インバウンド関連銘柄を徹底解説|外国人に日本が人気なのはなぜ?日本の魅力と企業の強さ

インバウンド関連銘柄を徹底解説|外国人に日本が人気なのはなぜ?日本の魅力と企業の強さ
おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

最近、日本の観光地や街中で外国人旅行者を見かけることが本当に増えましたね。外国人に日本が人気なのは、円安で日本が安くなったからだけなのでしょうか?
調べてみると、答えは「それだけではない」ようです。日本には食、歴史・文化、自然・四季、温泉、アニメ・ゲーム、テーマパークなど、世界の人がそれぞれ好きになれる「違う日本」がたくさんあります。
そしてインバウンド関連銘柄を見るときも、「外国人が増える会社」を探すだけでは足りません。日本人気を売上へ変え、コストを差し引いたあとも利益として残せる企業なのかを見ることが大切です。
なぜ外国人に日本が人気なのかをデータから確かめながら、航空・鉄道・ホテル・小売・外食・テーマパーク・IPまで、日本の魅力がどの企業の成長につながるのか一緒に見ていきましょう!

分野主なインバウンド関連銘柄
航空・空港ANA HD、日本航空、日本空港ビルデング
鉄道JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州
ホテル共立メンテナンス、藤田観光
小売三越伊勢丹HD、PPIH、イオン
テーマパークオリエンタルランド、富士急行
IP任天堂、バンダイナムコHD、サンリオ
この記事で分かること
  • インバウンドとは何か、訪日外国人がどれくらい増えているのか
  • 外国人に日本が人気なのはなぜか、歴史・食・アニメ・自然など日本の魅力
  • 訪日外国人が日本で何にお金を使い、どの業界へ消費が流れているのか
  • ホテル・鉄道・航空・小売・外食・テーマパーク・IPなど、インバウンド関連銘柄の考え方
  • 円安・地方誘客・リピーター・高付加価値旅行など、日本のインバウンドが今後も成長する条件
  • 訪日客数だけでは判断できない、インバウンド関連銘柄へ投資するときの確認ポイント
スポンサーリンク

インバウンドとは?日本には今、どれくらい外国人が来ている?

インバウンドとは?日本には今、どれくらい外国人が来ている?

「インバウンド」と聞くと、観光地や繁華街で外国人旅行者を見かける機会が増えた、というイメージが最初に浮かびます。

私自身も以前は、「外国人観光客が増えて、日本のホテルや百貨店が恩恵を受けている」というくらいの理解でした。ただ、数字を調べてみると、今のインバウンドはそれだけでは捉えきれません。

日本を訪れた外国人は2025年に年間約4,268万人となり、コロナ前の2019年を大きく上回りました。さらに訪日外国人旅行消費額は2025年に約9.5兆円まで拡大しています。2026年に入ると、1〜7月の訪日外客数は前年同期をやや下回っている一方、4〜6月期の1人当たり旅行支出は24.4万円まで上昇しました。つまりインバウンドを見るときは、単純に「外国人が何人来たか」だけではなく、どこの国・地域から来て、何日滞在し、日本で何にいくら使ったのかまで見る必要があります。 

そして、この違いはインバウンド関連銘柄を考えるうえでも大きな意味を持ちます。ホテルにお金を使う旅行者、買い物を楽しむ旅行者、食や文化体験を目的に長く滞在する旅行者では、恩恵を受ける企業が変わるからです。まずは「インバウンド」という言葉の意味から、現在の日本でどれほど大きな市場になっているのかを数字で整理してみます。

インバウンドとは何を意味する?

インバウンドとは何を意味する?

インバウンド(inbound)は、もともと「外から中へ入ってくる」という意味の言葉です。

旅行・観光の世界では、海外から日本へ訪れる旅行をインバウンド、日本人が海外へ旅行することをアウトバウンド、日本国内に住む人が国内を旅行することを国内旅行と呼びます。観光庁も、日本を訪れる旅行者を「インバウンド」、日本から海外へ旅行する人を「アウトバウンド」として政策や統計を整理しています。 

種類人の動き具体例
インバウンド海外 → 日本米国から日本へ旅行する
アウトバウンド日本 → 海外日本人がフランスへ旅行する
国内旅行日本国内 → 日本国内東京から北海道へ旅行する

ただし、ここで一つ注意したいのが、ニュースでよく見る「訪日外客数=外国人観光客だけ」ではないことです。ここで登場するJNTO(日本政府観光局)は、訪日外国人旅行者の誘致や海外への情報発信、市場調査などを行っている公的機関で、日本を訪れた外国人の人数を示す「訪日外客数」も毎月公表しています。JNTOの訪日外客数には、観光客だけでなく、駐在員やその家族、留学生なども一定の定義のもとで含まれています。一方、観光庁のインバウンド消費動向調査も、観光・レジャー目的だけでなく、業務や親族・知人訪問などを含めて訪日外国人の消費を調査しています。 

普段の記事やニュースでは「訪日外国人」「外国人観光客」「インバウンド」がほぼ同じような意味で使われることもありますが、統計を見るときは少し意味が違います。投資先を考える場合も同じで、単に外国人の入国者数を見るより、実際に観光や宿泊、買い物、飲食へどれだけ需要が流れているかを確認した方が、企業業績とのつながりは見えやすくなります。

日本を訪れる外国人はどれくらい増えた?

日本を訪れる外国人はどれくらい増えた?

現在のインバウンド市場の大きさを理解するには、コロナ前からの推移を見るのが一番分かりやすいです。

JNTOによると、2019年の訪日外客数は約3,188万人でした。それが新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年には約412万人、2021年には約25万人まで急減します。その後、入国制限の緩和や国際航空便の回復とともに、2022年約383万人、2023年約2,507万人、2024年約3,687万人と急速に戻り、2025年には42,683,600人、約4,268万人まで増えました。コロナ前の2019年を約1,080万人上回る過去最高水準です。 

年訪日外客数大きな流れ
2019年約3,188万人コロナ前の最高水準
2020年約412万人新型コロナで急減
2021年約25万人入国制限で底に
2022年約383万人徐々に回復
2023年約2,507万人本格的な回復
2024年約3,687万人2019年を突破
2025年約4,268万人過去最高

では2026年も、そのまま右肩上がりなのでしょうか。2026年1〜7月の訪日外客数は24,527,200人で、前年同期比では1.7%減っています。一方、7月単月では3,442,100人となり、7月として過去最高を更新しました。韓国、台湾、米国、フランスなど17市場が7月として過去最高を記録しており、「日本人気そのものが急に失速した」と単純に読むことはできません。 

ここが投資家として面白いところです。訪日客全体が増えているか減っているかだけを見ると「2026年は少し弱い」で終わってしまいますが、国・地域別に分けると全く違う景色が見えてきます。インバウンド関連銘柄を見るときも、総数の増減だけで判断しないことが最初のポイントになりそうです。

どこの国・地域から日本へ来ている?

どこの国・地域から日本へ来ている?

街を歩いていると「外国人観光客が増えた」と一括りにしてしまいがちですが、インバウンド市場を見るうえで最も避けたいのが、「外国人」という一人の架空の旅行者を想像することです。

日本へ来る人数も、旅行する季節も、滞在期間も、使う金額も、国や地域によってかなり違います。

2026年1〜7月を見ると、最も多いのは韓国の約657万人、次いで台湾の約474万人、中国の約249万人、米国の約211万人、香港の約157万人となっています。特に韓国は前年同期比20.3%増、台湾は21.8%増となった一方、中国は56.3%減でした。米国も6.5%増えており、同じ「インバウンド」でも市場ごとの動きにはかなり大きな差があります。 

国・地域2026年1〜7月前年同期比
韓国約657万人+20.3%
台湾約474万人+21.8%
中国約249万人-56.3%
米国約211万人+6.5%
香港約157万人+8.6%

さらに2026年7月だけを見ると、台湾は76万3,800人となり単月で過去最高、韓国も89万4,700人で7月として過去最高でした。米国、英国、フランス、ドイツ、イタリアなど欧米市場でも7月として過去最高を記録しています。日本のインバウンドは、東アジアだけに依存する市場から少しずつ広がっている様子も見えてきます。 

この違いは、このあと企業を見るときにかなり重要になります。例えば、日本への距離が近く何度も訪れやすい旅行者と、長距離フライトで来日して長期間滞在する旅行者では、お金の使い方が同じとは限りません。さらに、日本へ来る目的が買い物なのか、食なのか、歴史・文化なのか、アニメやゲームなのかによっても恩恵を受ける企業は変わります。「外国人が増えた」ではなく、「誰が増えたのか」まで見る。この視点は記事全体を通して大切にしたいところです。

外国人旅行者は日本でいくら使っている?

外国人旅行者は日本でいくら使っている?

インバウンドが企業業績へどうつながるのかを考えるなら、人数以上に見ておきたいのが旅行消費額です。

観光庁によると、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円となり、2024年から16.4%増えて過去最高を更新しました。一般客1人当たりの旅行支出も約22万9,000円です。 

その9.5兆円近いお金がどこへ流れたのかを見ると、最も多いのは宿泊費でした。

費目2025年消費額構成比
宿泊費3兆4,578億円36.6%
買物代2兆5,541億円27.0%
飲食費2兆688億円21.9%
交通費9,449億円10.0%
娯楽等サービス費4,236億円4.5%

この数字を見ると、インバウンド関連銘柄としてホテルや百貨店、ドラッグストアが注目される理由も分かってきます。ただ、私はここで「買い物が多い」という印象以上に、宿泊費だけで3.4兆円を超えていることが気になりました。日本へ来るための航空運賃だけではなく、日本国内で泊まり、食べ、移動し、遊び、買う。その一連の旅行体験そのものが大きな市場になっています。

さらに2026年4〜6月期を見ると、訪日外国人旅行消費額は2兆5,096億円と前年同期比0.2%増、1人当たり旅行支出は24.4万円と3.3%増えました。2026年上半期の旅行消費額も約4.8兆円と過去最高です。旅行者数が前年を下回る局面でも、1人当たりの支出が増えれば市場全体の売上は伸びることがあります。 

国別に見ても同じです。2025年の旅行消費額は、中国が約2.0兆円で最大ですが、その後に台湾約1.2兆円、米国約1.1兆円、韓国約9,906億円と続きます。一方、一般客1人当たりの支出ではドイツ約39.2万円、英国約39.1万円、オーストラリア約38.7万円と、訪日人数では上位ではない市場の単価が高くなっています。 

ここから分かるのは、訪日客数ランキングと、企業に落ちるお金のランキングは同じではないということです。投資家として見るなら「外国人が何万人増えた」だけでなく、客単価、滞在期間、宿泊費、買い物額などを一緒に確認した方が、どの企業に本当に追い風が吹いているのかを判断しやすくなります。

インバウンドは「外国人が増えた」というだけの話ではない

インバウンドは「外国人が増えた」というだけの話ではない

日本のインバウンドは、コロナ禍による急減を乗り越え、2025年には訪日外客数が約4,268万人、旅行消費額が約9.5兆円という過去最高の規模まで拡大しました。

しかし2026年の数字を見ると、さらに大切なことが見えてきます。1〜7月の訪日外客数は前年同期を下回っている一方、旅行消費額や1人当たり支出は高い水準を維持しており、国・地域ごとの動きにも大きな差があります。 

つまりインバウンド市場を見るときに知りたいのは、「外国人が増えたか」だけではありません。誰が日本へ来たのか、何日滞在したのか、何に魅力を感じ、どこでいくら使ったのか。そこまで追って初めて、ホテル、鉄道、航空、外食、小売、テーマパークなどへの需要の流れが見えてきます。

そしてもう一つ気になるのが、そもそもなぜこれほど多くの人が旅行先として日本を選んでいるのかということです。円安で日本旅行がお得だからなのか、それとも価格以外にも日本を選びたくなる理由があるのか。その答えを考えるうえで、世界から日本がどう見られているのかが大きなヒントになります。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

訪日外国人が増えていることだけを見るのではなく、どこの国から来て、何にいくら使っているのかまで見ると、インバウンド関連企業とのつながりが少しずつ見えてきますね。

スポンサーリンク

世界22市場で日本はどれくらい人気?|JNTO調査で見る「次に行きたい旅行先」

世界の「行きたい国ランキング」で日本はどれくらい人気?

外国人旅行者が増えていると聞いても、それだけでは「日本そのものが人気なのか」は分かりません。

円安で旅行費用が割安になっているからなのか、コロナ後の反動で一時的に人が戻っているだけなのか、それとも旅行先として日本を積極的に選びたい人が世界に増えているのか。私もインバウンドについて調べ始めるまでは、この違いをあまり意識していませんでした。

そこで気になったのが、外国人が実際に「次はどこへ旅行したいか」です。JNTO(日本政府観光局)が2026年4月に公表した世界22市場の国外旅行者調査を見ると、日本は22市場のうち18市場で「今後行きたい・次に行きたい旅行先」の選択率で首位となり、残る4市場でも「次に行きたい旅行先」で上位5位以内に入りました。訪日客数が増えているだけでなく、これから旅行したい場所としても日本がかなり強い位置にいることが分かります。 

ただし、この数字を「日本は世界で一番人気の国だ」と単純化するのも違います。調査対象や質問方法には条件がありますし、日本を選ぶ理由も韓国と米国、タイとフランスでは同じではありません。むしろ今回の記事で知りたいのは、なぜこれほど違う国・地域の旅行者が、それぞれ別の理由を持ちながら日本を候補に入れているのかです。

世界22市場で見る「次に行きたい旅行先」

世界22市場で見る「次に行きたい旅行先」

JNTOの調査で面白いのは、一つの国だけを調べたランキングではないことです。

韓国、中国、台湾、香港といった東アジアから、東南アジア、米国、カナダ、豪州、欧州、中東まで22市場を対象に、それぞれの国・地域の旅行者へ「今後行きたい旅行先」と、その中から「次に行きたい旅行先」を聞いています。 

しかも、日本についての質問だと分かったことで回答が偏らないよう、旅行経験など日本に関する設問より前に旅行先を尋ねています。単純なネット上の人気投票ではなく、JNTOが今後の訪日マーケティング戦略を考えるために実施した調査です。 

22市場のうち18市場で日本が首位

22市場のうち18市場で日本が首位

2026年4月28日にJNTOが公表した結果では、日本は22市場のうち18市場で「今後行きたい・次に行きたい旅行先」の選択率で首位となりました。

さらに、日本が首位にならなかった市場でも、「次に行きたい旅行先」では上位5位以内に入っています。 

地域別に見ると、その広がりがさらに分かります。東アジアでは韓国、中国、台湾、香港のすべての市場で日本が「今後行きたい」「次に行きたい」の両方で1位。東南アジアでもタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムのすべてで日本が1位でした。特に東南アジアでは、すべての市場で日本と他の旅行先との差が10ポイント以上あり、タイ、シンガポール、フィリピン、ベトナムでは20ポイント以上の差がついています。 

欧州でも日本の存在感はかなり強く、調査対象となったすべての市場で「今後行きたい」「次に行きたい」の選択率が上位3位以内でした。フランス、イタリア、スペインでは両方で日本が首位となり、英国でも「次に行きたい旅行先」で日本が1位になっています。 

地域JNTO調査から見える日本の位置
東アジア全4市場で「今後」「次」とも日本が1位
東南アジア全6市場で「今後」「次」とも日本が1位
豪州・米州・中東多くの市場で日本が首位
欧州全市場で日本が上位3位以内
22市場全体18市場で日本が首位、残る4市場でも「次」は上位5位以内

ここまで広い地域で日本が上位に入っているのを見ると、「近いアジアの国から人気だから」という説明だけでは足りません。何時間も飛行機に乗らなければ来られない欧米の旅行者からも選ばれているからです。日本という旅行先には、距離を越えてでも訪れたいと思わせる何かがある。私はこの結果を見て、インバウンドを「円安で外国人が増えている現象」とだけ捉えるのは少し違うのではないかと感じました。

「2026年の世界ランキング」と読むときには注意したい

「2026年の世界ランキング」と読むときには注意したい

この調査は2026年4月に公表された最新資料ですが、実際にアンケートが行われたのは2024年10〜12月です。

また、対象者は2020年4月から調査時点までに、飛行機を利用したレジャー目的の国外旅行を経験した人で、欧米豪・インド・中東では中長距離旅行経験者が対象になっています。さらに、訪日旅行の具体的な体験を調べる目的から、回答者の一定割合を訪日経験者が占めるよう調査設計されています。 

そのため、「2026年現在、世界中のすべての人に聞いた人気国ランキングで日本が18カ国1位」という意味ではありません。ここは記事でも正確に書いておきたいところです。それでも、日本への関心を調べるためにJNTOが設定した幅広い22市場で、ここまで上位に並んだこと自体は、日本への旅行意向の強さを考えるうえでかなり興味深いデータです。

日本を選ぶ理由は国・地域によって違う

日本を選ぶ理由は国・地域によって違う

日本が多くの市場で選ばれていること以上に面白いのが、世界中の旅行者が同じ「日本」を見ているわけではないことです。

日本を訪れる旅行者は、国や地域によって目的も関心も異なります。旅行先として日本を選ぶ理由にも、同じように大きな違いがあります。

JNTOの調査では、国外旅行で主な目的となるものについて、東アジアでは「ガストロノミー・美食」、東南アジアでは「テーマパーク」や「庭園・花鑑賞」、欧米豪・インド・中東では「アート鑑賞」の選択率が高いという違いが確認されています。さらに「日本の地方部で体験できると思うこと」を尋ねると、欧米豪・インド・中東では、歴史や文化を深く知ること、その土地の人との交流、「ディープな日本」を味わうことへの期待が高くなっています。

東アジア|食とリピーターから見える日本

東アジア|食とリピーターから見える日本

韓国、中国、台湾、香港など東アジアでは、国外旅行の主な目的として「ガストロノミー・美食」の選択率が高くなっています。

またJNTOの推計では、台湾と香港では国外旅行経験者の約半数が日本を4回以上訪れた経験を持ち、韓国とシンガポールでも約6割が2回以上訪日していました。 

ここで見えてくるのは、東アジアのインバウンドを「一度東京や京都を見に来る旅行」と考えるだけでは足りないということです。何度も日本へ来る人が増えれば、「有名観光地を見る」以外の需要が生まれます。地方の食を目的に移動したり、季節を変えて再訪したり、前回とは違うホテルや飲食店を選んだりする可能性もあります。リピーターが多い市場では、日本の魅力を一度売って終わりではなく、何度も消費につなげられる企業が強くなるのではないか。これは後で地方誘客や関連銘柄を考えるときにも重要になってきます。

東南アジア|テーマパークや四季も日本へ行く理由になる

東南アジア|テーマパークや四季も日本へ行く理由になる

東南アジアでは、「テーマパーク」や「庭園・花鑑賞」が国外旅行の目的として比較的高く選ばれました。

また、日本の地方部に期待する体験では「ゆっくり過ごして心身を癒す」に加えて、「その地や季節でしか味わえない旬な体験」への関心も高くなっています。 

日本に住んでいると、桜や紅葉、雪景色を毎年やってくる季節として見てしまいます。しかし、世界の旅行者から見れば「その時期に日本へ行かなければ体験できないもの」です。テーマパークも同じで、日本独自のキャラクターやコンテンツと組み合わさることで訪日の目的そのものになり得ます。自然や四季は企業が所有できるものではありませんが、その体験まで人を運び、泊め、食べてもらい、遊んでもらう企業には売上が生まれる。インバウンドを見る面白さは、こうした日本の魅力と企業の事業をつなげられるところにあります。

欧米豪など|歴史・文化・「ディープな日本」への期待

欧米豪など|歴史・文化・「ディープな日本」への期待

欧米豪・インド・中東では、国外旅行の目的としてアート鑑賞の選択率が高く、日本の地方で期待する体験についても「その地の歴史や文化を深く知る」「その地の人との交流を楽しむ」「ディープな日本を味わう」といった項目が高くなっています。 

この結果は、今回の記事で日本の歴史や伝統文化をかなり厚く扱いたい理由にもつながります。日本の観光資源というと富士山や京都の有名寺院を思い浮かべますが、城下町、古い街道、祭り、工芸、温泉地、地域の食文化まで含めれば、日本各地に長い時間をかけて積み上がってきたものがあります。

そして、こうした旅行者が求めているのが「日本について深く知ること」なら、旅行日数や訪問地域も変わってくる可能性があります。東京で買い物をして帰る旅行と、地方へ移動して何泊もしながら文化体験をする旅行では、お金が流れる企業も地域も違います。

「日本人気=円安」だけでは説明できない?

「日本人気=円安」だけでは説明できない?

