例えば2026年8月7日の決算では、通期純利益予想が過去最高の5,100億円へ引き上げられ、年間配当予想も112円へ増額、最大1,400億円の自己株式取得が発表されました。
これは2026年時点の「現在地」です。
しかし数年後にこの記事を読み返すときに本当に確認したいのは、
その5,100億円の利益が次の投資へどう使われたのか。
その投資が新しい利益を生んだのか。
そして市場からの評価がどう変わったのか。
という、その後の変化です。
最新の株価指標は随時更新しながらも、この記事ではその数字の奥にあるINPEXの長期的な企業価値を追い続けたいと思います。

INPEXは資源価格で株価が動きやすいからこそ、短期の値動きと企業価値を分けて考えたいですね。
新しい事業が利益へ変わり、市場からの評価まで変わるのか。長く見守りたいと思います。
INPEXは長期投資先として魅力的か|社会を止めないエネルギー企業を、長く保有できるか
最後に考えたいのは、INPEXを10年、20年という長い時間軸で保有できる企業なのかということです。
私が長期投資で大切にしているのは、
人々から必要とされ、長く愛される企業であること。
ただ、INPEXはトヨタ自動車や任天堂のように、一般消費者が日常的に商品を購入する会社ではありません。
それでも私たちの暮らしを少し広く見れば、
- 家庭で使う電気やガス
- 工場を動かすエネルギー
- 病院を支える電力
- 人や物を運ぶ交通
- 通信ネットワーク
- AI・データセンター
- 社会インフラ
のすべてが、エネルギーなしでは成り立ちません。
つまりINPEXが支えているのは、目に見える商品ではなく、社会が当たり前に動き続けるための土台です。
そして長期投資で見るべきなのは、現在の石油価格でも、今日の株価でもありません。
10年、20年後の社会でも、INPEXが必要とされる役割を持ち続けているか。
私はそこから考えたいと思います。
10年後も20年後も、社会はエネルギーを必要とする
INPEXの場合、石油だけを見れば答えは簡単ではありません。
EVが増える。
再生可能エネルギーが増える。
脱炭素政策が進む。
社会のエネルギー構成はこれから大きく変わっていきます。
しかし一方で、エネルギーそのものが不要になることは考えにくいと思います。
むしろ、
- AI・データセンターの拡大
- 社会全体の電化
- EVの普及
- 工場の高度化
- 新興国の経済成長
- デジタルインフラの拡大
によって、電力やエネルギーの重要性はさらに高まる可能性があります。
だから長期的な問いは、
「石油が何年残るか」
ではありません。
「社会が必要とするエネルギーが変わったとき、INPEXも一緒に変われるか」
です。
石油・天然ガスから始まり、LNG、CCS、水素、電力、再生可能エネルギー、新しい地下資源へ。
INPEXが扱うものは変わっても、
地球の力をエネルギーへ変え、必要な場所へ届ける
という役割を守ることができれば、10年後、20年後も社会から必要とされる企業であり続けられると思います。
日本にとって必要な企業であることは、長期保有を考える大きな理由になる
世界各地に資源権益を持つ。
自ら大型LNGプロジェクトを動かす。
海外から日本へLNGを届ける。
国内でも天然ガスを生産する。
LNG基地とパイプラインを通じて需要地まで供給する。
この一連の仕組みは、単に企業が利益を生み出すためだけのものではありません。
日本が必要なエネルギーを確保するための仕組みでもあります。
経済産業大臣が拒否権を持つ甲種類株式、いわゆる黄金株を保有していることも、その特殊な役割を象徴しています。
もちろん、
国にとって重要な会社=必ず良い投資先
ではありません。
長期投資では利益、資本効率、成長性、株主還元を見る必要があります。
それでも、
「この企業が社会から必要とされ続ける理由は何か」
と考えたとき、日本のエネルギー安定供給を支える役割は非常に大きいと思います。
普段は意識されなくても、エネルギーが止まれば社会は止まります。
INPEXは、その「止めないための仕組み」の一部を担っています。
長期保有で期待したいのは、「資源高で稼ぐ会社」からの進化
原油価格が上昇すればINPEXの利益が増える。
もちろん、それは悪いことではありません。
しかし長期投資先としてさらに魅力的になるためには、資源価格に恵まれなくても企業自身の力で成長できることが重要です。