ここまでのデータを見ても、「円安は関係ない」と言い切ることはできません。

円安になれば、外貨を持つ旅行者にとって日本のホテル、食事、買い物などが相対的に安く感じられ、日本旅行を選びやすくなる面があります。逆に円高へ動けば、同じ商品やサービスでも旅行者にとっての負担は大きくなります。

ただ、今回確認したJNTOの調査は、為替が日本人気に何%影響したのかを測ったものではありません。そのため、「18市場で首位だから円安は関係ない」と結論づけることもできません。一方で、食、テーマパーク、花や庭園、アート、歴史・文化、地域の人との交流など、旅行者が求めている体験が複数に分かれていることも事実です。 

さらにJNTOは2026年4月から、新しいグローバルキャンペーン「Japan. Unforgettable」を開始し、特に欧米豪に多い「まだ日本へ来たことはないが、日本を今後の旅行先候補として考えている層」を主なターゲットに、日本の多様な魅力を発信しています。 

私はここが今回の記事で確かめてみたい部分です。安いから一度行ってみたい国なのか、それとも価格が変わっても、何度も時間とお金を使って訪れたくなる国なのか。もし後者なら、日本の歴史、食、自然、コンテンツ、宿泊体験などは、為替だけでは測れない競争力になります。

では、外国人旅行者は具体的に日本の何にそこまで魅力を感じているのでしょうか。ここから、日本という国そのものをもう少し深く見ていきます。

世界から見れば、日本そのものが一つの旅行ブランドになっている?

世界から見れば、日本そのものが一つの旅行ブランドになっている?

2026年4月に公表されたJNTOの調査では、日本は世界22市場のうち18市場で「今後行きたい・次に行きたい旅行先」の選択率で首位となりました。

東アジアや東南アジアだけでなく、遠く離れた欧米でも日本が上位に入っていることを考えると、現在の訪日客増加を「近隣国から人が戻ってきただけ」と見るのも、「円安だから来ているだけ」と見るのも、少し単純すぎるように感じます。 

さらに興味深いのは、日本を選ぶ人たちが一つの魅力だけを求めているわけではないことです。食を楽しみにする人、テーマパークへ行きたい人、桜や紅葉を見たい人、歴史や文化を深く知りたい人。その入口が違っていても、最終的に旅行先として「日本」が選択肢に入っています。

そう考えると、日本という国そのものが、歴史・食・自然・文化・エンタメなどを抱えた一つの大きな旅行ブランドになっているのではないか。そしてインバウンド関連銘柄を考えるなら、そのブランドに人を呼ぶ力だけではなく、旅行者が感じた魅力を実際の宿泊、移動、食事、買い物、娯楽へ変えられる企業まで追う必要があります。

おじー🦥
おじー🦥

世界のいろいろな地域で日本が「行きたい旅行先」に選ばれているんですね。でも理由は一つではありません。世界から見た日本の魅力がどこにあるのか、もっと詳しく知りたくなってきました。

スポンサーリンク

外国人に日本が人気なのはなぜ?世界から見た「日本の魅力」

外国人に日本が人気なのはなぜ?世界から見た「日本の魅力」

外国人に日本が人気なのはなぜなのか。

そう聞かれたとき、最初に思い浮かぶのは富士山や京都、寿司、アニメといった分かりやすい日本らしさかもしれません。私自身も、インバウンドについて調べる前は「有名な観光地や日本食が人気だから」というくらいに考えていました。ただ、外国人旅行者が実際に日本で体験していることを調べると、日本への関心は一つの観光資源だけでは説明できません。

観光庁の2025年「インバウンド消費動向調査」では、日本滞在中に「日本食を食べた」と答えた割合が98.2%、「ショッピング」が88.1%、「繁華街の街歩き」が81.8%でした。一方で、日本の日常生活、歴史・伝統文化、自然、温泉、ポップカルチャーなども旅行体験の一部になっており、実際に体験した人の満足度では「日本の日常生活体験」97.2%、「スキー・スノーボード」97.1%、「日本のポップカルチャーを楽しむ」96.9%など非常に高い結果が出ています。訪日旅行全体でも「大変満足」73.5%、「満足」23.9%を合わせると97%を超え、日本への再訪意向も「必ず来たい」77.9%、「来たい」19.2%でした。

この数字を見て気になったのは、日本の魅力が「一度見たら終わり」の観光地だけではないことです。古い寺社や城が残る一方で、同じ国から世界的なアニメやゲームが生まれ、四季によって景色が変わり、旅館や温泉では宿泊そのものが体験になります。古代から現代まで違う時代の日本が同時に存在し、その中を旅行者が自由に行き来できる。それこそが、外国人に日本が人気な理由を考えるうえで大きな手掛かりなのではないかと思います。

日本の歴史・伝統文化|何百年もの時間が今の街に残っている

日本の歴史・伝統文化|何百年もの時間が今の街に残っている

海外旅行で歴史的な建造物を見ること自体は珍しくありません。

それでも日本の面白さは、歴史的なものが博物館の中だけに保存されているのではなく、現在の生活の中にも入り込んでいることだと思います。東京や大阪のような巨大都市から電車で移動すれば、寺社、城下町、古い街道、温泉街などが残り、そのさらに先には地域ごとの祭りや工芸、食文化があります。

日本の歴史を観光という視点から見ると、古代、武士、江戸、明治、現代という異なる時代が積み重なり、それぞれが現在の観光資源につながっています。外国人旅行者にとっては、「日本史を勉強する」こと自体が目的でなくても、奈良の寺院、京都の町並み、城、侍文化、浮世絵、近代建築などを巡るうちに、結果として日本の長い時間の流れを体験することになります。

古代|神社・寺院・奈良

古代|神社・寺院・奈良

奈良や京都を訪れると、日本の歴史が想像以上に古いことに気づきます。

神社や寺院は単に昔の建物として残っているだけではなく、現在も祭礼や参拝などを通じて人々の生活とつながっています。何百年、場合によっては千年以上前から続く場所を、現代の街の中で実際に歩けることは、日本旅行の特徴の一つです。

私たちにとって寺社は身近すぎて、「海外からわざわざ飛行機に乗って見に来るもの」という感覚を持ちにくいかもしれません。しかし、旅行者から見れば、建築、庭園、宗教、歴史、自然が一つの場所で重なっています。単に古い建物を見るのではなく、今も使われ続けている文化の中へ入ることができる点に価値があるのだと思います。

武士の時代|城・侍・鎌倉・戦国

武士の時代|城・侍・鎌倉・戦国

侍や忍者は、日本を象徴するイメージとして海外でも知られています。

しかし観光として面白いのは、フィクションの中だけではなく、実際に城や城下町、古戦場、武家文化に触れられることです。

姫路城のような城郭を歩けば、防御のための構造や権力の象徴としての役割が見えてきます。鎌倉では寺社と武家文化、各地の城下町ではその土地独自の歴史が残っています。世界中で知られている「SAMURAI」という言葉が、実際の場所と結びつくことで、旅行の目的になります。

江戸|町人文化・浮世絵・食・街道

江戸|町人文化・浮世絵・食・街道

江戸時代になると、現在の日本文化につながるものが一気に増えてきます。

浮世絵、歌舞伎、祭り、庶民の食文化、街道、宿場町など、海外から見た「日本らしさ」の多くがこの時代と深く結びついています。

面白いのは、それらが現在の観光や消費にもつながっていることです。古い町並みを歩き、地域の料理を食べ、伝統工芸を買う。歴史を見ることと、お金を使うことが別々ではありません。地域文化が魅力として残っているからこそ、宿泊、飲食、交通、土産物など周辺産業にも需要が生まれます。

明治以降|西洋文化と日本文化が混ざり合う

明治以降|西洋文化と日本文化が混ざり合う

明治以降の日本は、西洋の技術や建築、生活様式を急速に取り入れながら、それまでの日本文化も残してきました。

その結果、洋館のすぐ近くに寺社があったり、近代建築の街を路面電車が走ったり、日本独自の和洋折衷の景観が各地に残っています。

外国人旅行者から見れば、「昔ながらの日本」だけではなく、外から入ってきた文化を日本なりに変化させてきた歴史そのものも旅行体験になります。

現代|古い文化を残しながら、新しい文化を生み出す

現代|古い文化を残しながら、新しい文化を生み出す

そして現在の日本では、東京の高層ビルや新幹線、デジタル技術のすぐ隣に、寺社や老舗、祭りが存在しています。

その一方で、アニメ、ゲーム、キャラクターなど新しい日本文化も世界へ広がっています。

私が日本の観光で一番面白いと思うのは、この時間の振れ幅です。午前中に寺院を見て、昼にラーメンを食べ、午後はアニメショップへ行き、夜は超高層ビルの街を歩く。それが一日の旅行の中で成立します。「日本文化=京都や侍」と決めつけてしまうと、現在のインバウンドが持つ広がりをかなり見落としてしまいます。

食文化|外国人は何を食べるために日本へ来る?

食文化|外国人は何を食べるために日本へ来る?

日本食というと海外でも寿司が代表的ですが、実際の訪日旅行ではそれだけではありません。

ラーメン、和牛、焼肉、天ぷら、居酒屋、抹茶、菓子、コンビニの商品、さらには各地方の郷土料理まで、旅行者が触れる「日本の食」はかなり幅広くなっています。

2025年の観光庁調査では、訪日旅行中に「日本食を食べた」人は98.2%に達し、次回訪日した際にしたいことでも「日本食を食べること」が70.7%で最も高くなっています。JNTOもガストロノミーツーリズムを、地域の気候風土や食材、習慣、歴史によって育まれた食文化を楽しむ旅行として位置づけ、地方誘客につなげる取り組みを進めています。

ガストロノミーツーリズム|その土地で食べるから価値がある

ガストロノミーツーリズム|その土地で食べるから価値がある

ガストロノミーツーリズムで重要なのは、高級料理だけを意味しないことです。

JNTOは、料理だけでなく、その土地の食材、歴史、料理人、生産者、調理法などのストーリーまで含めて体験する旅行として捉えています。

例えば同じ日本酒でも、東京で買うのと酒蔵がある地域まで行って飲むのでは体験が違います。海産物、牛肉、果物、郷土料理も同じです。食が旅行者を地方へ動かせば、飲食店だけではなく、鉄道、ホテル、食品メーカー、小売へお金が広がります。

アニメ・ゲーム・キャラクター|日本を知った入口は「観光」ではなかった?

アニメ・ゲーム・キャラクター|日本を知った入口は「観光」ではなかった?

日本へ行きたいと思ったきっかけが、富士山でも京都でもない人もいます。

子どもの頃に見たアニメ、遊んだゲーム、好きになったキャラクター。それが最初の「日本との接点」だった旅行者です。

観光庁は、マンガやアニメーションなどのメディア芸術が海外でも高く評価され、日本への理解や関心を高めていると位置づけています。2025年のインバウンド消費動向調査でも、「日本のポップカルチャーを楽しむ」を実際に体験した旅行者の満足率は96.9%でした。

ゲームの中で知った日本が、現実の旅行先になる

ゲームの中で知った日本が、現実の旅行先になる

マリオやポケモンのように、国境を越えて長く親しまれてきた日本発のIPは、商品を売るだけではなく、日本そのものを知る接点にもなっています。

作品の中には日本の風景が直接描かれていなくても、「この作品を生んだ国へ行ってみたい」という感情が生まれれば、それは観光需要の入口になります。

企業を見る場合も、ゲーム会社の売上をインバウンド消費だけで説明することはできません。しかし、日本文化への興味を海外で生み出す力まで含めれば、IP企業はホテルや鉄道とは違う形でインバウンドとつながっています。任天堂の強みを企業研究で掘り下げたときにも感じましたが、世界中にキャラクターとの接点を持つ企業は、海外にいながら日本への入口を作れる存在でもあります。

聖地巡礼|コンテンツが地方へ人を動かす

聖地巡礼|コンテンツが地方へ人を動かす

映画やアニメ、ドラマ、ゲームの舞台になった場所を実際に訪ねる「聖地巡礼」は、コンテンツの力が観光へ変わる分かりやすい例です。

観光庁も、映画やアニメのロケ地・舞台が国内外の観光需要を喚起する重要な拠点だとして、ロケツーリズムや「聖地巡礼」の活用を観光政策に位置づけています。

作品を好きになった人が地方へ移動すれば、鉄道やバスを使い、ホテルへ泊まり、飲食店へ入り、土産物を買います。もともと大規模な観光地ではなかった地域でも、コンテンツをきっかけに人が訪れる可能性がある。この流れは、日本のIPが生み出す経済価値を考えるうえでかなり面白い部分です。

テーマパーク・エンタメ|現代の日本でしかできない体験

テーマパーク・エンタメ|現代の日本でしかできない体験

日本文化は伝統文化だけではありません。テーマパーク、ライブ、イベント、キャラクター施設など、現在進行形のエンタメも「日本へ行く理由」になります。

観光庁の2025年調査では、訪日中にテーマパークを体験した人は23.3%で、次回の訪日時に行いたい人も26.9%いました。テーマパークだけで訪日需要全体を説明することはできませんが、家族旅行や若年層にとって強い旅行目的になり得ます。

東京ディズニーリゾートのように、テーマパークそのものに世界的なブランドがありながら、日本ならではの接客、商品、季節イベントを組み合わせる施設もあります。オリエンタルランドの強みを見ても、テーマパークは入園料だけでなく、ホテル、飲食、商品販売まで一人の旅行者の滞在時間を長く取り込める事業です。

自然・四季|一つの国でまったく違う景色を楽しめる

自然・四季|一つの国でまったく違う景色を楽しめる

日本列島は南北に長く、桜、紅葉、雪、海、山、温泉など、季節や地域によって景色が大きく変わります。

観光庁の2025年調査でも、日本滞在中に「自然・景勝地観光」をした人は68.0%、次回の訪日時にしたい人は52.0%に達しています。

北海道で雪を楽しむ旅行と、沖縄で海を楽しむ旅行では同じ国とは思えないほど体験が違います。さらに桜、紅葉、スキーなどは「いつ行くか」によって価値が変わります。同じ旅行者が季節を変えて再訪する理由にもなり得るため、日本の四季はリピーター需要とも相性がいいと感じます。

安全・清潔・便利|「旅行しやすい国」であることも価値なのか

安全・清潔・便利|「旅行しやすい国」であることも価値なのか

観光地そのものが魅力的でも、移動が難しい、決済ができない、案内が分からないといったストレスが大きければ旅行体験の評価は下がります。

その意味では、鉄道やコンビニ、街の案内、宿泊施設などを含めた旅行のしやすさそのものも、日本という商品の一部だと考えられます。

ただし、「日本は世界一安全」「日本は何でも便利」といった自己評価だけで語るのは避けたいところです。観光庁が2025年11月から2026年1月に4,110人の訪日外国人へ行った受入環境調査では、旅行中の困りごととして「ごみ箱の少なさ」が引き続き最多でした。つまり、高い満足度がある一方で、受入環境に改善すべき点も残っています。

高い満足度だけで「完璧」と考えない

高い満足度だけで「完璧」と考えない

2025年の訪日旅行全体の満足度は、「大変満足」73.5%と「満足」23.9%を合わせて97.4%でした。

さらに「必ず来たい」「来たい」を合わせた再訪意向も97.1%です。数字だけを見ると非常に高い水準ですが、それでも混雑、案内、ごみ箱など、旅行者が実際に困っていることはあります。

投資家としても、「日本は人気だから大丈夫」で終わらせるのではなく、旅行者が増えたときにサービス品質を維持できるかまで見たいところです。人手不足や混雑が深刻になれば、日本の魅力を企業利益へ変える前に、旅行体験そのものを損なう可能性があります。

おもてなし|滝川クリステルが世界へ伝えた日本のサービス文化

おもてなし|滝川クリステルが世界へ伝えた日本のサービス文化

日本のサービス文化を世界へ強く印象づけた言葉の一つが、2013年の東京2020オリンピック・パラリンピック招致で使われた「お・も・て・な・し」です。

東京2020関連資料でも「Omotenashi」は日本らしいホスピタリティを示す価値として位置づけられ、その後も海外から日本を見るときの象徴的な言葉になりました。

ただし、「日本人は親切だから人気」とだけ説明すると、かなり曖昧です。ホテルで部屋へ案内される、鉄道が目的地まで運ぶ、飲食店で料理が提供される、百貨店で商品を買う。旅行者が企業へお金を払う場面の多くでは、人のサービスが体験価値の一部になっています。

旅行者が買うのは「商品」だけではない

旅行者が買うのは「商品」だけではない

同じホテルの一泊でも、チェックインからチェックアウトまで気持ちよく過ごせたかで評価は変わります。同じ食事でも、料理だけでなく店の雰囲気や接客も記憶に残ります。

つまり、観光業ではサービスそのものが商品の一部です。これを企業側から考えると、おもてなしは無料の善意ではなく、再訪、口コミ、ブランド、客単価につながる可能性を持つ経営資源でもあります。一方で、その品質を維持するには人材採用や教育、賃金などのコストが必要です。

ホテル・旅館|泊まること自体が「日本体験」になる

ホテル・旅館|泊まること自体が「日本体験」になる

ホテルは旅行者が寝る場所ですが、日本のインバウンドを考えると、それだけではありません。

特に旅館では、畳、浴衣、温泉、大浴場、和食、布団、接客など、日本文化そのものが宿泊サービスに組み込まれています。

2025年の観光庁調査では、訪日中に旅館へ宿泊した人は23.9%でしたが、次回訪日時に旅館へ泊まりたい人は33.5%。温泉入浴についても今回体験した人27.0%に対し、次回したい人は51.4%まで上がっています。

この数字を見ると、宿泊業は単に「ベッドをいくつ売ったか」では測れないと思います。日本の宿泊産業には、日本文化を体験として商品化できる部分があります。

宿泊時間が長いほど、旅行者との接点も増える

宿泊時間が長いほど、旅行者との接点も増える

ホテルや旅館は、交通や小売とは少し違います。

旅行者が数時間から一晩以上その施設の中で過ごすため、企業が旅行者と接する時間が長いからです。

食事、温泉、売店、ラウンジ、周辺観光まで取り込めれば、一室を販売する以上の価値を作れます。一方、人件費や清掃費、光熱費なども大きいため、「外国人が増えた=ホテル株が儲かる」とは限りません。この部分は、ホテル企業を比較するときにADRやRevPARまで見ながら詳しく確認します。

ショッピング|なぜ外国人は日本で買いたくなる?

ショッピング|なぜ外国人は日本で買いたくなる?

2025年の訪日外国人旅行消費額では、買物代は約2兆5,541億円で全体の27.0%を占めました。宿泊費に次いで大きな支出項目です。

化粧品、医薬品、食品、菓子、家電、時計、ブランド品、アニメグッズなど、買われる商品も幅広くなっています。

旅行先での買い物には、「自国より安い」という価格面だけではなく、日本でしか手に入りにくい商品、限定商品、品質への信頼、作品やブランドとの接点など複数の理由があります。特にアニメやゲームのようなIPは、「日本へ来て体験する」と「商品を買う」が非常に近い関係にあります。

小売企業を見るなら「外国人が何を買っているか」まで知りたい

小売企業を見るなら「外国人が何を買っているか」まで知りたい

百貨店、ドラッグストア、ショッピングモールでは、同じ訪日客数の増加でも売上への影響は違います。

どの国・地域の旅行者が多いのか、どの商品を買うのか、客単価はいくらかによって恩恵が変わるからです。

例えば大型商業施設を全国に持つ企業の場合、都市部の訪日客だけでなく、地方へ旅行者が広がれば新しい需要を取り込める可能性もあります。イオンの強みを考えたときのように、店舗網や立地、商品構成まで見ると「小売=インバウンド」という単純な分類では見えない違いが出てきます。

外国人が好きなのは「一つの日本」ではない

外国人が好きなのは「一つの日本」ではない

外国人に日本が人気な理由を一つだけ選ぶのは難しそうです。

何百年も前の寺社や城を見るために来る人もいれば、寿司やラーメンを食べたい人、アニメやゲームから日本を知った人、桜や雪を体験したい人、テーマパークへ行きたい人もいます。さらに、ホテルや旅館、街の移動、接客、買い物まで含めた旅行体験全体が、日本への評価につながっています。

観光庁の2025年調査では、訪日旅行全体で「大変満足」「満足」が合計97.4%、再訪意向でも「必ず来たい」「来たい」が97.1%でした。もちろん高い満足度だけを見て課題を忘れるべきではありませんが、一度訪れた人がまた来たいと思っていることは、日本人気を考えるうえでかなり大きな意味を持ちます。

私が調べる前に思っていた「円安で安いから日本へ来ている」という見方だけでは、この広がりは説明しにくくなりました。日本には歴史があり、その隣で新しいIPが生まれ、地域ごとに食と自然があり、その間を鉄道や航空が結び、宿泊や小売、エンタメ企業が旅行者の時間を事業へ変えています。

日本の強さは、一つの観光資源が圧倒的だからではなく、違う魅力が何層にも重なっていることなのかもしれません。

外国人から見た「日本」をもう少し知りたい方へ
外国人旅行者が魅力を感じる場所は、私たち日本人が思い浮かべる定番観光地とは少し違うことがあります。『外国人しか知らない日本の観光名所』では、全国の観光地を外国人目線から見ることができるので、「なぜ日本が選ばれているのか」をもう少し深く考えたい人にも面白い一冊です。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

日本を好きになる入口は、食や歴史、アニメ、自然など人によって違うんですね。いろいろな魅力が重なっているからこそ、何度訪れても新しい日本を見つけられるのかもしれません。

スポンサーリンク

インバウンドでホテルはどう儲かる?ホテル関連銘柄とADR・RevPARの見方

インバウンドでホテルはどう儲かる?ホテル関連銘柄とADR・RevPARの見方

インバウンド関連銘柄の中でも、ホテルは訪日外国人の増加と売上の関係を比較的イメージしやすい業種です。

日本へ数日間旅行するなら、基本的にはどこかに泊まる必要があります。実際、2025年の訪日外国人旅行消費額9兆4,549億円のうち、最も大きかったのは買い物ではなく宿泊費の3兆4,578億円、全体の36.6%でした。2025年の外国人延べ宿泊者数も1億7,992万人泊となり、前年比9.4%増えています。 

ただ、私も最初は「外国人が増えればホテルは儲かりやすい」と単純に考えていましたが、ホテルの数字を見ていくと、それだけでは足りません。ホテルには販売できる客室数に上限があり、今日売れなかった部屋を明日に持ち越すこともできません。さらに、人件費、清掃費、水道光熱費、建物の維持費などもかかります。何室埋まったのか、いくらで売れたのか、その結果として一室当たりどれだけ売上を作れたのか。この3つを見ることで、同じインバウンド関連銘柄でもホテルごとの稼ぐ力がかなり違って見えてきます。

日本のホテルには外国人がどれくらい泊まっている?

日本のホテルには外国人がどれくらい泊まっている?

2025年の日本国内の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊でした。

そのうち外国人は1億7,992万人泊で、前年から9.4%増えています。外国人だけで全宿泊数の4分の1を超える規模まで成長しており、ホテルや旅館にとってインバウンドが無視できない需要になっていることが分かります。客室稼働率を見ると、2025年は全体で61.6%でしたが、ビジネスホテルは75.3%、シティホテルは74.1%、リゾートホテルは56.9%、旅館は38.2%と、施設タイプによってかなり差があります。 

2026年7月の延べ宿泊者数は全体で5,467万人泊、そのうち外国人は1,358万人泊でした。外国人宿泊者数は前年同月比4.6%減となった一方、全体の客室稼働率は60.8%です。ただし観光庁は、2026年1月から宿泊旅行統計の層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更しており、前年との比較には調査方法変更の影響が含まれる可能性があると注意を促しています。数字が少し下がったからといって、そのまま「ホテル需要が失速した」と読むべきではありません。 

私がホテルを見るときに面白いと思うのは、訪日外国人数と外国人宿泊数が必ずしも同じように動かないことです。一人の旅行者が3泊するのか10泊するのかでも宿泊需要は大きく変わりますし、東京だけに泊まるのか、京都や北海道、地方都市まで移動するのかによって恩恵を受けるホテルも変わります。訪日客数だけではホテル関連銘柄の強弱までは分からないということです。

ホテルを見るなら「稼働率・ADR・RevPAR」を知っておきたい

ホテルを見るなら「稼働率・ADR・RevPAR」を知っておきたい

ホテル企業のIR資料を読むと、客室稼働率、ADR、RevPARという言葉が頻繁に登場します。

最初はアルファベットが並んでいて分かりにくく感じますが、考え方はかなりシンプルです。

例えば100室あるホテルを考えてみます。80室が売れれば稼働率80%。売れた80室の平均料金が2万円ならADRは2万円。そして、売れなかった20室も含めた100室全体で一室当たりどれだけ客室売上を作れたかを見るのがRevPARです。この場合は2万円×80%=1万6,000円になります。ジャパン・ホテル・リート投資法人も、ADRを販売した客室の平均単価、RevPARを販売可能な全客室一室当たりの宿泊部門売上として開示しています。 

指標何を見る数字?100室のホテルなら
客室稼働率どれだけ部屋が埋まったか80室販売 → 80%
ADR売れた部屋の平均価格平均2万円
RevPAR全客室でどれだけ売上を作ったか2万円×80%=1.6万円

客室稼働率|部屋がどれくらい埋まったか

客室稼働率|部屋がどれくらい埋まったか

客室稼働率は、販売可能な客室のうち実際に何室売れたのかを見る数字です。

100室あるホテルで90室売れれば90%なので、直感的にも分かりやすい指標です。

ただし、稼働率が高ければ高いほど必ず良いわけではありません。1万円で100室すべてを売ったホテルよりも、2万円で80室売ったホテルの方が客室売上は大きくなる可能性があります。安売りをすれば部屋を埋めること自体はできるため、稼働率だけでは価格決定力まで判断できません。

ADR|一室を「いくらで売れたか」

ADR|一室を「いくらで売れたか」

ADR(Average Daily Rate)は、販売した客室の平均単価です。

同じ客室数を売っていても、ADRを上げられれば客室売上は伸びます。桜の季節や大型イベント開催時にホテル料金が上がるのも、需要が強いときに価格を上げられるためです。

ホテルの強さを見るうえでは、このADRがかなり重要だと感じます。インバウンド需要が増えた結果、安売りをしなくても部屋が埋まり、さらに単価まで引き上げられるなら、売上への効果は大きくなります。一方でADRだけを急激に引き上げ、稼働率が大きく落ちれば、必ずしも成功とは言えません。

RevPAR|ホテルの客室がどれだけ稼いだか

RevPAR|ホテルの客室がどれだけ稼いだか

RevPAR(Revenue Per Available Room)は、ADRと客室稼働率を組み合わせた数字です。

ADR×客室稼働率でも求められるため、ホテルの客室部門を見るときには非常に便利です。 

例えばADRが上がっても稼働率が急低下すればRevPARは伸びません。反対に、稼働率を維持しながらADRまで上げられればRevPARは大きく伸びます。インバウンド関連銘柄としてホテルを見るなら、私は訪日外国人数よりも、企業IRにあるRevPARが継続的に伸びているかをかなり重視したいです。

実際、ジャパン・ホテル・リート投資法人が変動賃料等を導入している29ホテルでは、2026年1〜7月累計の客室稼働率が83.4%、ADRが2万170円、RevPARが1万6,821円となり、RevPARは前年同期比5.0%増えています。宿泊者を増やすだけでなく、客室単価を上げながら稼働率も維持できるかがホテル収益を左右していることが数字からも見えてきます。 

ホテル関連銘柄は「ホテル会社」だけではない

ホテル関連銘柄は「ホテル会社」だけではない

ホテル関連銘柄を調べると、同じ宿泊需要を取り込んでいても事業構造がかなり違うことに気づきます。

ホテルを直接運営する会社もあれば、鉄道とホテルを一体で持つ会社、高級リゾートを中心に展開する会社、ホテル不動産を保有するJ-REITもあります。

大まかに分けると、次のように考えると分かりやすいです。

タイプ主な例見たいポイント
ホテル運営系共立メンテナンス、藤田観光稼働率・ADR・RevPAR・新規開業
鉄道系西武HDなど交通+宿泊+観光地でどこまで需要を取れるか
高級・リゾート系リゾートトラストなど富裕層需要・客単価・ブランド力
ホテルREITジャパン・ホテル・リート、インヴィンシブル投資法人ホテル収益・賃料・物件取得・分配金

ホテル運営系|共立メンテナンス・藤田観光

ホテル運営系|共立メンテナンス・藤田観光

ホテル運営会社は、インバウンド需要が業績へどう反映されているのかを比較的直接追いやすいタイプです。

共立メンテナンスは「ドーミーイン」や「共立リゾート」を展開しており、2026年3月期のドーミーイン事業では、既存比較ベースの客室稼働率が88.9%、客室単価が1万6,700円、RevPARが1万4,800円でした。前年の稼働率86.9%、客室単価1万5,800円、RevPAR1万3,700円から、稼働率と単価の両方が上昇しています。 

藤田観光も、ワシントンホテルなどを展開するWHG事業に加え、ホテル椿山荘東京や箱根小涌園など異なる価格帯の施設を持っています。2026年1〜3月期のWHG全体では、稼働率は83%と前年同期の86%から下がった一方、ADRは1万8,088円と前年同期の1万6,597円から上昇しました。部屋を全部埋めることより、どの価格で販売するかを重視する経営もあることが分かる例です。 

一方、共立メンテナンスには寮事業もあり、藤田観光にもホテル以外のレジャー・婚礼などがあります。「ホテル関連銘柄」という名前だけで買うのではなく、ホテル事業が会社全体の利益にどれだけ影響するのかまで確認する必要があります。

鉄道系|移動から宿泊まで旅行者を取り込める

鉄道系|移動から宿泊まで旅行者を取り込める

鉄道会社の中には、ホテルやリゾート施設を大きな事業として持つ企業があります。

例えば西武ホールディングスは、西武鉄道だけでなくプリンスホテルなどを展開しており、ホテル・レジャー事業を主要事業の一つとしています。2027年3月期の業績見通しでも、国内ホテルのRevPAR成長を増収要因の一つとして挙げています。 

鉄道系の面白さは、旅行者の消費をホテルだけで終わらせないことです。空港や都市から鉄道で移動し、ホテルへ泊まり、観光施設や飲食を利用する。この一連の動線に自社グループの事業を配置できれば、一人の旅行者から複数の売上を取れる可能性があります。

逆に、鉄道会社の利益は通勤需要や不動産などにも大きく左右されます。インバウンド需要がホテルで好調でも、会社全体では別の事業が足を引っ張ることもあります。「ホテル関連銘柄」と「ホテル専業会社」を同じものとして考えない方がいいでしょう。

高級リゾート系|訪日客数より「一人からいくら売上を作るか」

高級リゾート系|訪日客数より「一人からいくら売上を作るか」

富裕層や高付加価値旅行を考えると、宿泊者数だけではホテルの価値を測りにくくなります。

一泊数万円から十万円を超えるホテルでは、宿泊に加えて食事、スパ、ゴルフ、アクティビティなどへ消費が広がるためです。

リゾートトラストは会員制リゾートホテルを中心に、ホテル・レストラン、メディカルなどを組み合わせた独特のビジネスモデルを持っています。2026年8月時点では「サンクチュアリコート日光」など新しい施設も展開しています。 

ただし、ここはインバウンド関連銘柄として少し慎重に見たいところです。会員制リゾートの場合、一般的な都市ホテルとは客層も収益構造も違います。高級ホテルだから外国人増加の恩恵がそのまま大きい、とは限りません。富裕層需要をどの施設で取り込んでいるのか、外国人比率や客単価がどう変化しているのかを企業ごとに確認する必要があります。

ホテルREIT|ホテルを運営せず「ホテル不動産」に投資する

ホテルREIT|ホテルを運営せず「ホテル不動産」に投資する

ホテルに投資する方法は、ホテル運営会社の株を買うだけではありません。

J-REITの中にはホテル物件を多く保有し、ホテル運営会社などから賃料を受け取って投資家へ分配する仕組みがあります。

ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)はホテル特化型REITで、2026年にはハイアット リージェンシー 東京なども取得しています。2026年1〜7月の変動賃料等導入29ホテルでは、RevPARが前年同期比5.0%増となっており、ホテルの業績が変動賃料を通じてREIT収益へつながる仕組みを持っています。 

インヴィンシブル投資法人(8963)も多数のホテルを保有しており、2026年1〜6月の国内ホテル103物件では、稼働率84.4%、ADR1万3,726円、RevPAR1万1,589円でした。7月には稼働率86.7%、ADR1万4,886円、RevPAR1万2,904円となっています。 

ホテルREITを見るときは、ホテル人気だけでなく、借入金利、物件取得価格、資産価値、固定賃料と変動賃料の割合なども重要です。ホテルの客室が好調でも、金利上昇によって資金調達コストが増えれば分配金への影響が出る可能性があります。

「外国人が増えるホテル」と「利益が増えるホテル」は同じではない

「外国人が増えるホテル」と「利益が増えるホテル」は同じではない

インバウンド関連銘柄としてホテルを見るとき、私が確認したいのは外国人宿泊者数だけではありません。

重要なのは、外国人需要を使って価格を上げられるか、その価格でも客室を埋められるか、そして増えた売上を利益として残せるかです。

例えば、東京・京都・大阪の好立地にあるホテルと、訪日客がほとんど訪れない地域のホテルではインバウンドの恩恵が違います。海外でブランドが知られているか、予約サイトから選ばれやすいか、大人数や長期滞在に対応できるか、ホテル内で食事や買い物までしてもらえるかでも客単価は変わります。

一方で、人手不足によって人件費が増えたり、清掃費や光熱費が上昇したり、大規模改装が必要になったりすれば、売上増加がそのまま利益増加にはなりません。ホテルは建物を持つ事業でもあるため、設備投資も避けられません。

私ならホテル関連銘柄を見るときは、訪日外国人数 → 外国人宿泊数 → 稼働率 → ADR → RevPAR → ホテル売上 → 営業利益という順番で数字を追います。「外国人が増えた」というニュースから、一段ずつ企業利益へ近づいていくイメージです。

ホテル関連銘柄は「客室数」より「一室の稼ぐ力」を見る

ホテル関連銘柄は「客室数」より「一室の稼ぐ力」を見る

ホテルはインバウンドの恩恵を受けやすい業種ですが、単純に訪日外国人が増えればすべてのホテルが同じように儲かるわけではありません。

2025年には外国人延べ宿泊者数が1億7,992万人泊まで増え、訪日外国人旅行消費額でも宿泊費が3兆4,578億円と最大の支出項目になりました。市場そのものが大きくなっていることは確かです。 

それでも投資先を見るなら、「何室持っているか」だけでは足りません。稼働率を維持しながらADRを引き上げ、RevPARを伸ばせるか。さらに、人件費や光熱費、改装費が増える中でも利益を残せるか。ここにホテル企業の差が出ます。

また、共立メンテナンスや藤田観光のようなホテル運営系、西武ホールディングスのような鉄道系、リゾートトラストのような高級リゾート系、ホテルREITでは、同じインバウンド需要を受けても利益への伝わり方が違います。「ホテル関連銘柄」という一つの箱に入れるのではなく、誰がホテルを持ち、誰が運営し、どこで利益を受け取るのかまで見る。その違いを理解すると、ホテル関連銘柄の比較はかなり面白くなります。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

ホテルは外国人旅行者が増えるだけでなく、「どれだけ部屋が埋まり、いくらで売れたのか」まで見ることが大切なんですね。
RevPARを見ると、ホテルごとの本当の稼ぐ力が少し見えてきそうです。

スポンサーリンク

インバウンド関連銘柄|日本の魅力を利益へ変える企業

インバウンド関連銘柄|日本の魅力を利益へ変える企業

インバウンド関連銘柄という言葉を聞くと、航空会社、ホテル、百貨店など「外国人旅行者が日本で直接お金を使う会社」が最初に思い浮かびます。

ただ、日本旅行を一つの流れとして考えると、企業との接点はそれだけではありません。海外でアニメやゲームを知り、日本へ行きたいと思い、航空券を買い、空港へ到着し、鉄道で移動してホテルへ泊まり、食事をして、買い物やテーマパークを楽しむ。地方まで足を延ばせば、さらに新幹線や地方鉄道、旅館、飲食店、観光施設へお金が流れていきます。

つまりインバウンド市場は、一つの業界だけで完結する市場ではありません。日本へ行きたいと思わせる企業、日本へ連れてくる企業、日本国内を移動させる企業、泊める企業、食べてもらう企業、買ってもらう企業、遊んでもらう企業。旅行者が日本で過ごす時間が長くなり、行動範囲が広がるほど、売上が生まれる企業も増えていきます。

インバウンド関連銘柄を考えるなら、「外国人観光客が増えそうだから買う」という見方だけでは足りません。大切なのは、その企業が旅行者のどの場面でお金を受け取り、その売上をどこまで利益へ変えられるのかです。同じ訪日外国人数の増加でも、企業によって恩恵の大きさも利益への伝わり方もかなり違います。

主なインバウンド関連銘柄の全体像

分野主な関連銘柄インバウンドとの主な接点
航空・空港ANAホールディングス(9202)
日本航空(9201)
日本空港ビルデング(9706)
日本へ来る・空港で消費する
鉄道・交通JR東日本(9020)
JR東海(9022)
JR西日本(9021)
JR九州(9142)
西武HD(9024)
日本国内を移動する
ホテル・宿泊共立メンテナンス(9616)
藤田観光(9722)
リゾートトラスト(4681)
日本に泊まる
ホテルREITジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)
インヴィンシブル投資法人(8963)
ホテル不動産から収益を得る
外食FOOD & LIFE COMPANIES(3563)
くら寿司(2695)
物語コーポレーション(3097)
日本食を楽しむ
百貨店・小売三越伊勢丹HD(3099)
高島屋(8233)
PPIH(7532)
マツキヨココカラ(3088)
イオン(8267)
買い物をする
テーマパーク・観光オリエンタルランド(4661)
富士急行(9010)
日本で遊ぶ
アニメ・ゲーム・IP任天堂(7974)
バンダイナムコHD(7832)
サンリオ(8136)
東映アニメーション(4816)
日本への興味をつくる
地方観光JR九州(9142)
JR西日本(9021)
近鉄GHD(9041)
富士急行(9010)
大都市から地方へ誘う

この表に並ぶ企業すべてが、同じ強さでインバウンドの恩恵を受けるわけではありません。航空会社のように訪日客数と比較的近い位置にいる企業もあれば、IP企業のように旅行者が日本へ来る前から関係を持つ企業もあります。「インバウンド関連銘柄」という言葉の中にも、旅行者との距離がかなり違う企業が混ざっていることを最初に整理しておきたいところです。

日本へ連れてくる|航空・空港関連銘柄

日本へ連れてくる|航空・空港関連銘柄

外国人旅行者が日本でお金を使うには、まず日本まで来てもらう必要があります。

その入口を握っているのが航空会社と空港です。国際線の利用者が増えれば航空会社には旅客収入が生まれ、空港では施設利用だけでなく、免税店や飲食などの消費も発生します。

ANAホールディングスは国際線旅客を成長領域の一つとして位置づけており、訪日需要の拡大は航空事業の売上を押し上げる要因になります。日本空港ビルデングのような空港運営関連企業では、飛行機へ乗る人の数だけでなく、免税店、飲食店、物販など空港内で生まれる消費も重要です。つまり航空・空港関連銘柄には、日本へ人を運ぶ企業と、日本へ到着した人から空港で消費を取り込む企業の両方があります。

主な航空・空港関連銘柄

企業インバウンドとの接点投資家として見たいポイント
ANAホールディングス(9202)国際線で訪日客を日本へ運ぶ国際線旅客数、搭乗率、旅客単価、燃油費
日本航空(9201)国際線で訪日需要を取り込む国際線旅客収入、搭乗率、供給座席数
日本空港ビルデング(9706)羽田空港施設・免税店など国際線旅客数、免税店売上、購買単価
空港施設(8864)空港関連不動産・施設空港需要、賃料収入、設備投資

航空会社はインバウンドとの距離が近い一方、「外国人が増えた=利益が増える」とは限りません。燃油価格、為替、航空機のリースや購入、整備費、人件費などの負担が大きく、地政学リスクによって国際線需要そのものが急変することもあります。

そのため航空関連銘柄を見るなら、訪日外国人数だけでなく、国際線旅客数 → 搭乗率 → 旅客単価 → 国際線旅客収入 → 燃油費などのコスト → 利益まで追う必要があります。空港運営関連では、旅客数だけでなく「空港で一人いくら使っているか」まで見ると、インバウンド需要とのつながりが分かりやすくなります。

日本を移動する|鉄道・交通関連銘柄

日本を移動する|鉄道・交通関連銘柄

日本へ到着した旅行者は、空港から東京、京都、大阪、北海道、九州、地方の温泉地などへ移動します。

鉄道関連銘柄が面白いのは、「何人日本へ来たか」だけでなく、「旅行者が日本国内をどこまで移動したか」でも需要が変わるところです。

JR東日本のような大手鉄道会社は、鉄道だけでなく駅ビル、商業施設、ホテル、不動産なども展開しています。旅行者が鉄道へ乗り、駅で買い物をし、グループホテルへ泊まれば、一人の旅行者との接点を何度も作れます。また、JR東海の東海道新幹線、JR西日本の山陽新幹線、JR九州の九州新幹線などは、外国人旅行者が大都市から別の地域へ移動するときの重要なインフラになります。