そのために確認したいのが、
- イクシスの安定操業と拡張
- アバディLNGの立ち上げ
- LNGトレーディングの成長
- CCSの商用化
- 水素・アンモニアの事業化
- 再エネ・蓄電池・ガスを組み合わせた電力事業
- 新しい地下資源
- ROICの改善
です。
ここまで企業研究してきて感じるのは、INPEXの未来は「石油をやめられるか」ではないということです。
石油・天然ガスで培った技術、資産、資金、人材を使いながら、
利益を生む場所を少しずつ増やせるか。
ここが重要です。
イクシスという大きな柱から生まれるキャッシュを使ってアバディを育てる。
天然ガスの技術をCCSや水素へつなぐ。
LNGを生産するだけでなく、世界から調達して必要な場所へ届ける。
そして新しい事業が再びキャッシュを生み出す。
この循環ができれば、INPEXは資源価格だけに企業価値を左右される会社から、一段違う企業へ進める可能性があります。
配当だけを理由に持つのではなく、配当を生み続ける力を見る
しかし私は、配当利回りだけでINPEXを保有するのは少し違うと思っています。
重要なのは、
その配当を何が生み出しているのか。
です。
配当の原資は、事業から生まれるキャッシュです。
だから長期的には、
大型プロジェクトを安定して動かす
↓
営業キャッシュフローを生み出す
↓
必要な成長投資を行う
↓
財務基盤を守る
↓
残った余力を株主へ還元する
という循環が続いていることの方が重要です。
配当だけを無理に維持する会社よりも、成長投資を続けながら自然に配当を増やせる会社の方が、長期保有には向いています。
だから私は、
配当が何円になったか
と同時に、
その配当を支えるキャッシュフローが強くなっているか
を見ていきたいと思います。
私が長期保有で確認していきたい5つの条件
特に私は、次の五つを継続して確認したいと思います。
- イクシスを安全・安定して動かせているか
現在の大きなキャッシュ創出源を守れているか。 - 次の利益の柱をつくれているか
アバディLNGをはじめ、新しい事業が実際の利益へ変わっているか。 - 大型投資後もROICを維持できているか
投資額ではなく、投じた資本以上の価値を生み出せているか。 - エネルギー転換へ対応できているか
CCS、水素、電力などが「実証」で終わらず事業化へ進んでいるか。 - 成長投資と株主還元を両立できているか
将来への投資を削って配当するのでも、株主還元を無視して投資するのでもなく、両方を実現できているか。
この五つが改善している限り、短期的に原油価格が下がったり、株価が調整したりしても、企業そのものの魅力まで失われたとは考えません。
反対に株価が上昇していても、
アバディが大幅に遅れる。
ROICが下がる。
新しい事業が利益を生まない。
イクシスの操業トラブルが増える。
こうした変化が続けば、長期保有の前提を見直す必要があります。
株価ではなく、保有する理由が変わったかどうか。
私は長期投資では、そこを大切にしたいと思います。
INPEXは、「人々から愛される企業」なのか
INPEXを企業研究する前、この言葉とエネルギー開発会社は、少し結びつきにくいように感じるかもしれません。
一般消費者がINPEXの商品を手に取る機会はほとんどありません。
街中でINPEXのサービスを使ったと意識することも多くありません。
でも企業研究を進めると、少し見え方が変わります。
朝、家の電気がつく。
工場が動く。
病院で医療が続く。
電車が走る。
スマートフォンが通信につながる。
AIが動く。
それらの裏側には、必ずエネルギーがあります。
誰かから直接「ありがとう」と言われる仕事ではないかもしれません。
それでも、社会に必要とされ続けることも、一つの「愛される企業」の形なのではないかと思います。
INPEXが本当に届けているのは、石油ではありません。
社会を止めないためのエネルギーです。
そしてその役割を、石油・天然ガスだけでなく、次の時代のエネルギーへつなげようとしています。
私はそこに、INPEXを長期的に見ていきたい理由があります。

INPEXは、普段は目立たなくても、社会が動き続けるために欠かせないエネルギーを支えている企業です。
今の強い事業から次の利益の柱を育てながら、10年後、20年後も社会から必要とされ続けるのか。そこを長く見守っていきたいですね。