主な鉄道・交通関連銘柄

企業インバウンドとの接点投資家として見たいポイント
JR東日本(9020)首都圏・東北+駅ナカ・ホテル鉄道収入、ホテル、駅ビル、地方誘客
JR東海(9022)東海道新幹線で東京・京都・大阪を結ぶ新幹線利用、非定期旅客収入、訪日需要
JR西日本(9021)京都・大阪・広島など西日本観光新幹線・在来線、ホテル、商業施設
JR九州(9142)九州観光+鉄道+ホテル・商業施設観光需要、ホテル、駅ビルとの相乗効果
西武HD(9024)鉄道+ホテル+レジャー移動・宿泊・観光をどこまで取り込めるか
京成電鉄(9009)成田空港と首都圏を結ぶ空港アクセス需要、訪日客輸送

同じ鉄道会社でも、外国人旅行者が多く使う路線を持つ会社と、生活路線を中心とする会社ではインバウンドの影響が違います。さらにホテルや商業施設までグループ内に持っていれば、一人の旅行者から鉄道運賃だけでなく、宿泊や買い物の売上まで取り込める可能性があります。

鉄道関連銘柄では、「外国人が電車に乗る」だけではなく、その会社が旅行者の動線上にどれだけ事業を置いているかまで見たいところです。

日本に泊まる|ホテル・宿泊関連銘柄

日本に泊まる|ホテル・宿泊関連銘柄

宿泊は訪日外国人旅行消費の中でも特に大きなお金が動く分野です。

ただしホテル関連銘柄の場合、宿泊者数だけを見るのではなく、客室稼働率、ADR、RevPARによって一室からどれだけ売上を作れているかを見る必要があります。

また、同じホテル需要を取り込む企業でも、ホテルを直接運営する会社、鉄道グループ、高級リゾート会社、ホテル不動産を保有するJ-REITでは利益の受け取り方が違います。

主なホテル・宿泊関連銘柄

企業タイプ投資家として見たいポイント
共立メンテナンス(9616)ホテル運営稼働率、ADR、RevPAR、新規開業
藤田観光(9722)ホテル・観光WHG、箱根など施設別の単価・稼働率
西武HD(9024)鉄道+ホテルプリンスホテルと交通の相乗効果
リゾートトラスト(4681)高級・会員制リゾート富裕層需要、客単価、会員基盤
ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)ホテルREITRevPAR、変動賃料、物件取得、分配金
インヴィンシブル投資法人(8963)ホテルREITホテル収益、賃料、金利、分配金

ホテルは立地による差も非常に大きい業種です。東京、京都、大阪など外国人旅行者が集中する地域にあるのか、地方への旅行者増加を取り込めるのかによっても成長性は変わります。

泊まる人の数より、一室をどれだけ高く、安定して売り、その売上を利益として残せるか。ホテル関連銘柄では、この視点が特に重要になります。

日本を食べる|外食・食品関連銘柄

日本を食べる|外食・食品関連銘柄

食は、日本旅行の中でもほぼすべての旅行者が接する消費です。

寿司、ラーメン、焼肉、和牛、居酒屋、菓子、抹茶、郷土料理など、日本食への関心が高まれば外食企業や食品関連企業にも需要が広がります。

ただし、日本食人気がそのまま特定の上場企業の利益になるわけではありません。訪日外国人が利用する店には個人経営の飲食店も多く、消費が幅広い店舗へ分散するからです。上場企業の中では、外国人にも分かりやすいブランド、多店舗展開、観光地や都市部への出店、予約・注文のしやすさなどが重要になってきます。

主な外食関連銘柄

企業主な事業投資家として見たいポイント
FOOD & LIFE COMPANIES(3563)スシローなど客数、客単価、既存店売上、原材料費
くら寿司(2695)回転寿司国内観光需要、客単価、店舗展開
物語コーポレーション(3097)焼肉・ラーメンなど既存店客数、単価、出店余地
ゼンショーHD(7550)牛丼・外食各業態客数、商品価格、原材料費、人件費

外食関連銘柄では、私は訪日外国人数そのものよりも、客数 × 客単価 × 店舗数を見たいです。インバウンドによって客数が増えても、食材価格や人件費が同じ以上に上昇すれば利益は残りません。

日本食が世界で人気になっていることと、その企業が投資先として魅力的であることは別の話です。人気を客単価と利益へ変えられる会社なのかまで確認したいところです。

日本を買う|百貨店・ドラッグストア・小売関連銘柄

日本を買う|百貨店・ドラッグストア・小売関連銘柄

インバウンド関連銘柄として分かりやすい存在の一つが小売です。

百貨店で時計やブランド品、化粧品を買う人、ドラッグストアで医薬品や日用品を買う人、ディスカウントストアで食品や土産物をまとめ買いする人など、国や地域によって買われる商品も使われる店舗も違います。

百貨店では外国人による免税売上が業績を見るうえで重要な数字になり、ドラッグストアやディスカウントストアでは化粧品、医薬品、食品、日用品など幅広い商品が旅行消費につながります。

主な百貨店・小売関連銘柄

企業主な特徴投資家として見たいポイント
三越伊勢丹HD(3099)都市型百貨店・高額消費海外顧客売上、免税売上、客単価
高島屋(8233)百貨店・都市型商業施設免税売上、店舗別売上、商品構成
J.フロント リテイリング(3086)大丸・松坂屋・PARCO都市部観光需要、免税売上
PPIH(7532)ドン・キホーテ訪日客売上、客数、客単価
マツキヨココカラ&カンパニー(3088)ドラッグストア化粧品・医薬品、免税需要
イオン(8267)全国商業施設・食品・小売店舗立地、地方誘客、商品構成

ここで重要なのは、訪日客数ランキングと小売企業への売上効果は同じではないことです。一人で高級時計を数十万円購入する旅行者と、食品や日用品を数千円購入する旅行者では企業への影響が大きく違います。

小売関連銘柄を見るなら、訪日客数ではなく、誰が、どの店舗で、何を、いくら買ったのかまで確認したいです。全国に店舗を持つイオンのような企業では、外国人旅行者が大都市だけでなく地方へ広がるかどうかも重要になります。

日本で遊ぶ|テーマパーク・レジャー関連銘柄

日本で遊ぶ|テーマパーク・レジャー関連銘柄

テーマパークや観光施設は、「日本へ来たついでに立ち寄る場所」だけではありません。

世界的なブランドや日本独自の体験を持つ施設であれば、その場所へ行くこと自体が日本旅行の目的になります。

代表的な上場企業の一つがオリエンタルランドです。テーマパークでは入園料だけでなく、飲食、商品販売、ホテルまで一人の旅行者から複数の売上が生まれます。そのためホテルのRevPARと同じように、テーマパークでも「何人来たか」だけでなく一人当たり売上をどこまで伸ばせるかが重要です。

主なテーマパーク・レジャー関連銘柄

企業インバウンドとの接点投資家として見たいポイント
オリエンタルランド(4661)テーマパーク・ホテル・物販入園者数、1人当たり売上、価格決定力
富士急行(9010)富士山周辺の交通・レジャー訪日客数、交通+観光の相乗効果
サンリオ(8136)キャラクター・テーマパークIP人気、来場者、海外認知度

テーマパークもホテルと同じように、「何人来たか」だけでは足りません。チケット、飲食、商品販売、ホテルなど、一人の旅行者からどれだけ売上を作れるかが重要です。

オリエンタルランドのように、テーマパークからホテルや物販まで旅行者の滞在時間を長く取り込める企業は、インバウンド需要の受け皿としても興味深い存在です。

日本を知るきっかけを作る|アニメ・ゲーム・IP関連銘柄

日本を知るきっかけを作る|アニメ・ゲーム・IP関連銘柄

インバウンド関連銘柄の中でも少し特殊なのが、アニメ、ゲーム、キャラクターなどを持つIP企業です。

ホテルや百貨店のように、日本へ来た旅行者から直接旅行代金を受け取るわけではありません。それでも、旅行者が日本へ来るもっと前の段階で、日本との接点を作っています。

日本には任天堂、バンダイナムコホールディングス、サンリオ、東映アニメーションなど、世界中にファンを持つ企業があります。海外で作品やキャラクターに触れた人が日本文化へ興味を持ち、「この作品を生んだ国へ行ってみたい」と思えば、IPは観光需要の入口になります。

主なアニメ・ゲーム・IP関連銘柄

企業主な強みインバウンドとのつながり
任天堂(7974)世界的ゲーム・キャラクターIP海外で日本への接点をつくる
バンダイナムコHD(7832)ゲーム・アニメ・玩具など多様なIP世界で日本コンテンツへ触れる入口
サンリオ(8136)世界的キャラクターキャラクターから日本への関心を生む
東映アニメーション(4816)アニメ作品の海外展開日本アニメへの興味を世界へ広げる

このグループについては、ホテルや航空と同じ意味で「インバウンド恩恵株」と呼ぶのは少し違います。任天堂のゲームは、日本へ旅行する人が増えなくても世界で売れます。

だからこそ、直接インバウンドで稼ぐ企業ではなく、「日本へ行きたい」と思うきっかけを海外で作れる企業として分けて考えたいです。IP企業を含めることで、インバウンド市場が「日本へ到着してから始まる市場ではない」ことも見えてきます。

地方へ誘う|地域観光で恩恵を受ける関連銘柄

地方へ誘う|地域観光で恩恵を受ける関連銘柄

インバウンド市場の成長を考えるうえで大きなポイントになるのが、東京・京都・大阪などに集中している外国人旅行者を地方へどこまで広げられるかです。

旅行者が地方へ動けば、新幹線や地方鉄道を利用し、ホテルや旅館へ泊まり、その地域で食事をして土産物を買います。つまり滞在地域が広がるほど、日本全体でインバウンド消費を受け取れる企業も増えていきます。

地方誘客と相性のある主な関連銘柄

企業主なエリア・特徴インバウンドとの接点
JR九州(9142)九州鉄道+ホテル+駅ビル+観光
JR西日本(9021)関西・中国・北陸など新幹線+観光地への移動
近鉄グループHD(9041)大阪・奈良・三重など鉄道+ホテル+観光
富士急行(9010)富士山・山梨周辺交通+レジャー+ホテル
京阪HD(9045)京都・大阪鉄道+観光+ホテル

地方観光で特に面白いのは、一社の中に「運ぶ」「泊める」「買ってもらう」「遊んでもらう」がそろっている企業です。旅行者が地域内を長く滞在すれば、一人から複数の売上を生み出せる可能性があります。

反対に、地方に魅力的な観光資源があっても、交通が不便だったり、宿泊施設が不足したり、多言語対応が進んでいなければ需要を十分に取り込めません。地方インバウンドを見るときは、観光地だけではなく受け入れるインフラまでセットで考える必要があります。

インバウンド関連銘柄は「旅行者との距離」で3つに分ける

インバウンド関連銘柄は「旅行者との距離」で3つに分ける

業種別にインバウンド関連銘柄を見るだけでも全体像は分かりますが、投資という視点ではもう一つ、外国人旅行者との距離で整理すると企業の違いがさらに分かりやすくなります。

分類インバウンドとの関係主な企業例
A|直接型訪日客が直接その企業へお金を払うANAホールディングス(9202)、日本航空(9201)、JR各社、共立メンテナンス(9616)、三越伊勢丹HD(3099)、オリエンタルランド(4661)など
B|間接型旅行需要の拡大によって周辺事業が伸びる商業施設、不動産、決済、地域開発など
C|入口型日本へ来る前から興味を生み出す任天堂(7974)、バンダイナムコHD(7832)、サンリオ(8136)、東映アニメーション(4816)など

A|訪日客の支出が直接売上になる企業

A|訪日客の支出が直接売上になる企業

航空券を購入する、鉄道へ乗る、ホテルへ泊まる、百貨店で買い物をする、テーマパークへ入る。このように旅行者が財布を開いた瞬間、企業の売上へ比較的直接つながるのがAタイプです。

インバウンド市場が拡大したときに最も影響をイメージしやすい一方、直接型だから利益が伸びやすいとは限りません。航空なら燃油費、ホテルなら人件費、小売なら仕入価格、テーマパークなら運営費や設備投資があります。

売上への近さと、利益への近さは別。この違いはかなり重要です。

B|旅行需要の広がりから恩恵を受ける企業

B|旅行需要の広がりから恩恵を受ける企業

外国人旅行者から直接お金を受け取らなくても、旅行者が増えることで価値が上がる事業があります。観光地周辺の不動産、商業施設、決済インフラ、施設運営、地域開発などです。

特にホテルや商業施設、街づくりを一体で展開する企業では、旅行者の滞在時間が長くなるほど複数の事業で需要を取り込める可能性があります。こうした「建物単体ではなく、街全体で価値を作る」という考え方は、三井不動産の強みを調べた記事でも詳しく見ています。

このタイプはインバウンドとの関係が一段遠くなるため、特に注意したいところです。「外国人が増えているから恩恵があるはず」というストーリーだけではなく、企業のどの事業で実際に売上や利益が伸びているのかまでIRで確認する必要があります。

C|「日本へ行きたい」を海外でつくる企業

C|「日本へ行きたい」を海外でつくる企業

アニメ、ゲーム、映画、キャラクターなどのIP企業は、訪日客から直接宿泊費や交通費を受け取る企業ではありません。

それでも、日本を知らなかった人へ最初の接点をつくり、いつか訪れてみたい国へ変える可能性があります。

このCタイプをインバウンド関連銘柄の記事で扱う意味は大きいと思います。日本のインバウンド競争力を「来た外国人からいくら取るか」だけで考えると、そもそも日本を選んでもらう理由を生み出している企業が見えなくなるからです。

一方、株式投資ではAタイプとは明確に分けます。IP企業の業績を訪日外国人数だけで予測するのではなく、日本ブランドを世界へ広げる企業として見るくらいの距離感が適切だと思います。

「インバウンド株」という一括りでは見ない

「インバウンド株」という一括りでは見ない

インバウンド関連銘柄を並べてみると、航空、鉄道、ホテル、外食、小売、テーマパーク、IPまで、かなり幅広い業界につながっていることが分かります。

ただ、それぞれの企業が同じ理由で恩恵を受けるわけではありません。航空会社は日本へ人を運び、鉄道会社は国内を移動させ、ホテルは滞在時間を売上へ変え、小売や外食は旅行中の消費を取り込みます。テーマパークは旅行目的そのものをつくり、アニメやゲーム企業は日本へ来る前から世界の人と日本をつないでいます。

同じ訪日外国人数でも、東京だけで2泊する旅行と、地方まで移動して10泊する旅行では、お金が流れる企業はまったく違います。高級ホテルに泊まるのか、買い物をするのか、日本食を巡るのか、テーマパークへ行くのかによっても変わります。

だから私は、インバウンド関連銘柄を見るとき、

「外国人が増えるか」ではなく、「外国人が日本でどう動き、その企業はどこでお金を受け取るのか」

を考えたいです。

さらに、その売上を利益として残せるかが最後のポイントです。航空会社なら燃油費、ホテルなら人件費、小売なら仕入価格、テーマパークなら運営費や設備投資と、それぞれ異なるコストがあります。インバウンドという追い風が強くても、売上の伸びと利益の伸びが同じになるとは限りません。

日本人気という大きな追い風を、自社の売上へ取り込み、さらに利益成長までつなげられる企業こそ、本当に強いインバウンド関連銘柄なのではないか。単なる銘柄一覧ではなく、この利益までの道筋を見ることで企業ごとの差がかなり見えやすくなると思います。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

インバウンド関連銘柄といっても、外国人旅行者との関わり方は企業によって全然違うんですね。
どんな会社があるのかを知るだけでなく、旅行者がどこでお金を使い、その売上を企業がどれだけ利益へ変えられるのかまで追うと、本当に恩恵を受ける会社が見えてきそうです。

スポンサーリンク

インバウンドの次の成長は「地方」にある?

インバウンドの次の成長は「地方」にある?

2025年に訪日外国人旅行者数が約4,268万人まで増え、日本のインバウンド市場は過去最大の規模になりました。

ただ、ここからさらに成長すると考えたとき、単純に「外国人をもっと東京や京都へ呼べばいい」という話ではなさそうです。すでに一部の観光地では混雑が問題になっていますし、日本には北海道から沖縄まで、食、温泉、自然、歴史、祭り、雪、伝統文化など、まだ海外旅行者に十分知られていない地域が数多くあります。

数字を見ると、その余地の大きさがよく分かります。2025年の外国人延べ宿泊者数のうち、東京・大阪・京都などを含む三大都市圏は約1億1,936万人泊で全体の66%、それ以外の地方部は約6,056万人泊で34%でした。訪日客そのものは4,000万人を超えましたが、宿泊という視点では、まだ3分の2が三大都市圏へ集中しています。 

だからこそ、これからのインバウンドを見るうえでは、「何人日本へ来るのか」から「日本のどこまで行き、何泊するのか」へ視点を広げる必要があると思います。旅行者が東京から東北へ、京都から山陰へ、大阪から四国や九州へ動けば、その途中で鉄道を使い、地方のホテルへ泊まり、地域の料理を食べ、観光施設へ入り、土産物を買います。外国人旅行者の移動そのものが、新しい企業売上を生み出す可能性があります。

政府も「6,000万人」だけではなく地方宿泊を目標にした

政府も「6,000万人」だけではなく地方宿泊を目標にした

日本政府は2030年の目標として、訪日外国人旅行者数6,000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円を掲げています。

ただ、2026年3月に決定された第5次観光立国推進基本計画で注目したいのは、人数と消費額だけではありません。

新たに、地方部での外国人延べ宿泊者数を1億3,000万人泊まで増やす目標が設定されました。2025年は約6,056万人泊なので、単純に考えても現在の約2.1倍です。さらに2030年には、外国人宿泊を「三大都市圏:地方部=1:1」にすることを目指しています。 

指標2025年2030年目標
訪日外国人旅行者数約4,268万人6,000万人
訪日外国人旅行消費額約9.5兆円15兆円
地方部の外国人延べ宿泊者数約6,056万人泊1億3,000万人泊
地方部の宿泊割合約34%三大都市圏と1:1へ

私はこの目標を見ると、日本のインバウンド政策そのものが少し変わってきているように感じます。単純に空港へ入ってくる外国人を増やすだけではなく、日本国内でどこまで移動してもらい、どこで時間とお金を使ってもらうかが重要になってきています。

これはオーバーツーリズム対策ともつながります。東京、京都、大阪などに集中している需要を地方へ分散できれば、混雑を和らげながら地方では新しい消費を生み出せます。政府も地方誘客、地域周遊・長期滞在、地方部への交通ネットワーク強化、ローカル鉄道、歴史・文化・自然・食を活用した観光コンテンツなどを政策として挙げています。 

リピーターが増えると「東京・京都のその先」へ行きやすくなる

リピーターが増えると「東京・京都のその先」へ行きやすくなる

地方誘客と相性がいいと考えられているのが、何度も日本へ来るリピーターです。

初めて日本へ来る旅行者なら、東京、富士山、京都、大阪といった世界的に知られた場所を優先したくなるのは自然です。しかし2回目、3回目、5回目となれば、「まだ行ったことのない日本」を探したくなる人も増えてきます。

2025年の訪日外国人旅行者のうち、リピーターは約2,768万人でした。政府は2030年にこれを4,000万人まで増やす目標を掲げています。第5次観光立国推進基本計画でも、リピーターについて「地方部への訪問意欲が高い」傾向があるとしています。 

観光庁の詳細分析でも、2024年には外国人旅行者約3,561万人のうち、地方部を訪れた人は約1,803万人、50.6%と推計されています。ここでいう地方部訪問には日帰りも含まれますが、すでに約半数の旅行者が三大都市圏以外にも足を運んでいました。台湾、香港、タイ、マレーシア、欧州、オーストラリアなどでは地方部を訪れる割合が比較的高いことも確認されています。 

つまり、「外国人旅行者=東京・京都を一度見に来る人」というイメージだけでインバウンドを見ると、これからの市場を見誤る可能性があります。一度日本を好きになった旅行者が、次は雪を見に東北へ行く、温泉を求めて九州へ行く、食を目的に北陸へ行く。こうした再訪の積み重ねが、地方インバウンドを広げる大きな力になりそうです。

地方では「来てもらう」より「泊まってもらう」ことが重要

地方では「来てもらう」より「泊まってもらう」ことが重要

地方へ旅行者を動かせば、それだけで地域経済が大きく潤うのでしょうか。

ここは少し注意したいところです。観光地へ行って写真を撮り、その日のうちに東京や大阪へ戻ってしまえば、地域で使われるお金は交通費や入場料、食事などに限られます。

観光庁が2024年の個票データを分析した結果では、三大都市圏と地方部の両方を訪れた旅行者のうち、地方部へ日帰りした人の地方部での消費単価は約0.4万円でした。それに対して、地方部へ宿泊した人は約6.4万円。約16倍の差があります。しかも差が生まれているのは宿泊費だけではなく、飲食や買い物などの支出も宿泊旅行者の方が大きくなっています。 

この数字は、地方インバウンドを考えるうえでかなり重要だと思います。

「来てもらう」ではなく、「泊まりたくなる理由を作る」。

夕方に到着して温泉へ入り、地域の料理を食べ、一泊して、翌朝また別の場所を観光する。その一泊が加わるだけで、ホテル・旅館、飲食店、交通、小売、観光施設との接点が増えていきます。

投資という視点でも同じです。観光地が話題になったというニュースだけを見るのではなく、外国人宿泊者数や平均滞在日数まで伸びているのかを確認した方が、その地域に事業を持つ企業への経済効果を判断しやすくなります。

東北でも外国人宿泊は過去最高水準へ

東北でも外国人宿泊は過去最高水準へ

地方インバウンドを考える具体例として、東北を見てみます。

私たちが普段「東北の観光」と聞くと、温泉、雪、祭り、紅葉、食、自然などを思い浮かべますが、海外から見るとこうした地域資源そのものが日本旅行の目的になる可能性があります。

東北運輸局によると、2025年の東北6県における外国人延べ宿泊者数は約277万2,000人泊となり、2024年から21.8%増えました。コロナ前の2019年は約185万2,000人泊だったため、すでにそれを大きく上回っています。6県すべてで2024年を上回り、特に宮城県では年間約100万4,000人泊まで増えました。 

県2025年外国人延べ宿泊者数前年比
宮城県約100.4万人泊+29.3%
青森県約52.2万人泊+26.4%
岩手県約42.9万人泊+11.1%
福島県約38.0万人泊+17.3%
山形県約29.2万人泊+14.0%
秋田県約14.5万人泊+21.2%
東北6県約277.2万人泊+21.8%

もちろん、東京や大阪と比べれば絶対数はまだ小さいです。しかし、だからこそ伸びしろがあります。

実際、JR東日本は経営ビジョンの中で、訪日客に占める東北での宿泊割合を現在の1.5%程度から5%へ拡大する目標を掲げています。2026年3月からは訪日旅行者向けの「JR EAST PASS」を新たに設定するなど、インバウンドを首都圏から東日本各地へ動かす取り組みを進めています。 

ここが株式投資として面白いところです。東京へ外国人が来るだけなら、その恩恵は東京のホテルや百貨店に集中します。しかし旅行者が東北まで動けば、新幹線、駅、ホテル、飲食、観光施設など、地方へ向かう途中から旅行者一人との接点が増えていきます。

地方誘客が進むと、どんなインバウンド関連銘柄に恩恵が広がる?

地方誘客が進むと、どんなインバウンド関連銘柄に恩恵が広がる?

地方インバウンドが拡大するときに恩恵を受けるのは、その観光地にあるホテルだけではありません。

旅行者を地域まで運ぶ鉄道、空港や航空会社、駅や商業施設、ホテル、観光施設など、旅行者の移動ルート上にある企業にも需要が広がります。

特に注目したいのは、一社の中に複数の接点を持っている企業です。鉄道で地方まで運び、自社グループの駅ビルやホテル、商業施設まで利用してもらえれば、一人の旅行者から生まれる売上を何度も取り込むことができます。

地方インバウンドを見るときの主な関連銘柄

企業地方との主な接点地方誘客で見たいポイント
JR東日本(9020)東北・信越への鉄道、駅、ホテル東北宿泊割合、新幹線利用、ホテル・駅消費
JR西日本(9021)北陸・中国地方など新幹線、観光周遊、ホテル
JR九州(9142)九州全域鉄道+駅ビル+ホテル+観光
近鉄GHD(9041)奈良・三重など鉄道+ホテル+観光施設
京阪HD(9045)京都・滋賀など鉄道+ホテル+観光
富士急行(9010)富士山・山梨周辺交通+ホテル+レジャー
共立メンテナンス(9616)全国の都市・リゾート地方ホテルのADR・RevPAR・新規開業

ただし、ここでも「地方観光が伸びる=その会社の利益が増える」と決めつけないことが大切です。鉄道会社の場合は通勤需要や不動産の影響も大きく、ホテル会社なら人件費や光熱費、改装費があります。

見るべきなのは、地方へ旅行者が増えた結果、その企業のどの事業で売上が伸び、その売上が利益まで残っているのかです。地方インバウンドというテーマから企業へ近づくときも、一段ずつ数字を追いたいところです。

地方には「行きたい場所」だけでなく「行ける仕組み」が必要

地方には「行きたい場所」だけでなく「行ける仕組み」が必要

地方誘客には大きな成長余地がありますが、観光資源があるだけで外国人旅行者が自然に集まってくるわけではありません。

いくら美しい温泉地や歴史的な町並みがあっても、空港や新幹線駅からどう行けばいいのか分からない、公共交通が少ない、外国語で予約できない、宿泊施設が不足しているという状態では、旅行先として選びにくくなります。

第5次観光立国推進基本計画でも、地方誘客のためにDMOによる観光地域づくり、地域周遊・長期滞在、地方空港や鉄道ネットワーク、地域交通DX、ローカル鉄道、歴史・文化・自然・食を生かした観光コンテンツ、キャッシュレス環境などが挙げられています。 

つまり地方インバウンドで必要なのは、

「魅力がある」→「知ってもらう」→「行ける」→「泊まれる」→「お金を使える」

までを一つにつなげることです。

私はここに、地方インバウンドを投資テーマとして見る面白さがあると思います。地方の寺社や山、温泉そのものに投資することはできません。しかし、その魅力と旅行者をつなぐ企業には投資できます。鉄道、ホテル、商業施設、決済、観光施設など、日本の地域資源を実際の消費へ変換できる企業にビジネスチャンスが生まれます。

地方へ「泊まる人」が増えるほど、インバウンド市場は広がる

地方へ「泊まる人」が増えるほど、インバウンド市場は広がる

日本のインバウンド市場がこれからさらに成長するなら、訪日外国人旅行者数が4,000万人から5,000万人、6,000万人へ増えることだけを見るのでは足りないと思います。

2025年の外国人延べ宿泊者数は、まだ三大都市圏が66%を占め、地方部は34%でした。それを2030年には地方部1億3,000万人泊、三大都市圏と地方部を1:1にするという目標が掲げられています。 

その鍵になりそうなのがリピーターです。一度東京や京都を訪れた人が、日本をもっと知りたいと思い、北海道、東北、北陸、中国、四国、九州へ旅行するようになれば、宿泊、鉄道、飲食、小売、観光施設へ需要が広がります。しかも地方では、日帰りで立ち寄ってもらうより一泊してもらうことによる経済効果がはるかに大きいこともデータから見えてきます。 

東北だけを見ても、2025年の外国人延べ宿泊者数は約277万人泊まで増え、コロナ前の水準をすでに上回っています。まだ東京や大阪とは大きな差がありますが、その差そのものが成長余地とも考えられます。 

「日本へ来る外国人を増やす」から、「日本のいろいろな地域へ行き、そこで時間とお金を使ってもらう」へ。この変化が進むなら、これまで大都市中心だったインバウンドの恩恵が、鉄道、ホテル、観光、商業施設などを通じて日本各地の企業へ広がっていく可能性があります。

おじー🦥
おじー🦥

訪日外国人が増えるだけではなく、日本のどこまで旅行して、そこで何泊するのかを見ることも大切なんですね。
まだ知られていない地域まで旅行者が広がれば、日本の魅力と一緒に、インバウンドの恩恵を受ける企業も増えていきそうです!

スポンサーリンク

人数より「いくら使うか」|高付加価値旅行は日本をどう変える?

人数より「いくら使うか」|富裕層・高付加価値旅行は日本をどう変える?

インバウンド市場のニュースでは、「訪日外国人が何万人増えた」という人数がどうしても目立ちます。

私自身も最初は、外国人旅行者が増えれば増えるほど日本の観光産業にはプラスなのだろうと考えていました。ただ、旅行消費額まで見ていくと、同じ1人でも日本で使う金額にはかなり大きな差があります。

2025年の訪日外国人1人当たり旅行支出は約22.9万円でした。一方、JNTOや観光庁が推進する「高付加価値旅行」では、国際航空券を除き、1回の訪日旅行で1人100万円以上を日本国内で使う旅行を対象としています。しかも重要なのは、単に高級ホテルへ泊まって高額な買い物をする人だけを意味しているわけではありません。地域の伝統、文化、自然などに触れ、自分の知識を深めたり、そこでしかできない体験に価値を感じたりする旅行も含まれています。

2023年時点では、高付加価値旅行者は訪日旅行者全体の約2%、約59万人にすぎませんでした。それでも消費額では約19%、約1兆円を占めています。人数だけを見ればごく一部なのに、日本で使われるお金では約5分の1。この数字を見ると、インバウンド市場を「何人来たか」だけで考える危うさがよく分かります。

これから日本が目指しているのは、6,000万人を集めることだけではありません。一人の旅行者に、日本でより長く過ごしてもらい、その土地でしかできない体験に納得してお金を使ってもらうこと。その価値を企業や地域が作れるかどうかも、日本のインバウンドの将来を左右しそうです。

「高付加価値旅行=お金持ちの豪華旅行」ではない

「高付加価値旅行=お金持ちの豪華旅行」ではない

「高付加価値旅行」と聞くと、一泊数十万円のホテル、高級レストラン、ブランド品の買い物といった豪華な旅行を想像しやすいと思います。

もちろん高い宿泊費や客単価は大きな要素ですが、JNTOが考える高付加価値旅行は、それだけではありません。

重要なのは、旅行者が何に価値を感じて100万円以上を使ったのかです。高級ホテルへ泊まることもあれば、専門家による案内を受けながら歴史を深く知ること、職人から伝統工芸を学ぶこと、その地域でしか体験できない自然や食文化に触れることもあります。

つまり高付加価値旅行を見るときは、「高いものを売る旅行」と考えるより、日本にしかない体験へ高い価値を付けられる旅行と考えた方が実態に近そうです。

基準は「資産額」ではなく、日本での旅行消費額

基準は「資産額」ではなく、日本での旅行消費額

高付加価値旅行という言葉から、「資産が何億円ある富裕層」や「年収がいくら以上の人」といった人物像を想像するかもしれません。

しかし、JNTOが現在使っている高付加価値旅行の基準は、訪日旅行1回当たりの総消費額が1人100万円以上であることです。国際航空券代は含みません。

つまり、「どれほどお金を持っている人なのか」ではなく、実際の日本旅行でどれだけお金を使ったのかによって分類されています。

ここは記事でも区別しておきたいところです。「富裕層」は旅行者自身の資産や所得などを表す言葉ですが、「高付加価値旅行者」は日本旅行における消費額や旅行内容から見た分類です。重なる部分はあっても、完全に同じ意味ではありません。

求めているのは「高いもの」より「ここでしかできないもの」

求めているのは「高いもの」より「ここでしかできないもの」

高付加価値旅行者には、地域の伝統、文化、自然などに触れながら知識を深めたり、自分自身の価値観を広げたりする体験を重視する傾向があります。

単に一番高いホテルへ泊まり、一番高い料理を食べれば満足するという話ではありません。

例えば、普段は入れない文化財を専門家の解説付きで見る。地域の職人から伝統工芸を直接学ぶ。生産者を訪ね、その土地の食材が料理になるまでの背景を知る。専門ガイドと数日かけて古い街道や自然を歩く。こうした「そこへ行かなければ体験できないこと」にも高い価値が生まれます。

私はこの考え方がかなり面白いと思います。日本が「安く旅行できる国」として価格競争をするのではなく、日本にしか存在しないものへ高い価値を付けることができるからです。

わずか約2%の旅行者が、消費額の約19%を生み出す

わずか約2%の旅行者が、消費額の約19%を生み出す

高付加価値旅行がインバウンド政策で重視される理由は、数字を見るとかなり分かりやすくなります。

2023年時点で、高付加価値旅行者は約59万人。訪日旅行者全体では約2%でした。しかし消費額は約1兆円となり、訪日旅行消費全体の約19%を占めています。

2023年高付加価値旅行
旅行者数約59万人
訪日客に占める割合約2%
消費額約1兆円
訪日消費に占める割合約19%
定義1人1回100万円以上※

※国際航空券代を除く。

人数ではごく一部なのに、消費額では約5分の1を占める。この差はかなり大きいです。

ここで重要なのは、「お金を持つ旅行者を呼べば効率よく儲かる」というだけではありません。一人の旅行者がホテル、飲食、交通、ガイド、文化体験、買い物など複数の場所でお金を使えば、一つの旅行から複数の産業へ売上が広がっていくからです。

訪日客数を大きく増やすには、空港、鉄道、ホテルなど受け入れ能力の拡大も必要になります。一方、一人当たりの消費額を伸ばすことができれば、人数の増加だけに依存せず市場を成長させることもできます。

高付加価値旅行者は日本で何にお金を使う?

高付加価値旅行者は日本で何にお金を使う?

一人100万円以上を使うと聞くと、ブランド品や時計を100万円分買う旅行者を想像するかもしれません。

しかし高付加価値旅行では、買い物だけではなく旅行そのものの組み立て方が変わってきます。

高級ホテルや旅館へ複数泊し、専用車や上質な鉄道移動を利用し、専門ガイドを付け、通常では体験できない文化プログラムやアクティビティへ参加する。さらに地域のレストラン、工芸品、日本酒、アートなどへ消費が広がっていきます。

つまり、

泊まる → 移動する → 食べる → 学ぶ → 体験する → 買う

という旅行全体が高単価化します。

ホテルについてADRやRevPARを見てきましたが、高付加価値旅行ではホテルの外でも同じことが起きています。単純に旅行者数を増やすのではなく、一人の旅行者が日本で過ごす時間そのものの価値を高めるという考え方です。

高付加価値旅行と地方観光は相性がいい

高付加価値旅行と地方観光は相性がいい

高付加価値旅行が日本にとって面白いのは、東京の高級ホテルや銀座のブランド店だけで完結する必要がないことです。

日本各地には、温泉、伝統工芸、食文化、歴史的な町並み、祭り、自然、酒蔵など、その土地でなければ体験できないものがあります。大量の旅行者を一度に受け入れることが難しい地域でも、少人数の旅行者に長く滞在してもらい、質の高い体験を提供するという観光なら相性がいい可能性があります。

観光庁も地方への高付加価値旅行者誘致を進めており、東北海道、八幡平、山形、佐渡・新潟、北陸、松本・高山、伊勢志摩、せとうち、鳥取・島根、沖縄・奄美など、複数地域で高付加価値な観光地域づくりを進めています。

これらの地域を見ると、巨大都市ばかりではありません。むしろ、長い時間をかけて地域に残されてきたものそのものが価値になっています。

私はここに、日本が高付加価値旅行を育てる意味があると思います。安く大量に売るのではなく、その土地の文化を守りながら高い価値を付ける。観光客が増えることで文化が消耗するのではなく、観光収入によって文化を残せるのであれば、インバウンドのあり方もかなり変わります。

高付加価値旅行で恩恵を受ける関連銘柄は?

高付加価値旅行で恩恵を受ける関連銘柄は?

高付加価値旅行の恩恵を考えるときも、「富裕層関連銘柄」という一括りでは見ない方がいいと思います。

一人100万円以上の旅行消費が、実際にどの企業へ流れているのかを見る必要があります。

最も分かりやすいのは、高単価な宿泊需要を取り込めるホテル、百貨店、高級リゾートなどです。一方、旅行者が地方まで移動すれば、鉄道や観光施設にも需要が広がります。

高付加価値旅行と接点のある主な関連銘柄

企業主な接点投資家として見たいポイント
帝国ホテル(9708)高級ホテルADR、稼働率、客室単価、外国人需要
リゾートトラスト(4681)高級・会員制リゾート富裕層需要、客単価、施設価値
藤田観光(9722)高級ホテル・リゾート高価格帯施設のADR、客数
共立メンテナンス(9616)リゾート・温泉旅館地方宿泊、ADR、RevPAR
ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)高級・都市ホテル不動産RevPAR、ホテル価値、変動賃料
三越伊勢丹HD(3099)百貨店・高額消費海外顧客売上、免税売上、客単価
高島屋(8233)百貨店・高額商品免税売上、高額品販売
JR東日本(9020)地方への移動・ホテル新幹線、地方誘客、ホテル需要
オリエンタルランド(4661)レジャー・ホテル客単価、ホテル、滞在時間

ただ、ここでも「高級ホテルだから高付加価値旅行銘柄」と単純には言えません。企業全体の売上に占める外国人需要が小さければ、高付加価値旅行市場が伸びても業績への影響は限定的です。

反対に、ホテル、飲食、買い物、交通など複数の接点を持ち、一人の旅行者から何度も売上を作れる企業は、高付加価値旅行との相性がよくなる可能性があります。

「高い値段を付ければいい」わけではない

「高い値段を付ければいい」わけではない

高付加価値旅行を見ていると、「外国人旅行者はお金を持っているのだから価格を上げればいい」という発想にもなりやすいですが、これはかなり危険だと思います。

高付加価値旅行者が求めているのは、単に高額であることではありません。その価格を払うだけの理由があることです。

専門知識のあるガイド、予約から移動まで切れ目のないサービス、その土地でしか聞けないストーリー、質の高い宿泊施設、プライバシー、柔軟な旅程。こうしたものがそろって初めて、高い価格にも納得してもらえます。

つまり企業側に必要なのは、単純な値上げではなく価値上げです。

人材を採用し、教育し、施設を整備し、特別な体験をつくるには当然コストもかかります。その投資をした結果として、客単価と利益率をどこまで引き上げられるのか。株式投資ではそこまで追いたいところです。

6,000万人を目指すだけでなく「一人の旅行」を大きくする

6,000万人を目指すだけでなく「一人の旅行」を大きくする

日本のインバウンド市場を成長させる方法は、外国人旅行者を増やすことだけではありません。

高付加価値旅行者は2023年時点で約59万人、全体の約2%しかいませんでしたが、旅行消費では約1兆円、約19%を占めました。

この数字を見ると、インバウンドを投資テーマとして考えるときに、訪日客数だけを追うのでは足りないことが分かります。

何日滞在するのか。どんなホテルへ泊まるのか。どんな料理を食べるのか。どの地域へ移動するのか。どんな体験にお金を払うのか。

そこまで見ることで、同じ一人の外国人旅行者から生まれる経済価値がまったく違って見えてきます。

そして、高付加価値旅行で面白いのは、単なる富裕層向けビジネスではなく、地方の自然、歴史、文化、伝統工芸、食などを「安く売るもの」から「高い価値を持つもの」へ変えられる可能性があることです。

日本は物価が安いから選ばれる国であり続けるのか。それとも、価格が高くても「日本だから体験したい」と思ってもらえる国になれるのか。

この違いは、これからのインバウンド市場の強さを考えるうえでかなり重要だと思います。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

外国人旅行者をたくさん呼ぶだけでなく、日本でしかできない体験に価値を感じてもらうことも大切なんですね。
地域の文化を守りながら旅行者にも満足してもらえて、企業や地域にもお金が残るなら、インバウンドの成長にもいろいろな形がありそうです!