INPEXの企業研究まとめ|「社会を止めないエネルギー」を届け、次の時代へつなぐ
記事の最初に考えたのは、
「INPEXは何してる?」
という、とてもシンプルな問いでした。
石油や天然ガスを探し、地下から取り出す。
もちろん、それもINPEXの仕事です。
しかし企業研究を進めると、その先にもっと大きな役割が見えてきました。
- 世界各地でエネルギー資源を確保する
- 巨大なLNGプロジェクトを自ら動かす
- 海を越えてエネルギーを需要地へ届ける
- 国内でも天然ガスを生産する
- LNG基地やパイプラインを通じて日本社会へ届ける
- CCS、水素・アンモニア、電力など次のエネルギーを育てる
INPEXを一言で表すなら、地球が持つ力をエネルギーへ変え、今の社会を支えながら、次の時代のエネルギーへつないでいく企業です。
そして、そのエネルギーの先には家庭、工場、病院、交通、通信、AI、データセンターがあります。
INPEXが本当に届けているものは、石油そのものではありません。
社会が当たり前に動き続けられるためのエネルギーです。
石油会社ではなく、エネルギーを「探す・つくる・届ける」会社
INPEXの仕事は、
資源を探す
↓
権益を確保する
↓
巨大な設備を建設する
↓
石油・天然ガスを生産する
↓
LNGなどにして運ぶ
↓
必要な場所へ届ける
ところまでつながっています。
さらに日本国内では、国産天然ガスの生産、LNGの受け入れ、パイプライン輸送、需要家への販売まで行っています。
つまり、地下に資源を持っているだけではありません。
エネルギーを社会で実際に使える状態までつなげる仕組みを持っている。
ここがINPEXを理解するうえで大切なポイントです。
そして石油・天然ガス開発で培った地下評価、掘削、巨大設備の操業、輸送などの技術は、CCS、水素・アンモニア、新しい地下資源へも広がり始めています。
扱うエネルギーが変わっても、地球の力を社会で使えるエネルギーへ変えるという仕事はつながっています。
INPEXの最大の強みは、資源・技術・操業・供給が一つにつながっていること
長い歴史の中で積み上げてきた、次の力が一つにつながっています。
- 世界5つのコアエリアを中心とした資源権益
- 大型LNGプロジェクトを動かすオペレーターとしての経験
- 資源国との長期的な関係
- 地下を評価し、掘削する技術
- 巨大設備を安全・安定して動かす力
- LNGを生産し、輸送・販売する仕組み
- 国内天然ガス・LNG基地・パイプライン
- 既存技術をCCSや水素へ広げる力
特にイクシスLNGは、その総合力を象徴するプロジェクトです。
資源権益を持っているだけではなく、自ら巨大プロジェクトを動かし、LNGを生産し、世界へ届ける。
その経験は、次の大型LNG、CCS、水素などを進めるときにも活かすことができます。
さらにINPEXには、日本のエネルギー安全保障を支えるという特殊な役割があります。
経済産業大臣が拒否権を持つ甲種類株式を保有していることも、その重要性を象徴しています。
資源を確保する力。
開発する力。
安全に動かす力。
必要な場所へ届ける力。
そして次のエネルギーへつなぐ力。
この連鎖こそが、INPEXの競争力だと思います。
今後10年は、石油から離れるのではなく「エネルギー企業として広がる」10年
しかし企業研究を通じて見えてきたのは、INPEX自身も「石油だけを続ける未来」を描いているわけではないということです。
現在の社会を支える天然ガス・LNGを強化しながら、
- アバディLNG
- イクシスの拡張
- LNGトレーディング
- CCS
- 水素・アンモニア
- e-メタン
- 再生可能エネルギー
- 電力
- 新しい地下資源
へ事業を広げようとしています。
重要なのは、過去の事業を捨てて新しい事業へ移るのではないことです。
天然ガスを扱ってきた経験を水素へ。
地下を調べてきた技術をCCSへ。
LNGを生産・輸送してきた経験をトレーディングへ。
大型プロジェクトを動かしてきた力を次のエネルギーへ。
過去に積み上げたものを使って、新しい利益源を育てる。
これがINPEXのエネルギー転換です。
だから今後10年は、「石油から離れられるか」を見る10年ではなく、「石油・天然ガスで培った力をどこまで新しいエネルギー事業へ広げられるか」を見る10年になると思います。
長期投資で見るべきなのは、未来への投資が本当に利益へ変わったか