スポンサーリンク

円安だから日本に来ているだけ?日本人気は円高でも続くのか

円安だから日本に来ているだけ?日本人気は円高でも続くのか

外国人に日本が人気な理由を考えるとき、どうしても外せないのが円安です。日本円の価値が下がれば、ドルやユーロなどの外貨を持つ旅行者にとって、日本国内のホテル、食事、交通、買い物は相対的に安く感じやすくなります。

「同じホテルなのに、自国通貨へ換算すると以前より安い」という状態になれば、日本旅行を選ぶ理由の一つになるのは自然です。

私自身もインバウンドについて調べ始める前は、「最近外国人が増えているのは、結局日本が安いからなのでは?」という印象を持っていました。実際、円安が訪日旅行の価格面で追い風になること自体は否定しにくいと思います。

ただ、ここまで見てきた数字を並べると、それだけで説明するのも難しくなってきます。2025年の訪日外国人旅行消費額は約9.5兆円となり、一般客1人当たり旅行支出は約22.9万円。2019年の約15.9万円から大きく増えています。2026年4〜6月期にも、訪日客数の伸びが弱い中で1人当たり旅行支出は24.4万円まで上昇しました。日本が「安いから、とにかく安く旅行する場所」になっているだけなら、こうした消費単価の上昇は少し違った見え方をします。

さらにJNTOの世界22市場調査では、日本は18市場で「今後行きたい・次に行きたい旅行先」の選択率で首位となりました。食、自然、アート、歴史、文化、テーマパークなど、日本を選ぶ理由も市場によって異なります。円安は重要な追い風ですが、「安いから日本へ来る」と「日本へ行きたいところに円安が加わる」は、同じようでかなり違います。

株式投資で知りたいのも、まさにそこです。円安が終わったら消えてしまう需要なのか。それとも円高になって多少旅行費用が上がっても、日本を選び続ける人がいるのか。日本人気の本当の強さは、為替が逆風になったときにこそ見えてくるのかもしれません。

円安は確かにインバウンドの追い風になる

円安は確かにインバウンドの追い風になる

外国人旅行者から見れば、日本国内の多くの商品やサービスは円建てです。

自国通貨に対して円が安くなれば、同じ1万円の食事や3万円のホテルでも、外貨へ換算したときの負担は小さくなります。

その影響は買い物だけではありません。ホテル、レストラン、鉄道、テーマパーク、温泉旅館、土産物など、日本国内で発生するさまざまな支出に割安感が広がります。特に旅行先をいくつか比較している段階では、「同じ予算でより良いホテルへ泊まれる」「食事や買い物まで楽しめる」という価格競争力は無視できません。

そして、単に旅行費用が安くなるだけではなく、予算の使い方が変わる可能性もあります。本来ならビジネスホテルへ泊まる予定だった人が上位クラスのホテルを選ぶ、食事を一回増やす、買い物を追加する。円安によって浮いた予算が日本国内の別の消費へ回れば、訪日客数だけでは見えない経済効果も生まれます。

だから私は、「円安はインバウンドに関係ない」という見方にも賛成できません。円安は日本旅行の価格競争力を高める重要な要素の一つとして考えておく必要があります。

「安くなった分」が別の消費へ回る可能性もある

「安くなった分」が別の消費へ回る可能性もある

円安の影響を考えるとき、「日本旅行そのものが安くなる」という見方だけでは少し足りないと思います。

旅行者にはある程度の予算があります。その中で宿泊費や交通費に割安感が生まれれば、浮いた分を食事、買い物、体験など別のものへ使えるようになります。

例えば「ホテル代が想定より安かったから少し良いレストランへ行く」「買い物を追加する」「もう一泊する」「地方まで足を延ばす」といった行動です。もちろんすべての旅行者がそうするとは限りませんが、為替による価格競争力が訪日客数だけではなく一人当たり旅行支出にも影響する可能性があります。

一方で、2025年の一般客1人当たり旅行支出は約22.9万円で、2019年の約15.9万円を大きく上回りました。宿泊費は2019年の約4.7万円から2025年には約8.4万円へ増え、飲食、交通、娯楽なども上昇しています。物価上昇や旅行者構成の変化など複数の要因が含まれるため、これを円安の効果だけとは言えませんが、「日本が安いから支出額も小さい」という単純な状態ではありません。

それでも「日本人気=円安」だけでは説明しにくい

それでも「日本人気=円安」だけでは説明しにくい

円安が追い風なのは間違いないとしても、そこで一つ疑問が残ります。

安ければ、世界中の旅行者はどの国でも同じように行きたくなるのでしょうか。

JNTOが2026年4月に公表した世界22市場の調査では、日本は18市場で「今後行きたい・次に行きたい旅行先」の選択率で首位でした。東アジアや東南アジアだけではなく、フランス、イタリア、スペインなど遠く離れた欧州市場でも日本が高い順位に入っています。

さらに2025年には、20市場で年間の訪日外客数が過去最高を更新しました。2026年7月にも韓国、台湾、米国、フランス、英国など17市場が7月として過去最高となっています。特定の一つの国からの旅行者だけが増えているのではなく、日本を訪れる市場そのものが広がっています。

そして、その人たちが日本へ来る理由も一つではありません。食を楽しみたい人、桜や雪を見たい人、歴史・文化を深く知りたい人、アニメやゲームがきっかけになった人、温泉や旅館へ泊まりたい人。価格以外にも、日本へ行かなければ得られないものが複数存在していることは、ここまで確認してきたデータとも一致します。

円安によって「行ってみよう」と最後の一押しをされる人はいるでしょう。ただ、その前に「そもそも日本へ行ってみたい」と思ってもらえなければ、価格の安さだけでは旅行需要になりません。

遠くからでも日本を選ぶ人がいる

遠くからでも日本を選ぶ人がいる

特に気になるのが、欧米豪など長距離市場です。

韓国や台湾から日本へ来る場合と比べて、米国や欧州、オーストラリアからの旅行は飛行時間も長く、国際航空券の負担も大きくなります。

それでもJNTOは、欧米豪を含む幅広い市場で日本への旅行意向が高いことを確認しています。さらに2026年4月から始めた「Japan. Unforgettable」では、消費単価が高く、まだ日本へ来たことのない人が多い欧米豪市場を中心に、日本の多様な魅力を発信しています。

ここには、日本がこれからインバウンドを伸ばすヒントがあります。近距離市場から大量に人を呼ぶだけではなく、時間とお金をかけても日本へ行きたいと思う層を世界で増やすことです。

長距離旅行者すべてが為替を気にしないわけではありません。それでも、旅行先を選ぶ判断材料が価格だけなら、何時間も飛行機に乗って日本まで来る必要はありません。歴史、文化、食、自然、コンテンツなど、距離を越えさせる理由を持てるかが、日本人気の持続性を考えるうえで重要だと思います。

もし円高になったら、インバウンドはどうなる?

もし円高になったら、インバウンドはどうなる?

では、現在とは逆に円高が進んだらどうなるのでしょうか。

円高になれば、外国人旅行者から見た日本国内の商品やサービスは外貨換算で高くなります。同じホテル、同じ料理、同じ商品でも負担感は大きくなるため、少なくとも価格面ではインバウンドに逆風になります。

ここで危険なのは、「だから外国人旅行者が一気にいなくなる」と決めつけることです。

旅行先を選ぶ理由には、価格、距離、航空便、休暇、治安、食、文化、自然、イベントなど多くの要素があります。さらに、日本へ一度行ったことがあるリピーターと、初めて旅行先を比較している人でも、為替への反応は同じとは限りません。

むしろ円高局面は、日本人気の中から「安さ」を取り除いたとき、どれだけ需要が残るのかを見る局面になると思います。

日本でしかできない体験への需要が強ければ、多少高くなっても旅行を続ける人はいるでしょう。一方、「安く買い物ができる」「安く日本旅行ができる」という理由が大きい層では、需要が弱くなる可能性があります。

だから「円高=インバウンド終了」ではなく、どの旅行者が残り、どの旅行者が減るのかを見ることが重要です。

為替への強さは「何を目的に日本へ来るか」で変わる

為替への強さは「何を目的に日本へ来るか」で変わる

投資家として考えるなら、旅行者を一つの集団として見ないことがここでも重要になります。

価格の安さを重視して大量に買い物をする旅行者と、何年も前から日本の歴史や文化に興味を持ち、長期休暇を使って訪れる旅行者では、円高への反応が同じとは限りません。

また、一度日本へ来て満足し、「次は東北へ行きたい」「次は温泉地を巡りたい」と考えているリピーターと、複数の国から初めての旅行先を比較している人でも判断軸は違います。

もちろん、「この市場は円高に強い」と単純に決めつけることはできません。ただ、企業を見るときには、どこの国・地域の旅行者が顧客なのか、何を目的に利用されているのか、リピーターが多いのか、高付加価値旅行を取り込めているのかまで確認した方が、為替変動への耐性を考えやすくなります。

企業にとっても「円安=すべて追い風」ではない

企業にとっても「円安=すべて追い風」ではない

円安は外国人旅行者を呼び込みやすくする一方、企業側から見ると別の問題もあります。

ホテルなら輸入食材や備品、エネルギー価格。外食なら肉や小麦などの原材料。航空会社なら燃油や航空機関連費用。小売企業なら海外から仕入れる商品。円安によって仕入れや運営コストが増えれば、外国人客が増えて売上が伸びても、利益が同じように増えるとは限りません。

これは、これまでホテルのところで見てきた「売上増=利益増ではない」という考え方と同じです。

円安の影響企業への可能性
日本旅行の割安感訪日需要の追い風
外国人客数の増加売上増加の可能性
高い購買力客単価上昇の可能性
輸入原材料の上昇コスト増
燃油・エネルギー上昇利益圧迫の可能性
人手不足への対応人件費上昇・採用コスト

例えば外国人が増えた飲食店でも、輸入食材と人件費が大幅に上がれば利益率は下がる可能性があります。ホテルでもADRが伸びても、光熱費や人件費がそれ以上に増えれば利益は残りません。

つまりインバウンド関連銘柄を見るなら、「円安→外国人増→株価上昇」ではなく、その会社にとって円安が売上とコストのどちらへ強く効くのかまで見る必要があります。

投資家なら「為替」より、その会社の価格決定力を見たい

投資家なら「為替」より、その会社の価格決定力を見たい

では、円安か円高かを予想してインバウンド関連銘柄へ投資すればいいのでしょうか。

私は、それだけで投資先を決めるのはかなり難しいと思います。

為替は企業自身がコントロールできません。一方で、どんな商品や体験を作るのか、どの客層を狙うのか、どの価格で販売するのか、リピーターをどれだけ増やすのかは、企業側の経営によって差が出ます。

そのため私なら、インバウンド関連銘柄を見るときは次の数字を追います。

見たい項目確認したいこと
外国人売上・利用比率インバウンドが会社全体へどれだけ影響するか
客単価外国人増加を売上増へ変えられているか
ADR・RevPARホテルが高く売りながら客室を埋められるか
免税売上小売が外国人消費を取り込めているか
リピーター一度きりではなく再訪需要を取れているか
国・地域別の顧客構成特定市場へ依存していないか
営業利益率売上増加が利益として残っているか
値上げ後の需要円高や物価上昇でも選ばれる力があるか

特に重要だと思うのが、価格決定力です。

円安によって外国人から見た価格が安い間だけ売れる企業と、価格を引き上げても「ここへ泊まりたい」「ここで買いたい」「ここで遊びたい」と選ばれる企業では、長期投資先としての強さが違います。

ホテルならADRを上げても稼働率を維持できるか。テーマパークならチケット価格を上げても人が来るか。百貨店なら高額商品でも買ってもらえるか。鉄道なら、その路線を使ってでも行きたい観光地へ人を運べるか。

円安という追い風がなくても選ばれる企業を探す。私はインバウンド関連銘柄を見るなら、この視点をかなり重視したいです。

円安は「理由」ではなく、日本人気を強める追い風なのかもしれない

円安は「理由」ではなく、日本人気を強める追い風なのかもしれない

外国人旅行者が増えている理由を考えるうえで、円安を無視することはできません。

日本国内のホテル、食事、買い物、交通などが外貨から見て割安になれば、日本旅行を選びやすくなり、旅行中の消費を増やすきっかけにもなります。

ただ、円安だけで現在の日本人気を説明するのも難しそうです。

世界22市場のうち18市場で日本が旅行先として首位となり、2025年には多くの市場で訪日客数が過去最高を更新しました。さらに日本を選ぶ理由は、食、自然、歴史、文化、アート、アニメ、ゲーム、温泉、テーマパークなど市場によって違います。JNTOも欧米豪を含む訪日未経験者へ、日本の「多様な魅力」を伝える戦略を進めています。

そう考えると、円安は日本人気そのものを作っているというより、すでに存在する「日本へ行ってみたい」という気持ちを強くする追い風なのかもしれません。

そして投資家として本当に見たいのは、その追い風が弱くなった後です。

円高になっても泊まりたいホテル。価格が上がっても行きたいテーマパーク。日本でしか買えないものを持つ小売。何度でも行きたくなる地方。世界の人に日本への興味を持たせ続けるIP。

「日本が安いから売れる」のか、それとも「日本だから選ばれる」のか。

この違いを見極められれば、インバウンド関連銘柄の中でも、為替だけに左右されにくい企業が少しずつ見えてくると思います。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

円安は日本旅行を後押ししてくれますが、ずっと円安が続くとは限りません。
だからこそ、価格が変わっても「また日本へ行きたい」と思ってもらえる魅力や、円安がなくても選ばれる企業を見つけることが大切なんですね。

スポンサーリンク

インバウンド急増の裏側|日本は観光客を受け入れ続けられる?

インバウンド急増の裏側|日本は観光客を受け入れ続けられる?

訪日外国人旅行者が増え、地方へ人が広がり、一人当たりの旅行消費額まで伸びていけば、日本経済にとって大きな追い風になります。

ここまで調べてきた数字だけを見ると、「2030年の6,000万人、15兆円に向けて、もっと外国人旅行者を呼べばいい」と考えたくなります。

ただ、インバウンドについて調べていく中で、私は少し違うことも気になるようになりました。

日本は、本当にその人数を受け入れられるのでしょうか。

旅行者が増えればホテルの客室が必要になり、鉄道やバスを使う人が増え、飲食店や観光施設では働く人が必要になります。人気観光地へ人が集中すれば混雑が起こり、ごみ、交通、住民生活への影響も大きくなります。災害が発生したときには、日本語が分からない旅行者を安全に避難させる仕組みも必要です。

実際、2026年3月に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画では、2030年の訪日外国人旅行者数6,000万人、旅行消費額15兆円という目標を維持しながら、政策の柱として「インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」を掲げています。政府自身も、人数を増やすことだけでは持続的な観光にならないと考えていることが分かります。

これは株式投資でも重要だと思います。インバウンド需要が伸びても、企業側が人手や設備を用意できなければ売上の上限にぶつかります。逆に、混雑を抑え、省人化やDXによって受け入れ能力を高められる企業には、新たな成長機会が生まれる可能性があります。

「外国人が増えるか」だけではなく、「増えた外国人を日本が満足させ続けられるか」。ここまで考えて初めて、日本のインバウンド市場が本当に長期成長できるのか見えてくると思います。

オーバーツーリズム|「人気になりすぎる」こともリスクになる

オーバーツーリズム|「人気になりすぎる」こともリスクになる

観光地に人が来ること自体は、本来うれしいことです。ホテルや飲食店には客が入り、鉄道や小売にも売上が生まれ、地域にお金が落ちます。

しかし、一定の地域や時間帯へ旅行者が集中しすぎると、そのメリットが逆回転し始めます。

観光庁はオーバーツーリズムについて、観光客が一部の地域や時間帯へ集中することで、過度な混雑やマナー違反が住民生活へ影響し、旅行者自身の満足度低下にもつながる状態を課題として挙げています。2026年度からの観光政策でも、地方誘客などを通じて集中を分散し、観光客の受け入れと住民生活の質を両立する方針が明確にされています。

実際、2025年11月から2026年1月に4,110人の訪日外国人旅行者へ行った受入環境調査では、「観光地や地域の混雑」に困った人は12.9%いました。

さらに、

旅行中に困ったこと割合
ごみ箱の少なさ17.2%
スタッフとのコミュニケーション15.4%
観光地・地域の混雑12.9%
交通機関の利用11.3%
多言語表示10.9%
クレジット・デビットカード10.7%
入国手続き10.3%

となっています。「困ったことはなかった」という回答は43.7%だったため、裏返せば半数以上が何らかの不便を感じています。

もちろん、日本旅行全体の満足度が非常に高いこととは矛盾しません。満足して帰る旅行者が多い一方、旅行者が増えるほど受け入れ環境の弱い部分が目立ち始めるということだと思います。

観光客だけでなく「そこに暮らす人」の満足度も必要

観光客だけでなく「そこに暮らす人」の満足度も必要

オーバーツーリズムを考えるとき、旅行者の不満だけを見ても足りません。

旅行者は数日後には帰りますが、観光地で暮らす人はそこで生活を続けます。通勤や通学に使うバスが混雑する、生活道路へ観光客が入り込む、ごみが増える、騒音が発生する。観光消費によって地域にお金が入っても、住民が「観光客が増えて暮らしにくくなった」と感じる状態では、長期的な観光地づくりは難しくなります。

だからこそ第5次観光立国推進基本計画でも、単なる「観光客誘致」ではなく、住民生活の質の確保との両立が政策の柱になっています。

これは企業にとっても無関係ではありません。観光地との関係が悪化して事業拡大が難しくなったり、規制が強化されたりすれば、長期的な成長にも影響します。

インバウンド企業を見るときも、私は「どれだけ客を増やせるか」だけではなく、「その地域で持続的に事業を続けられるか」まで見た方がいいと思います。

人手不足|外国人が増えても「サービスする人」が足りない

人手不足|外国人が増えても「サービスする人」が足りない

旅行者が増えたとき、ホテルの客室や飲食店の席だけを増やせばいいわけではありません。それを動かす人が必要です。

ホテルならフロント、清掃、調理、配膳。飲食店なら調理や接客。鉄道や空港、テーマパーク、小売でも同じです。

特に宿泊業では、インバウンドをはじめとする観光需要の急回復によって人手不足が一段と顕在化しているとして、観光庁が2026年にも人材確保、生産性向上、地域内での人材共有など複数の支援策を進めています。2026年版観光白書でも、宿泊業の人材と生産性が大きなテーマとして取り上げられました。

ここはインバウンド関連銘柄を見るうえで非常に重要です。

ホテルに泊まりたい外国人が100人から150人へ増えても、清掃できる部屋が100室しかなければ売上はそれ以上増やせません。無理に人を採用すれば、人件費が大きく上昇する可能性もあります。

つまり人手不足は、

需要があるのに売れない

という問題と、

売上を増やすためにコストも増える

という二つの問題を企業へ突きつけます。

訪日客数が増えているのに利益率が伸びない企業があれば、人件費や採用費、生産性まで確認したいところです。

DX・省人化は「人を減らす」ためだけではない

DX・省人化は「人を減らす」ためだけではない

人手不足への対応として注目されるのがDXや省人化です。

観光庁が紹介している宿泊施設の事例では、自動チェックイン機、清掃ロボット、配膳ロボット、AIコンシェルジュなどが導入されています。また、2026年にも宿泊業のIT活用や共同設備への投資を通じて、労働生産性を高める政策が続いています。

ここで大切なのは、「機械を入れて従業員を減らす」という話だけではないと思います。

チェックインや単純作業をシステムへ任せられれば、人は宿泊客への案内、料理、接客、トラブル対応など、人にしか作りにくい価値へ時間を使えます。

前に見た高付加価値旅行ともつながります。

専門ガイドや丁寧な接客へ人材を使いながら、定型業務はデジタル化する。そうすることで、人手不足への対応とサービス品質の維持を同時に進められる可能性があります。

投資家としては、単純な人件費削減ではなく、一人の従業員がどれだけ売上や付加価値を生み出せるようになったかを見たいところです。

受け入れ能力|空港・鉄道・ホテルのどこかが詰まれば旅行は止まる

受け入れ能力|空港・鉄道・ホテルのどこかが詰まれば旅行は止まる

外国人旅行者の受け入れ能力は、ホテルの客室数だけではありません。

旅行者が日本へ来るまでには航空便が必要です。到着した空港では入国審査を通り、鉄道やバスで移動し、ホテルへ泊まり、観光地へ向かいます。

このどこか一つがボトルネックになれば、旅行体験全体に影響します。

実際、2025年11月〜2026年1月の調査では、「交通機関の利用」に困った旅行者が11.3%、「入国手続き」が10.3%でした。入国手続きで困った理由として最も多かったのは待ち時間や手続き時間の長さです。

地方誘客でも同じです。

地方に魅力的な観光資源があっても、新幹線駅や空港から先のバスが少ない、ホテルが足りない、多言語で予約できないという状態なら、旅行者はそこまで行けません。

つまり2030年に6,000万人を受け入れるには、

飛行機 → 空港 → 交通 → 宿泊 → 観光 → 飲食・買い物

という旅行者の動線全体を拡張する必要があります。

投資テーマとして見ると、これはホテルや航空会社だけでなく、交通、決済、予約システム、省人化設備などにもビジネスが広がる可能性を意味します。

災害・感染症・国際情勢|インバウンドは突然止まることがある

災害・感染症・国際情勢|インバウンドは突然止まることがある

ここまでインバウンドを成長市場として見てきましたが、観光需要には企業自身ではコントロールできないリスクがあります。

日本では地震、台風、大雨、火山などの自然災害があります。観光庁も2026年、災害が激甚化・頻発化する中で訪日外国人旅行者が旅行中に被災することを想定し、多言語での情報提供や避難誘導などを含む「観光危機管理」を進めています。

そしてコロナ禍を経験したように、感染症によって国境を越える旅行そのものが止まることもあります。国際情勢の悪化や航空路線の減便なども、特定市場からの訪日需要へ影響する可能性があります。

インバウンド企業にとって怖いのは、需要が企業努力とは関係なく急変する可能性があることです。

だからこそ、特定の一国からの旅行者だけへ依存している企業と、多くの国・地域から顧客を集められる企業ではリスクが違います。また、外国人だけではなく国内旅行者も利用するホテルや交通会社であれば、需要源が分散されます。

インバウンドの成長性を見るときは、伸び率だけではなく、どれだけ需要が分散されているかも重要だと思います。

2026年11月、外国人向け免税制度が大きく変わる

2026年11月、外国人向け免税制度が大きく変わる

小売関連銘柄を見るなら、もう一つ忘れてはいけない変化があります。

2026年11月1日から、外国人旅行者向けの消費税免税制度が「リファンド方式」へ変わります。

現在の仕組みでは、一定の要件を満たせば免税店で消費税を除いた価格で商品を購入できます。しかし新制度では、旅行者はいったん消費税込みの価格で商品を購入します。

その後、日本から出国するときに税関が商品を国外へ持ち出すことを確認し、確認後に免税店または委託された返金事業者から消費税相当額が返金される仕組みになります。制度変更は免税品の国内横流しなどの不正利用へ対応するためのものです。

一方で、制度は厳しくなるだけではありません。一般物品と消耗品の区分や、消耗品の購入上限額、特殊包装などが廃止され、免税店側の一部の販売要件も簡素化されます。

つまり、

「その場で免税」から「いったん払って、出国確認後に返金」へ。

百貨店、ドラッグストア、ディスカウントストアなど、免税売上が大きい企業にとっては実務上かなり大きな変更です。

免税制度変更で「爆買いが終わる」と決めつけない

免税制度変更で「爆買いが終わる」と決めつけない

新しいリファンド方式では、外国人旅行者が購入時には消費税を含めた金額を支払うため、旅行中に一時的に必要な資金は増えます。

また、出国確認から返金までの流れを旅行者へ分かりやすく案内する必要もあります。

そのため、制度変更直後には旅行者や店舗側が新しい手続きへ慣れるまで、多少の負担が生じる可能性は考えておきたいところです。

一方で、「リファンド方式になるから外国人は買い物をしなくなる」とまでは現時点で言えません。

制度改正では不正対策だけでなく、一般物品と消耗品の区分や購入上限、特殊包装なども見直されます。財務省も、免税制度を引き続きインバウンド消費拡大の重要な政策ツールとして活用する方針を示しています。

投資家として見たいのは、制度変更そのものより、その後です。

三越伊勢丹HD、高島屋、PPIH、ドラッグストアなどで、免税売上、外国人客数、客単価がどう変化するのかを確認すれば、新制度が消費行動へ与えた影響を実際の数字から判断できます。

投資家なら「需要」だけでなく「受け入れる力」を見る

投資家なら「需要」だけでなく「受け入れる力」を見る

ここまでを見ると、インバウンド企業へ投資するときには、訪日外国人数だけを追うのでは足りないことが分かります。

例えば訪日客数が10%増えても、その企業のホテルがすでに高稼働で、新しい客室もスタッフも用意できなければ、宿泊者数を10%増やすことはできません。

逆に、人手不足の中でもDXによって生産性を高め、ADRを上げながらサービス品質を維持できるホテルなら、客室数を大きく増やさなくても利益を伸ばせる可能性があります。

見たい項目投資家として確認したいこと
訪日客・外国人利用者需要そのものは伸びているか
稼働率まだ受け入れる余地があるか
ADR・客単価数を増やさず売上を伸ばせるか
人件費需要増でコストが膨らんでいないか
生産性一人当たりの売上・利益を高められているか
DX・設備投資人手不足を補えているか
顧客の国・地域特定市場へ依存していないか
地域との関係オーバーツーリズムへ対応できているか
営業利益率追い風を本当に利益へ変えられているか

私は特に、「需要があること」と「需要を取れること」は別だと考えたいです。

インバウンド市場そのものが成長していても、その成長を受け止めるホテル、スタッフ、交通、サービスを用意できなければ企業利益にはなりません。

反対に、限られた人員や施設でも一人当たりの価値を高められる企業なら、6,000万人という人数以上の恩恵を受けられる可能性があります。

6,000万人より難しいのは「また来たい日本」を守ることかもしれない

6,000万人より難しいのは「また来たい日本」を守ることかもしれない

日本政府は2030年に訪日外国人旅行者6,000万人、旅行消費額15兆円を目指しています。

ただ、ここまで調べてくると、人数を増やすことだけならインバウンド政策のゴールではないことが分かります。政府自身も新しい基本計画で、観光の持続的な発展、地方誘客、住民生活との両立、観光産業の強靱化を重視しています。

旅行者が増えれば、混雑、人手不足、交通、宿泊、ごみ、多言語対応などの問題も大きくなります。災害が起きたときには安全を守る仕組みが必要になり、2026年11月には免税制度という買い物環境も大きく変わります。

それでも私は、これらを「だからインバウンドは危ない」という意味では捉えていません。

むしろ、需要が増えたことで、日本の観光産業が次の段階へ進む必要が出てきたのだと思います。

自動化できる仕事はDXへ任せ、人は価値の高いサービスへ集中する。東京や京都だけへ人を集めず地方へ広げる。大量に安く売るだけではなく、高付加価値旅行を育てる。観光客だけではなく、地域で暮らす人にも利益が残る仕組みを作る。

こうした変化が進めば、インバウンド市場は「外国人の人数が増える市場」から、日本の観光産業そのものが生産性と価値を高めていく市場へ変わる可能性があります。

株式投資で見たいのもそこです。

外国人が増えるだけで儲かる会社ではなく、外国人が増えてもサービスを維持し、地域と共存し、コストを抑えながら利益を伸ばせる会社。

2030年に本当に重要なのは6,000万人という数字そのものではなく、その6,000万人に「また日本へ来たい」と思ってもらえる状態を維持できるかもしれません。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

外国人旅行者が増えるのは大きなチャンスですが、受け入れる側が追いつかなければ、その人気を長く続けることはできないんですね。
人数だけではなく、働く人、交通、地域で暮らす人、旅行者の満足まで一緒に考えられる企業が、本当にインバウンドの成長を取り込めるのかもしれません!

スポンサーリンク

インバウンド関連銘柄へ投資するとき、何を見ればいい?

インバウンド関連銘柄へ投資するとき、何を見ればいい?

ここまで航空、鉄道、ホテル、小売、外食、テーマパーク、IP、地方観光、高付加価値旅行まで見てきました。

こうして並べると、インバウンド関連銘柄という言葉の範囲がかなり広いことが分かります。

ただ、実際に株を買うとなると「外国人旅行者が増えているから、この会社も伸びそう」という理由だけでは少し弱いと思います。

訪日外国人数が増えても、その企業の店舗やホテルが外国人に使われなければ売上にはなりません。外国人売上が伸びても、人件費や仕入価格がそれ以上に上がれば利益は残りません。さらに、会社全体の中でインバウンド事業が小さければ、ニュースでは話題になっても業績への影響は限定的です。

だから私は、インバウンド関連銘柄を見るときに、

需要 → 企業との接点 → 客単価 → 売上 → コスト → 利益 → 株価

の順番で考えたいです。

大切なのは、「外国人が増える」という大きなテーマから始めながら、一段ずつ企業の利益へ近づいていくことです。

① まず「外国人が増えているか」ではなく、自社の利用者が増えているか

① まず「外国人が増えているか」ではなく、自社の利用者が増えているか

最初に見るのはインバウンド市場そのものですが、訪日外国人数だけでは企業分析としてはまだ入口です。

例えば日本全体の訪日客が10%増えていても、その会社が展開する地域へ外国人が来ていなければ恩恵は小さくなります。反対に、日本全体では伸びが鈍くても、その企業が強い地域や施設へ旅行者が集中していれば売上は伸びる可能性があります。

ホテルなら外国人宿泊者数、鉄道なら外国人向けパスや観光路線の利用、小売なら免税売上、テーマパークなら海外ゲスト比率など、会社ごとにインバウンド需要へ近いKPIを探すことが重要です。

業種訪日客数の次に見たい数字
ホテル外国人宿泊者数、稼働率、ADR、RevPAR
鉄道観光・非定期利用、新幹線利用、外国人向け商品
百貨店免税売上、海外顧客売上、客単価
外食客数、既存店売上、観光地店舗の動向
テーマパーク来園者数、海外客比率、1人当たり売上
空港国際線旅客数、免税・物販売上
ホテルREITRevPAR、賃料、変動賃料

「日本に何人来たか」から、「その会社に何人来たか」へ。ここまで近づけると、ニュースと企業業績の距離がかなり縮まります。

訪日外国人数と企業業績の間には「何段階もある」

訪日外国人数と企業業績の間には「何段階もある」

例えば「訪日外国人数が前年比10%増」というニュースが出たとします。

そこからホテル会社の利益までたどるには、

訪日客増加 → その地域へ行く → そのホテルを選ぶ → 宿泊する → ADRが上がる → RevPARが伸びる → 売上増 → コストを差し引く → 利益増

という複数の段階があります。

小売なら、

訪日客増加 → 店舗へ来る → 商品を買う → 客単価が上がる → 免税売上増 → 粗利益 → 販管費 → 営業利益

となります。

この途中のどこかで流れが止まれば、「インバウンドが好調」というニュースと企業利益は一致しません。

私はテーマ投資をするとき、このニュースと利益の間にある階段をできるだけ確認したいです。

② インバウンド売上が「会社全体の何%」なのかを見る

② インバウンド売上が「会社全体の何%」なのかを見る

インバウンド需要との距離が近い企業でも、会社全体への影響はそれぞれ違います。

例えば百貨店の一部店舗では外国人売上が非常に大きくても、グループ全体では国内顧客向け事業や不動産、金融など別の事業を持っている場合があります。鉄道会社も同じで、観光需要が好調でも、通勤需要、不動産、流通などが業績を左右します。

そのため重要なのが、インバウンド関連事業が会社全体の売上や利益にどれだけ影響するのかです。

私はここを「インバウンド感応度」として考えると分かりやすいと思います。

インバウンド売上が会社全体の5%しかない企業と、宿泊需要が利益の大部分を占めるホテル会社では、同じ訪日客10%増でも業績への影響はまったく違います。

インバウンド市場が伸びたときに本当に業績が動く会社なのか。それとも、ニュースではインバウンド関連銘柄として扱われても、会社全体では影響が小さいのか。ここは必ず分けたいです。

③ 人数より「客単価」と「価格決定力」を見る

③ 人数より「客単価」と「価格決定力」を見る

ここまで何度も出てきましたが、インバウンド投資で私は客単価をかなり重視したいです。

外国人利用者が10%増えても、安売りによって客単価が10%下がれば売上はそれほど伸びません。反対に客数が横ばいでも、一人当たりの支出を伸ばすことができれば売上は増えます。

ホテルならADR。テーマパークなら1人当たり売上。百貨店なら免税客単価。外食なら客単価。空港なら旅行者一人当たりの物販・飲食消費です。

そして、その先にあるのが価格決定力です。

値上げしても客数が大きく落ちない。より高い部屋を選んでもらえる。限定商品や日本でしかできない体験へお金を払ってもらえる。

こうした企業は、円安や訪日客数だけに頼らず、インバウンド需要を売上へ変えやすくなります。

値上げ後に客が残るかを見る

値上げ後に客が残るかを見る

価格決定力は、「値上げを発表した」という事実だけでは分かりません。

本当に重要なのは、値上げした後でも利用者が残ったかです。

ホテルならADRを引き上げても稼働率を維持できたか。テーマパークならチケット価格を上げても来園者数や1人当たり売上が伸びたか。百貨店なら高額商品への需要が続いたか。

値上げ後に客数が大きく落ちるなら、それは単なる価格上昇です。一方、値上げしても利用され続け、売上や利益まで伸びているなら、企業が提供しているものにそれだけの価値がある可能性があります。

特に円高になった場合、この差はさらに重要になります。

「安いから選ばれる会社」なのか、「高くても選ばれる会社」なのか。

長期投資では、この違いを見たいです。

④ 売上ではなく「利益率」まで見る

④ 売上ではなく「利益率」まで見る

インバウンド市場が好調なときほど、売上だけを見ると企業が強く見えます。

しかしホテルでは人件費、清掃費、光熱費。外食では食材費、人件費。航空では燃油費。小売では仕入価格。テーマパークでは人件費や設備投資がかかります。

だから最終的には、

売上がどれだけ増えたか

ではなく、

増えた売上のうち、どれだけ利益として残ったか

まで見る必要があります。

例えば売上が10%増えて営業利益が20%増えているなら、需要増加だけでなく価格上昇や生産性改善も効いている可能性があります。一方、売上10%増に対して営業利益がほとんど増えていなければ、コスト上昇によって恩恵が相殺されているかもしれません。

ここまで追って初めて、インバウンドという追い風を企業が本当に利益へ変換できているのか判断できます。

⑤ 特定の国・地域へ依存していないかを見る

⑤ 特定の国・地域へ依存していないかを見る

インバウンド需要には、国・地域ごとの違いがあります。

日本へ来る人数だけでなく、買い物を重視する市場、地方へ行きやすい市場、長期滞在する市場、日本食を重視する市場など旅行行動も違います。

さらに国際情勢、景気、航空便、為替などによって、特定国からの訪日客数が急減する可能性もあります。

そのため企業を見るときには、外国人売上が伸びているかだけでなく、どこの国・地域の旅行者へ依存しているのかも確認したいです。

一つの市場が大半を占める企業より、東アジア、東南アジア、欧米豪など複数市場から利用者を集められる企業の方が、需要の変動には強くなる可能性があります。

また国内顧客も強い企業であれば、インバウンドが一時的に落ち込んだときのクッションにもなります。

⑥ 成長余地|「すでに満杯」なのか、「まだ伸ばせる」のか

⑥ 成長余地|「すでに満杯」なのか、「まだ伸ばせる」のか

インバウンド需要が強い会社でも、すでに供給能力の限界まで使っている場合があります。

例えばホテルの稼働率がほぼ満室なら、さらに宿泊者を増やすには新しいホテルを建てるか、ADRを引き上げる必要があります。テーマパークでも一日に入れられる人数には限界があります。鉄道や空港でも混雑が激しくなれば、設備投資が必要になります。

逆に、新しいホテルを開業する余地がある会社、地方へ店舗や施設を広げられる会社、DXで少ない人員でも受け入れ人数を増やせる会社なら、需要増をさらに取り込める可能性があります。

だから私は、現在の数字だけではなく、

今の強さ × これから増やせる余地

をセットで見たいです。

すでに高稼働で利益率も高い企業が、さらに価格を上げるのか。新規施設を増やすのか。海外客の少ない地域へ広げるのか。成長の方法まで確認する必要があります。

⑦ 最後に株価|良い会社でも「高すぎる株」はある

⑦ 最後に株価|良い会社でも「高すぎる株」はある

ここまで企業の事業を見た後に、最後に株価を見ます。

インバウンド市場が成長し、企業の売上も利益も伸びている。価格決定力もあり、地方誘客や高付加価値旅行まで取り込める。そこまで確認できれば魅力的な会社に見えます。

ただし、良い会社=いつ買っても良い株ではありません。

市場がその成長をすでに株価へ織り込んでいれば、PERやPBRなどのバリュエーションがかなり高くなっている場合があります。

テーマ株は特に、「外国人6,000万人」「過去最高の訪日客」といった分かりやすいニュースで期待が先に株価へ乗りやすいところがあります。

だから、

インバウンドが伸びるか

と、

その株を今の価格で買う価値があるか

は必ず分けて考えたいです。

「インバウンド関連」という人気テーマほど高値づかみに注意する

「インバウンド関連」という人気テーマほど高値づかみに注意する

インバウンドのように分かりやすい成長ストーリーがあるテーマでは、企業業績より先に株価が上がることがあります。

「外国人が過去最高」「免税売上が急増」「ホテル料金が上昇」といったニュースが続けば、その企業の将来利益まで投資家が先回りして織り込むからです。

その状態で買うと、業績が実際に伸びても「期待ほどではなかった」という理由だけで株価が下がることがあります。

だから私は、インバウンド関連銘柄を見るときも、

業績成長率
PER・PBR
過去の評価水準
利益成長が何年続く前提になっているか

まで確認したいです。

テーマが正しくても、買う価格を間違えれば投資成果は変わります。

私ならインバウンド関連銘柄をこの順番で見る

私ならインバウンド関連銘柄をこの順番で見る

インバウンド関連銘柄を見てきて感じるのは、結局「外国人が増える」という数字だけでは投資判断までたどり着けないということです。

訪日外国人旅行者が増える。その中から、その企業を利用する人が増える。客単価を上げる。売上を伸ばす。コストを抑える。そして利益を残す。

さらに、その企業が成長できる余地があり、特定市場へ依存しすぎておらず、それでも株価が割高すぎないかを見る必要があります。

私なら、次の順番で確認します。

順番見るもの確認したいこと
1訪日需要市場そのものは伸びているか
2企業利用その会社を実際に外国人が使っているか
3客単価一人からいくら売上を作れるか
4価格決定力値上げしても選ばれるか
5売上インバウンド需要を取り込めているか
6コスト人件費・原材料費などが膨らんでいないか
7利益率売上を利益へ変えられているか
8分散特定国・地域へ依存していないか
9成長余地次の客室・店舗・地域があるか
10株価成長期待をすでに織り込んでいないか

インバウンドというテーマは、日本全体の追い風です。しかし、その追い風をすべての企業が同じように受けられるわけではありません。

外国人が増える会社ではなく、その外国人を自社へ呼び、一人当たりの価値を高め、売上を利益へ変え、その利益を長く成長させられる会社。

私は、そういう企業をインバウンド関連銘柄の中から探したいです。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

「外国人が増えている!」だけでは、まだ投資判断のスタート地点なんですね。その会社を実際に使ってもらえているのか、一人からどれだけ売上を作り、最後に利益を残せているのか。そこまで追うと、同じインバウンド関連銘柄でも企業ごとの違いがかなり見えてきそうです!

スポンサーリンク

日本のインバウンドはこれからどうなる?|6,000万人の先で何が変わる

日本のインバウンドはこれからどうなる?|6,000万人の先で何が変わる

2025年、日本を訪れた外国人旅行者は約4,268万人、旅行消費額は約9.5兆円まで増えました。

2010年には訪日客が約867万人、旅行消費額が約1.1兆円だったことを考えると、この15年間で日本のインバウンド市場そのものが大きく変わったことが分かります。観光庁は2025年の訪日消費による経済波及効果を約19兆円と推計しており、もはや観光は一部のホテルや旅行会社だけの市場ではありません。

では、このまま外国人旅行者が増え続け、2030年には6,000万人へ向かうのでしょうか。

2026年7月の訪日外客数は344万2,100人で、前年同月比ではわずか0.1%増でした。それでも7月としては過去最高で、韓国、台湾、米国、フランスなど17市場が7月として過去最高を記録しています。一部市場の伸びが弱くなっても、別の国・地域から需要が生まれている。現在のインバウンドは、単純に全市場が同じ速度で増えているわけではありません。

私はここが、これからのインバウンドを見るうえで大事だと思います。

4,000万人から6,000万人へ人数が増えるかどうかだけではなく、誰が来るのか、どこへ行くのか、何泊するのか、何にお金を使うのか。

政府が2026年3月に決定した第5次観光立国推進基本計画も、2030年の6,000万人・15兆円という目標を残しながら、リピーター、地方宿泊、高付加価値化、観光DX、人材、生産性、住民生活との両立まで目標を広げています。つまり、日本のインバウンド政策そのものが「人数を増やす段階」から「観光産業の中身を強くする段階」へ進み始めているように見えます。

2030年は「6,000万人」だけを追う計画ではない

2030年は「6,000万人」だけを追う計画ではない

2030年のインバウンド目標として最も知られているのは、訪日外国人旅行者数6,000万人、旅行消費額15兆円です。

ただ、第5次観光立国推進基本計画を詳しく見ると、それ以外の数字の方がこれからの日本の方向性を理解しやすいかもしれません。

2030年に向けて見る指標目標・方向性
訪日外国人旅行者数6,000万人
訪日外国人旅行消費額15兆円
リピーター4,000万人
1人当たり消費額まずは25万円
地方部の外国人延べ宿泊者数1億3,000万人泊
三大都市圏:地方部1:1へ
観光客と住民生活の両立に取り組む地域100地域
宿泊業が創出する付加価値額6.8兆円

特に面白いのが、6,000万人のうち4,000万人をリピーターにするという目標です。政府は、リピーターは地方部への訪問意欲が高く、日本文化や習慣への理解も深い傾向があるとしています。そして地方部の外国人延べ宿泊者数を1億3,000万人泊まで増やし、三大都市圏と地方部を1:1へ近づける方針です。

さらに、新たに宿泊業が生み出す「付加価値額」まで政策目標へ入ったことも注目したいです。

外国人を何人泊めたかではなく、ホテルや旅館が人材や設備を使ってどれだけ価値を生み出したのかを見る。これは観光政策でも「売上の量」だけではなく、産業としての稼ぐ力を見るようになったということだと思います。

観光は「サービス業の一部」ではなく、日本の戦略産業へ

観光は「サービス業の一部」ではなく、日本の戦略産業へ

第5次観光立国推進基本計画では、観光を地域経済や日本経済の発展をリードする「戦略産業」と明記しています。

2025年の訪日外国人旅行消費額は約9.5兆円、その経済波及効果は約19兆円。さらに2030年に旅行消費額15兆円を達成した場合、経済波及効果は約30兆円規模になると政府は見込んでいます。