しかし、将来性のある分野へ投資しているだけで、良い投資先になるわけではありません。
アバディLNG。
イクシス拡張。
CCS。
水素・アンモニア。
電力。
どれも大きな可能性を持っていますが、同時に大きな資金が必要です。
だから長期的には、
投資した金額
ではなく、
投資した資本から何を生み出したか
を見る必要があります。
確認したいのは、
- 既存事業が安定してキャッシュを生み続けているか
- 新しい大型LNGが次の利益の柱になっているか
- CCSや水素が実証から商用事業へ進んでいるか
- ROICが資本コストを上回っているか
- 成長投資をしながら株主還元も続けられているか
です。
INPEXがVision 2035で描く未来が実現すれば、現在より事業領域はかなり広がります。
しかし長期投資では、「未来のエネルギーをやっている」という言葉ではなく、その未来が数字として利益とキャッシュへ表れているかを確認していきたいと思います。
長期投資では、企業の成長と株価を分けて考える
だからこそ、
株価が上がったから会社が良くなった。
株価が下がったから会社が悪くなった。
とは考えないようにしたいと思います。
長期的に見るべきなのは、
- イクシスの安定操業
- 次の利益の柱
- 営業キャッシュフロー
- ROIC
- エネルギー転換
- 株主還元
が強くなっているかです。
この条件が改善しているのに、外部環境によって株価が大きく下がったのであれば、むしろ長期投資では魅力が高まっている可能性があります。
反対に株価が大きく上昇していても、利益が資源価格だけに支えられ、大型投資の採算性が悪化しているのであれば慎重に見る必要があります。
株価ではなく、保有する理由が変わったか。
INPEXのように外部環境で株価が動きやすい企業ほど、この視点を忘れずにいたいと思います。
「INPEXは何してる?」企業研究を終えた今なら、こう答えたい
企業研究を終えた今なら、私はこう答えます。
日本、そして世界の暮らしを支えるエネルギーを届けながら、次の時代のエネルギーにも挑戦している会社です。
石油を掘る。
天然ガスを生産する。
LNGを運ぶ。
それはINPEXの仕事を形にしたものです。
しかし、その仕事の目的をもう少し先まで見ると、
家庭の明かりをつける。
工場を動かす。
病院で医療を続ける。
電車を走らせる。
データセンターを動かす。
AIを使える社会を支える。
そこへつながっています。
そしてこれからは、天然ガスだけでなく、CCS、水素、再生可能エネルギー、電力などを組み合わせながら、その役割を次の時代へつなげようとしています。
INPEXが届けているのは、石油ではありません。
人々の暮らしや産業を止めないためのエネルギーです。
そして、その先にあるものを一言で表すなら、
「社会を止めない安心」
なのだと思います。
10年後、20年後に使われるエネルギーの形は、今とは変わっているかもしれません。
それでも、社会がエネルギーを必要とする限り、必要なエネルギーを見つけ、つくり、届ける企業の役割はなくなりません。
INPEXが「地球の力で未来へ挑む」という言葉のとおり、今の社会を支えながら次のエネルギーへ進むことができるのか。
これからも長い目で見ていきたい企業です。

INPEXを調べる前は、石油や天然ガスを開発する会社という印象が強いかもしれません。
でも企業研究を進めると、その先にあるのは、人々の暮らしや産業を止めないためのエネルギーでした。
今の社会を支えながら、その技術とキャッシュを次のエネルギーへつなげられるのか。10年後、20年後も社会から必要とされ続ける企業なのかを、これからも一緒に見ていきたいですね。
投資家ノート

この記事の分析内容をもとに、INPEXの業績や株価を長期的に追いかけていきます。
企業研究は一度記事を書いて終わりではなく、決算、実態的な収益力、配当金、成長分野への投資、株価、信用需給などの変化を確認しながら、この投資家ノートを継続的に更新していく予定です。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。企業の新しい取り組みがあれば、随時内容を更新していきます。
投資研究メモ 2026年8月7日
【現在の評価】
★★★★☆
【長期保有】
★★★★★
【企業理念】
★★★★★
【成長性】
★★★★☆
【株価妙味】
★★★★☆
【配当】
★★★★☆
【働きたい会社】
★★★★☆
【注目ポイント】
・2026年上期の親会社所有者帰属中間利益は2,631億円で前年同期比17.7%増。売上減でも最終利益は増加
・2026年通期の親会社所有者帰属当期利益は5,100億円を予想。過去最高益を見込む
・イクシスLNGの上期利益貢献は1,730億円で前年同期比24.5%増。INPEXの利益を支える柱として好調
・日本最大規模のエネルギー開発企業として、石油・天然ガスからLNG、CCS、水素、電力まで事業領域を拡大
・世界各地に資源権益を持ち、資源を「探す・開発する・生産する・運ぶ・届ける」まで一貫して担える
・イクシスLNGを日本企業として大型LNGプロジェクトのオペレーターとして運営できる技術・操業力が大きな強み
・海外LNGだけでなく、国内天然ガス、LNG受入基地、パイプラインまで持ち、日本社会へ実際にエネルギーを届けられる
・日本のエネルギー安全保障を担う企業で、経済産業大臣が甲種類株式(黄金株)を保有する特殊な存在
・天然ガス・LNGを2030年代の成長軸とし、イクシス拡張とアバディLNGを次の大きな利益の柱として育成中
・LNGトレーディングを強化し、「自社で生産して売る」だけでなく、複数の供給源を組み合わせる事業へ進化
・資源開発で培った地下評価・掘削技術をCCS、水素、新しい地下資源へ展開できる
・AI・データセンターなどで増える電力需要に対し、天然ガス、再エネ、蓄電池、CCS、水素を組み合わせる余地がある
・Vision 2035では、2035年に事業規模60%拡大とGHG排出原単位60%削減を目指す「60-60」を掲げる
・2025〜2027年は営業キャッシュフロー累計2.2兆円以上を目標とし、大型成長投資と株主還元を両立する方針
・2026年は年間配当112円を予想し、さらに1,400億円の自己株式取得を決定。総還元性向は約53%を見込む
【気になること】
・原油・天然ガス価格、為替、世界情勢など、自社ではコントロールできない要因で利益と株価が大きく変動する
・イクシスやアブダビなど大型プロジェクトへの利益依存が大きく、設備停止や操業トラブルの影響も大きい
・世界各地で事業を行うため、紛争、資源国の政策変更、税制、契約条件など地政学リスクを避けられない
・アバディLNGやイクシス拡張は大きな成長余地がある一方、建設費上昇や工期遅延によって採算が悪化する可能性
・エネルギー転換が想定以上に速く進めば、石油・天然ガス需要や既存資産の価値が低下する可能性
・CCS、水素、電力などは将来性が大きいものの、現時点ではイクシスのような大きな利益柱にはなっていない
・未来分野へ投資するだけではなく、実際に利益・キャッシュ・ROICへ変えられるかを確認する必要がある
・石油・天然ガスは生産すれば地下資源が減るため、新しい権益や資源を継続的に確保し続ける必要がある
・巨大設備を24時間動かす事業のため、事故、自然災害、設備故障、サイバー攻撃による操業停止リスクが大きい
・成長投資候補は非常に大きく、資金を使うこと自体ではなく、ROICがWACCを上回る投資を選別できるかが重要
個人的には、「長期保有★★★★★」はかなり納得感があります。
特にINPEXの場合は、単に「高配当だから持つ」ではなく、日本に必要なエネルギーを確保する役割、世界で巨大プロジェクトを動かせる力、そこから生まれるキャッシュを次のエネルギーへつなげられる可能性まで含めて長期保有したい企業だと思います。
一方で成長性を★★★★★ではなく★★★★☆にしたのは、アバディ、CCS、水素、電力などの未来がまだ「利益として完成したわけではない」から。
ここが実際の収益へ変わってきたら、★★★★★へ引き上げてもいいと思います。

投資判断に関する注意事項
この記事は、INPEXの事業内容や成長性、業績、株価について、公開情報をもとに筆者の視点で整理したものです。
特定の銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。
株価は、企業業績だけでなく、国内外の景気、為替、金利、地政学情勢、市場の需給など、さまざまな要因によって変動します。
実際に投資する際は、最新の決算資料や株価情報を確認し、ご自身の判断と責任で行ってください。
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