なぜ旅行者が使った15兆円から、それ以上の経済効果が生まれるのでしょうか。

ホテルが料理を提供すれば食材を仕入れます。飲食店では農業や漁業の商品が使われ、鉄道やホテルの設備には製造業や建設業が関わります。旅行者が地域で買い物をすれば、小売から物流、食品メーカーまで売上が広がります。

つまりインバウンドは、

外国人 → ホテル

だけの市場ではなく、

外国人旅行消費 → 観光企業 → 地域企業 → 製造・農林水産・物流などへ波及

していく市場です。

株式投資でも、直接外国人旅行者からお金を受け取る会社だけを見るのではなく、その後ろにどんな産業がつながっているのかまで考える余地があります。

2026年の伸び鈍化は「インバウンド終了」を意味するのか

2026年の伸び鈍化は「インバウンド終了」を意味するのか

2025年までの訪日客数を見ると、右肩上がりの強い市場に見えます。

しかし2026年に入ると、毎月すべての市場が同じように増えるわけではないことがより分かりやすくなってきました。

2026年7月の訪日外客数は344万2,100人。前年同月比では+0.1%です。「ほとんど増えていない」とも読めます。

ただし同じ月に、17市場が7月として過去最高を記録しました。台湾は初めて単月70万人を超え、韓国や米国、フランスなどでも訪日客が増えています。

この数字から私が感じるのは、インバウンド市場を一本の線として見ない方がいいということです。

ある国からの旅行者が減っても、別の国から増える可能性があります。夏に弱い市場もあれば、長期休暇で強くなる市場もあります。為替、景気、航空便、外交関係によっても動きます。

だから今後は、

「訪日客全体が前年比何%増えたか」

だけではなく、

「どの市場が増え、どの市場が減り、その旅行者は日本で何をしているのか」

を見る必要があります。

インバウンド市場が成熟していけば、毎年20%、30%と人数が増える局面から、旅行者の中身が変わることで市場が成長する局面へ移っていく可能性もあります。

次の成長は「アジアから大量に来る」だけではない

次の成長は「アジアから大量に来る」だけではない

日本のインバウンドは長く、韓国、中国、台湾、香港などアジア市場の存在感が非常に大きい市場でした。

もちろん、これらの国・地域が今後も重要であることは変わりません。

ただ、JNTOの戦略を見ると、訪日市場そのものをもっと分散させようとしていることが分かります。

コロナ前にはアジア地域からの旅行者がインバウンド全体の約83%を占めていましたが、2025年には約77%まで低下し、欧米豪などの比率が上昇しています。JNTOは2026年4月、新しい世界向けキャンペーン「Japan. Unforgettable」を開始し、特に消費単価が高く、まだ日本を訪れたことのない人が多い欧米豪市場を重要なターゲットにしています。

これは単なる「外国人をもっと増やす」という施策とは少し違います。

米国、欧州、オーストラリアなどから来る旅行者は、日本までの距離が長い分、旅行日数が長くなる可能性があります。さらに高付加価値旅行と組み合わせれば、地方での宿泊や文化体験などへ消費が広がる余地があります。

そして企業側から見れば、市場が分散することはリスク分散にもなります。

一つの国に依存して訪日客を集める日本から、世界中のさまざまな市場から旅行者を呼べる日本へ。

この変化が進むかどうかは、2030年までのインバウンドを見るうえでかなり重要だと思います。

「Japan. Unforgettable」が狙うのは、まだ日本へ来ていない人

「Japan. Unforgettable」が狙うのは、まだ日本へ来ていない人

2026年4月にJNTOが開始した「Japan. Unforgettable」で面白いのは、ターゲット設定です。

狙っているのは、日本をまったく知らない人ではありません。

「日本へ行ったことはない。でも、次の海外旅行先の候補として日本に興味を持っている人」です。

JNTOは、欧米豪を中心にこうした層が増えているとして、日本各地の自然、文化体験、食などを発信しています。また、「いつ来ても楽しめる日本」を打ち出すことで、特定季節や有名観光地だけに需要を集中させないことも狙っています。

これはかなり重要な変化だと思います。

富士山や京都を知らない人へ日本をゼロから説明するのではなく、すでに日本へ興味がある人へ、

「東京と京都以外にも、こんな日本があります」

と伝える段階へ入っているからです。

JNTOの22市場調査で日本が18市場の旅行先候補として首位だったことを考えると、今後は日本への関心を、実際の訪日・地方宿泊・旅行消費へどう変換するかが勝負になりそうです。

「地方 × リピーター × 高付加価値」が次の成長エンジンになる?

「地方 × リピーター × 高付加価値」が次の成長エンジンになる?

政府が2030年に向けて掲げている目標を並べると、ばらばらに見えて実はかなりつながっています。

6,000万人のうち4,000万人をリピーターにする。地方部で1億3,000万人泊を目指す。消費単価を引き上げる。高付加価値旅行者を地方へ呼ぶ。

つまり、

リピーターが増える
↓
有名観光地以外へ行く
↓
地方で泊まる
↓
食・文化・自然を体験する
↓
一人当たり消費が増える

という循環を作ろうとしているように見えます。

観光庁は現在、東北海道、八幡平・周辺、山形、佐渡・新潟、北陸、富士山麓、松本・高山、伊勢志摩、せとうち、鳥取・島根、沖縄・奄美などを含む複数地域で、高付加価値旅行者を呼び込む観光地づくりを進めています。

これは東京や大阪の代わりに地方へ人を押し込むという話ではありません。

その地域でしか食べられないもの、その土地でしか聞けない歴史、その自然でしかできない体験に価値を付け、「わざわざそこまで行って泊まりたい」と思ってもらうことが必要です。

地方インバウンド、高付加価値旅行、リピーターは別々のテーマではなく、これからの日本観光を成長させる一つの流れとして見る方が分かりやすいと思います。

「安い日本」から「価値のある日本」へ変われるか

「安い日本」から「価値のある日本」へ変われるか

私は、これからの日本のインバウンドで最も重要なのはここではないかと思います。

日本は円安によって、外国人旅行者から見ると割安感のある旅行先になりました。しかし、円安がいつまでも続く保証はありません。

さらに観光庁自身が2026年の事業で、地域の観光コンテンツに十分な差別化がなければ、旅行者が価格ばかりを見るようになり、品質を軽視した価格競争に陥る懸念を示しています。そのため、価格ではなく品質や体験価値で選ばれる観光コンテンツづくりを進めています。

この考え方は企業にもそのまま当てはまります。

ホテルを安く売って満室にする。飲食を安く提供する。商品を免税で大量に買ってもらう。それでも売上は作れます。

しかし、より強いのは、

価格を上げても泊まりたいホテル
その土地まで行って食べたい料理
そこでしか買えない商品
何度でも行きたいテーマパーク
時間をかけてでも体験したい文化

を作れる企業や地域です。

インバウンドの将来性は、外国人旅行者を安さで大量に集め続けられるかではなく、日本だからお金を払いたいと思ってもらえる価値をどれだけ増やせるかにかかっているのかもしれません。

企業の勝ち方も「外国人を増やす」から変わっていく

企業の勝ち方も「外国人を増やす」から変わっていく

インバウンド市場の変化を企業側から見ると、これから重要になる数字も少し変わっていくと思います。

これまでなら、「外国人客数が前年比何%増えた」「免税売上が何%伸びた」というだけでも成長を説明しやすかったかもしれません。

しかし市場が大きくなれば、単純な人数増加だけでは差がつきにくくなります。

これまで見られやすかった数字これからより重要になりそうな数字
外国人客数外国人客単価
宿泊者数ADR・RevPAR
来園者数1人当たり売上
免税客数海外顧客売上・客単価
大都市の店舗数地方での事業展開
一つの国からの集客市場の分散
従業員数1人当たり生産性
売上成長利益率・付加価値

例えばホテルなら、客室数を倍にしなくてもADRとRevPARを伸ばせます。テーマパークなら、入園者数が横ばいでも飲食、商品、ホテルまで利用してもらえば一人当たり売上を伸ばせます。

鉄道会社なら、東京から地方へ旅行者を運び、その先のホテルや商業施設まで利用してもらう。百貨店なら、一度来店した外国人と訪日後も関係を持ち続ける。

そして人手不足の中では、DXによって少ない人員で高いサービスを提供できるかも重要になります。

つまりインバウンド関連銘柄の将来性を見るときも、

「外国人が増える会社」

より、

「一人の外国人旅行者から、長く・高く・何度も価値を生み出せる会社」

の方が面白くなっていく可能性があります。

日本のインバウンドの将来性は「6,000万人」より、その中身にある

日本のインバウンドの将来性は「6,000万人」より、その中身にある

2030年の訪日外国人旅行者6,000万人という目標だけを見ると、日本のインバウンド市場にはまだ約1,700万人分の成長余地があるように見えます。

ただ、この記事で数字を追ってきて、私は「6,000万人になればインバウンド関連銘柄は伸びる」ほど単純ではないと感じるようになりました。

2026年7月の訪日客数は前年同月比+0.1%まで伸びが鈍りました。それでも17市場では7月として過去最高です。日本への旅行需要は、一つの国や一つの成長率だけでは説明できない市場になりつつあります。

そして政府が目指している2030年の姿も、単純な6,000万人ではありません。

リピーター4,000万人。地方宿泊1億3,000万人泊。旅行消費15兆円。一人当たり消費額の引き上げ。高付加価値旅行。市場の分散。観光DX。人材と生産性。そして住民生活との共存。

これらを一本につなげると、日本が目指している方向が見えてきます。

外国人を東京や京都へ大量に集め、安く泊まって買い物をして帰ってもらうだけではない。

一度日本を好きになった人に何度も来てもらう。まだ知らない地方へ行ってもらう。長く泊まってもらう。その土地の食や文化、自然を深く体験してもらう。そして「日本だから体験したい」と思えるものへ納得してお金を払ってもらう。

日本のインバウンドの本当の成長余地は、旅行者の人数ではなく、一人の旅行者に見せられる「日本の広さ」にあるのかもしれません。

株式投資でも同じです。6,000万人という大きな数字だけを見るのではなく、その旅行者がどこへ動き、何にお金を使い、その需要をどの企業が利益へ変えられるのか。

そこまで見れば、インバウンドというテーマの中でも長く成長できる企業と、一時的な追い風だけを受ける企業の違いが少しずつ見えてくると思います。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

6,000万人という数字は大きいですが、同じ6,000万人でも、東京だけを訪れるのか、日本各地へ何度も旅行してくれるのかで生まれる価値は全然違うんですね。
日本にしかないものを守りながら、その魅力を企業や地域の成長につなげられるか。そこがこれからのインバウンドを見るポイントになりそうです!

スポンサーリンク

外国人に日本が人気なのはなぜ?インバウンド関連銘柄をどう見る?

外国人に日本が人気なのはなぜ?インバウンド関連銘柄をどう見る?

外国人に日本が人気なのはなぜなのか。

私の中には「円安で日本が安くなったから外国人旅行者が増えているのでは?」というイメージがありました。もちろん、調べてみても円安がインバウンドの大きな追い風になっていることは間違いなさそうです。外国人から見ればホテルや食事、買い物が割安になり、日本旅行を選びやすくなります。

ただ、数字や各国・地域の旅行者の行動まで見ていくと、日本人気を円安だけで説明するのは難しいと感じるようになりました。

日本には、寿司やラーメンといった食、寺社や城などの歴史、桜・紅葉・雪といった四季、温泉や旅館、アニメ・ゲーム、テーマパーク、買い物、そして地域ごとにまったく違う文化や自然があります。

しかも、外国人旅行者全員が同じ日本を求めているわけではありません。

東京で買い物を楽しむ人もいれば、北海道で雪を見たい人、東北の温泉へ行きたい人、京都で歴史を知りたい人、地方の料理や伝統工芸を体験したい人もいます。

日本の強さは、一つの圧倒的な観光資源ではなく、違う魅力を何層にも持っていることなのかもしれません。

そして、この「日本人気」を株式投資へつなげるなら、見るべきなのは訪日外国人数だけではありません。

誰が日本へ来て、どこへ行き、何泊し、何にお金を使い、その消費をどの企業が利益へ変えているのか。

そこまで追って初めて、インバウンド関連銘柄というテーマが企業分析につながっていきます。

円安は日本人気の「理由」ではなく、魅力を強める追い風なのかもしれない

円安は日本人気の「理由」ではなく、魅力を強める追い風なのかもしれない

円安が日本旅行の追い風になっていることは間違いないと思います。

ホテルや食事、買い物が外貨から見て割安になれば、日本を旅行先として選びやすくなり、旅行中の消費を増やすきっかけにもなります。

ただ、この記事で各国・地域の旅行者を調べてみると、日本へ行きたい理由は食、歴史・文化、自然、温泉、アニメ・ゲーム、アートなど一つではありません。遠い欧米豪から時間と航空券代をかけて訪れる人もいます。

だから私は、「円安だから日本へ来る」というより、「もともと行ってみたい日本に、円安という追い風が加わった」と考える方が近いのではないかと思っています。

本当の日本人気の強さが分かるのは、その追い風が弱くなったときです。「安い日本」ではなく、「日本だから行きたい」と思ってもらえるか。そこが、日本のインバウンドの長期的な強さを考えるうえで重要だと思います。

日本のインバウンドは「人数」から「一人の旅行の価値」へ

日本のインバウンドは「人数」から「一人の旅行の価値」へ

この記事を通して特に印象が変わったのは、これからのインバウンドの成長は、旅行者の人数だけでは決まらないということでした。

地方へ宿泊する。何度も日本へ来る。滞在期間を長くする。日本でしかできない体験へお金を使う。同じ一人の旅行者でも、日本でどう過ごすかによって生まれる経済価値は大きく変わります。

これからは「何人日本へ来るのか」だけではなく、一人の旅行者がどれだけ長く滞在し、どこまで移動し、何に価値を感じてお金を使うのかを見ることが、日本の観光市場の成長を考えるうえで重要になると思います。

インバウンド関連銘柄は「外国人が増える会社」ではなく「利益へ変えられる会社」を探す

インバウンド関連銘柄は「外国人が増える会社」ではなく「利益へ変えられる会社」を探す

インバウンド関連銘柄を調べると、航空、鉄道、ホテル、外食、小売、テーマパーク、J-REIT、IP企業まで幅広い会社が出てきます。

ただ、記事を通して見てきたように、訪日外国人が増えたことと、その会社の利益が増えることは同じではありません。

投資で重要なのは、

訪日外国人が増えた
→ その会社を利用した
→ 一人当たりの売上が増えた
→ 売上が伸びた
→ コストを差し引いて利益が残った

というところまで追うことです。

インバウンドという大きな追い風を、実際の利益へ変えられる会社なのか。最終的にはそこを見て投資先を選びたいと思います。

私なら「円安がなくても選ばれる会社」を探したい

私なら「円安がなくても選ばれる会社」を探したい

最終的に、インバウンド関連銘柄の中で私が長期投資先として面白いと思うのは、円安や訪日客数の急増だけに依存しない会社です。

ホテルなら、ADRを引き上げても泊まりたいと思ってもらえる。
テーマパークなら、チケット価格が上がっても行きたいと思ってもらえる。
百貨店なら、そこでしか得られない商品やサービスを求めてもらえる。
鉄道会社なら、その路線を使ってでも行きたい観光地へ人を運べる。
IP企業なら、海外にいながら「いつか日本へ行きたい」と思うきっかけを作れる。

そして地方では、その土地でしか体験できないものへ価値を付けられる企業が重要になると思います。

為替は動きます。訪日客数も毎年一直線には増えません。

それでも、「この会社だから使いたい」「この場所だから行きたい」という理由を持つ企業なら、一時的なインバウンドブームではなく、日本人気そのものを事業へ変え続けられる可能性があります。

日本人気を、長く企業の成長へ変えられるか

日本人気を、長く企業の成長へ変えられるか

この記事を通して、私自身の日本人気への見方はかなり変わりました。

最初は「円安だから外国人が増えているのでは?」と思っていました。

でも、日本を訪れる理由を調べるほど、食、歴史、自然、温泉、アニメ・ゲーム、テーマパーク、地方文化など、まったく違う目的で日本を選ぶ人がいることが分かりました。

一つの日本が世界中の人を惹きつけているのではなく、それぞれの人が好きになれる「違う日本」がたくさん存在している。

私は、ここに日本のインバウンドの大きな伸びしろがあるのだと思います。

そして株式投資でも、「外国人が増える」という日本人気にただ乗る会社ではなく、日本にしかない価値を磨き、それを旅行者へ届け、売上へ変え、最後に利益として残し続けられる企業を探していきたいです。

おじーJr.🦥
おじーJr.🦥

最初は「円安だから日本へ来ているのかな?」と思っていましたが、調べてみると、日本を好きになる理由は人によって全然違うんですね。
食が好きな人も、歴史が好きな人も、アニメが好きな人も、まだ知らない地方へ行きたい人もいる。
そのたくさんの「日本へ行きたい」を、長く企業の成長へ変えられる会社を探していきたいです!

インバウンドをもう少し本格的に学びたい方へ

今回の記事では、訪日外国人数や旅行消費額だけでなく、地方誘客、リピーター、高付加価値旅行、オーバーツーリズム、そしてインバウンド関連企業まで幅広く見てきました。
「インバウンドがなぜ成長するのか」「地域によってどんな違いが生まれるのか」といった部分を、さらに専門的に掘り下げたい方には、『インバウンドツーリズム―持続可能な発展のメカニズム』も参考になります。インバウンド観光を一時的なブームではなく、地域や観光産業が持続的に成長するための仕組みとして考えたい人向けの一冊です。

スポンサーリンク

参考資料・出典

本記事は、日本政府観光局(JNTO)、観光庁、国土交通省、財務省などの公的機関、および記事内で取り上げた交通・ホテル・J-REIT等の各企業・投資法人が公表している資料を中心に、訪日外国人旅行者数、旅行消費額、日本が旅行先として選ばれる理由、宿泊動向、地方誘客、高付加価値旅行、オーバーツーリズム、観光産業の人手不足、免税制度、インバウンド関連銘柄などについて確認したうえで作成しています。

インバウンド市場は、為替、航空便、国際情勢、景気、自然災害、感染症、観光政策などによって大きく変化します。また、訪日外国人数が増えても、国・地域、旅行目的、滞在日数、訪問地域、消費内容によって企業への影響は異なります。本記事では、単純な「外国人旅行者数」だけではなく、旅行消費額、1人当たり支出、宿泊数、ADR、RevPAR、地方宿泊、高付加価値旅行、企業利益までのつながりを重視して整理しています。

訪日外国人数・国別市場・基本統計

訪日外国人旅行消費額・1人当たり旅行支出

外国人に日本が人気な理由・市場別の旅行意向

本記事内の「円安だから日本へ来ているだけなのか」という考察については、円安だけを訪日需要増加の原因として断定していません。上記の訪日意向調査、国・地域別の旅行者数、旅行消費額、1人当たり支出などをもとに、価格面の追い風と、日本固有の食・文化・自然・コンテンツ等への旅行需要を分けて考察しています。

宿泊・ホテル・外国人延べ宿泊者数

ホテルのADR・RevPAR・ホテルREIT

地方インバウンド・リピーター・地域周遊

東北6県をはじめとする都道府県別の外国人延べ宿泊者数については、観光庁「宿泊旅行統計調査」の都道府県別集計を中心に確認しています。

高付加価値旅行・富裕層旅行・地方観光

2030年目標・観光産業の将来性

オーバーツーリズム・人手不足・受け入れ環境

災害・感染症・観光危機管理

2026年11月からの外国人向け免税制度

航空・鉄道・ホテル関連企業のIR・事業資料

最終確認日:2026年9月11日

本記事に掲載している訪日外国人旅行者数、国・地域別訪日客数、旅行消費額、1人当たり旅行支出、外国人延べ宿泊者数、地方部宿泊、高付加価値旅行者数、ADR・RevPAR、政府目標、各企業・投資法人の運営実績などは、上記日時点で確認できる公表資料をもとにしています。特に2026年の訪日客数や宿泊統計、ホテル運営実績などには速報値・推計値を含むため、後日確定値へ修正される可能性があります。 

また、インバウンド市場は為替、国際情勢、航空便、景気、自然災害、感染症、観光政策、免税制度、人手不足、宿泊料金などによって状況が変化します。2026年11月1日には外国人旅行者向け消費税免税制度がリファンド方式へ移行する予定であり、小売各社の免税売上や外国人客の購買行動についても、制度変更後の実績を継続して確認する必要があります。 

※本記事は、インバウンド市場の仕組み、日本が外国人旅行者から選ばれる理由、インバウンド関連企業について学ぶことを目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断を行う際は、各企業の最新の決算資料、IR情報、外国人売上、客単価、ADR・RevPAR、営業利益率、設備投資計画、株価水準などをご確認のうえ、ご自身の判断でお願いいたします。

\ 2026年の資産公開はこちら /

\ なぜ私は「企業を応援する投資」を続けているのか /

コメント

スポンサーリンク
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました